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Interview : March 26, 2012 @ 16:05

頭上のファミコンはダテじゃない!──”サカモト教授”インタビュー(後編)



チップチューン界の貴公子、”サカモト教授”。


頭上にファミコンつきの仮面をかぶり、カセットを入れ替えるだけで、さまざまなゲームミュージックを即興アレンジで弾きこなすという、かなりの強者だ。


そんな彼の素顔に迫ったインタビューの後編。

何度も言うが”坂本龍一”氏ではない。





─やはりファミコンは好きだったんですか?


4歳からずっとです。


─一番思い出のあるゲームはなんですか?


いろいろあるんですけれどねー。。
ベタな話しをするとRPGの『ドラクエ(ドラゴンクエスト)』とか、『FF(ファイナルファンタジー)』とかは、すごく思い入れがあります。
ちなみに思い出があるゲームソフトは、『たけしの戦国風雲児』です。


─え!それはなぜですか!?


小さいころ、まだサンタさんをほんのり信じていたとき、サンタクロースに「『PCエンジン』がほしい」って手紙を書いたんです。で、クリスマスの朝にプレゼントが置いてあって、袋を開けてみたら、サンタさんからの手紙とファミコンソフトが入っていて。。。その時のソフトが『たけしの戦国風雲児』だったんですよ。


─エエ話ですね(涙)。その手紙には何と書いてあったのですか?


「PCエンジンは、まだお前には早い!」って書いてありました(笑)。ちなみに、ソレって、お父さんチョイスなんですよね。
さらに言うと『たけしの戦国風雲児』は、その後に『スーパーマリオブラザーズ3』を買ってほしいとお父さんにお願いしたら、間違って、また『たけしの戦国風雲児』を買ってきたんです。なので、ウチにはなぜか『たけしの戦国風雲児』が2個あったんですよ。
なんか、、、たけしが好きなんですよね。


─ハハハ(笑)。
『ニコ動』とか、『YOU TUBE』とか、そういうインターネットというメディアに対して、アーティストとしてはどのように見て、どう考えているのでしょうか?


“サカモト教授”は、ファミコンを頭に乗せて、ゲーム音楽を弾くヒトという面が目立ちがちですが、WEBを括用して自分でプロモーションするという、いままでのアーティストとは違った方向の生計を立てているアーティストだと思っています。
知名度があがったのも『ニコ動』だし、『YOU TUBE』もそう。
いまは、毎週『ニコ生』と『UST』で、3000〜4000人ほど集まるライブ配信をやっていて、そうやってWEBを括用して、リスナーと自分の接点を持つようにしています。


─具体的にはどのように接点をもたれているのですか?


ツイッターでつぶやくことに対してリツイ—トしあったりとか、生放送でコメントを拾ってリクエストを受けたりとか。
それに、生放送で次のライブの告知をしたら、ドーンとソールドアウトするような関係になっているんですよ。だから、コレからの時代はWEBを括用すれば、ある程度なら個人でもプロモーション可能だと思います。
制作環境も廉価になっているので、いまなら家で卓録で、クオリティの高いものもつくれるし、アマゾンのeタク販売とか、ストアとかで、個人でもモノも流せる。
あとはWEB上でうまくプロモーションできれば、最低限食っていけるだけの収入を得るくらいはいけるワケですよ。


─なるほど。
そういえば20代とか30代のインターネット世代は、ゲーム世代ともカブりますよね。


以前の音楽アーティストのスタイルって、CDやレコードなどの音源をつくって、ツアーして、というスタイルでしたよね。
ボクの場合は、物理的な距離を問わず毎週ライブをしていて、しかも日本全国ないし、世界中からお客さんがネットで観に来てくれているんです。その影響もあって、例えば九州でライブしたりすると、実際に日本全国から九州に観に来る人がいるんですよ。


─実物を観にってコトですか?


そうです。いつもネット観ているモノを、実際に観に行きたいという感じで、来てくれるんです。
じつは今度、海外、スウェーデンでライブをやる話が進んでいるんですけれど、それを発表したら、「いまからお金をためる!」みたいな話しになったんですよ。どこでやっても全国から来るから、ツアーの概念がちょっと違うんですよね。


─USTはいつ放送されているんですか?


不定期です。
土曜日の夜9時がベースで、週末の金土日のどこかでやっています。


─プロフィールには、普段は会社員と書かれていましたが、どんなお仕事をやられているんですか?


ゲームをつくっています。
家庭用ではなく、最近流行りのソーシャルアプリ、スマホとかブラウザーでやるヤツ。アレの開発をやっています。


─なるほど、だいぶ近いことをやられているんですね。


そうですね。ゲームをつくりつつ、音楽もやりつつという感じです。
じつは会社でもこの音楽活動は認められていて、、、ホントは副業になるんですけれどね(笑)。


─最近は、テレビ番組にも出られていますよね。


NHKでドキュメンタリーを組んでもらいました。


─そのときもファミコンが頭にくっついているマスクの格好なんですか?


はい。その格好で、真面目なことを話してました(笑)。
見た目とのギャップというのが楽しんですよ。
ツイッターは、基本的にはアホなことをつぶやいているのですが、たまに真面目なことを言うようにしているんです。もちろん音楽は真面目につくっているし。だから、、、そのギャップが楽しいのかな。
まあ、そうやって演出していると言ってしまったらちょっとイヤらしい話ですけれどね。
ただ自分としては真剣にやっているつもりです(笑)。


─ファミコンって、日本の象徴っぽいから、世界に行ったら食いつくと思いますよ。
ちなみにゲーム音楽以外で影響を受けた音楽は?


じつは、けっこうジャズ畑だったんです。ジャズとかクラブジャズとか。それこそジャズピアニストだったらチック・コリアとか、ハービー・ハンコックとか、、、60年、70年代のジャズピアニストを聞きまくってました。
耳コピが得意だったので、コピーして弾いたりもしていましたし、その辺のピアニストの影響は受けていますね。たまたま”サカモト教授”は当たっただけなので、もともとは京都のインディーズシーンで音楽をずっとやっていました。


─京都のインディーズシーンは、現在はどんな感じなのですか?


最近だと、”モーモルルギャバン”とかが活躍してきたけれど、”くるり”以降はあまりパッとしない感じですよね。ただ基本的には学生の街なので、初期衝動全開にやりたいことやっているという感じですよ。だから、いろんなジャンルがあって、バラエティに飛んでいます。
ボクがいたのは京大西部講堂とか、吉田寮とか、コアな音楽をやっている人たちが集まる界隈でした。


─『8bit学園』はどんなことを教えているんですか?


講義と実践とに別れていて、講義の方は「ゲーム音楽とは何か?」とか、毎回テーマがあって講義しています。あとはハードウェアの進化によって、ゲーム音楽がどういう風に変化して形成されたのかを分析したり、わりとガチに、ボクがいままで研究してきたことを発表していますね。
実践の方は6回にわたって授業をしていて、内容は”架空のRPGをみんなで相談しながら決めて、そのサントラをテーマごとにつくる”という感じでやっているんです。だから、ごく普通の授業をやっている感じですね。


─UST配信をやられているとのコトですが、どのようなカタチでやられているですか?


手を映して、マイクをつけて、演奏と声が流れるという感じです。PCの画面を目の前においているので、リクエストを拾ったりとかもしてますよ。


─リクエストを拾っているんですね。それはスゴい!


チャットとか、ニコ生のコメントで拾ってリアルタイムにアレンジしながら、ノンストップで弾いていくんです。
それに一回の放送でだいたい3000人くらい集るので、ライブハウスでそんなライブをやるとしたら大変ですけれど、WEBでは手軽にできてしまうというところがスゴいですよね。
放送経由で、ツイッターをフォローされたりして、そこからまたやり取りがはじまって、ライブに来てくれたり。。。そんな感じでコミュニティが少しずつ大きくなっているんです。


─まさにSNSのスゴいところですよね。


ボクとファンだけの関係だけではなく、そこからファン同士のコミュニティも生まれて、輪もひろがり始めているので、いい連鎖になっていると思います。


─今後の動きとして考えていることはありますか?


今年は、海外でのプロモーションを考えています。
ライブとか、メディアに出るとか、、、そういう動きをレコード会社と協力してやっていきたいですね。”サカモト教授”というと変な格好してるし、ニコ動出身のアーティストとか、そのイメージが強いんです。だから、一度世界に出て、世界での実績をつくって、
まさに”世界のサカモト教授”という存在になった上で、日本での地位を固めたいですね。


─海外で売れてから日本で売れるという逆輸入的な流れの、、、まさにYMO方式ですね(笑)。


そうです。
だから、今年は海外での勝負の年だと思っています。


─ありがとうございました。


ありがとうございました。


(おわり)






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