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Interview : March 16, 2012 @ 04:19

頭上のファミコンはダテじゃない!──”サカモト教授”インタビュー(前編)



チップチューン界随一のインタラクティブアーティスト”サカモト教授”。


さまざまなゲームミュージックを、頭上のファミコンのカセットを入れ替えるだけで即興で弾きこなすという、かなりの強者だ。

ちなみに”坂本龍一”氏ではない。


90年代のJ-POPミュージックをピコピコ音でカヴァーしたアルバム『サカモト教授の8bit ジュークボックス』も記憶に新しいが、最近は人気も赤丸急上昇中だ

しかし、いったいあの仮面の下はどんな男なのだろう。

”坂本龍一”氏ではないことは確かなのだが。。。


今回は、”サカモト教授の”真の姿を暴きつつ、例のアルバムについてもいろいろとお話をお訊きしてみた。





─新作『サカモト教授の8bitジュークボックス』は、90年代J-POPのカヴァーでしたね。


ピコピコ音でアレンジするのがウケていたので、そのアレンジのメドレーをつくってみました。


─選曲は、80年代後半だったり90年代のいわゆるJ-POPでしたが。。。


基本的には自分が好きだった曲を選んでいます。
本当は、もっと、、、40曲くらい候補があったんですけれどね。
ノンストップメドレーなのでキレイに”つなげないといけない”から、その中の曲終わりと曲初めのコード進行とのパズルがうまく合う曲を順番につなげて、最終的に残ったのがあの曲数なんです。


─このCDの聴きどころを教えてください。


ファミコン世代とJ-POP世代とカブると思うんですよね。
だから、このアルバムをつくるときに一番大事にしたコトは、原曲を知っている人がその通りに歌えること。
J-POPって、原曲の印象がスゴく強いので、キーとか、コードとかを転調せず、サビの部分も構成を変えずに、必ず1コーラスはどの曲も歌えるという状態にしてつなげたんです。
だから、ぜひこのピコピコのノンストップで、一緒に歌ってもらえるといいんじゃないかなと。。。


─たしかにちょうどいいところで次の曲が入ってきますもんね。
ちなみに実際に弾いて録られたのですか?
それとも音楽編集ソフトなどを用いてつくられたんですか?


生演奏ではないです。
最初は自分で演奏しながら、コレとコレがつながるというのを確認しましたが、
あとは順番に打ち込んでいきました。


─実演のメガミックスをやられているのかと思っていました(笑)。


音源化しているのは、全部プログラムの打ち込みです。
ライブは生演奏でやりますけれどね。


─もともとの音楽の方向性としては、どんな音楽をやりたかったのでしょうか?


見た目は奇抜な格好をしていますけれど、もともとはインディーズでバンドをやっていて、本当は普通のバンド音楽をやりたかったんですよ(笑)。たまたまゲーム音楽を演奏したら、、、それがネット上で火がついちゃって。。。
もちろん「いろいろな音楽をやるよ!」というスタンスを世に見せていきたいとも考えているので、いきなりオリジナル曲もやるのもいいのですが、”サカモト教授”というとどうしてもゲームミュージックのイメージが強いんですよ。
とはいえ、ゲーム音楽って、すごくキャッチーで、日本だけじゃなく世界的にも通じるし、ヒトは集まるという要素ですごく役には立っていますけれどね。
でも、そこを軸にパフォーマンスにして生計を立てていくのはかなりリスキーだし、権利的な部分でも難しいと思っています。
だから、自分の中のいち通過点としての”サカモト教授”があって、最終的にはチップチューン以外の音楽、クラブシーンでも流せるような音楽もやっていきたいというビジョンはあります。ただ、いまの自分の軸としてはピコピコした音楽をやっていくという感じですね。
ちなみに2012年は、オリジナルでアルバムをつくる予定です。


─音的には、やはり8ビットが基本になるのでしょうか?


“サカモト教授”というキャラでやっていくには、どこかに8ビット要素は入れる必要があるとは思っています。ただ、自分の中にもピコピコした要素がどこかにあるんですよ。純粋なチップチューンだと、ちょっとチープ過ぎな感じがあって、世間一般的にはあまり通じないんです。
ボクはピコピコなのにクラブシーンでも遜色のない音づくりをスタンスに考えているので、どこかにチップチューンの要素は残ると思いますよ。とはいっても、ピアノのソロとか、エレクロニカ以外の楽曲制作もしています。
昨年、担当したニンテンドー3DSの『ブレイブカンパニー』というソフトの音楽は、打ち込みだけどフルオーケストラの音色を使っているし。
とにかく、ピコピコしているけど、クラブミュージック的な音づくりをするようには心掛けています。


─他にはどのような活動を展開されていますか?


昨年は、糸井重里さんのWEBマガジン「ほぼ日刊イトイ新聞」で、”サカモト教授”のキャラを気に入っていただいて、本家坂本龍一さんの娘さん、美雨さんと「サカモト兄弟」というユニットを組んでですね、TK(小室哲哉)ナイトとか、J-popのリクエストに応える会とかやりました。


─この”サカモト教授”という名前にしたのは、やはりテクノミュージック的なところからでしょうか?


いえ、本名がサカモトなんですよ(笑)。
ボクは、小さいときからクラシックピアノを習っていて、大学から軽音楽部で鍵盤を弾いていたのですが、その時は本名でやっていたんです。
でも、回りの友人はやはり「教授!」って呼ぶんですよね。


─まあ、その名前で鍵盤を弾いていたら、そうなりますよね(笑)。


それくらいから”サカモト教授”という呼ばれ方が一般化して、、、その時はこんな風になるなんて思っていないから、それで「いーや」ぐらいに思っていたんですね。あるとき『ニコニコ動画』に自分の演奏した動画を投稿するときに、”サカモト教授”というハンドルネームでしたら、こんな風になっちゃったという感じです。
だから、、、あの時キチンと考えて投稿すればよかった(笑)。


─ちなみに本家の教授とは会われたことはあるんですか?


実際にあったことはないんです。でも、存在は知ってくれているようですよ。
美雨ちゃんが話したりしているみたいなので。


─ご本人の反応を聞いたことありますか?


うーん、、、可もなく不可もなく、そんな感じみたいでしたよ。どちらかというと、あまりよく思っていないんじゃないかと(笑)。むしろ坂本龍一さんのファンの方に、ややこしいとか、失礼だとか言われます。
まあ、それはそうだろうなーと思いながら、そういう批判とか、批評を受けるのも覚悟の上でやっていますから。それに、この名前だからこそ面白くなる部分もあると思うんですよね、それこそ美雨ちゃんとは出来ていなかったし。
いずれは、コイツなら”サカモト教授”だと名乗ってもいいと思われるような、そんな存在になりたいと思ってます。


─とくにYMOが好きだったとか、そういう感じではないんですね。


坂本龍一さんのソロ活動、ピアノには影響を受けています。
『ラストエンペラー』とか、『戦場のメリークリスマス』とかの映画音楽を坂本さんがやられていて、高校のときにコピーしたりしていましたよ。
YMOは、大学とか、、、オトナになってから聞きました。


─個人的には細野晴臣さんに影響を受けているのかなと思いました。
細野さんもナムコのゲーム音楽をやられていたので。
でも、そうではなかったんですね。


そうですね。
でも、ゲーム音楽全般は小さいころから通ってきた道ですけれど。。。


─ちなみにいま何歳なんですか?


もうすぐ32歳です。


─なるほど、32歳だとあの選曲になるワケですね。


そうですね。


─ターゲットを決めてその選曲にしたのか、まさにリアルに自分の好きだった曲を選曲したのか、どっちだったのかなと思って。


あまりターゲットとかを考えずにやりました。
自分が好きな曲はおそらく自分と同世代は好きだからと思ったのと、じつはファミコン世代と、80年代、90年代J-POP世代って、カブるところがあると思っているんですよ。
だから、コレはどちらの層も楽しめるようなものになったと思いますね。



(後編へつづく)






サカモト教授
『サカモト教授の8bit ジュークボックス』






レーベル:ラストラム(LACD-0226A)
価格:¥1,890(税込)
発売中!


>>>レビューはコチラ


サカモト教授 オフィシャルサイト:http://p.sk-mt.com/



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