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Interview : July 21, 2010 @ 21:21

“Buffalo Daughter” シュガー吉永 インタビュー “Two”




つねに新しい音楽を発信し、多くのミュージックラバーを魅了するバンド”Buffalo Daughter”が、ニューアルバム『The Weapons Of Math Destruction』をリリース。


今作は”物理”がテーマであり、タイトルも『The Weapons Of Math Destruction』で、”数学最終兵器”と、なんともスゴい作品となっている。

自身のレーベルも立ち上げるなど、アグレッシブかつポジティブに活動をつづける彼ら。


ひきつづきメンバーの”シュガー吉永”さんに、新作アルバムのお話を中心に、いろいろと訊いてみた。






─パンクなアルバムという位置づけというのは、やはりパンクの影響をうけているから、どこかそんな要素を曲調にいれたい、そんな感覚があるのでしょうか?


いや、今回は”音楽的な”スタイルじゃないんです。
普段、自分たちが感じている音楽以外いろんなことがあるわけで、それで私たちのいま──2010年7月の自分たちの気持ちとしては、黙って世の中のことを見過ごすのではなくて、「そこの戦場に出て行って戦いたい!」という気分なんですよ。そういう意味でのパンクなんです。
もちろん音楽的なパンクにも影響を受けていますが、今回はそうではなくて、自分たちのスタンスの話なんです。


─この世界金融危機とかいろいろ紙資料に書かれていることは、スゴいな!と、思いました。

一語一句拾うとね、ワケがわからなくなるので、普通に音楽として聞いてくれる方がいいんですけれど(笑)。


─この資料をいただいたときは、「どれだけ広いんだ!」という感じがしました。
だけど、音的にはやっぱりbuffalo daughterだなっていう、安心感みたいなものは感じましたね。いつも通りという部分もあり、それプラスαで、キチンと新しい要素が盛り込まれているところが、スゴいなと。

じゃあ、それでいいと思います(笑)。
まあ深くとらえれば、深くとらえられるし、歌詞とかも一生懸命書いたので、そこも深読みしてもらって、自分の考えと照らし合わせてもらってもいい。
それはもう楽しみ方はいくらでもあるので、”物理”だろうがなんだろうが、そんな考えなしで音楽として楽しんでもらってもいいんです。まあ、どんなアルバムですか?という説明がそれなんですけれどね、細かく噛み砕くと。
でも、それが分かってなくたっていいんですよ、べつに。
音楽なので。


─わりと音処理をしている曲が多かったような気がしますが、いかがですか。


打ち込みの曲は、1〜2曲で、あとは全部バンドで「せーの!」で録っている感じです。
もちろんダビングもしているけれど。


─曲の終わり方が特徴的な曲もありましたが、そういうアイディアとはどんな感じで話し合われているのでしょうか?

ウチはターンテーブルがあるから、ターンテーブルが何か音を入れるときは、意味のあるネタをいれたり、ということはしていますけれど、「曲の終わり方をどうしよう」みたいな具体的な話し合いは、、、しないかな。とにかく、テーマを決めた後、そのテーマに沿った曲への仕上げ方に関してはどの曲もけっこう話しをしましたね。
たとえば歌詞も、テーマが決まってから書いているから、すべて統一感があるんです。
曲のタイトルにしてもそうだし。あと曲順にしてもそう。





─曲のタイトルに数字が出てくるのですが、その曲はどんな連動のさせ方をしているんですか?たとえば、「Two Two」とか。

「Two Two」は最初から歌詞も曲もあって、タイトルが決まる前からその曲はありましたね。


─そうなんですね。「Six,Seven,Eight」というのは?

それもタイトルが決まる前からありましたね。
“物理”というテーマを思い付いた理由のひとつは、数字の曲が多かったんです。仮のタイトルもふくめてですけれど。全部数字にしたら、面白いかなと思ったんですよね。
タイトルを全部数字に当てはめて、、、たとえば、6曲目に「all alone」という曲があるんだけれど、”all”の”l(エル)”の部分を11、”alone”の”lo(エル・オー)”を10にして「a11 a10ne」にしたりとか。アルファベットを数字に置き換えられるから、そういうタイトルの曲を順番にしたら面白いかなと思っていたんです。そこからいまのタイトルを思い付いたんですよね、『The Weapons Of Math Destruction』という。”数学破壊兵器”という意味ですけれど。
このタイトルが決まって、歌詞も決まってきたときに、全部数字じゃなくてもいいかなという感じになったんです。すでに歌詞の内容も、アルバムの内容を表しているから、わざわざ数字の順番にしなくてもいいし、全部数字じゃなくてもいいかなと。それでそのアイディアはやめたんですよ。
でも、そこから連想して、いまのタイトルに結びついたんです。だから、、、アルバムをつくるときはいろんなコトを考えるんですよね。


─そうですよね。

とつぜん”物理”というコトバが降って思い付いたわけではなく、金融危機とか、話がでかいようなことでも、みんなすこしぐらいは考えているじゃないですか? どんなヒトでも。
「なんかつらいよね、最近」とか、「つかれるよねー」とか、「ああ、いいことがあった!」とか。そういう日々の小さいことや大きいことが、やはり人間だから音楽をつくるときにも、時代性というものがすごく影響してくるんです。
だから、いま自分たちの置かれている状況の、この2010年のなかで作った音がコレなんですよね。まさにいまの私たちが置かれている状況とか考え方とかが、そのままアルバムに反映されたというか。
さっきの”レベリアス”みたいなパンキッシュな部分も、いまの私たちの気分がそれだという感じです。例えば、3枚目のアルバム『I』とかは、わりと社会的な問題を取り上げたbuffalo daughterとしてははじめてそういうことに挑戦したアルバムなんだけれど、そのときは「そこの戦場に出て行って戦うぞ!」というよりは、もっとみんなで世の中の”おかしい”と思っているひとつひとつのことに、ひとりひとりが気づくことによって大きな輪が広がっていって世界がもっとよくなるんじゃないかという、そういう理想を描いている感じのアルバムなんですよ。それが2002年。
でも、ソレから8年経って、状況が変わらないこともいっぱいあって、逆に金融危機じゃないけれど、不穏なものが拭い去られるどころか、どんどん大きくなっていっている。
だから「祈ってもダメだったかー」みたいな部分が”いま”あるわけです。


─なるほど。

それで「祈っている場合じゃねーぞ、これは」と、「そこに出て行って、戦わないとダメだ!」みたいな感情が生まれて、それが『The Weapons Of Math Destruction』なんです。「数学破壊兵器でぶち壊してやる!」みたいな、、、そのぶち壊しみたいなものがパンキッシュなスタンスのことなんです。
最初のパンクなんかは、”God save the queen!”じゃないけれど、そういう体制に反抗して、ツバを吐いてみたいなものだったんですよね。でも今回は、ただ壊すんじゃなくて、ぶち壊すことによって新しいよりよいものを得たい!という、気持ち的にはすごくポジティブなんですよ。そういえば、”ポジパン”ってコトバが昔あったけれど、”ポジティブパンク”ってそういう意味なのかな。
それはまあいいけれど(笑)。
もっとポジティブな気持ちでのレベリアスなんです。




(シュガー吉永 インタビュー “Three”へつづく)
Photo:YANO BETTY





□Buffalo Daughter ライブ・スケジュール

・2010年7月29日 新代田FEVER(東京)  
・2010年8月1日 FUJI ROCK FESTIVAL ‘10(新潟県・苗場スキー場)
・2010年8月3日 渋谷CLUB QUATTRO(東京)
・2010年8月13日 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010(北海道・石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ)



Buffalo Daughter ~Japan Tour 2010~

・2010年11月15日 LIQUIDROOM(東京)
・2010年11月16日 心斎橋 クラブクアトロ(大阪)
・2010年11月17日 名古屋 クラブクアトロ(名古屋)

インフォメーション
SMASH
TEL. 03-3444-6751
http://www.smash-jpn.com/index.php



Buffalo Daughter
「The Weapons Of Math Destruction」



Released by Buffalo Ranch & AWDR/LR2
DDCB-12028/全13曲収録
発売中 /2,500YEN(税込)

>>>レビューはコチラ


□Buffalo Daughter
・シュガー吉永 (g, vo, tb-303, tr-606)
・大野由美子 (b, vo, electronics)
・山本ムーグ (turntable, vo)

93年結成。
96年にビースティ・ボーイズが主催するGrand Royalと契約。同年1stアルバム『Captain Vapour Athletes』(Grand Royal/東芝EMI)を発表。アメリカ主要都市のツアーも行い、活動の場は東京から世界へ。
98 年に発表した2ndアルバム『New Rock』(Grand Royal/東芝EMI)は、大きな反響を得て瞬く間に時代のマスターピースに。その後もアメリカ中を車で何周も回る長いツアー、そしてヨーロッパ各都市 でのツアーも行い、ライブバンドとして大きな評価を得る。
01年『I』(Emperor Norton Records/東芝EMI)を発売、03年『Pshychic』、06年『Euphorica』は共にV2 Recordsよりワールドワイド・ディールで発売される。
今年の夏、自らのレーベル”Buffalo Ranch”を設立。4年振りとなるニューアルバム『The Weapons Of Math Destruction』がリリースされる。

http://www.buffalodaughter.com/index_i.html
http://www.boundee.jp/features/details/72.html


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