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Interview : December 5, 2013 @ 22:34

“伊藤ゴロー”的「後奏曲」(前編)



音楽家の”伊藤ゴロー”が、アルバム『POSTLUDIUM』をリリースした。


“POSTLUDIUM(ポストリューディウム)=後奏曲”と名づけられた本作では、いつもどおりのインストゥルメンタルながらも、まったくあたらしい”伊藤ゴロー”を感じる内容となっている。


聴いていて、効いてくる、、、そんないちまい。

この作品は、どのように生まれ、そして、どこにむかったのか。。。


今回は、”ゴロー”さんに、このアルバムのコンセプトや制作などについて、いろいろとうかがってみた。






カネコヒデシ(以下、カ):コレまた、スゴいものをつくりましたね。

伊藤ゴロー(以下、ゴ):いやー、お陰さまで!(笑)

カ:「こう来たかー!」というのが率直な感想です。
前作は、ギターが中心だった感じでしたが、今作は「映画音楽」的な感じを受けました。
情景を容易に思い浮かべられるような、、、しかも、日本じゃないんですよね。

ゴ:どこかの国なんだ。

カ:そうです。

ゴ:編成もドラムやクラリネットなどがはいったりして、
前作とはちがう色になったかなと思います。

カ:今回のメンバーは、どのような流れであつまったのですか?

ゴ:自分の近しいメンバーが中心なんですけれど、
はじめての人がピアニストの”丈青”くんと、澤渡(英一)くんのふたりと、
ベースの鳥越(啓介)くん。
メンバーは、スタッフ内でアイディアをもらって、そうやって集まったメンバーなんです。

カ:例のごとく、タイトルは曲をつくられてから考えた感じですか?

ゴ:そうです。

カ:アルバム自体は、何を思い浮かべてつくられたアルバムなのでしょうか?

ゴ:「The Isle」という曲があるのですが、
もとは青森県立美術館の『Arts and Air~空と飛行機をめぐる、美術と科学の物語』という、
本物の飛行機やプロペラ、空撮写真など、空と飛行機をテーマにした展覧会があって、
その時の展示のためにつくった曲をあらたにリメイクしたんです。
空から地上を鳥瞰しているようなイメージですね。

カ:今作は、その曲が中心で?

ゴ:そうですね。
島に、、、無人島かわからないけれど、飛行機で降り立った、
そこからナニかがはじまるみたいな意味合いをこめてつくった曲です。

カ:アルバム名は、どのように決められたのですか?

ゴ:「プレリュード」という”前奏曲”という意味のコトバはよく聴くと思うんですけれどね。
その反対の「ポストリューディウム」、”後奏曲”という意味なんです。
前奏曲は、いろいろな作曲家が前奏曲集というタイトルでつくっていたりするのですが、
後奏曲を単独でつくる作曲家はあまりいなくて。。。
ボクの知っている作曲家では、ウクライナの”(ヴァレンティン・)シルヴェストロフ”かな。
その方は「ポストリューディウム」というタイトルでいくつか曲を書いているんですよ。
それから刺激を受けたのと、「ポストリューディウム」という実態の無いコトバというか、
あまり聞きなれないコトバが、フィットするかなーと。

カ:普段、あまりつかわないコトバだから、じつはボクもパッと見で読めなかったです(笑)。

ゴ:そうですよね。
パッと見て、読めないのが好きなんですよ(笑)。
「ポストリューディウム」というコトバから「ポストリュード」、
そこから「プレリュード」というコトバまで行きついて、
それで意味がわかってもらえたらいいかなと。
そういうちょっとひと手間かかるようなタイトルが好きなんですよ。

カ:相手に「ナンだろう?」と思わせたいというコトですよね?

ゴ:そうです。
あとは、前作の『グラスハウス』にくらべて、
抽象的なタイトルにしたかったというのもありますよ。

カ:今作もインスト曲のみでしたけれど、最初からその考えだったのですか?

ゴ:それはゆるぎなく。。。
歌モノという考えはまったくなかったですね。
歌、あった方がいいですかね?

カ:ボクはどちらも好きです(笑)。
ちなみに、個人的な考えですが、
ゴローさんの曲はいい意味でカフェとかそういう場所で聴きやすいんですよね。
それが歌モノでもそうなんですよ。
心地良くカラダに入ってくる。
ナニか秘訣はあるんですか?

ゴ:なんですかねー(笑)。

カ:アレンジの”血”なんでしょうかね(笑)。

ゴ:血ですか!?(笑)

カ:でも、もともとの影響はロックですもんね?

ゴ:ボクはいわゆるイージーリスニングと呼ばれる、、、
“ポール・モーリア”とかがすごく好きなんですよ。
要はカフェとか、スーパーマーケットとかで流れているようなBGM的な音楽を、
集中して聴くのが好きなんです。
流し聴きではなく、細部を聴くんですよ、アレの。
もしかしたら、日本で”ポール・モーリア”をヘッドフォンで聴いているのは、
ボクくらいだと思うんですけれど(笑)。

カ:たぶん、ゴローさんだけだと思います(笑)。

ゴ:そういう、なんとなくなにかのバックでかかっている、、、

カ:“リチャード・クレイダーマン”とか(笑)。

ゴ:そうそう!
「いつ聴いたっけ?そういえば、小学校のご飯のときだ!」みたいな音楽。
ボクは、そういう音楽の細部を聞くという、変な趣味があって、、、
もしかして、その部分が出ているんでしょうかね(笑)。

カ:ソレ、わかりますよ!

ゴ:いや、言っていてちがうなーと思いましたけれど(笑)。

カ:でも、なんとなく今作の編成というか、アレンジもそうですし、
“映画音楽”という表現が出てきたのは、まさにそういうコトなんじゃないでしょうか。

ゴ:なるほど。
映画音楽と言われて、「そうかも!」って(笑)。
映画音楽ってイメージしやすいから、分かりやすいし、共有できるよね。
アルバムの説明に、そういう、、、

カ:「まるで一本の映画を観ているような一枚だ」ですよね。

ゴ:そうやって聴いてもらえるといいかなと思いました。

カ:情景が浮かぶんですよ、”雨が降っている森”とか。
それも色がセピアにちかい、黄色がかった、焼けた感じの写真というか、
はっきりした色が出ている物ではなく。。。
とにかく、最初に聴いたときに、スゴいなーと思いました。
日本でこういう音楽ができるのは、ゴローさんくらいじゃないですか?

ゴ:あれ?持ちあげました(笑)??

カ:すみません(笑)。
それにしてもギターではなく、ピアノとストリングスがメインっぽいアルバムですよね。

ゴ:たしかに、その印象は強いですね。

カ:まず、それで驚きましたよ。

ゴ:まったく意識してなかったんですけれど、音を出し合って自然に出た結果なんですよ。

カ:やっぱり、、、”血”じゃないですか?

ゴ:“血”ですかね。
“ポール・モーリア”の(笑)。

カ:直系ですよ(笑)。



(後編につづく)






□CD情報

『POSTLUDIUM』





価格:¥3,000(税込)
レーベル:SPIRAL RECORDS(XQAW-1105)

>>>レビューはコチラ



『POSTLUDIUM EP』





価格:¥1,050(税込)
レーベル:SPIRAL RECORDS(XQAW-1104)

>>>レビューはコチラ


『POSTLUDIUM』スペシャルサイト:http://goroito-postludium.com/




□プロフィール

伊藤ゴロー
GORO ITO





作曲家、ボサノヴァ・ギタリスト、プロデューサー。
布施尚美とのボサノヴァ・デュオ naomi & goro、ソロ・プロジェクト MOOSE HILL(ムース・ヒル) として活動する傍ら、映画やドラマ、CM音楽も手がけ、国内外でアルバムリリース、ライブを行う。Penguin Cafe Orchestra 『tribute』『best』、原田知世『music & me』『eyja』、ボサノヴァの名盤『GETZ/GILBERTO』誕生から50年を記念したトリビュート盤『ゲッツ/ジルベルト + 50』他、多数のアルバムプロデュースも行なう。
2013年11月シングル『POSTLUDIUM EP』、12月アルバム『POSTLUDIUM』をリリース。

オフィシャルサイト:http://itogoro.jp/


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