TYO magazineトーキョーマガジン

Archive

 

rss 2.0

Interview : February 23, 2011 @ 14:08

フォトグラファー 須田 誠インタビュー──ザッツ・談!(その4)



34歳のときに10年間のサラリーマン生活に終止符を打ち、”世界の真実”を撮影してきたフォトグラファー”須田 誠”。


自身の個展『ジャパン ツアー』やワークショップ、『最高☆カメラ』を開催するなど、多忙な彼にダラダラとお話を訊いてしまったインタビュー?というよりは雑談的なトークの最終回。





──楽しく生きる


カネコヒデシ(以下カネコ):そういえば、先日、映画館で深夜映画を観て、映画館から家に歩いて帰る途中──朝4時くらいかな、おばあちゃんが自転車でちょろちょろしていて、いきなり「鷺宮(中野区)ってどっち方面?」って聞かれたんです。
僕がいたのが(豊島区)だったので、「すごく遠いんですけれど、どうしたんですか?」って聞くと、前日の昼3時くらいに家を出たんだけれど道に迷って、方向が分からなくなってって。。。

須田 誠(以下M):
えー!!

カネコ:歳は70過ぎくらいですかね。
とりあえず、近くに交番があったので、そこまで送る事にしたんです。
途中、そのおばあちゃんが身の上話をしてきたので、それを聞いていたんですけれど、、、──その方はブラジル出身の日系人で、若いときはブラジルで洋裁学校の先生をやっていて、すごくお金を持っていたので、貯めたお金をつぎ込んで世界旅行に出たらしいんです。
その途中の日本で短期でアパートを借りて3ヶ月くらいいたみたいなんですけれど、ある日、電車に乗ろうとしたら、隣にいた男の人が来た電車に飛び込もうとしてて、、、おばあさんはそれを止めたんですよ。彼に理由を聞くと「会社が倒産して借金が積み重なって、もう首もまわらない」と。
そのおばあちゃん、助けたからには「彼の面倒を見る!」ってなったらしく、そのまま日本に住んだみたいなんです。
彼はすでに住むところもなく、おばあちゃんの借りていたアパートに転がり込んだみたいなんですけれど、そのあと、毎日借金取りが来たみたいで、おばあちゃんが働くだけ働いてその人の借金を返したみたいです。でも、その男の人は体を壊して、病気になって、寝たきりになっちゃったみたいで、だから今度はそのために働いてって。。。その男の方はもう亡くなったみたいなんですけれど、そのヒトともケッコンしたのか、してないのか、、、分からないです。
で、「わたしは日本に苦労をするためにきたんだわー」って言っていて。。。いまは家族もいないって言っていたから、なんかずっと話すヒトがいなかったから、そんな話しをしてくれたんですよね。

M:なんか、小説みたいな話だね。

カネコ:なんか、スゴいおばあちゃんに会っちゃったなーって(笑)。

M:その話スゴいね。

カネコ:
言っていることも本当かどうかは分からないですけれど。。。明け方にそんな人生の話しを聞かされるとは思いもよりませんでしたよ。

M:
いやー面白いね。世の中ホントいろんなヒトがいるよ。
まだオレなんか大したことないじゃない、おばあちゃんに比べたら(笑)。

カネコ:おばあちゃんの話は、濃すぎて、ちょっとビックリしましたけれど(笑)。

M:なんか、オレのまわりにも面白いヒトがたくさんいて、アイディアも面白いのがいっぱいあるんだけれど、それをビジネスとして確立してくれる人がなかなかいないんだよね。

カネコ:
ボクも一緒です(笑)!
難しいですよね、ソコが。

M:
お金にするとなると、有名人と関わるとかそういうことになっちゃうんだろうね。

カネコ:
分かりやすさが必要なんでしょうね。

M:なるほど。
それか自分が有名人になるかだよね。

カネコ:
最終的なところですね。
いろんなモノがやりやすくなりますけれど、その分あきらめないといけない部分が沢山でてきますよ。

M:お金も来るけれど、オレはコレだ!的な。
それって矢沢永吉クラス(笑)?言いたい事を言って、好きなことをやってお金が入るのがいいよね。

カネコ:
それがいちばんいいですけれど、得てしてそうはならないっていう構図がありますから。

M:でも、ゴッホにはなりたくないよね。

カネコ:
死んでから有名になるというのは微妙なところですよ。

M:彼がいまどう思っているのか知りたいよね。
そういえば、いまいないよね、自分のアートを突き詰めてさ、メシも食えずに路上で死んだってヒト。

カネコ:
そういえば、いないですねー。

M:ドラックで死んでいるミュージシャンとかは多いけれどね。

カネコ:
多いですねー。
突きつめちゃうと、そうなっちゃうんでしょうかね。
でも、それはそれで幸せなのかもしれないですよ。
好きなことをやってって。

M:流行りのコトバでいえば、”自分探し”で究極の自分になるワケだしね。
やっぱり自分になれて死ねたらいいよ、他人の意見ばかり聞いて死んじゃったら、、、ねえ。

カネコ:もったいない!

M:それが貧乏であることはままあるけれど、金があっても”自分”がなかったらストレス溜まるよ。

カネコ:
自分が「何がいいのか?」ってトコロですよね。

M:まあ、そこは個人によって違うもんね。
「ヒトに右往左往されるのがいい!」というヒトもいるし。
何かを頼っていれば無責任でいられるしさ、そういうヒトって多いよね。

カネコ:まあ、それが人間なのかもしれないですね。
だからこそ、神という存在を作ったのかもしれない。

M:なるほど、そこの責任にしてね、楽だから。
やっぱり楽になりたいんだね。

カネコ:宗教ってそういうことですよね。
自分がいまつらい位置にいるのは”神の思し召し”なんだという、、、イイ意味で逃げ道というか。

M:みんな、頼りたいんだね。

カネコ:
そういうのはあるかもしれないです。





M:でもさ、野性動物にはそういうのってないよね。
動物ってさ、ホント生きる事しか考えていないでしょ?
オレの本にも書いたけれど、人間って死ぬ事ばかり考えているような気がするんだよ。

カネコ:動物だと、死ぬという感覚が。。。

M:多分、ないんだよね。
でも、それが自然なんだよ。
だから、何かあって死んでも、それもひとつの生きる中の行為なんじゃないかなと思う。

カネコ:「人間は死ぬために生きている」というのは確かにそう思います。

M:死ぬってことが、つらくて、悲しいことであるとしたら、オレらはみんなそこに向かっていると思うとさ、嫌だなー。
かといって、死ぬのが楽しいと思えるくらいになったら、、、楽だよね。
宗教上ではそういう風に思っているヒトもいるんだろうけれど、やぱり”欲”があるから「生きたい!」みたいなのはあるよ。

カネコ:
そう!
“欲”があるから、生きたいんですよね。

M:
“欲”がなくなったら、終わりなんだよ。
生きる糧がないってコトだもんね。
でも、インドの修行僧とかさ、いわゆる聖人とか、賢者のヒトって、”欲”とかすてる訳じゃない?
“欲”も”家族”も”お金”も、世の中の俗的なことを捨てられたら、楽になるよね。

カネコ:
“欲”を背負うことは、それだけ”重荷”を背負うことになりますから。

M:煩悩みたいなものなんだろうね。
何にもなかったら、、、楽でしょ?

カネコ:
ただただ生きているだけ、というのは楽ですよ。
楽だけれど、、、苦しいですよね。

M:苦しいということは、まだそこまで達していないという事だもんね。

カネコ:
なるほど。

M:そこを越えて達したら、かなり楽になるんじゃないかな。まあ、大抵のヒトはなれないと思うけれど。。。だから修行みたいなことをしているんだろうな。自然界の木とか花とか、空気、雲、空とかとおなじになるということだよね。
あるがままにというか、なにも考えないというか、、、死ぬ時が来たら死ぬみたいな。

カネコ:腹が減ったら食べ、眠たくなったら寝る。

M:でも、それもつまらないなと思うのは、、、われわれは俗人なんだよ。

カネコ:まあ、そういうトコロですよね。
まあこれだけ面白いことがあるから、今度はどうやってそれを面白くしていくかということですけれど。

M:すごく長い時間──宇宙の時間の中で、人間の寿命は80年しかなくて、しかも、ツイッターとか、インターネットって、いましかないんだよ。
だから、いま楽しい事は、いまやるしかないよね。
50年後くらいに、遺伝子変換手術とかで「あと100年生きられます!」ってなったら別だけれど(笑)。
何があるか分からないなかで、楽しい事をやっていくしかないよね。

カネコ:楽しんで生きてこそ人生に”意味”があるんだと思います。

M:だよね。



(おわり)





□インフォメーション
・『須田誠 旅・写真ワークショップ』開催
第四期生まであっという間に定員に! 第五期生応募のお知らせは、HP、ブログ、ツイッターで行います。
http://travelfreak.jp/?page_id=31

・『最高★カメラ!』
今年の写真プロジェクトはこれだ!
みんなの写真が好きだという想いをどんどんつなげていこう!
http://travelfreak.jp/?page_id=13


□BOOK
『NO TRAVEL, NO LIFE』



・A-WORKS
http://www.a-works.gr.jp/ntnl/

>>>Amazoneはコチラ



須田 誠(すだ・まこと) プロフィール



フォトグラファー。
34歳のとき、10年間のサラリーマン生活で築いた地位・安定・守りを全て捨て、呼ばれるように世界放浪の旅に出る。その旅の途中、安く売られていた一眼レフを手に入れ、首からカメラを下げた旅行者を見つけては使い方を聞きながら独学で写真を撮り始める。
写真は自分自身であり、旅そのものでもあり遊びの一環でもある。
2004年夏、東京都写真美術館内のカフェにて写真展を開催し好評を博す。
現在までに31カ国を旅し、人物を中心に撮影している旅人・フォトグラファー。
ファッション誌DUNE編集長・林文浩氏、旅学編集長・池田伸氏、EXILE・USAらから高い評価を受ける。
『NO TRAVEL, NO LIFE』にて2007年デビュー。
雑 誌『月刊EXILE』、雑誌『旅学』創刊号表紙、『FUNKIST(ポニーキャニオン)』、高橋歩『World Journey(10万部)』に多数写真提供、『rega(ビクターSOPHORI FIELD COMPANY)』らアーティスト写真撮影、NHK BS-1『東京ファッションエクスプレス』他、人物撮影を中心に様々な分野で活躍。
BEAMS Tから須田誠オリジナルTシャツも発売。
またファッション専門学校VANTAN、自由大学などで、講義、文筆活動、ワークショップなども精力的に行う。

・TRAVEL FREAK
http://travelfreak.jp/

・ブログ
http://ameblo.jp/travelfreak/

・Twitter(makoto_suda)
http://twitter.com/MacochTV

・mixiコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=2067518


Comments are closed.

Trackback URL