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Interview : November 4, 2014 @ 18:59

『光の音色-THE BACK HORN Film-』──”熊切和嘉”と”THE BACK HORN”



映画監督の”熊切和嘉”と、バンド”THE BACK HORN”がタッグを組んだ、映画『光の音色-THE BACK HORN Film-』が、2014年11月1日より公開した。


今作は、音楽映像、いわゆるPV的なイメージとは裏腹に、音楽とストーリーがまったくもってちがう世界をパラレル的にすすんでいくパノラマワールド、、、どう説明していいのか、まったくもってわからない、まさにあたらしい感覚の映画となっている。


今回は、”熊切和嘉”監督(写真中央)と、”THE BACK HORN”のメンバー(左:岡峰光舟、中左:菅波栄純、中右:山田将司、右:松田晋二)に、この作品に対する”思い”や、制作にまつわるエピソードなどをお訊きした。




─まずは監督、今回、この映画『光の音色-THE BACK HORN Film-』の企画を思い立ったキッカケを教えてください。


熊切和嘉監督(以下、監督):
じつは、もともとはプロデューサーとバンドのメンバーで、
そういうライブ映画を劇場でやる、、、
ライブドキュメンタリーとか、
ライブ映画みたいな映像をやりたいという話があったみたいなんです。
で、その中でボクの名前が候補として上がっていたという感じで、
加わったのは後からなんですよ。
この企画自体は、2013年の年末にお話をいただいたのですが、
さかのぼると、15年ほど前に彼らのPV制作のお話があって、
そのときはスケジュールが合わなかったんです。
それが15年経って、また彼らと一緒にやれる機会をいただいたという、、、
それに勝手に縁を感じてですね(笑)。
「ドラマチックだなー」とおもって、それでやらせてもらうことになったんですよ。


─ということは、それまではメンバーのみなさんと交流は?


監督:まったくないです。


─そうなんですね。もともとはプロデューサーの方が知り合いだったと?


監督:そうです。
それで、普通のライブ映画にはしたくないというお話をいただいて。。。


松田晋二(以下、松田):
はい。


監督:メンバーとそういう話をしていたということで、
ボクの名前を上げていただいたという感じみたいです。


─なるほど。
バックホーンとしては熊切監督にお願いしようとおもったキッカケは何かあるんですか?


松田:プロデューサーに、監督と自分たちが合うんじゃないのかなということで紹介を受けたんです。
作品も観させていただいて、映像が美しかったし、可能性というか、
表現と、バックホーンの音楽とで、あたらしいモノがつくれそうという感覚もあって、一緒にやりましょうと。


─ビジュアルだったり、タイトルだったりで、
個人的には、いわゆるライブツアーのドキュメンタリー的なイメージが強くて、
映画のサンプルのDVDをいただいて拝見したときに、
じつは間違ったものが送られてきたと思ったんですよ(笑)。


一同:(笑)


菅波栄純(以下、菅波):たしかに想像していたモノとは違いますもんね(笑)。


─そうなんです。
しかも、「ロシア系の話がはじまっているぞ!」ってなってですね(笑)。


一同:ハハハ(笑)。


─だから、アセって早送りしちゃったんですよ(笑)。


監督:なかなかライブがはじまらないぞ!と(笑)?


─ええ。
もしかして、違う映画のサンプルだったのかもって(笑)。


菅波:ははは(笑)。





─途中からライブの映像が入ってきたので、「なるほどね!」と思いました(笑)。
この構成は、監督とメンバーとでどのような話し合いがあったのでしょうか?


監督:普通のライブものにはしたくないということで、自分だったらどうするかなと。
ただ、ぼんやりとしたイメージで、サイレント映画の伴奏付きみたいなものは考えてました。
だから、「シンプルなストーリーがあって、台詞とか、感情を語りきらないけど、
それを音楽が受け継ぐというか、溜め込んだ感情を音楽で表現するみたいなのはどうでしょう?」
って訊いたら、「それ面白いですね!」ってなって。
それで、ざっくりとプロットを書いて、「ココにこういうイメージの曲はどう?」
みたいな感じでススメていきました。
バンドの方から「だったら、こういう曲はどうですか?」というやり取りもあったりして、
だんだん固まっていったという感じです。


─ちょっとした無国籍感というか、近未来的というか、そういう物語にした理由はありますか?


監督:なんとなく、彼らの曲からインスパイアーされたんです。
日本語だけれど、ドコか、ドコでもないような感じ。
あと、荒野のイメージ。
そこからあの画絵が生まれたという感じですかね。


─メンバーの方々は、出来上がったものを観たときの感想はいかがでしたか?
「オレはこうは思ってなかったんだよ!」とか、そういうのはあったりしたんですか?


菅波:実際、もっと難しいものになるのかなと思っていたんですよ。
自分たちのつくったコンセプトもそうだったので。
それに、最後の試写会に至るまでは自分たちも客観的に観れていないですから。
音の部分ばかり気になっていたので、完成版を観たのは試写会なんです。
それまでは、もう少し、観るヒトの感覚が試されるような映画なのかもと思っていたのですが、
自然なところで感動して、演奏シーンで自然に熱くなってって、
エンターテインメントのものに仕上がっていたので、楽しかったですね。


松田:ライブは、やはりライブの瞬間がいちばん最高で、唯一無二のものじゃないですか。
記録としてのツアーのDVDなどは、
お客さんと一緒に盛り上がっている状態のものが映し出されているものとか、
そういうのはいままでバックホーンは残してきたものがあるんです。
だから、映画館で上映するという話になって、
映画の要素と、バックホーンの演奏、音楽、ライブ感みたいなものが合致したときに、
いままでにない感覚を味わえる作品になったらいいなと。
完成試写会を観た時は、削ぎ落とされたモノという感じを受けました。
説明があった方が安心もありますし、納得する感覚はあるんですけれど、
削ぎ落とされた強さというか、美しさというか。。。
感覚に訴えてくるものを感じましたね。


山田将司(以下、山田):1時間20分が早かったです。
つねに見入ってしまう感じ。
素直に観てくれたら、かならず何かを感じてもらえるかな。
あの老夫婦の物語があって、その感情の表現を自分たちが出来ていたと思うし、
最後、自分も感動しちゃったから。
自分がそう感じたから、ダレでも感じてくれるんじゃないかなと、思いました。


岡峰光舟(以下、岡峰):普段、自分たちはライブで演奏しても、
自分たちの演奏している姿は観られないじゃないですか。
それを大画面で、しかもデカイ音で、、、そういうライブ感というのを体感できましたね。


─ライブのシーンを撮るときに、監督はどんな指示をされたのでしょうか?


監督:特に、そんなにはないですよ。
細かいところで、目線をくださいみたいなことは多少ありましたけれど。
演奏は彼らの力ですから、あとは波動を送っていたというか(笑)。


一同:ははは(笑)。


─ライブのシーンの映像はみなさん、いちいち確認したんですか?


監督:映像というか、音は確認してましたよ。


─ライブの部分を撮り直すとか、そいういったエピソードはあったのでしょうか?


監督:音はやったのですが、画絵はないですね。


山田:画絵のチェックは、コチラはしなかったんです。


松田:分担作業みたいな感じにうまくなってましたね。
コッチで音をチェックしている間に、監督は映像をチェックするとか。
映像的にもう一回というのはなかったですけれど、
演奏的にもう一回というのはありましたよ。





─お互いはじめて仕事をしたワケですけれど、お互いの印象みたいなものあったりしますか?


菅波:監督がカチンコで「スタート!」っていう声がとてもステキで(笑)。
とても太くて、気合いが入りましたね。
最初の打ち合わせで、モノ静かなヒトなのかなーという印象があったんですけれど。
現場で、カチーンという音が、自分たちもそこでスイッチが入って、
演奏に気合いが入るみたいな感じでしたよ。


一同:・・・


─どうしたんですか(笑)?


松田:それ、最初から思ってたの(笑)?


菅波:コレ、じつはヒトの受け売りなんです(笑)。


岡峰:
よくあるよね(笑)。


菅波:かなり自分のコトのように話せるようになってきているから(笑)。


山田:4人いると、よくありますよ(笑)。


松田:自分のことように話すってね(笑)。


山田:でも、監督がワンテイク終わったごとに歩みよってきてくれて、親指立ててグッて(笑)。
それで、みんな、熱くなりましたよ。


岡峰:いや、ホントに「いーよ!いーよ!!」って言われるのって、
コッチもこのままやればいいんだなという感触は得られるし。
「どうやったらいんだろう?」ということはなかったです。


─監督の指示がしっかりしていたんですね。


岡峰:信頼感がありましたね。


松田:イメージは最初に見させていただいていたので、
想像していた感じで、うまく入れたというのもありますね。
プロジェクターで映された中で演奏するというのはいままでなかったので、
それは新鮮な経験でした。


─監督は、メンバーとはどうでした?


監督:普段、俳優とやるとはまた違う面白さがありましたし。
ライブシーンに関しては、曲ごとにコンセプトがあって、
こだわってやっていたんですけれど、
いちばんはカメラがどれくらいまで近づけるかというのに挑戦したかったんです。


─そういえば、かなりアップ多めでしたね。


山田:自分たちもはじめてでしたね、あそこまでカメラが近いのは。


監督:ガンガン目の前まで行きましたから(笑)。


山田:ツバとか飛んでいたと思いますよ(笑)。


監督:その熱を撮りたいなと思っていたので。
彼らも、そこに同調してくれたというのがたのしかったです。


─物語の方の話ですが、あれは実際に現地に行かれたんですか?


監督:ウラジオストクです。


─ああいう場所があるんですね。
建物が廃墟になっているというか。


監督:ゴーストタウンみたいな街があるんです。
ヒトは、、、ホームレスがひとり住んでましたけれど。
ロシアのフィルムコミッションとやりとりしていくなかで、見つけたんですよ。
ウラジオストクの市内から3時間くらいかかるんです、車で。


─郊外の郊外みたいな場所ですね。


監督:もう別の町ですよ。
いいロケーションでした。


─出演している俳優さんたちは、現地で探したんですか?


監督:そうです。
おじいさんは、ウラジオストク在住のミュージシャンで、酔いどれ詩人みたいな方。
ただ、俳優じゃない方なので、演出しても「俳優じゃないので、いわれても困る!」って言われて。
演出拒否されましたけれどね(笑)。
結果はよかったですけれど。


─熟練の俳優さんに、、、


菅波:見えますよね(笑)。


山田:すごく味がありますよね(笑)。


─奥さん役の方は?


監督:あの方も素人。
退職した教員の方です。
最初にリハをやって、すごく考えて練習してきてくれたのか、
現場にいらっしゃったら、撮影自体はスムーズにすすみましたよ。


─撮影にはどのくらいかかったんですか?


監督:5日くらいです。


─霧なのか、雲なのかのシーンがあったのですが、アレはいわゆるつくり込んだのですか?


監督:あれは偶然なんです。
もともとは考えていなかったシーンで、アノ場所で別のシーンを撮っていたんです。
で、迎えにくるはずのマイクロバスが、道に迷ってなかなか迎えに来なくて。
それを待っていたときに、ちょうど霧と言うか、地面を雲が這うみたいな。。。


─不思議な雰囲気でしたね。


松田:アレは撮る予定じゃなかったんですか?


監督:現場で「コレ、撮ろう!」って言って、撮ったんです。


─けっこうそいういう感じで、
タイミングよければ撮っちゃえみたいな感じですすんだんですかね?


監督:そういうのは逃さないですよ!


菅波:真骨頂ですね、監督の(笑)。


監督:アドレナリンがでるんです(笑)。





─曲との合わせの構成は、考えながら撮ったという感じですか?


監督:もちろん編集で、変えている部分はありますけれどね。


松田:選曲の段階で、ある程度バンド的にこの曲を入れたいというのはありました。
最初にいただいたストーリーの中で、この曲がいいのではという提示もあったり。
曲単位でバックホーンらしさは網羅できていると思ったので、
あとはそれをどういう風に並べるかという感じでしたね。
ロシアでどういうものが撮れるかは、未知数な部分があったので、
編集段階でうまく整理してくれるのかなと。
そこは監督に託してました。


─ちなみに、タイトルはどこから考えたのでしょう?


監督:これは、編集が終わった時にみんなで決めました。
なんとなくですが「なんとかの音色」という感じにはしたかったんです。


松田:満場一致で「光の音色」がいいねってなりましたよ。


─「光の」の部分は監督が提案したんですか?


監督:いえ、プロデューサーです。


菅波:メモに控え目に「光」って書いてあって、、、それに気づいたのは監督ですよね(笑)。


監督:「あっ!」てなって(笑)。


山田:映画は光を映しているというのもあるし、
バンドと映画との合体感が「まさに!」なってなりましたよ。


─この映画をひと言で紹介すると?


菅波:ライブ、、、ですかねー。
演奏の「ライブ」でもあるし、生きるの「ライブ」でもあるし。
そんなことを考えられる映画かな。


監督:「ライブ」映画って、いいですね。


松田:ソレじゃないですか?


山田:ソレだね。


岡峰:そいういうことだよ。


監督:すごくシックリきましたね。


松田:ストーリーとしてのライブと、音楽としてのライブ。
あたらしいジャンルだと思うんですよ。
いままでなかったような映画かなという、あたらしさですね。


─監督もそんな感じでいいですか?


監督:そうですね。
映画は自由であっていいと思っているので。
だから、はやくパクられたいですね(笑)。


一同:えっ!


山田:あっちの、、じゃないですよね(笑)。


監督:じゃないです(笑)。
真似されるの方ですね。


一同:ははは(笑)。


─たしかに新しくて、面白いと思われたものはマネされますからね。
ありがとうございました。




(おわり)






『光の音色-THE BACK HORN Film-』





監督・脚本・編集:熊切和嘉
出演:THE BACK HORN ほか
音楽:THE BACK HORN

オフィシャルサイト:http://www.hikarine.com/

©2014 THE BACK HORN Film Partners

2014年11月1日より全国ロードショー中!



□プロフィール

THE BACK HORN
岡峰光舟/菅波栄純/山田将司/松田晋二

1998年結成。
“KYO-MEI”という言葉をテーマに、聞く人の心をふるわせる音楽を届けていくというバンドの意思を掲げている。2001年シングル『サニー』をメジャーリリース。FUJI ROCK FESTIVALやROCK IN JAPAN FESTIVAL等でのメインステージ出演をはじめ、近年のロックフェスティバルでは欠かせないライブバンドとしての地位を確立。そしてスペインや台湾ロックフェスティバルへの参加を皮切りに10数カ国で作品をリリースし海外にも進出。

黒沢清監督映画『アカルイミライ』(2003年)主題歌「未来」をはじめ、紀里谷和明監督映画『CASSHERN』(2004年)挿入歌「レクイエム」、乙一原作『ZOO』(2005年)主題歌「奇跡」、アニメ『機動戦士ガンダム00』(2007年)主題歌「罠」、水島精二監督映画『機動戦士ガンダム00 -A wakening of the trailblazer-』(2010年)主題歌「閉ざされた世界」など、そのオリジナリティ溢れる楽曲の世界観から映像作品やクリエイターとのコラボレーションも多数。

2012年に、激動の一年を経て制作されたアルバム『リヴスコール』を発表。その収録曲「世界中に花束を」は、収益金が震災復興の義援金として寄付されている。結成15周年を迎えた翌年、ライブCD&DVD、シングル『バトルイマ』、初のB面集を立て続けに発表。そして2014年、初の両A面シングル『シンメトリー/コワレモノ』を経て、10枚目となるニューアルバム『暁のファンファーレ』をリリース。2014年秋、熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画『光の音色 –THE BACK HORN Film-』が全国ロードショー!
オフィシャルサイト:http://thebackhorn.com/



・熊切和嘉

1974年、北海道帯広市生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業。
卒業制作『鬼畜大宴会』が第20回ぴあフィルムフェスティバルにて準グランプリを受賞し、大ヒットを記録。第48回ベルリン国際映画祭パノラマ部門他、10カ国以上の国際映画祭に招待される。さらに第28回イタリア・タオルミナ国際映画祭グランプリに輝き、一躍注目を浴びる。PFFスカラシップ作品『空の穴』では、第51回ベルリン国際映画祭ヤングフォーラム部門に、第30回ロッテルダム国際映画祭で国際批評家連盟賞・スペシャルメンションを授与。その後も第60回ベネチア国際映画祭コントロコレンテ部門(コンペティション)で話題をまいた『アンテナ』や、『揮発性の女』、『青春☆金属バット』、『フリージア』など次々と話題作を発表。
2008年、『ノン子36歳(家事手伝い)』は、第38回ロッテルダム国際映画祭スペクトラム部門他、数々の国際映画祭に出品、また「映画芸術」誌の2008年度日本映画ベストテンで1位を獲得、国内外で注目を集める。
2010年12月公開の『海炭市叙景』では、プロの俳優陣とオーディションやスカウトによる撮影地・函館市民の共演が話題を呼んだ。
同作は第23回東京国際映画祭コンペティション、第12回シネマニラ国際映画祭グランプリ、また出演者全員に対するアンサンブル・キャストで最優秀俳優賞を受賞、第13回ドーヴィルアジア映画祭審査員賞、2010年松本CINEMAセレクト・アワード最優秀映画賞、第25回高崎映画祭特別賞と、受賞が相次ぐ作品となった。
2012年9月、映画『莫逆家族 バクギャクファミーリア』、オムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~人妻』が公開。ブラジルの映画祭INDIE 2012で『鬼畜大宴会』から『海炭市叙景』までの作品がレトロスペクティブ上映される。
最新作は、映画『夏の終り』。
http://nicolo.jp/






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