TYO magazineトーキョーマガジン

Archive

 

rss 2.0

Interview : July 15, 2010 @ 03:18

“Buffalo Daughter” シュガー吉永 インタビュー “One”


つねに新しい音楽を発信し、多くのミュージックラバーを魅了するバンド”Buffalo Daughter”が、4年ぶりとなるニューアルバム『The Weapons Of Math Destruction』をリリース。


今作では、なんと!”物理”がテーマだ。
タイトルも『The Weapons Of Math Destruction』で、”数学最終兵器”と、なんともスゴいモノが出来上がった。


音的には、得意とするノーウエイブを中心にエレクトロ ロック、そしてヒップホップ!?的な要素が
盛り込まれ、歌詞もちょっとしたメッセージ性の強いものとなっており、現在の崩壊寸前の世界情勢を数字で破壊して立て直す、”スクラップ アンド ビルド”、まさに”パンク”を感じさせるすばらしい一枚だ。


さらに自らのレーベル”Buffalo Ranch”を立ち上げるなど、かなりアグレッシブかつポジティブに活動をつづける彼ら。

今回は3回に渡って、メンバーの”シュガー吉永”さんに、物理というコンセプトについてなど、アルバムのお話を中心にいろいろと訊いてみた。




─新作アルバム『The Weapons Of Math Destruction』は”物理”をテーマにということですが、こちらはどのような感じでメンバーと話されて、どのようにすすんだのでしょうか?

タイトル自体は、途中から思い付いたものだったんです。
だから、最初から”物理”という感じではなく、曲づくりをはじめて。。。まずは、アルバムをつくろうということになり、曲を書きはじめて、ある程度ベーシックのトラックはとりあえず録ってしまっていたんですよ。

─そうなんですね。

そのあと、ダビングとかをしていく中で、テーマを絞り込んでいったんです。メンバー3人とも性格もテイストもぜんぜん違うので、共通するテーマがあった方がモノごとが進みやすいんですよね。
そのときに、どんなテーマがいいのかと考えていたんですけれど、このタイトルを思い付いてみんなで盛り上がったんです、「あ!コレだ!!」みたいな感じで。

─この”物理”というのは、どこからインスピレーションを得てきたのでしょうか?

“物理”は、最新の物理学で『第五次元』みたいな考え方があるというのを聞いたことがあって、その考え方自体がスゴく面白いと思ったんです。
それもあって、この”物理”というテーマが浮かんだんですよね。

─曲のタイトルですが、「Gravity」とかはいわゆる”重力”という意味ですけれど、やはりそんな感じのものがおおいですよね。

それはテーマを「物理だ!」って決めたときに、曲のタイトルがついていなかったものは、すべてそういう感じのタイトルを付けていったんです。

─そういう感じなんですね、なるほど。
ちなみに、資料には(山本)ムーグさんが「ヒップホップのアルバムをつくりたい!」ということを
おっしゃったと書いてありましたが。。。

それは、毎回、突っ込まれるところですね(笑)。
音的にぜんぜんヒップホップじゃないから。
たぶん、彼も思い付きでヒップホップと言ったんじゃないかなと(笑)。
私たちが、ヒップホップをやったことがなかったからやってみよう! となっただけだと思うんだけれど。。。



Photo:YANO BETTY


─そうだったんですね(笑)。

前回のアルバムで、山本ムーグがはじめて”歌”というものに挑戦したんです。
で、歌はやったから今度はラップをやってみたいと思ったらしく──。結局、山本はこのアルバムではラップをやっていなんだけれどね(笑)。ただ、やりたかったみたいなので、じゃあそういう曲もつくってみようといってつくった曲もあるんです。
でも、じつは私たちは、80年代、90年代のヒップホップは好きなんですよ。一時期はスゴくハマっていたりしていたんですけれど、その後の90年代中盤以降はぜんぜん聴かなくなっちゃったんです。
80年代、90年代は、まだスタイルが定型化されていない、自由な感じで、ヒップホップが広がりを見せていたし、そういう時代のヒップホップが好きだったので、久しぶりにそれを思い出したんですよ。いまは、わりとスタイルが出来ていて、細かくなってて、そうなってくるとあまり興味がなんだけれどね。
でも、出てきた当初の、ただ新しいということから進化していった、スタイル的にはそのあたりが自分たちに染み付いているんです。それと定型化されないカタチ──”このカタチがヒップホップ”というのがないヒップホップをやってみようという感じだったんですよ。
それはロックもそうですけれど、カタチから入るとすごく面白くないので、そこは間口は広げておいて、ロックだろうが、ヒップホップだろうが、ディスコだろうがなんでもいいんです。
あまりカタチにとらわれず、自分たちの解釈の中でのヒップホップをやってみようという感じでしたね。

─音的にはシットリというよりは、渇いた感じだったような気がするのですが、そういうつくりをしよう!みたいなコトはメンバー内で話されているんですか?

それはたぶんね、buffalo daughterというのはそういうバンドなんです。
ネットリした音はたぶん過去にもなくて、いつもどこかドライなんですよね。
それは特徴かなと最近は思いはじめているんですけれど。
ネットリしようと思っても、ネットリならないっていう(笑)。

─それは、ネットリさせようと思ってつくった曲もあったんですか?

いや、それはないけどね(笑)。
でも、なんかそうなるんですよね、なんか渇いている。
それは意図したわけではなく、自分たちのスタイルというか、パーソナリティだと思います。

─最近は、一曲ダウンロードの時代ですが、そんな中でアルバムをつくる感覚で曲を作りはじめたとおっしゃってましたが、やはりアルバムをつくる感覚というのは抜けないのでしょうか?

ダウンロードとか、そこら辺はあまり深く考えていないですね。
1曲単位だったら、リミックスをやったりとか、ヒトに曲を提供したりとか、そういうことはいっぱいやってきていて、1曲単位ではつねに活動をしてきたので、今回はまとまった『アルバム』というものを作りたくなったという感じなんです。
あえて、一曲つくってそれをリリースしても、自分たちにとっては普段やっていることと変わりないですから。それは新鮮味がなくて、それよりも『アルバム』を一枚つくるという方が時期的にめぐってきたという感じなんです。

─「アルバムを作る感覚というものを変えて行った方がいいのか」という迷っている方ももちろんいらっしゃるんですよね。

いや、それはいいんですよ、変えなくても。一曲買いするヒトは、一曲しか買わないし。
でも、一曲をつくるのは簡単なんですよ。いっぱいつくったものをひとつのアルバムとして聴かせる方がぜんぜん難しいと思う。
だから、アルバムをつくる作業の方が断然大変なんですよね。1曲つくる方が、普段もやっているし、すぐにできちゃいますよ。それで世に発表していくという方法ももちろんあるんだけれど、ウチらの普段の音楽生活で、一曲提供とか、一曲リミックスとか日々やっているので、それをbuffalo daughterで”いま”やるというのは、新鮮味としてはなかったんですよね。アルバムをつくる方が4年ぶりだし、自分たちにとってはチャレンジだったんです。
一曲買いの方は、アルバムの中から買ってもらってもぜんぜんいいし、受け取り側は受け取り側で自由にやってもらえれば、それでいいんですよ。うちらにとってはこのアルバムをつくる作業が大変だったけれど、やった甲斐はあったし、バンドとしてもひとつステップアップにもなって、自分たちも成長したしね。
でも、それは私たちの勝手なので、聞き手は単発で買っても、アルバムで買ってもどちらでもいいです。
まだいまは両方のフォーマットがあるワケだし、「アルバムを出すのが法律で禁止されました」っていうのがないかぎりは、アルバムをつくっていいんじゃないですかね(笑)。


(シュガー吉永 インタビュー “Two”へつづく)

 




□Buffalo Daughter ライブ・スケジュール

・2010年7月29日 新代田FEVER(東京)  
・2010年8月1日 FUJI ROCK FESTIVAL ‘10(新潟県・苗場スキー場)
・2010年8月3日 渋谷CLUB QUATTRO(東京)
・2010年8月13日 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010(北海道・石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ)



Buffalo Daughter ~Japan Tour 2010~

・2010年11月15日 LIQUIDROOM(東京)
・2010年11月16日 心斎橋 クラブクアトロ(大阪)
・2010年11月17日 名古屋 クラブクアトロ(名古屋)

インフォメーション
SMASH
TEL. 03-3444-6751
http://www.smash-jpn.com/index.php



Buffalo Daughter
「The Weapons Of Math Destruction」



Released by Buffalo Ranch & AWDR/LR2
DDCB-12028/全13曲収録
発売中 /2,500YEN(税込)

>>>レビューはコチラ


□Buffalo Daughter
・シュガー吉永 (g, vo, tb-303, tr-606)
・大野由美子 (b, vo, electronics)
・山本ムーグ (turntable, vo)

93年結成。
96年にビースティ・ボーイズが主催するGrand Royalと契約。同年1stアルバム『Captain Vapour Athletes』(Grand Royal/東芝EMI)を発表。アメリカ主要都市のツアーも行い、活動の場は東京から世界へ。
98年に発表した2ndアルバム『New Rock』(Grand Royal/東芝EMI)は、大きな反響を得て瞬く間に時代のマスターピースに。その後もアメリカ中を車で何周も回る長いツアー、そしてヨーロッパ各都市でのツアーも行い、ライブバンドとして大きな評価を得る。
01年『I』(Emperor Norton Records/東芝EMI)を発売、03年『Pshychic』、06年『Euphorica』は共にV2 Recordsよりワールドワイド・ディールで発売される。
今年の夏、自らのレーベル”Buffalo Ranch”を設立。4年振りとなるニューアルバム『The Weapons Of Math Destruction』がリリースされる。

http://www.buffalodaughter.com/index_i.html
http://www.boundee.jp/features/details/72.html


Comments are closed.

Trackback URL