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Interview : February 2, 2011 @ 15:48

フォトグラファー 須田 誠インタビュー──ザッツ・談!(その1)



世界中を旅して、写真を撮るフォトグラファー須田 誠。


34歳のときに10年間のサラリーマン生活に終止符を打ち、世界中で放浪生活をはじめ、そのときに手にしたカメラで”世界の真実”を撮影してきた。

それら旅の写真をおさめた著書『NO TRAVEL, NO LIFE』は、リリースから3年以上経ったいまでも人々の手に取られている。


ボクと須田さんとの出会いは、8年ほど前。
とあるスペースのオープニング内覧会で、個展の場所を探しに来ていた彼とはじめてお会いした。
当時、代官山”UNIT”に所属し、フリーペーパー『UNIT』の編集を行っていたボクは、B1Fにあるカフェ”UNICE”にてアートイベントを考えていて、彼のホームページに掲載されていた写真にココロを奪われ、彼の写真展を共催することに。
当時ではめずらしい縦が約180cm、横が約1mの巨大プリントの写真を展示したことが、大きな話題となり、たくさんの人々が彼の写真展を訪れた。

その後、彼は本を出版し、各地でトークショウやワークショップを行ったり、現在は自身の個展『ジャパン ツアー』を開催するなど、精力的に活動し、目まぐるしい活躍をみせている。


今回は、久々にお会いした須田さんとの面白かった”雑談”を、インタビュー形式で4回にわたって掲載する。






──デジタル派とアナログ派


カネコヒデシ(以下カネコ):ご自身の写真展、『ジャパン ツアー』はなぜ始めようと思ったんですか?

Makoto(以下M):
2009年にやった個展が大評判だったんですよ。
写真展で音声ガイドを入れたという劇的な手法を取り入れたんだけどね。
音声ガイド自体は、美術界では昭和のはじめからあって、例えばピカソの絵の前に立ったらピカソの生い立ちみたいなのが音声で流れるヤツ、、、アレ、写真展では見たことないでしょ?

カネコ:見たことないですね。
写真って、どうしてもビジュアルのみで訴える感じがありますから。

M:
写真って抽象画じゃないから、見れば分かる。だから、みんな使わなかったんだと思うんだけど。。。
その時の個展はタイトルもつけずに流れだけを決めて、50点中18点くらいに音声ガイドを入れてみたんだけれど、それがすごく評判が良かったんだよ。
音声ガイドに、カメラの機材とかテクニックとかの情報は入れないで、個展自体をひとつの作品としてストーリーを作りたいと思って、それで原稿を書き下ろして、自分の声で入れたんだ。そうしたら、続々と涙を流す人が出てきて。。。オレは、”泣き”の仕掛けなんか入れていないのよ。

カネコ:何で泣いたんでしょうかね?

M:あとから泣いていた人に聞いてみたんだけれど、その場所──秋葉原の『COEXIST』というギャラリーなんだけれど、そこはむかし運送屋さんの倉庫で、天井が高くて、すごくいい空間で、ニューヨークのロフト的なところなんだけれど。。。その場所の空気感と、オレの写真と、音声ガイド、それとオレの声も良かったらしいんだよ。自分でもはじめて気がついたんだけれど、低い声がいいみたい。
その4つの要素プラス、自分が普段かかえている悩みとかいろいろな要素が絡んで、それでみんな抑えられない感情が溢れでてきてしまったみたい。

カネコ:なるほど。

M:「アレ!そういう写真展だったっけ!?」みたいな感じ(笑)。不思議なエネルギーが流れていたよ。
額装してくれた額屋さんがその場にいたんだけれど、「コレはなんなんだ!?」ってなって、「秋葉原だけで終わらせるのはもったいないから、巡回展をやりましょう!」って、それで始めることになったんだよ。
『ジャパン ツアー』という名前にしたのは、だいたいは”巡回展”っていうじゃない?
そのコトバは避けたくて、わざとロックっぽくというか。。。

カネコ:写真展で『ジャパン ツアー』という名前はあまり聞かないですよ。

M:“巡回展”っていうと、いままでどおりの古くさいあり方になっちゃうかもと思って、名前から変えて『ジャパン ツアー 2010』。
保守的な写真界にモノ申すぐらいの勢いでね(笑)。

カネコ:印象もぜんぜん違いますもんね。

M:秋葉原の個展が2009年の10月くらいだったんだけれど、その後から、いろいろ打ち合わせを始めていったんだよ。

カネコ:ちなみにそれぞれ地方での反応はどうだったんですか?

M:東京から発信っていうじゃない?東京って特殊な場所なんだなってハッキリと分かったよ。
たとえば、「トークイベントをやるよ!」ってなったら、東京だとパッと50人くらい集まって、スタッフとかからも「こうしましょう!」とかアイディアがポンポン出てくるけど、地方だと「どうしましょうか?」って聞くと、「いやー、、、」って(笑)。

カネコ:「田舎だから、、」で止まることが多々ありますよね。ボクも田舎出身なので分かります!
そこはどうしようもないことだと思うんですけれど、寂しい感じはしますよ。

M:たしかに、シャッター通りとか見ちゃうと何も言えなくなるけれど。

カネコ:
彼らももちろん新しい情報は欲しがっているんですけれどね。
でも、「インターネット!」って、大騒ぎしているのは首都圏だけですよ。田舎に帰ると家にPCもないし、携帯だけみたいな人の方が基本的には多いです。仕事として使う人もいますけど、それ以外のヒトは余程のコトがない限りは買わないですよね。

M:だいたいPC上で宣伝しても、PCをやってなければ分からないよね。
「『ツイッター』って何?」みたいな感じになるし。

カネコ:『ツイッター』をやっている人たちは、ホントにトガっている人たちで、ほんのひとにぎりだと思いますよ。iPadとか、iPhoneとかが出てきて、ネットを使うという行為自体は浸透はしているとは思いますけど。

M:iPadは買った?

カネコ:
いや買ってナイス!
気になってはいるんですけれど、、、結局仕事に使えるか、使えないかというところでいうと、ミニPCを買った方がまだ使い勝手があるんですよね。

M:たしかに、文字を書くヒトはPCの方がいいよね。

カネコ:
そうなんです。
やっぱりデジタルって、可能性のフリ幅が意外と狭いですよね。

M:自分でコントロールできないじゃない?もうメーカーの言いナリというかさ。。。

カネコ:ホントそうなんですよ。

M:
カメラも本当にエコを考えるのであれば、ボディの中だけ変えられればいいのにね。結局、ボディごと買い替えないといけない。
もう毎年買い替えていると、どんどんジャンクカメラが溜まっていくんだよ。

カネコ:それはどうにかしたいですよね。

M:
できるはずなのにね。
やはり資本主義に乗っ取っていくと、そういうことをすると──。

カネコ:
儲からないからダメなんですよね。

M:
そう!

カネコ:
でも、電化製品って絶対壊れるように出来ているんですよね。
そう考えると、LEDの電球はスゴいですよ。ほぼ半永久的に使えますもん。

M:
半永久的もスゴいね。
それにしても、いまってUST(ユーストリーム)があるじゃない?トークイベントとかはUSTでやった方がいいのかもね。
USTはどうなの?

カネコ:ラジオとか、テレビとか、そういう情報通信系の敷居を低くしてくれたというのは、個人的にはうれしいツールです。
とくにボクみたいな弱小メディアにとってはのお話ですけれど。

M:この前、初めて1時間以上、じっくり見た番組があったよ。
糸井重里と矢沢永吉の対談。あれは、面白かったよ。

カネコ:
「ほぼ日」ですよね?
あのふたりの話は、面白いですよね。





M:
結局さ、デジタルがどんどん発展していっても、最終的にはアイディアとか、どう使うかというところのアナログ的な部分なんだよね。
対談するにしても、どういう人を持ってくるかってところ。

カネコ:そうです。
使う側にアイディアがないと何も変わらないんですよ。

M:
USTよりも、もっと良いモノが出てきたらみんなそっちに移るよね。

カネコ:
それはまちがいないです。
インターネットの特性としては、いいツールがあれば、それをすぐに使えるというところですから。

M:
検索機能も、”Google”以外使っていないもんね。

カネコ:
いまは、”Google”の天下じゃないですか?

M:
“yahoo”はどうなんだろう?

カネコ:
結局、検索は”Google”のシステムを使っていますからね。

M:
“Google”が全部買い占めたら、地球に”Google”ひとつになっちゃうよね(笑)。

カネコ:
それは逆に怖いですよ、でも他に出て来ないですもんね。

M:そこに載っている広告は押したことがないんだけれど、、、ネットの広告ってどうなの?

カネコ:
結局、PV数とかクリック数がメインなんですけれどね。でも、すべての広告がネットに流れ込んできているという感じでもないみたいです。
これだけ出版社がなくなって、本もなくなって、「じゃあ、次にどうするんだ?」というところにきてはいるんですけれどね。
個人的な感想をいえば、いまのところ電子書籍は、まだそこまで盛り上がっていないです。

M:お!来た!電子書籍!!
いまね、電子書籍をつくるべくね、動いているんですよ。

カネコ:お!そうなんですか!?

M:そう!
でもね、たしかにiPadだっていつどうなるかわからないし、いまはスマートフォンも出ているけれど、それも先は分からないじゃない?それに電子書籍も売れるかどうかはまったく未知数だよね。だけど、出さないと”流れ”に遅れちゃうし。
あと、本は読むものだけど、モニターは見るものだと思う。
それは──、経験があると思うけれど、例えば原稿をモニター上で校正して、「バッチリOK!」ってなって、プリントアウトすると、、、誤字が見つかるんだよ。だから、、、読んでいないんだよね。
“見る”と”読む”の違いで、脳への入り方が違うと思う。

カネコ:まさにそうだと思います。
インタビュー記事とかも流し読みで、目に入ってくるのが、例えば『(笑)』とか、そういう記号だと思うんですよ。そこで「何が(笑)なんだ?」と思って、読み直す。
おそらく、そういう読み方なんですよね、PCって。

M:たしかに戻って読むケースが多いよね。
でも、ホントに大事なものは、メールでもなんでもプリントアウトして読むよ。紙がもったいないけれど。

カネコ:結局、そこには勝てないんですよね。
書いたりとか、実際に”フィジカル”なものとして読むという行為は、PCの画面上のものとは、記憶の残り方がちがいますよ。

M:全然ちがう!

カネコ:
それと、最近恐ろしいほどに漢字が書けなくなってきていて、、、原稿はPCで書いたり、すべてのことが電話かメ—ルのやりとりだけで済んでしまっているから、字を書くことが少なくなっているんですよね。
危機感はあるんですけれど、やはり楽な方に行ってしまいます。

M:オレ、じつはスゴい”メモ魔”で、基本的には紙と鉛筆なんだよね。
ベットとリビングと机には、必ずメモ帳を置いているし、あとカバンにも入ってる。

カネコ:ボクもメモは必ず持って歩いていますね。で、思い付いたコトバを書くようにしていますよ。

M:ちなみに手帳とかって、自分が好きなものってあるの?

カネコ:
あります。

M:自分にとって完璧なものってないんだよね。だから、月間のカレンダーをプリンターでプリントして、コクヨの普通のノートに糊で貼って自分でつくっているんだよ。

カネコ:スゴい!手づくりじゃないですか(笑)!?

M:究極がココにたどりついたんだよね。年間通してスケジュールが見れるからさ、コッチの方がいいんだよ。
あと、全体が見えた方がわかりやすい。
だから、、、結局、オレはまだ”アナログ”なんだなって(笑)。



(その2へつづく)






□インフォメーション
『須田誠 旅・写真ワークショップ』開催
第四期生まであっという間に定員に! 第五期生応募のお知らせは、HP、ブログ、ツイッターで行います。
http://travelfreak.jp/?page_id=31

『最高★カメラ!』
今年の写真プロジェクトはこれだ!
みんなの写真が好きだという想いをどんどんつなげていこう!
http://travelfreak.jp/?page_id=13


□BOOK
『NO TRAVEL, NO LIFE』



・A-WORKS
http://www.a-works.gr.jp/ntnl/

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須田 誠(すだ・まこと) プロフィール



フォトグラファー。
34歳のとき、10年間のサラリーマン生活で築いた地位・安定・守りを全て捨て、呼ばれるように世界放浪の旅に出る。その旅の途中、安く売られていた一眼レフを手に入れ、首からカメラを下げた旅行者を見つけては使い方を聞きながら独学で写真を撮り始める。
写真は自分自身であり、旅そのものでもあり遊びの一環でもある。
2004年夏、東京都写真美術館内のカフェにて写真展を開催し好評を博す。
現在までに31カ国を旅し、人物を中心に撮影している旅人・フォトグラファー。
ファッション誌DUNE編集長・林文浩氏、旅学編集長・池田伸氏、EXILE・USAらから高い評価を受ける。
『NO TRAVEL, NO LIFE』にて2007年デビュー。
雑誌『月刊EXILE』、雑誌『旅学』創刊号表紙、『FUNKIST(ポニーキャニオン)』、高橋歩『World Journey(10万部)』に多数写真提供、『rega(ビクターSOPHORI FIELD COMPANY)』らアーティスト写真撮影、NHK BS-1『東京ファッションエクスプレス』他、人物撮影を中心に様々な分野で活躍。
BEAMS Tから須田誠オリジナルTシャツも発売。
またファッション専門学校VANTAN、自由大学などで、講義、文筆活動、ワークショップなども精力的に行う。

・TRAVEL FREAK
http://travelfreak.jp/

・ブログ
http://ameblo.jp/travelfreak/

・Twitter(makoto_suda)
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