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Interview : August 1, 2019 @ 21:15

皆川と田中と磯崎の情熱地獄トーク『メランコリックな情熱』(前編)



「映画をつくりたい!」という”情熱”からはじまった、映画『メランコリック』。


たった300万円という制作費で製作された本作は、フタを開けてみれば、第31回『東京国際映画祭』の「日本映画スプラッシュ」部門で監督賞を受賞し、試写会では毎回満員御礼につき追加試写まで開催するコトに。

そして、2019年8月3日の公開前にもかかわらず、ついには2019年の下半期の最注目作品になるまでにいたった。


「情熱なくして達成された偉業はない」とは、思想家で哲学者の”ラルフ・ワルド・エマーソン”のコトバだったか。

「情熱は才能に勝る。情熱は感動を呼び、人を動かし、持てる力を2倍、3倍にするからである」とは”松下幸之助”のコトバ、、、だったかな。


まあ、偉人がたのありがたーいおコトバはヨコにおいておくとして、この作品をひとことで表すならば、やはり”情熱”だ。

まさに映画製作への”情熱”が、ヒトのココロを動かした本作をつくりあげていったといっても過言ではないだろう。


そんなワケで今回は、本作を製作した映画製作ユニット「One Goose」のメンバーである、主演でプロデューサーの”皆川暢二”氏(写真左)、監督・脚本の”田中征爾”氏(写真中央)、そして俳優・タクティカルアーツ(アクション)担当の”磯崎義和”氏(写真右)の3人に、本作の製作へいたったおハナシを中心に、撮影時の苦労など、いろいろとボンヤリとうかがってみた。






─この映画『メランコリック』をつくるコトになった、そもそものキッカケはナンだったのでしょうか?


皆川暢二(以下、皆川):
キッカケは、2年前の話です。
ボク自身、俳優をやっているのですがまだまだという感じでして。。。
一応、小劇場の舞台などでの活動はしているのですが、
そういった舞台だと稽古や舞台本番が終わると、
だいたいスタッフやキャストの人たちと飲みに行ったりするんですよ。
でも、そういうトコロの会話って大体はグチで、、、
正直言うと、あまり生産性のない会話が多いワケです(笑)。
もちろんボク自身もそういう感じでした。
でも、ふとした瞬間に「コレ、ちがうな!」と思ったんです。
「仕事がない!」と嘆くのなら、「自分でつくってしまえ!」というコトで、
「映画をつくりたい!つくろう!!」という発想で動き出して、
それで田中くんと磯崎くんに声を掛けたんです。


─みなさんは、つながりをおしえてください。


皆川:
田中くんとは共通の劇作家がいるのですが、
そのヒトの芝居の演出助手としてボクらふたりが呼ばれたのが、
田中くんとの最初の出会いですね。

田中征爾(以下、田中):
その劇作家さんがふたつの学校でおしえていて、
ひとつの学校でボクが受講していたんです。
もうひとつは皆川くんがいた演技の養成所みたいな。。。

皆川:
ボクは「ワタナベエンターテイメントカレッジ」なんですけれどね。


─そうなんですね。


田中:

だから、それぞれ卒業してから出会ったんです。


─なるほど。
田中監督は最初に皆川さんから相談を受けたときは、どういうお話だったのでしょう?
「こういうモノをつくりたい!」などの明確なビジョンが最初にあったのでしょうかね??


田中:
劇場公開を目指した上での長編映画をつくりたいから、
「監督と脚本をやってくれない?」という感じでしたね。
でも、オモシロそうでしたし、
ボク自身も売れていない脚本家でしたから、
自分のチカラを発揮させてもらえる場所を与えてくれるのはありがたかったです。
だから、ふたつ返事で「やろう!」という感じになりました。

皆川:
アイディアがなかったワケではなく、
アクションの”バディーもの”をやりたかったんですよ。
過去に田中くんが監督で、磯崎くんが役者をやった、
短編アクション映画を観ていたので、
そのイメージがあってお願いしたというのはあります。


─最初にあつまって内容の骨組みを決めていかれたとおもうのですが、あの設定はどういうところから生まれたのでしょうか?


田中:
アクション映画を低予算映画で撮るのは不可能ではないのですが、
オリジナリティを出すという意味ではむずかしいかなと。
だから、最初に「アクション要素は入れてもアクション映画にするのはやめよう」という話はしました。


─なるほど。


田中:
ただ、よくアクション映画で殺害現場というか死体の掃除屋みたいなキャラクターが、
出てくるじゃないですか?
そのヒトたちって「ホントは大変なんだよ!」というのを描くとオモシロいんじゃないかと。
あと当時、ボクがアメリカのドラマ『ブレイキング・バッド』にハマってまして、
それもあってそれを素人がやったら、
という部分をミックスしてこの設定が生まれました。
そのあと、パイロット版となる短編をつくったのですが、
その時点ではまだ銭湯の設定はなかったんですよ。
最初は、いろいろな場所で殺された死体をバイトのふたりが掃除するという話にしていました。


─銭湯の設定はいつごろ決まったのでしょう?


田中:
磯崎くんの方から「場所を銭湯に限定するのはどうだろう?」という提案があったんです。
そこで、素人の青年が銭湯で殺人の掃除のバイトをするというベースが生まれた、
という流れです。


─磯崎さんは、アクション指導などを担当されていますが、もともと武術をやられていたのですか?


磯崎義和(以下、磯崎):
子どものころから格闘技をやっていました。
ボクもアクション映画は好きでしたし、
いまだと「YOU TUBE」などのインターネットで、
さまざまな格闘技系の動画もアガっていますので、
そういうのを見て研究したりしています。
銃やナイフの使い方などの軍事的な近接戦術は、
数年前に別の映画でアクション班で参加させてもらったときに教わりました。
ただ、ガチなものを直接映画ではやれないので、
見せ方は独自に研究して、
今回の映画ではじめて導入してみたという感じです。


─映画を拝見したときは、最初は「日本?なのかな??」みたいな、ちょっと不思議な感覚でした。
それと主人公の”和彦”くんのオモシロ設定とが、全体的な物語の流れとしっくりきたのかな?と思いましたが、、、いかがでしょう?


皆川:
社交的に問題があったりとか(笑)。


─そうです(笑)!
過去にそういう人格の方が実際に皆川さんのまわりにいたのですかね?


皆川:
いましたね。
学生時代って、いろいろなパターンのヒトと会うじゃないですか?
片目をピクピクさせる仕草とかは、
大学のときの先生でやたら目をシュパシュパするヒトがいたんですよ。
そういう部分を思い出したり。
“和彦”の人格設定は、過去の人間関係で記憶にあるヒトを参考にしたりしてますね。


─内容的に、あまりシリアス感がナイのに、ナゼかシリアスに感じてしまうんですよね。
リアル感がナイのにリアルに感じてしまう、この映画にはそういったオモシロさがあると感じました。
どうしたら、あの雰囲気を出せるのでしょうかね?


田中:
かなりむずかしい質問ですね(笑)。
それは、、、会話じゃないでしょうか?
設定自体は荒唐無稽ですし、
リアリティ的にも「どうなの?」という”穴”がある物語なんですよ。
今作では、演者のセリフはほぼ脚本のままやってもらっていて、
できるだけ普段に交わしているような会話の空気感に近づけて書いたんです。
もちろん、ボクの好みの問題ですが。


─例えば、どのような感じなのでしょうか?


田中:
「今日、僕はあそこに行こうとおもうんだよね!」というセリフであれば、
実際に話すときは文法上の順番どおりではなく、
「今日、行こうとおもうんだよね、あそこに!」という風に、
気持ちの流れとかで、順序とか、間とかが変わりますよね。
そういう部分の再現がしたくて、
台本の時点からそう書いたんです。
だから、かなり荒唐無稽な設定であっても、
キャラクターの存在感とか空気感で、
物語上でのリアリティをある程度つくれたのかなと考えますね。






─ただ、実際にアリそうな感じもしますよね、銭湯じゃないですがダレかが消される場所って。
そういう、恐さを感じさせながらも会話はかなりトンチンカンだったり(笑)。
そのギャップがそう感じさせたというのも考えられますね。



田中:
キャラクター自体は、普通のヒトたちを描いた映画んだとおもうんですね。
やっている仕事がアレなだけで、
お仕事ムービーに見えてくるという感想もあるくらいですから。
単純に、若者があたらしい職場で
頑張る姿の内容に見えなくもない(笑)。
そういう部分もリアリティを感じさせた要因かもしれないです。


─脚本や設定などの最初の第一稿みたいモノが出来たときは、みなさんはどう感じましたか?


皆川:
「これで行こう!」でしたね。
それに関しては、
特にどうこうという感じにはなりませんでした。

田中:
皆川くんは台本を何度も読んで、
「これ、面白いよ!」って感想を言ってくれましたね。
もしかしたら、ボクを勇気づけるタメだったのかもしれませんが(笑)。

皆川:
いやいや(笑)!

田中:
ボクは、そういう部分に自信のないタイプですので(笑)。


─北野たけしでいうところの高田文夫的な感じですね(笑)。


皆川:
ははは(笑)。

田中:
編集作業が終わったときも「観なおしたけれど、やっぱりオモシロいよ!」って。
ボク的には「そうかな?」という感じだったんですけれどね(笑)。

皆川:
最初に完成したときは3人であつまって観たんです。
でも、ボクもこれほどメインで映画に出たことがなくて(笑)。。。
だから、「自分がいる!」みたいな感じで、
最初は内容がまったく入ってきませんでした。
たぶん、磯崎くんも一緒だとおもうのですが、
最初は、その違和感があるから気持ちが追いついてないんです。
でも、2回目に観たときは、
冷静になって俯瞰して観れたので、
そのときに「この映画、オモシロい!」って、あらためて実感できたんですよ。

田中:
ボクは一切そういう部分がないです。
編集作業中に「なんでもっとこう撮らなかったんだろ!」とか、
「このカットを撮ればよかった!」とか。
作品をどんどん減点してしまう。
だから、出来上がったときには、
作品に対するボク自身の評価が3点だったり(笑)。


─100点満点中(笑)?


田中:
「ダメだ!コレ!!」って(笑)。

皆川:
基本的にテンション低いよね(笑)!

田中:
「またツマラナイモノをつくっちゃった、、、」みたいな感じですよ。
だから、『東京国際映画祭』から連絡がきたときは、ホントにビックリしました。
いちばん自信になったのは、映画祭で上映されたときに、
お客さんからホメていただいたときです。
とてもうれしかったですよ。
「一般のお客さんにオモシロいとおもってもらえた!」って。
ソレで認識が変わりましたね。
別に皆川くんのコトを信用していなかったワケではないのですが(笑)。

皆川:
わかるよ(笑)!

田中:
やはり身内ですからね!


─磯崎さんは、最初に観たときはどんな感想でした?


磯崎:
ボクもむかしから自分が出るシーンを観ると、
「いちばん芝居がヘタなんじゃないか?」って思ってしまうタイプなんです。
自分の芝居を観るのが、あまり好きではなく。
でも、『東京国際映画祭』で上映されたときは、
落ちついて観られたので、作品自体はオモシロいとおもいました。
でも、いまだに自分が出るシーンになると冷や汗というか、
変な汗をかいてしまいますよね(笑)。


─ナンで俳優になったのよ(笑)!?


磯崎:
なんででしょうね(笑)。

田中:
でも、完成披露試写会のときに、
キャストさんたちが「自分のシーン以外は良かった!」って、
全員がおなじコトを言っていましたから(笑)。
俳優さんは、そういうモノなんだとおもいます。


─ナンなんですかね〜(笑)。


皆川:
自分自身を観るって、声も自分でおもっている声とちがいますしね。

磯崎:
ちがうよね。

皆川:
実際に自分がおもっていたコトとちがうことが多々ありますから。
そのちがいの部分が気になってしまうんです。

田中:
じつは、今作でボクも冒頭にIT社長役で出演しているのですが、
やっぱりナットクがいかなかったですよ(笑)。


─監督自身が「ナットクいかない!」って(笑)。


磯崎:
アレだけ演技指導したのに(笑)。

皆川:
けっこうテイク重ねたのに!あそこ(笑)。

田中:
いや、俳優としてのボクはナットクいってないです(笑)。


─このヒトたちはナンなんだ(笑)!





(後編へつづく)






2019年8月3日よりアップリンク渋谷&吉祥寺ほか、全国順次ロードショー!

『メランコリック』






監督・脚本・編集:田中征爾

出演:皆川暢二/磯崎義知/吉田芽吹/羽田真/矢田政伸/浜谷康幸/ほか

製作:OneGoose
配給:アップリンク/神宮前プロデュース/One Goose


『メランコリック』オフィシャルサイト:https://www.uplink.co.jp/melancholic/


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