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Interview : June 6, 2012 @ 18:28

“伊藤ゴロー”にインタビュー(前編)



作曲家/ギタリストの”伊藤ゴロー”が、アルバム『GLASHAUS』をリリース。


“MOOSE HILL”や”naomi & goro”としても活動し、すでに日本におけるブラジル音楽シーンのファーストコールといっても過言ではない彼。


今作では、彼の分身でもあるギターを中心としたインストゥルメンタルの曲を展開している。


今回は、そんなゴローさんに、新作のコンセプトを中心に、音楽的原点、そして次なる野望など、いろいろとお話を聞いてみた。






─今作は、コンセプトがありきで作ったものなのでしょうか?それとももともと録りためていたものをまとめたのでしょうか?


ギターメインのインストのアルバムをつくろうというコンセプトがあってからの曲作りだったので、コンセプトありきです。
でも、コンセプトというか、機会があればやりたいなと思っていたことなんですよ。


─ストリングスも入ったりして、クラシックにも近いような感じでしたね。


とりあえずは、ブラジルでレコーディングしようと、当初から決めていたんです。
以前、”naomi & goro”でブラジルで録音したのですが、現地のミュージシャンとのつながりもできていたし、すばらしいミュージシャンたちなので、ソロアルバムも向こうで録ろうと思っていたんですよね。でも、ボサノバやショーロなどのブラジル音楽とは少し違う音楽をブラジルで録りたかったんです。


─ゴローさんのイメージって、やはりボサノバとか、ショーロとかのラテン・ブラジル音楽のイメージが強いんですけれど、そういえば前にロックな感じのアルバム『Cloud Happiness』も出されていましたよね。ゴローさんの原点はどこらへんにあるのでしょうか?


『Cloud Happiness』は、自分の青春時代じゃないですけれど、淡い思いをロックに抱いていた10代後半に作った曲中心で、自分のそういう部分を吐き出した作品だったんです。


─ちなみに10代後半とかはどんな音楽を聞いていたんですか?


バンドをやり始めたころで、ロックを聞いていましたよ。
“ビートルズ”などのブリティッシュロック、ちょうどパンク、ニューウェイヴが流行っていたときで、そういうイギリスのバンドを聞いてました。


─そこから現在のボサノバとかブラジルの音楽方面にどのように流れていったのですか?


ボサノバは、家にアルバム『GETZ/GILBERTO』があって、父親が好きだったんですよ。だから、中学の頃とかから耳にしていました。
70年代にちょっとしたブームがあって、ラジオで流れていたりしていたんですよ。それを聞いて、クラスの中でちょっとしたブームだったんです、友達と2人ぐらいでね。それが中学1年か2年の頃。だから、音楽としてはずっと聴いていたんです。
ただ、いまみたいにブラジル音楽がCD屋さんに普通にはなかった、輸入専門店でしか取り扱っていなかったから、そこまで深く掘り下げてはいなかったですけれどね。それに当時は、自分の中では少し”違う”というか、自分で演奏しようとは思いませんでした。でも、だんだんそっちに歩み寄って来てきたというか。。。


─なるほど、元のサヤに戻ったという感じですね。


すごく遠回りしたんですけれど、自分の音楽のスタイルを探していた、ギターのスタイルも自ずと導かれたというか、最初からやっていればいいものをね(笑)。


─いろいろあって、こっちの方が自分に合っていると認識されんですね。


そうです。
その辺に落ち着いた感じですよ。


─さて、今作はクラシック的な要素も感じたのですが、やはりクラシックにも興味はあったんですか?


子どものころからクラシックも聴いていたんですよ。


─もともとピアノとか、何か楽器を習っていたとか?


いや、習い事はやっていないです。
やりたいなと思っていたような気はするんですけれど、そういう環境じゃなかったのかな。
でも、音楽は好きで聴いていましたね。


─今作を最初に聴いて聞き終わったときの感想が、すごくいい映画をやった日曜洋画劇場の後の時間みたいな印象でして、「今夜は気持ちよく寝れるな」というか、「次の日、月曜日だし、寝ちゃったまま起きないでもいいか」というか、つまり死んでもいいかなというか。。。とにかく、そんな印象でした。


それ、いいですねー(笑)。


─”グラスハウス”というタイトル名にした理由は?


“温室”という意味ですが、いろんな解釈があるんです。自分の家の庭に温室があったらいいなと、淡い憧れがあってですね。小学生の時、学校の中庭に温室があったんですけれど、ひとりで入ると独特の、なんとも言えない気分になった記憶があるんです。


─草木が生い茂っている感じですよね。


生い茂っているんですけれど、狭くとざされていて、開放的な空間でもない。不思議な光というか、日常ではない感じがあって、なんか好きなんですよ、温室が。
まあ、”なんか好き”ぐらいなんですけれどね。


─単純にコトバとして好きということなんですね。


温室の漠然としたイメージです。日常だけれど、日常ではない。
そういうところに惹かれるものがあるんですよね。


─1曲目がタイトル曲ですが、この曲は完全にそれをイメージして作られたのですか。


曲を作ったときはタイトルまで具体的なイメージはなかったんですね。でも、いままで曲をつくるにしても、ある程度アンサンブルというか、ギターだけの世界は考えてなかったんですけれど、今回は、ピアノとかと一緒にやっていますけれど、ギター一本だけで再現できることを目指して作りました。


─ストリングスバージョンも収録されてますね。


今回は、チェロの”Jaques Morelenbaum(以下”ジャキス”)”にストリングスをお願いしました。


─バージョン違いを入れたのは、どういう思いというか意図だったのですか?リミックスとかならわかりますけれど、なかなかないですよね。


どっちの世界もいいなと思ったんですよ。ギターとピアノの世界も完成されていて、捨てがたかったというか。。。
だから、ふたつのバージョンがあるのがベストかなと思って。


─もう一曲、バージョン違いが入っているのが「ウィングス」なんですけれど、コチラも同じような理由からですか?


そうです。僕とジャキスとふたりで録ったものと、ピアノと録ったもののふたつのセッションがあって、それを入れました。


─ちなみに、この曲は先に曲名ありきですか?それとも後からつけられたのですか?


全部、曲名は後なんです。
あまり曲名から先に作るってことは無くて、タイトルは作ったあとにつけていますね。


─歌が入っているときは?


それも曲からです。
アルバムタイトルが先というのはありますけれどね。


─「ウィングス」に関しては、目を閉じると、ゆっくり鳥が飛んでいるイメージが浮かぶんですよ。翼をゆっくり羽ばたかせているイメージ。これはスゴいなと思ったのでタイトルが先なのかと思いました。


曲は、具体的なイメージがほとんどないところで作るのが多いんです。いつも、風景とか限定されたものはないですね。でも、だいたい曲が出来て、パッケージとかいろいろ想定していくと、自ずとタイトルが決まってくるんですよ。
今回のパッケージデザインは”平出 隆”さんにやっていただいたんですけれど、”ドナルド・エヴァンズ”の鳥の切手とか、まさにその通りのイメージになりましたね。だから、「ウィングス」と名前をつけてから、”そういえばジャケットに鳥があるよね”ってくらいで、全然意識していないんです。
でも、掛け離れたイメージのものではないのは、自分で知っているというか、まあ、自分が選んだ切手でもあるので。そういう風に、うまくなってたりして。。。


─やはり、なんとなく元サヤに収まっていく感じなんでしょうかね。


そうです。
いつも思うんですけれど、最初から思っていたようなアルバムのタイトルになったり、曲のタイトルになったりするから、おもしろいですよねー。



(後編につづく)






伊藤ゴロー
『GLASHAUS』





レーベル:SPIRAL RECORDS(XQAW-1102)
価格:¥3,000(税込)
発売中!


伊藤ゴロー オフィシャル:http://itogoro.jp/
『GLASHAUS』特設サイト:http://www.goroito-glashaus.com


>>>レビューはコチラ


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