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tokyo feature : September 10, 2018 @ 21:37

みんな大好き天才”チリー・ゴンザレス”!──『Solo Piano』シリーズを聴くの巻



あるときはアンダーグラウンド・ヒップホップのサウンドクリエイター、、、あるときは大物シンガーのプロデューサー、、、またあるときはソロピアニスト、、、はたしてその正体は。。。

それが”ダフト・パンク”や”ビョーク”、”ジェーン・バーキン”らが心酔する天才音楽家であり、多彩な顔を持つ男、奇才”チリー・ゴンザレス”だ。


カナダ出身で、現在はヨー ロッパはフランスを拠点とするカレ。

エレクトロ・ヒップホッパーとしてはもちろん、ピアニスト、プロデューサー、ソングライター、はたまた映画プロデューサーまで、さまざまなな肩書きを持ち、各所でその才能を発揮。

第50回グラミー賞(2007年)にノミネートされた”ファイスト”の『レット・イット・ダイ』や”iPod nano”のCMに使用された「1,2,3,4」をプロデュースし、はたまた27時間連続ライブ演奏記録で「ギネス記録」をぬりかえるなど、いくつものプロデュースやコラボレーション、オドロキ(!?)のパフォーマンスを実現してきた。


そんなカレが、2004年にピアノ一本の演奏に特化したピアノソロ作品『Solo Piano』を発表し、ファンをアッ!と圧倒する。

触れるようなタッチで演奏されるピアノの旋律、そしてシンプルすぎる音色に魅了された、、、というより、ヤラれてしまったファンはおおいハズ。


その後、2012年に『Solo Piano II』をリリースし、現代音楽家としての座をゆるぎないものとした。


そして、『Solo Piano III』が2018年9月7日にリリースされ、ついにシリーズ完結!

じつに、『Solo Piano』から14年もの月日をついやした、まさにカレのライフワーク的な作品と言っても過言ではないだろう。


今回は、”チリー・ゴンザレス”ファンのひとりであるワタクシが、せっかく完結したコトもあり、『Solo Piano』、『Solo Piano II』、そして『Solo Piano III』のシリーズすべてを聴きくらべしてみるコトにした。






まずは、『Solo Piano』。

2004年にリリースされ、
あまり見向きされなくなりはじめていたクラシック音楽にスポットを当てたというコトもあり、
あらたなクラシックムーブメントを起こしたポスト・モダン・クラシック。
まさに超のつくほど話題となった作品だ。

とにかく、1曲目の「Gogol」のイントロにヤラれたヒトはおおいハズ。

そこからの2曲目、「Manifesto」へ。
うつくしくもセツナすぎるメロディが、ココロにキューンと響く。

アルバム全体的にある、どことなく懐かしい感じがオジさんにはたまらない。

ちなみに楽曲のほとんどは,
2003年9月におこなわれていた”ジェーン・バーキン”のアルバム『ランデ・ヴー』。
その録音時の休憩時間に、
スタジオの片隅にあったアップライトピアノでつくられたとか。。。

テマヒマかけずに、、、いやもちろんイロイロと苦労はあったのだろうが、
そんな感じでこの名盤ともいえるアルバムができていったなんてオドロキだ。







8年後の2012年にリリースされたのがコチラ、『Solo Piano II』。

クラシック感からだいーぶポップになり、
モダニズムへの変化をかなり感じる作品である。

個人的におススメは、「Rideaux Lunaires」。

ポップさを持ちながらも、
アルバムのなかではセツナさを感じる楽曲のひとつだ。

さらに、ココロにのこるメロディが印象的な「Othello」もおススメ。

全体的には、セツナさというよりは、
陽気さの方が若干おおめ?かな??

ヤマあり、タニあり、
そんな陽気さとセツナさの起伏がなんともカラダの内部を振るわすいちまい。







そして、先日ついにリリースされた『Solo Piano III』。

前作から6年後、『Solo Piano』からはじつに14年後。

今作では「もう誰かのために音楽を作る必要はない」という点から、
“まちがった”音もあえてそのままにしているらしく、
聴く側にとってはあえてのライブ感というか、
“生”感というか、
カレの演奏を生で真空パックしたような作品にしあがっている。

おススメは「Chico」。
このアルバムのなかでは唯一『Solo Piano』の雰囲気、
すこしダークでかなしい感じの雰囲気をのこしている楽曲。
破天荒なコメディアンとして知られる”エリック・アンドレ”に捧げたものだとか。

さらに「Blizzard In B Flat Minor」。
シリーズのなかではかなりアップテンポで、
感情のハゲしさを感じる作品。

『Solo Piano』ほどのダークさはないが、
『Solo Piano II』のようなポップさもない。

よくもわるくも”からの〜”的な転換期の作品なんだろうなあ。

とはいえ、カレのあたらしい世界を感じる作品になっているとおもう。







楽曲はだいたい2分程度、長くとも4分弱。

たったそれだけ、ほんのわずかな時間の楽曲に長い物語を感じる『Solo Piano』シリーズ。


3枚それぞれを聴くとそれぞれのアルバムの特徴、、、
つまり、そのときのカレの感情や気持ち、気分、演奏への考え方などがよくわかる。


もちろん、いちまいいちまいを別々に聴くのもいいが、
流れで3枚連続で聴くもよし、
3枚をまとめてランダムに聴くとまたちがう世界が見えてくるのがスゴい。


また、カレを例える際、
“エリック・サティ”を出すメディアがおおいが、
個人的には、似て非なるもの。

つまり、オリジナリティそのものなのだ。


自らを”アンダーグラウンドの大統領”とも呼ぶカレだけに、
アンダーグランドカルチャーの化身、
いや、カレ自身がアンダーグランドそのものなんだろうなぁ。

まさに、時代の寵児。



上質な濃いめのコーヒーを、ゆったりゆっくり時間をかけて飲んでいるような感覚に陥る『Solo Piano』シリーズ。


シンプルでうつくしい、まったくちがう3つの世界。

ぜひともその耳で聴いてみてほしい。







・『Solo Piano』Deluxe Edition
Chilly Gonzales





レーベル:Gentle Threat
価格:¥1,381(税抜)※国内盤(DVD付き)


トラックリスト:
01. Gogol
02. Manifesto
03. Overnight
04.Bermuda Triangle
05.DOT
06.Armellodie
07.Carnivalse
08.Meischeid
09.Paristocrats
10.Gentle Threat
11.The Tourist
12.Salon Salloon
13.Oregano
14.Basmati
15.C.M. Blues
16.One Note At A Time


>>>購入はコチラ




・『Solo Piano II』
Chilly Gonzales





レーベル:Gentle Threat
価格:¥2,095(税抜)


トラックリスト:
01. White Keys
02. Kenaston
03. Minor Fantasy
04. Escher
05. Rideaux Lunaires
06. Nero’s Nocturne
07. Venitian Blinds
08. Evolving Doors
09. Epigram In E
10. Othello
11. Train Of Thought
12. Wintermezzo
13. La Bulle
14. Papa Gavotte
15. White Litany


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・『Solo Piano III 』
Chilly Gonzales





レーベル:Beat Records/Gentle Threat LTD
価格:¥2,200(税抜)


トラックリスト:
01. Treppen ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner)へ捧ぐ
02. Pretenderness ファニー・メンデルスゾーン(Fanny Mendelssohn)へ捧ぐ
03. Prelude In C Sharp Major ウェンディ・カルロス(Wendy Carlos)へ捧ぐ
04. Famous Hungarians ルビク・エルネー(Ernő Rubik)へ捧ぐ
05. Chico エリック・アンドレ(Eric Andre)へ捧ぐ
06. Nimbus アメリア・イアハート(Amelia Earhart)へ捧ぐ
07. Be Natural ビーチ・ハウス(Beach House)へ捧ぐ
08. Ellis Eye ミーゴス(Migos)へ捧ぐ
09. Present Tense トーマ・バンガルテル(Thomas Bangalter)へ捧ぐ
10. Cactus Impromptu エマホイ・ツェゲ・マリアム・ゴブルー(Emahoy Tsegué-Maryam Guèbrou)へ捧ぐ
11. Lost Ostinato ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(Hildegard Von Bingen)へ捧ぐ
12. Blizzard In B Flat Minor コンチータ・シントロン(Conchita Cintrón)へ捧ぐ
13. October 3rd ジェイソン・ベック(Jason Beck)へ捧ぐ
14. Kopfkino ナディア・コマネチ(Nadia Comăneci)へ捧ぐ
15. Whist ベルナール・モワテシエ(Bernard Moitessier)へ捧ぐ
16. Lo Hi ※Bonus Track for Japan


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©2018 Alexandre Isard(写真すべて)


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