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Interview : May 8, 2014 @ 15:06

まさかの来日!──”アレハンドロ・ホドロフスキー”の記者会見(ソノ2)



カルト映画界、伝説の奇才、”アレハンドロ・ホドロフスキー”が、23年ぶりとなる新作『リアリティのダンス』を引っさげ、四半世紀ぶりに日本へと上陸した。


『エル・トポ』や『ホーリー・マウンテン』などの作品をこの世に生みだし、”ジョン・レノン”もその才能にほれこんだ、”ホドロフスキー”監督。


今回は、2014年4月24日に都内某所にて行われた、思わずニヤッとしてしまった記者会見の模様を、、惜しげもなくご紹介するレポート、ソノ2。


さあ、ホドロフスキー先生のお話を、あーだこーだ言わず、黙って聞け。






─次回作『フアン・ソロ(Juan Solo)』は、アクションというお話を聞いておりますが、どのような映画を考えているのですか?


アレハンドロ・ホドロフスキー(以下、ホドロフスキー):
今回、ワタシは自分の人生についての映画をつくりました。
今作は、まるでココロの”治療”のようなもので、
私の父をゆるし、息子たちとの関係をもう一度見なおし、
そして、衣装を担当した妻といっしょにはたらき、、、
とても個人的なアートになったとおもいます。
ですから、次回作は個人的ではないアートの物語を描きたい。





そして、底辺の底辺にいるひとりの人間、
いわゆるゴミためにいるような人間を描こうと考えています。
そこから人生がはじまり、政治的なことや犯罪に巻き込まれながら、生きていく。
そして、自分が人間であることを見つけ、とても人間的な人生を送れるという、
それがテーマです。

なぜなら、現在の私たちの文明は私たちを非人間的にしています。
ダレもが孤立したひとりではなく、集団的な存在の一部。
そして、そのダレもが、いま地球は「アブない」とおもっている。
それは我々の産業が、地球をこわしているからです。
しかし、みんな、地球を救済したいと考えているワケですよ。
それは、生き残るための本能ですから。
だから、底辺の人間を描くコトで、その感情がわいてくると考えます。
そういう感じで、次回は自分の問題ではなく、人類の問題について語ります。

それにアクションがつく。
アメリカ人がよく使うアクションを、です。
彼らはとてもバカな方法でアクションをやっているのです。
なぜなら中身がないから。
ヒーローは最終的に汚れ役、アンチヒーローになるのですが、
汚れても存在は低くないのです。
そういった感じで、我々は崇高な意識をもっているので、
それを目覚めさせるような物語を考えました。

まず、ワタシはコミックをつくったのですが、
それはフランスで開催されている『アングレーム国際漫画祭』で、
最高の脚本賞をとりました。
だから、それは観客に受け入れられる物語だとおもっているので、
あと23年かかっても実現したいと考えています(笑)。





映画というのは、ワタシひとりだけではダメで、プロデューサーも必要。
しかし、プロデューサーはとても恐がりで、みんなアートがキライなのです。
彼らにとっての目的は、ビジネスと産業だけ。
タバコの製造会社と一緒ですよ。

自分がホッとできるような、でもそれをやると死んでしまうモノをつくりだす。
中身のない映画は、タバコとおなじようにヒトを殺すのです。
ナニか問題をかかえているときに、映画館に入って、観るコトで問題をわすれ、映画館からでてくる。
私の映画の場合、映画館に入って、いままで見たことのない”ナニか”を自分のなかに発見し、その”ナニか”と一緒に出てくる。
それは”希望”とか、そんなモノ。
そういう映画をつくりたいと考えています。



─25年前に来日されたときに、タロットのお話があまり出ていなかった記憶がありますが、
タロットはいつからはじめられたのでしょうか?


ホドロフスキー:20歳のときからはじめて、いま85歳。
だから、65年間研究しています。
タロットは、まるでヴァイオリンのようなもので、研究は一生つづきます。
この映画のなかにもタロットが出てきます。
「カップの女王」というのはタロットのキャラクターで、愛のカードなんです。
そして、ひとつの石でたくさんの魚を殺すシーン。
つまり、ひとつの矢ですべての森を燃やすコトができるし、
ひとつの愛の視線で、一生その人を燃やしつづけることもできる。
それは、いまの妻”パスカル(パスカル・モンタンドン=ホドロフスキー)”との間に起こったコトでもあります(笑)。
彼女をみたときに、私の人生は変わりました。





─”アラン・クライン”は、日本では、ビートルズを解散させたオトコとして評判が悪いですが、
彼とはどんなことがあったのでしょうか?


ホドロフスキー:アランとのコトは解決しましたが、非常におおきな問題でした。
当時、”ジョン・レノン”の推薦で、彼が『エル・トポ』の独占配給権を買い、
それがアメリカでヒットしたので、
彼は新たな作品を制作すれば「何百万ドルも稼げるぞ」と。

しかし、私はアートの映画をつくりたかったので、それを断ったのです。
たしかに、やっていればもうかったとおもいますけれどね。
でも、ソレを言われたときに、15分考えて、ナニも言わずに逃げました。
そのままアメリカからも出国したのです。
だから、彼はとても怒ったとおもいますね。
「ダレもオマエの映画なんて、二度とみないぞ!」と言われましたから。
そのまま彼との関係は終わりました。
それが約30年前の話。

その後、『エル・トポ』も『ホーリー・マウンテン』も、
ワタシに版権がないので上映はできませんでした。
でも、ワタシは、ビデオテープを持っていたので、
画質は悪かったのですが、それで海賊版をつくって配ったんです(笑)。
それをロシアやフランス、チリ、世界中にプレゼントしました。
みんなが観てくれたことで、”伝説の作品”と言われるようになったのです。
ある日、メキシコで完璧なネガを見つけて、それが1,000ドルで売っていたので買いました。
そして、それでまたDVDの海賊版をつくりました。
でも、アランはそれを知らなかった。

DVDの制作会社には、
「彼はプロデューサーだけれど、私がサインをするから」と言ってつくったのですが、
その時になって、アランに気づかれたのです。
すると、彼は「800万ドルを払え!」ということになって。。。
そのとき、ワタシは「自分は払えないので、あとは好きにしてくれ」と言ってDVDをわたしました。

編集の友人には
「キミはこれからずっと、儲けるたびにすべて払い終わるまで全部とられるぞ!」と。
だから、先に「その問題をクリアにしたほうがいい」と言われましたよ。
そこで、アランの息子に電話して「問題をクリアにしたい」と伝えたのです。
「パーセンテージを決めよう」と、彼に言いました。





そして、「アナタのところには1時間500ドルの弁護士がいるだろうけれど、
ワタシにも弁護士はいるし、あと10年くらいは抵抗できる」と(笑)。
で、「そうしたら、1時間500ドルの弁護士をどれだけ使うことになるのか。
ワタシはお金は欲しいワケではなく、自分の映画を観てほしいだけ。
だから、合意してくれたら、わたしが無料でデジタライズする」と伝えました。
すると彼は、「父に会いに行こう」と言い、
そのとき、アランはロンドンにいたので、ロンドンに向かいました。
ワタシはアランを憎んでいたし、
アランはワタシを30年間殺したいとおもっていたワケですよ、、、
たぶんね(笑)。

ロンドンに着いて、彼の息子とホテルを出て、
心臓がバクバクしながら、彼の部屋のドアをたたきました。
ドアが開くと、白髪の紳士が立っていました。
彼は我々を見て、まるで精神的な師弟みたいで、「なんてうつくしいんだ!」と言いました。
そして、お互い抱擁し、ほんの数秒で友人にもどったのです。
“憎しみ”というのは”友情”なので、最大の的は最高の友人になるというコト。
ワタシは彼のことをプロデューサーとして尊敬しているし、
彼は私のことをクリエイターとして尊敬していました。
そしていま、『サンタ・サングレ』は、アランの息子が配給してくれています。

ココから言えるのは、”戦争は終えることができる”というコトです。


─現在85歳とのことで、元気でいるための秘訣を教えてください。


ホドロフスキー:
みなさんにおなじコトをやってほしいとはおもいませんが、、、
ワタシは、一度もタバコを吸ったコトがないし、
アルコールも飲まない、、、まあ一杯くらいは飲みますがね。
あとは、コーヒーも飲まないし、赤身の肉を食べない。
重要なのが若い妻(笑)。
触れるたびに若がえります。





そして、つねに考えているし、つねにナニかをつくりつづけているのです。
ちなみに、毎日、詩を書いています。
それは古い日本の伝統の”辞世の句”のようなものなのですが、
“辞世の句”の本を持っていて、それに強い影響を受けました。
それがワタシの元気の秘訣です。


─今作『リアリティのダンス』は、お金の話からはじまりますが、監督にとってお金とは何ですか?


ホドロフスキー:

お金がナニかを知るためには、お金の歴史を知らないといけないのです。
むかしは、本当の金でした。
金貨とか、つまりソレ自体に価値があった。
塩が足りないときには塩が通貨になっていて、中身があったワケです。
しかし、いまのお金には中身はありません。
ただの紙切れで、人間の想像上のモノでしかない。
それが我々の悪の根源であり、変えていかなければいけないコトなのです。

いちばん大切なのは”信頼”。
お金は信頼によるモノで、つまりドルを信頼しなければドルは下落する。
もっと恐ろしいのは、お金はつねに債務であるコト。
我々はつねに借金をしているのです。
しかも、生まれたときからね。
そういう感じで、お金は私たちを奴隷のように使います。

そのむかし、人はブツブツ交換で成り立っていました。
だから、お金のクリエイティビティのない人は、
お金をつかわずに生きていく方法を考えればいいのです。
しかし、それはネガティヴな考えですよね。





お金を、そのままとらえると、考えを変えるコトとはできない。
だから、ワタシは”うまく使う”ということを考えました。
映画のなかで、ワタシはお金をイエス キリストのようだと言っていますが、
それは、”分かち合わなければ価値はない”という意味なのです。
お金を物質的な欲望を満たすためだけに消費するコトは、いちばん悪い例です。
でも、精神的な価値や感情的な価値、クリエイティヴな価値を高めることのため、
つまり、ポジティブなライフスタイルをつくるために使うのであれば、
お金はイイものだとおもうのです。

まとめると、お金は自分で価値を変えなければならなく、
もし変えられないのであれば、うまく使わないといけない、というコト。
それはワタシのお金に対しての考えですけれどね。
ちなみに、ワタシはお金をうまく使いはじめました。
それは、自分のなかでもうその価値を変えられないとわかったからです。


─ありがとうございました。


ホドロフスキー:最後に、ひと言。
ココに来られたみなさんの忍耐力、
みなさんのとても細やかな行動に感銘しています。
なんて静かなのだろうと。





みなさんにとっては、この状態が当たり前なのかもしれません。
しかし、例えば、L.Aのレストランなどは、みんなが大声で話しているので、
頭がおかしくなりますよ(笑)。
今日は、本当にありがとうございました。


─衣装と宣伝写真を担当した、
奥さんの”パスカル・モンタンド・ホドロフスキー”さんをあらためてご紹介します。




ホドロフスキー:
彼女への質問はありますか?


─ダンナさんからは、どのように口説かれたのでしょうか(笑)?



パスカル・モンタンド・ホドロフスキー(以下、パスカル):
それは、まさにタロットのお陰なんです(笑)。
友人から、アレハンドロの素晴らしさを聞いていたので、
彼がタロットをやっていた場所に行ったのです。





そこには世界中からたくさんの人が来ていました。
そんな中、アレハンドロは集中してタロットを読んでいたので、
占っているその人だけを見ているとおもっていました。
しかし、その時、急に私に「どうしたの?」と聞いてきたのです。
そこではじめて、彼はずっと私を見ていたことに気づきました。

それがとてもショックで、ナニかが”ビビビッ!と”来ました(笑)。
そして、タロットの後、
彼は私に「アナタとナニかをしなければ!」と言ったのです。


ホドロフスキー:
でも、その時はほかの女性と住んでいたんです、、、
別れる寸前でしたが(笑)。
彼女には「(いま一緒にいる女性は)もうすぐ出て行くので、それまで待とう」と言いました。
だから、彼女と外で会いながら、「早く出て行ってくれないかなー」と思ってましたね(笑)。


パスカル:
私はそのときから、ふたりは一緒に住むべきだと確信していました。


ホドロフスキー:
女性が家から出て行った後、彼女の両親に結婚をお願いをしに行ったのです。
それは、とても古い習慣だったし、私たちはオトナだったので、本当は必要なかったのですが、
伝統にのっとりたかったからそうしました。
伝統には、魔術的な部分がありますからね。
もし、彼女の父がゆるさなかったら、彼女との結婚は無理だとおもいました。





パスカル:
私もそう思いました。
人生の中において、重要な儀式だったとおもいます。
でも、会った時に両親もとてもアレハンドロのことを気にいってくれたので、
大丈夫だとおもいました。


ホドロフスキー:
彼女の父よりもワタシは、一日だけ若かったんです。
だから、彼は「私よりも一日若いからいいですよ!」と、結婚を許してくれたんです(笑)。
ふたりとも後悔はしていません。
もう、すでに10年一緒にいますからね、うまくいってます(笑)!






(おわり)






□”アレハンドロ・ホドロフスキー”監督関連の映画情報

・『ホドロフスキーのDUNE』
スター・ウォーズ、エイリアン、マトリックス、プロメテウス…あらゆる名作の元ネタ!?映画史上最も有名な”実現しなかった映画”『DUNE』にま­つわるドキュメンタリー。

2014年6月14日より新宿シネマカリテ、渋谷アップリンクほか全国順次公開!
オフィシャルサイト:http://www.uplink.co.jp/dune/



・『リアリティのダンス』
アレハンドロ・ホドロフスキー監督(84歳)23年ぶりの最新作!

2014年7月12日より新宿シネマカリテ、渋谷アップリンクほか全国順次公開!
オフィシャルサイト:http://www.uplink.co.jp/dance/


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