Interview : July 12, 2011 @ 15:33
13年ぶりにアイツが帰ってきた!──”かせきさいだぁ”インタビュー(後編)
13年ぶりに3rdアルバム『SOUND BURGER PLANET』をリリースしたポップ王子、”かせきさいだぁ”。
もともと年下が苦手だった彼は、この13年で出会う機会が増えたために年下が得意になったとか。
とにもかくにも13年のブランクを感じさせない、すばらしいシティポップチューンとなっている。
彼はこの13年もの間、何を思い、何をしてきたのか?
アルバム『SOUND BURGER PLANET』のお話を中心に、いろいろと伺ってみた。
─作詞に関してですが、どういう感じで作られたのですか?例えば、Boseさん(スチャダラパー)との共作「明日ライドオンタイム」とかがありますが。
「明日ライドオンタイム」は、川辺(ヒロシ)くんから曲をもらって、ボーちゃんとふたりで詞を考えたんですけれど、音が海っぽい感じがして、「海といったら『ライドオンタイム』だよねー」って(笑)。
ちなみに「ライドオンタイム」って”乗り遅れるな!”みたいな意味なんです。
で、「サーフィンやりたいけれど、なかなかやらないよね!」という話から、俺たち全然乗り遅れているよ!って。「これからやるのはきついよね」みたいな話しをしているうちに、それを歌詞にしようってなったんですよ。
結局、サーフィンもしないで家でグダグダやっていて、「明日やるから!」みたいな、そういう内容です。
─あー、ズルズルいっちゃう感じですよね(笑)。
それがコンセプトです(笑)。
─なるほど。「夏をプレイバック」は、恋の歌ですよね。
これは、メロと歌詞のサビのところがまず浮かんで、好きな女の子がプールに来ていて「いいな」と思っているんですけれど、ふて寝していたら彼女がそばに立っていたという詩です。日本の夏の風景というか、そういうのを曲にするのが面白いんですよね。
歌詞に関しては、頭に描いた映像が、みんなにも思い浮かぶようにしたいというのは意識しています。とにかく絵が浮かんで欲しいんですよ。
─それは必要でしょうね。
僕は松本隆先生の歌詞がとても好きなんです。
中学生くらいのときに、「松田聖子の歌の絵の浮かび方は尋常じゃない、すごい!」と思っていて、別の歌手でも絵が浮かぶ曲があったので、作詞が誰なのかを調べてみたら松本隆先生だったんですよね。それからチェックするようになりました。すごく影響を受けていますよ。
─松本先生の歌詞は、詩的だけれど、ビジュアル的なんですよね。
言葉はかっこいいけれど、絵が浮かばない人はいますが、松本先生の詞は、言葉もかっこよくて、絵も浮かぶ。本当に、ビジュアル的な感じですよね。それに影響を受けると、こうなります(笑)。
─松本チルドレン的な感じですね(笑)。
僕は、松本先生の一番弟子ですから。そろそろ「今回のは絵が浮かばない」って怒られそう、いや怒られることはないと思いますけれどね。
セカンドアルバムの時は、音ができるたびに松本先生のところにCDを持っていって、聴いていただいていましたよ。先生は歌詞カードをみながら聴かれるんですけれど、曲が終わったあとに、「うん、いい!」って。で、「ありがとうございます!」って。いつもその繰り返しでした。
今回は、まだ聴いていただいていないので、早く持って行きたいんですけれど、50分間、黙って座っていないといけないんですよね。
─CDをかけている間は、一緒の部屋にいるんですか?
そうです。
─曲がかかっている間は何も話さないんですか?
何も話さないです。
もともと言葉数が多い方ではないので、二人で黙って聴いていますよ。
聴いた後にアドバイスを頂いたりしていましたね。
でも、そのアドバイスが全く出来ないんですよ、難しくて。
─例えば、どんなアドバイスなんでしょう。
「歌詞っていうのは、恋の歌だとしても、スパークだからね。火花を、スパークを書かなきゃダメだ。キミのはスパークが飛んでいないね」って。僕も「飛んでないですねー!」って(笑)。
毎回、「いいね!」のあとに「ちょっとスパークがない!」って言われていたんですけれど、それなら”まったくスパークのない歌詞”を書こうと思って、「午後のパノラマ」という、ただただ風景を歌って気持ちがなんかなる!というスパーク0(ゼロ)という曲を作って、聞いていただいたんです。そうしたら、その時は何も言わずに「いいね!」って、逆にすごく褒められましたよ(笑)。
ついに「スパークないじゃん!」って、怒られるんじゃないかと超ドキドキしていましたよ。
─今作は、けっこうスパークしているんじゃないですか?
ですかね?
ひょっとしたら13年経って、褒めてもらえるかも。
「スパークしてるじゃん!」って、スパークしたかも、俺(笑)!
─では、今回は、スパークしたということで(笑)。
ご自身ではどんな感じのアルバムに仕上がったと思いますか?
今回は、いろいろ聞くと、女子に評判がいいと聞きましてー。
マネージャー:今日はずっとそれ言ってるよなー(笑)。
一同:ははは(笑)
いやいや、だってそれは新情報だから!
マネージャー:でも、言っていたの、ふたりだけじゃん!
ふたりはかなり多いでしょ!
─ふたりは多いんじゃないですかね(笑)。
という感じで、女子の評判がやばいってなってました(笑)。
─もともと女子人気はありましたよね。
ありましたね。
─かせきさんといえば黄色い声が飛び交っていたイメージが。
LB自体、女子のファンが多かったですからね。
でも、そういう感じはもうないですから。
─でも、佳孝さんと一緒にやられたのは、当時としては新しいと思いましたよ。
あれは、「名曲つくったかも!」と思ったんですけれどね。
─いやいや、あの曲は名曲ですよ!
実は、当時まったく売れなかったんですよね。レコード会社も「あれ!?」みたいな感じで、大ショック。
─え!そうなんですか!?
あの時は、ヒップホップというと、ストリートかつリアルじゃないとみたいな風潮があったんですよ。それで「いま出しても仕方がないな・・・」って。
─それでマンガ活動を始めたんですか?「ハグトン」。
そんな時代なんだったら「マンガを描いていよう!」って感じでした。自分の大好きな音楽で、変な体力を消耗をするのも嫌だってなって。ヒップホップとか、ジャンルを考えずに聴いてくれればよかったんですけれどね。
─ものすごくジャンル分けをしていた時代でしたよね。
当時、2ndアルバムリリースの時に取材で聞かれたのが、「なんでリアルなことをやらないんですか?」って。
逆に、なんで僕までリアルな日常みたいなことを急にラップしないといけないんだろうって思いました。
夢物語でいいと思うんですよね、歌って。聴き終わったらその夢は終わるみたいな。
いつもの人生にちょっと花を添えるというのが、僕は音楽だと思ってやっていたんです。
─それが音楽の良さだと思うんですけれどね。
聞き終わった後に儚さがあって、また聞きたくなるっていうのが。
僕は、概念としてのヒップホップはやっているけれど、音的にはシティポップをやっているんですよ。だから、”かせきさいだぁ”というものがきちんと存在していればいいと思ってやっていましたからね。フリースタイルではなく、むしろ作り込んで世界観を出してみたいなことしかやらないですから。それがリアルを歌わないといけないムードに変わってきたので、僕はお呼びじゃなかったんですよ。
当時、3rdアルバムも作りはじめていたんですけれど、どこのレコード会社も出さないってなって。無理しても仕方がないから、マンガを描いたり、ワタナべイビーと学ラン着て歌ったり、そんな感じでラップはやらずに他のことをやっていました。
ただ、ファンの方とか、知り合いには「何でやらないの?」って、すごく聞かれましたけれどね。
その時は、口には出さなかったですけれどね、「やっても無駄なんだ」って。でも、今は普通に受け止めてもらえる時代になったんじゃないですかね。韻をふんでいるとか、ふんでいないとか、「ヒップホップというのは──」みたいなことを誰も言わなくなった時代になってきたので、自分的にも時代がちょうどいいというか。
“素”で音楽を聞いてくれるような時代になったので、それでアルバムを出せたんだと思います。
─今回は付属のDVDが面白そうですね。
これも知り合いが集まってやってくれたという感じで、意外と凄い顔ぶれなんです。
─ご自身で撮られた『ロックの巻』というのはどんな感じのものなのですか?
京都の劇団で『ヨーロッパ企画』という知り合いがいまして、『ショートショートムービーフェスティバル』という5分で映画を作るというフェスがあるんですけれど、僕はその劇団の人と何回か映画に出ていて、その人たちがサポートしてくれたんです。
助監督は”伊江なつき”さんという、今回のPV『CIDERが止まらない』の監督でもあるのですが、CMのディレクタ―さんで、彼女が全部手伝ってくれて。若い人たちに助けられましたね、ありがたく。
─とにかく若い人たちと触れあったいちまいなんですね。
そうです!
それで今までの友達もやってくれて、13年間の意味があったというか、集大成というわけじゃないですけれど。偶然が重なって好き勝手に出来た、奇跡のような一枚です。
この何もやらなかった男に対して──やらなかったからこそ言ってくれているのかもしれませんが、若い人たちが「この人やらないと動かないじゃない!」みたいな(笑)。
─あははは(笑)。
では、最後にその若い人たちに向けてメッセージをお願いします。
若い人のことは、分からないです(笑)。
でも、音楽はとにかく面白いので、昔のシティポップとか聴いてほしいですよね。ユーミンとか、南佳孝さんとか、山下達郎さんとか。ティンパンアレーがバックでやっていたり、アレンジをやっている曲があったり。僕は、そういう音楽に影響を受けて、アルバムを作っているので。
もちろん、僕のアルバムも含めてですが、70年代、80年代のシティポップもぜひ聴いてほしいです。
そしたら、人生もどんどん面白くなると思うんですよね。
なので、聴いてください(笑)!
─ありがとうございました!
(おわり)
かせきさいだぁ
『SOUND BURGER PLANET』

レーベル:AWDR/LR2(DDCB-12039)
価格:¥3,150(税込)
発売中!
>>>レビューはコチラ
かせきさいだぁ「CIDERが止まらない」
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