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ブラインドからのぞき見た世の中 : January 24, 2013 @ 22:09

ブラインドからのぞき見た世の中 VOL.81『誇りの報酬』



とても残念な結果となってしまった、今回のアルジェリア人質事件。


人質に取られた日本 安倍、イギリス キャメロンの両首相は”人命を最優先”するようアルジェリアのセラル首相に求めており、
軍介入にはさらにつよい懸念を示していたにもかかわらず、の今回の軍介入。

結果、685人のアルジェリア人労働者、107人の外国人が解放された一方、少なくとも23人の人質と、32人の武装勢力が死亡。
うち日本人は9名死亡、1名行方不明という、よかったのが悪かったのか、なんとも言いようのない状態に。


日本的な考えでいえば、日本で立てこもり事件が発生したところで、
犯人への「イナカのおっかあが泣いてるぞ!」という警察のお涙頂戴的な説得&交渉で、だいたい8割ガタは解決してしまいますよね。

そこはやはりアラブ的な考えなんでしょうな。
「イナカのおっかあよりも、アッラーのために”大義”を果たすんだ」ということになるんでしょうね。
いわゆる、”イスラム原理主義”ってヤツです。


しかし、今回の事件に関しては、なんとも大”義”が感じられなかったんですよねー。

犯行グループはアルジェリア出身の”モフタール・ベルモフタール”によって結成された「イスラム聖戦士血盟団」とされていて、
この”モフタール”という人物、先のシリア内戦で多くの武器と、日本円にして約80億円もの資金を調達したとの情報もあります。
戦争というのは、儲るんですよね。

今回の犯行の理由が、フランスのアルジェリアの隣国マリ北部への反乱軍制圧のためのフランス軍介入において、
「フランスに空域を許したアルジェリアへの報復」だそう。
しかしながら、とあるメディアによるとこのグループ、どうも立ち上げたばかりで、
実績が欲しかったためだけにやったのではないかという情報もあります。

ただただ自分たちの名前を売るためだけ、いわゆる道場破りのためだけにお互いこの犠牲者数。。。

アホか!

そんなもののためにこんなにヒトを巻き込まないで欲しいですよ、まったく。


それは、アルジェリア軍にもなんとなく言えますね。

今回の強硬突破にちかい軍介入劇は、アルジェリアという国の歴史にあると思います。
というのも、この20年近くずっとイスラム勢力との内戦が続いているトコロなんですよ。

つまり、”チカラはチカラで押さえ込む”という、イスラム的な「目には目を」という考えが元にあるんですね。
だから、今回に関して地元メディアは支持一色のようです。

ま、結局のところ、どちらも大義名分ということなんでしょうけれどね。


アフガン戦争から、すべてがずっと続いているってコトですよ。
なんともいえない宗教戦争です。


ただ、犯人グループが次にどんな行動に出るかは分からないので、あのまま交渉を長引かせて、逆にガス田施設爆破なんてされていたら、
もっと犠牲者が出ていたのかもしれませんし、
人質を小分けにしてさまざまな方向に連れ去られたら、さらに収拾がつかなくなっていたのかもしれません。

もう、われわれ日本人の”浅い”考えなんか通用しないんですよね。


今後、日本の政府や、外国に進出している企業がやらないといけないのは、テロ対策ではなく、テロが起きてしまったときの対応策ですよ。
そこら辺は、日本人の悪いクセなのかわかりませんが、なかなかやらないトコロですよね。
対策ができているから、事故や事件がおきないことを想定してしまう。
だから、起きたあとの対応がまったくとれない。
それは原発事故においてもそうでしたから。

もう、この際ですから、事故・事件後対策についてじっくりと考えるいい機会ではないでしょうか。
「テロに屈さない」のか、「人命第一」で身代金をわたすのか。。。

「テロに屈さない」というのであれば、今回のアルジェリア軍の動きは、やり方が悪かったというだけで正解にちかいでしょう。
「人命第一」というのであれば、軍の強行介入は完全に間違いで、身代金を払って人質解放か、
身代金を払わず、交渉が長引き、ひとりづつ人質が殺されながらも、いまだに事件はつづいていたかもしれません。


残念ながら、どれも間違いではない。
とにかく、選択肢が少ないです。

ココからは、政府の判断力が重要ポイントになってくるでしょうね。
ただ武装勢力の海外派遣を可能にするなどの、安易な対策だけはとらないでほしいものです。


とはいえ、今回の”誇り”に対する報酬”は、犯行グループ、アルジェリア政府、日本、イギリス、
ドコにとっても代償の方が大きかったような気がしますが、
みなさんはどう思われましたか?



中村雅俊「日付変更線」



旅路 良



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