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ブラインドからのぞき見た世の中 : July 11, 2014 @ 14:56

ブラインドからのぞき見た世の中 VOL.116『「えん罪」までのディスタンス』



さて、刑事司法改革の最終案が、ついにまとまりそれが法制化されるというニュース。


しかし、その議論に3年もの時間をかけただけの価値や成果が改革案にあったのか、
という懸念が、さまざまなメディアで議論されています。


今回の改革におけるいちばんの目的は、
もちろん「えん罪」をなくすというコト。


「えん罪」の事例で記憶にあたらしいのは、『袴田事件』の”袴田 巌”さんですよね。

彼は、検察側によってデッチあげられた証拠のために、
47年もの時間をムダにしてしまったワケです。


このところの裁判員制度導入による証拠開示などによって、
「えん罪」だったとされる事例がつぎつぎとあらわになるという、
史上最悪の状況ですよ。

まさに「えん罪」大国ニッポン。


「えん罪」が起こってしまう理由のひとつには、
犯人だと決めつけて捜査に取りかかり、
勝手な犯罪ストーリーをつくりあげて、
それに当てハメて押し進めようとする、
そういった現状の刑事事件の捜査の方法に問題があるのでは?とされています。


もちろん、捜査現場の方々が大変だというコトも、
重々承知ではありますよ。

おそらく、刑事ドラマさながら、
捜査予算もあまりなく、
上からは早く捕まえろ!だの、市民からはどうなってんだ!だの。

だから、犯人だとおもったヒトには、
疑いの目をもって、
全力でしらべるしかない状況なワケです。

しかし、そのプレッシャーからなのか、じっさいの理由はわかりませんが、
そのために自白の強要などがおこなわれてきてしまったとうのは事実ですからね。

それはやはりダメですよ。


だからこそ、捜査における可視性を求めなくては、
今後もまちがいなく「えん罪」は起こりうるワケです。


それでもって今回の司法改革。

ちなみに取り調べの録音・録画においては一部義務化となりました。

「それは、イイネ!」とおもったのもつかの間、
可視化対象になったのはたった3%だそう。

え!3%ですか?

消費税より低いですよ。


あとは、
「対象以外の事件の取り調べでも録音・録画がなされることを強く期待する」
という、弱々しい希望だけ。

それは、ちょっと人まかせすぎじゃないですかね。


希望を述べるのはダレだってできますよ。

でも、それがダメだったから、
司法改革が必要になった、、、ハズなんですけれど。。。

もちろんのことですが、
被疑者へ録音・録画の許可を取るのは当たり前。


それと、もうひとつ気になったのが、
捜査機関に電話やメールなどの傍受を認める「通信傍受」。

通信内容を暗号化するなど管理を厳格にすることを前提に、
通信事業者の立ち会いは原則不要で、警察施設で傍受することも可になるそうです。

“前提に”ってところが、かなりあやしいですが、
つまり、捜査当局側が「あいつが犯人だ!」と決めたら、
勝手に傍受できてしまうワケですがな。

もちろん、そこにいたるまでには、
慎重に審議をくりかえすとはおもいますがね。

しかし、じっさいにどのように決められるのか、
提示されていないので、
コチラとしては皆目検討もつきません。

さまざまなメディアでは、
捜査機関の権限強化につながるのでは、と懸念の声が上がっています。

いままでの状態をみていると、
たしかに、そこは心配な部分ではありますよね。


なんだか「捜査の暴走をおさえるための改革」だったハズが、
これではむしろ逆効果なのでは?


しかも、「えん罪」の再発など、
さまざまな懸念がのこったまま法制化されるというのも、
なんともナットクのいかないところ。

ソコに、日本の司法の弱さが見え隠れしてしまっているワケですよ。


ナンのための三権分立なのでしょうか。

先日の憲法解釈変更による集団的自衛権を認める件もそうですが、
司法が反対しているにもかかわらず、
閣議決定が容易にできてしまう現状。

これでは単なる「お伺い司法」になっていくばかりです。


もちろん、改革案にもイイ部分があるのもたしかですよ。


でも、今回の改革で、
本当に「えん罪」までの距離は遠くなったのでしょうか。

みなさんはどのように考えますか?




エミ・マイヤー「君に伝えたい」



旅路 良



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