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Interview : August 2, 2019 @ 18:55

皆川と田中と磯崎の情熱地獄トーク『メランコリックな情熱』(後編)



「映画をつくりたい!」という”情熱”から、たった300万円という低予算で製作された映画『メランコリック』。

だが、第31回『東京国際映画祭』の「日本映画スプラッシュ」部門で監督賞を受賞し、試写会では毎回満員御礼につき追加試写まで開催するという大進撃に。


この作品をひとことで表すならば、やはり”情熱”につきるだろう。
もちろん内容云々をぬかしてのハナシだが。。。


制作は、主演でプロデューサーの”皆川暢二”氏(写真左)、今作が初長編となった監督・脚本の”田中征爾”氏(写真中央)、そして俳優・タクティカル アーツ(アクション)を担当した”磯崎義和”氏(写真右)の、87年と88年生まれのおなじ歳3人による映画製作ユニット「One Goose」。


「情熱に年齢は関係ない」というコトバは、サッカー選手の”カズ”こと”三浦知良”によるものだったかな。。。


まあ、”カズ”のいいコトバについてはまたの機会にかんがえるとして、写真では”ハウ メニー いい笑顔”の3人が、いったいどのようにこの映画、『メランコリック』をつくりあげていったのだろうか。


ひきつづきお三方に、製作の裏バナシを中心に、撮影時の苦労など、いろいろとボヤっとうかがってみた、インタビューの後編。






─撮影でいちばん苦労した点は?


田中征爾(以下、田中):
寒さと時間ですね。


─撮影時期は冬でしたっけ?


田中:
ハイ。
銭湯ってカラダが暖まるトコロなので、
暖房機能が著しく不足しているんですよ。
だから、足元がとても寒い!
時間帯も夜中でしたし。
あとは、ボクの都合で撮影が週末、土日だったので、
香盤表をつくるときに、どうしてもスケジュールを短く見積もらざるを得なくて、、、
泣く泣く撮影をトバしたシーンもありました。
あとは、皆川くんが主役で出ずっぱりなのに、
カットが掛かってフと気が抜けた瞬間から、
今度はプロデューサーとしての業務がやってくるみたいな感じで(笑)。
見ていて、大変だったとおもいます。

皆川暢二(以下、皆川):
自主映画のプロデューサーは、そもそもの曖昧さ加減がスゴいですよね(笑)。
分業なんてできない!
普通は助監督さんや制作にまかせる役者やスタッフの弁当の手配とかもそうですし、
かつ撮影にもメインで入っていくワケで。
すべてが初めてのコトばかりで、いかんせんアタマの切りかえが追いつかない。
そういう大変さはありましたよね。


─磯崎さんはいかがです?


磯崎義和(以下、磯崎):
やはりアクションシーンですね。
フリをつけるのが撮影当日、しかも撮影の2〜3時間くらい前で、
しかも、そこでキャストと「初めまして!」という感じでした。
ソコから、バラでつくってきたアクションのフリをひとりひとりにつけて、
あわせて、撮影という流れだったので。
現場に行くのもそのときがはじめてで、
場あたりで撮っていくコトが「実際の場所でできるのか?」という不安もありました。
だから、「キケンがないか?」という部分には、かなりプレッシャーでしたね。


─階段でのアクションシーンとか、けっこう大変そうでしたね。


磯崎:
螺旋状の階段とか、幅があまりない廊下と階段の連続の場所とかもあったりして、
役者が倒れるのも階段の上だとアブないので工夫したり。
現場に行ってから変更したフリもありました。


─ポスターのヴィジュアルもそうですが、パッと見は、完全にシリアスなサスペンス感はありますよね。
ナニかを和らげるためにコメディ感を入れたのでしょうか?



皆川:
第一印象は、やはりそうですよね(笑)?

田中:
最初の設定の時点で、ちょっとブラックコメディ寄りにしようと決めてました。


─そうなんですね。


田中:
もちろん『ブレイキング・バッド』の影響もありますけれど、
ボクの得意分野がソッチ方面なんです。


─ちょっと笑っちゃう!みたいな?


田中:
製作側の願いとしては、ニヤニヤしながら観てほしい映画なんです。
もし、シリアスな内容にするのであれば、
主人公の設定は東大出身のフリーターにはしないですね。
コレは日本映画の悪いクセだとおもうのですが、
大したコトないのに、すごくシリアスに言うみたいな風潮が、
ボクは得意ではないんですよ。
たぶん、内心はそこへの皮肉もあったのかもしれません。
ただ、この映画に関して言えば、
考えもしなかった状況に直面してアタフタする素人を想像すると、
ボクのなかでは笑いしか生まれないんです。


─たしかに、「ナニコレ!プッ(笑)!!」みたいな感じの笑いだったとおもいます。


田中:
ボク自身、映画でバカ笑いしたコトがほとんどないんです。


─ナンで映画監督なんてやってるんですか(笑)!


田中:
だいたいニヤっとか、クスっくらいですかね。


─皆川さんはバカ笑いした映画とか、ドラマとかはありますか?


皆川:
ナイかもしれないですね(笑)。


─えー(笑)!!


田中:
思い出しましたが、”クエンティン・タランティーノ”監督の映画『パルプフィクション』で、
“ユマ・サーマン”がオーバードーズで倒れたときに、
家のなかで注射を刺すために医学書を探すシーンでバカ笑いしましたね(笑)!


─コレまたブラックすぎです(笑)。


田中:
あのシーンは、映画ではめずらしいくらい笑いました。


─磯崎さんは?


磯崎:
ボクは、”ジム・キャリー”の『ジム・キャリーはMr.ダマー』ですかね。
アレは素直に爆笑しました。

田中:
あ!ボクも”ジム・キャリー”では笑いました。
磯崎くんとふたりで観ているときは笑っちゃうんですよ。

磯崎:
そうだね(笑)。







─ちなみにですが、、、この『メランコリック』というタイトルはドコから来たのでしょうか?


田中:
今回、インタビューでいちばん聞かれる質問ですね(笑)。
タイトルは、脚本も出来上がってから考えました。
本来は”憂うつ”という意味なのですが、
個人的に”メランコリック”というコトバの”音”自体にカワイげを感じていまして。。。
そこから生まれる響きとかモーメントに、
この映画を言い表しているような気がしたんです。
ボクの人生感がそういう感じでもありますし、
この映画の雰囲気とボク自身の人生観、
ドチラも言いあてているコトバというコトで、
「メランコリック」にしました。


─なるほど。


田中:
あと、コレは余談ですが、、、
むかし、テレビ番組の『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』で、
視聴者からのハガキについてトークするコーナーがあったのですが、
そこで「メランコリックな夜ってどういう夜?」みたいな質問に、
“松本人志”さんがオモシロく答えていた、というのが記憶にのこっているんですよね。
ソレもあって、”メランコリック”というコトバが、
ボクのなかでオモシロい言葉だと認識していた、というのもあります(笑)。


─このタイトルに関して、皆川さんと磯崎さんのおふたりはどうおもわれた?


田中:
最初から「いいじゃない!」ってなったよね?

皆川:
最初の短編の時点で、
すでに『メランコリック』というタイトルでしたし、
「わからないけど、シックリくる!」なみたいな感じでした(笑)。


─ほかにタイトルの候補はあったのでしょうか?


田中:
“コクーン”とかも言ってたよね(笑)?

皆川:
いま思い出した(笑)!

田中:
“さなぎ”の”コクーン”ですね。
主人公のキャラクターがまだこれからみたいな感じの設定というコトもありましたから、
ひとつの候補としてはありました(笑)。


─日本語のタイトル候補はでなかった?


田中:
日本語のタイトルは、候補にあがったことはないんじゃないかな?

磯崎:
ナイよね。


─「風呂と死と」とか(笑)。


皆川:
はははは(笑)!

田中:
タイトルづけって苦手でして、毎回悩むんですよ。
“メランコリック”にしたのも軽い気持ちでしたが、
みんなが「いいんじゃない?」みたいな感じでしたので。


─最後に、この映画の個人的な推しどころを教えてください!


皆川:
観た方からは、複数のジャンルを感じさせるという感想をたくさんいただいてまして、、、
だから、先入観を持たずに観てほしいですね。
まあ、ポスターの印象がかなり強いですが(笑)。


─ポスターの印象、強すぎですよ(笑)!





皆川:
ただ、実際に観るとまったくちがうハナシなので、
不思議な感覚につれていってくれる映画かなとおもいます。
だから、ポスターとのギャップをたのしんでもらえるといいですよね(笑)。

田中:
設定の持つ”引きの強さ”というがありますから、
その設定をオモシロいと感じて観に来てくれる方がほとんどなのかなと。
ただ、そのなかでも会話のやり取りの空気感みたいな部分は味わってほしいです。


─会話のあの”間”は、ちょっとオモシロいですよね!


田中:
ほかの映画では、あまりナイ感じだとおもいます。


─ナニか参考にした映画はあるのですか?


田中:
参考というか、影響を受けているのは”ウディ・アレン”の映画です。
『アニー・ホール』とか『マンハッタン』の、
あえて整理されていない整理の仕方みたいなあの会話の空気感ですよね。
だから、”間”とか、”語順”とか、そういう部分を味わってほしいとおもいます。


─磯崎さんは?


磯崎:
声を大にして言いたいコトは、、、内臓は出てこないので(笑)!

皆川&田中:
はははは(笑)。

磯崎:
安心して観に来てください!
グロくはないですよ!という感じです。

田中:
でも、予算と時間があったら、ヤリかねなかったかも(笑)。

磯崎:
やらなくてよかったね(笑)!

田中:
やらなかくてよかった(笑)!


─あのポスターからすると、ちょっとした『冷たい熱帯魚』感はありますよね?


皆川:
よく言われますよ、ソレ!

田中:
ポスターヴィジュアルは、
夜中の変なテンションのときに撮ったというのもありますが、
悪ノリがすぎたんです。
コレを劇場配給用のメインビジュアルにするところまでは、
考えていませんでしたから(笑)。


─血だらけの死体もうつっていますし、、、コレだけ見たらコメディ感はないですよね(笑)。


田中:
コレでもコメディ感をかもし出しているのですが、、、
写真のまわりの吹き出しの部分とか(笑)。


─わかりづらい(笑)!


田中:
ですよね(笑)!
ただ、あまりコメディ感にフリすぎるのも、
ボクの美学にあわなかったもので(笑)。
まあ、オモシロいかどうかは、
観に来ていただいて、その方が判断してくれればいいコトですから。


─まさに、そのとおりです!
ありがとうございました。







(おわり)






2019年8月3日よりアップリンク渋谷&吉祥寺ほか、全国順次ロードショー!

『メランコリック』






監督・脚本・編集:田中征爾

出演:皆川暢二/磯崎義知/吉田芽吹/羽田真/矢田政伸/浜谷康幸/ほか

製作:OneGoose
配給:アップリンク/神宮前プロデュース/One Goose


『メランコリック』オフィシャルサイト:https://www.uplink.co.jp/melancholic/


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