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Interview : March 8, 2017 @ 21:14

オモシロさを探る!──『Capitol Hill by Tei Johjima』”城島 禎”のホンネ(後編)



ブランド『Capitol Hill PRODUCT』のデザイナー”城島 禎”が、10年の時を経て、自身のブランド『Capitol Hill by Tei Johjima』として復活した。


2017年の視点から再構築された『Capitol Hill by Tei Johjima』のブランドコンセプトは、”あたらしくてたのしさのある服”。

たしかに、オモシロさに満ちた作品ばかり。


ひきつづき、デザイナーの”城島 禎”氏に、そのオモシロさのインスピレーションについて、ヒミツをさぐったインタビューの後編。








─シアトルに滞在していたとのコトですが、それはいつごろのお話しですか?


95年くらいです。
社会人10年目というコトもあって靴屋を辞めまして、
そこで自分の人生設計を洋服へと決めたのですが、
でも、辞めてからは半年ほどもんもんとしてました。
悩みすぎていたときに、友人から『リトル・ブッダ』という映画をススメられて、
観たら、それがシアトルが舞台で、
当時、イメージ的にアメリカは嫌いだったのですが、
シアトルならカッコイイかなと(笑)。


─それでシアトルへ?


ええ。
たまたまタイミングよく行けることになったんですね、コレが(笑)。


─シアトルではどんな経験をされたのでしょうか?


現地の知り合いのアメリカ人がとても親身になってくれたヒトで、
「お前は何か悩んでそうだから、とにかく悩みを口に出して言え!」と。
そのときに「洋服をやりたいけど、どうしていいかわからない」と、
はじめて人前で口に出して答えたのですが、
じつは滞在中の1年間にわたっていろんなヒトに「口に出せ!」って、
おなじコトを言われたんです(笑)。


─それはシアトルで解決したのですか?


いえ、日本に帰ってきてからなんです。
戻ってからも「洋服をやりたい」と、
いろんなヒトに言っていたら、
その中で「ユナイテッドアローズ」の当時社長だった、
“重松(理)”さんにご協力いただけることになって。。。
それでブランドがスタートができたんです。
ホント、感謝しかないですね。


─そうなんですね。


それでいろいろなルートを教えてもらいつつはじめたのですが、
最後の2008年までは、ずっとお付き合いさせていただいきました。


─なんだか、、、スゴいお話ですねー。


恵まれていたんですよ。





─その後、2008年でブランドを休止されましたが、それはナゼですか?


残念なことに、売れなくなったんですよね。
それと、企業の仕事が多くなったことで、
服づくりにおいてはじめて知るコトがたくさんあって。。。
それまでの自分がやってきた洋服のつくり方が、
正しいと言いきれないとおもえるようになったり。。
それで一度やめようと。


─なるほど。それで今回、約10年の時を経て復活というワケですが。


でも、じつはたまにその時々のテーマで、
自分が着るためだけに洋服をつくってはいたんですがね。


─復活させようとおもった理由はナンですか?


『KIDS LOVE GAITE』の”山本真太郎”くんから、
展示会のご案内をいただいていたのでうかがったんですよ。


─”山本”くんとはむかしからのつながりですか?


いえ。じつは、それまでは知り合いづてでSNSではつながっていたのですが、
とくに交流はなく。。。
ただ、むかし、ロンドンと東京間の飛行機のなかで姿を拝見してはいました(笑)。
そんなカレから、ご案内をいただいたし、
打ち合わせした場所もちかくだったので行ってみようと。
もともと人見知りだし、
知らないところにドアを開けて行くなんてことはほとんどしないのですが、
そのときはしたんですよね。


─それで『KIDS LOVE GAITE』の洋服のラインをやるコトになったんですね。


そうなんです。その流れもあって、
今回の『Capitol Hill by Tei Johjima』もやっていただけることになりました。


─キッカケは真太郎くんだったんですね。


そうです!
いままでもそうだったのですが、
重要な所で、重要な人物が現れるんですよね(笑)。


─たしかに、「UA」の重松さんのお話しといい、
いままでのお話しを聴いていると、
大体タイミングよくダレかに会ってはじまるみたいな、、、そんな感じですよね(笑)。


もうね、「どうしていいかわからない!」ってところまでいったときに、
ダレかが手を差しのべてくれる(笑)。


─とても恵まれてますよね。


恵まれているとおもいます。
これだけ好きなコトだけしかやっていなくて、
しかもへそ曲がりで、素直じゃないですからね(笑)。


─影響を受けたブランドだったり、モノだったり、、、
そういったカルチャーはどんなものがありますか?


とくにコレ!というものはないのですが。。。
ただ、20代のころから、当時としてはめずらしく海外出張のおおい仕事だったので、
ヨーロッパでもいいものは見たし、
アメリカは好きではなかったけれど行ってみたら好きになったり。
いろいろなものが混ざったなかから、自分の好きなものを抽出している感じですかね。


─すべての経験のなかから、自分のフィルターを通して、
影響を受けたというコトでしょうか?


そうですね。
ちなみに、いちばん最初に触れたファッション、
というか紳士服に関していえば、「アラン・フラッサーの正統服装論」なんです。
“ねばならない”、”トラッドたるもの”を徹底的に刷り込まれて、
正しく着ることが先という発想でした。
だから、いわゆるデザイナーズみたいなブランドを通っていないんです。


─それでいてファッションのデザインをやるって、
なんだか不思議ですよね(笑)。


だから、切ったり、ねじったり、裂いたりというコトにはナニも感じないんです。
逆に、”しなくていいコト”にしかおもえない。
ボクは、いままでなかったカタチをゼロからつくって、
それが”あたかもむかしからあったような佇まいを出す”というコトに、
すごく喜びを感じるんですよ。


─なるほど。それが今回の雰囲気にもつながっているような気がします。


ベースはずっと一緒です。
だから、人によってはおなじテイストだから。
雰囲気があまり変わらない感じに思われるのかもしれませんね。
じつはおなじものをつくっているつもりもないのですが、
毎回、”らしい”と言われることがおおいんですよ。ブランド名を見なくても、
ボクの服だって分かるみたいです。好きなものが明確だかもしれません。


─たしかに、城島さんの雰囲気というものがあるんでしょうね。


そういうコトがうれしいです。





─さて、現状のファッションシーンに対してはどのように感じていますか?


とくに日本は、洋服のレベルが高いとおもいます。
大味じゃなくて、緻密に上手に匂いを出すし、オリジナルなものもある。
言い方はよくないかもしれないけれど、
普通の子たちが頑張って買える範囲のいいものがたくさんありますよね。
他の国だと、何軒か見べきる所を見たら、あとは現実と離れたものしかないんですよ。
日本にはいろいろある。
ただ、一時期は”その他”という価値観が否定されているような気がして、
イヤでしたけどね。でも、いままた”その他”がたくさん出てきているような気がします。


─ソレ、わかります!


「勝ちか?負けか?」みたいな雰囲気。音楽シーンもそうだったじゃないですか?
いまはまたいろいろな価値観が出てきていますよね。


─個人の価値観が重視されていた、90年代ブームのお陰かなと思います。


なるほどね。


─では、最後に、今後どんな活動をしていきたいですか?


もちろん、コレはつづけられるまでつづけたいですよね。
自分の好きなものを好きでいるヒトがいるうちは、
つくれたらいいなとおもいます。


─ゆっくりつづけていきたい、という感じでしょうか?


“つづけられる”という言葉がリアルになってきた年齢なので、
つづけられるうちはつづけたいですね。いろいろ考えないで、
つくりたいものをつくるのがボクの余生の目標かな。
もうひとつは、まだ一度も海外で売ることができていないから、
それはやってみたいですね。あ!あとはレディースもやってみたい。
もともとのブランドは圧倒的にレディースでしたから。
と、言い出すと、いろいろ欲が出てきますよね(笑)。


─わかります(笑)!
ありがとうございました!


ありがとうございます!




(おわり)







『Capitol Hill by Tei Johjima』





デ ザイナー”城島 禎”により1997年の秋に『架空のデジタルクリエーターの作業着』をテーマにスタートした『Capitol Hill PRODUCT』を現在の視点から再構築した『Capitol Hill by Tei Johjima』。東京を代表するブランドを手掛けたデザイナーの考える現代のワードローブ。
ブランドの目指すところはスタート当初より、新しい楽しさのある服であると同時に奇抜さだけが目に入ってくることのない完成された物である。『楽しい意味のある完成された佇まいの服』を理想としながら20年を経て、より自由な発想で取り組むメンズウェア。
2017 年秋冬コレクションのアイテムはどれも一見、既視感のあるアイテム。しかし、それぞれのアイテムにはあらゆる視点での実験的要素が詰まっている。素材、ア イテム、シルエットに対する先入観を取り払うことで本来あるべき姿とはどこか違うアイテムへの昇華したコレクションは、未来の洋服のあるべき姿を示してい るのかもしれない。


お問い合わせ:
スタイル
TEL. 03-6416-9061
http://dupestyle.com/



□プロフィール

・城島 禎(ジョウジマ テイ)

1965年生まれ。
1988年から1995年まで靴のデザインを経験し、1997年ウェアで自身のブランドを発表。
2000年春夏より2006年秋冬まで東京コレクション参加。
2008年でメンズ・レディース共に販売は休止している。


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