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ブラインドからのぞき見た世の中 : October 12, 2012 @ 13:34

ブラインドからのぞき見た世の中 VOL.74『安全な放射性物質とは?』



さて、3.11よりちょうど1年と7ヶ月が経ちました。


被災地以外の世間では、ほぼほぼ通常の生活を営んでいます、当たり前ですが。

しかし、津波の被害が大きかった被災地では、まだまだ復興に向けて動きはじめたばかり。

ガレキなどがそのままのカタチで残っている場所がまだまだたくさんあるし、
事業を再開する方も、資金繰りや人手不足など、さまざまな苦労をされていますが、
復興に向けてはゆっくりゆっくりと動きはじめているようです。


残念ながら、いまだまったく先が見えていないのが原発事故の影響を受けた福島県北東部。
続々と警戒区域が解除されていますが、じっさいはまだまだ放射線量も高く、ヒトの住める状態ではない場所も点在しています。

いろいろと調べてみると、福島県近隣の県の放射線量も少しづつ上昇しているようですね。
じつは、ワタクシの住んでいる近く公園(それは都内ですが)の放射線量も半年前に測ったときよりも若干上昇しておりました。
それについてはいろいろな意見があるかもしれませんが、ほぼほぼ間違いなく福島第一原発事故の影響だと思っています。


国や行政は「除染すればなんとかなる!」なんてことをいまだオウム返しのごとく繰り返して言っていますが、
山や森、野原など広大な土地をいったいどうやって、どこの予算でどう除染するのでしょうか?
どうも現実的はありませんよね。


原発事故の処理も4号機の建家の解体がはじまるなど少しづつすすんではいるみたいですが、
肝心の原子炉解体、いわゆる廃炉まではなんだかんだであと40年くらいはかかる予定。
40年というのはあくまでも4号機だけの話で、他の原子炉とあわせると、、、いったい何年かかるのやら。
特に2号機は、建家内の放射線量も高く、中身も見れていない状態で、まったく手がつけられない状況にあるようです。

一応4つの原子炉自体は、冷温停止状態にはなっている模様ではあるようですがね。
模様というのは、実際のところ炉の中身の状態を誰も見ていないですから予想でしかないのです。
ちなみに冷温停止状態というのは、冷やし”つづけて”いれば大丈夫というだけで、冷やすのを止めればすぐに熱を発するワケですよ。
この冷やし”つづける”という行為が意外と大変なんです。
先日も冷却装置が故障したりと、残念ながら現状はかなり良くない状況がつづいています。

最近は、こういった原発の状況もほとんど報道されなくなってしまったので、
事故は収束したとか、事故があったことすら忘れはじめている方もいらっしゃるようですがね。


原発事故から1年7ヶ月経った最近になって、
やっと1号機から4号機まで、それぞれの原子炉が爆発事故にまで至った経緯が分かりはじめてきているようです。

注目すべき点は、これまで事故における地震の影響はまったくなかったというさまざまな政府関連の報告書が提出されていましたが、実際には地震の影響もあったという見解がではじめていること。

特に、2号機の事故においては、炉心本体は耐震構造で問題はなかったのですが、
重要な機械につながるパイプなど、原子炉外部の配管系が地震のために曲がったり、損傷していたというのです。
そのためにベントができず、原子炉内部の圧力が上昇して、原子炉を損傷するまでに至ったようです。

ま、たしかに、原子炉自体は地震の影響は受けていないですから。。。ものは言いようですけれどね。

重要な部分の耐震はしっかりしていて、その重要な部分へつながる外部の配管などの耐震性が弱いという状況は、
じつはどこの原発においても同じ構造らしく、今回再稼働しはじめた大飯原発なんかもその状況のようです。

そういう事実があって、地震の影響はなかったという報告書を元につくった安全対策ストレステストをクリアしたから再稼動するなんて、ホントにあり得ないですよね。


もうひとつ、事故の新事実として、事故が起こったときに必要なものを圏外から事故現場(汚染地域)まで運ぶ、
運搬の方法がなかったというのも、新しい事故原因としてあげられてました。

電源喪失の際、現場には型の合わない自家用バッテリーしかなかったらしく、
型の合うバッテリーを原発まで持っていけなかったということらしいのです。

つまり、事故後対策として、そういうシステムが構築されていなかった。

すぐにでも送ってほしいのに送るための足がない。。。
足がないというのは、放射線量の高い地域に流通業者がみんな行きたがらなかったということらしいです。

業者からしてみたら当然かもしれませんが、こっちからしてみたら、なんじゃそりゃ!?って感じの話しですよね。

政府や電力会社は、そのようなシステムも整備せず、
「安全ですから!」とか、「事故なんておきませんから!」を40年以上も繰り返してきて、想定すらしていなかったワケですよ。
しかも、この事故が起きるまでそんな状況に陥るなんて、彼らも、もちろん我々も知る由もなかったのです。
そんな不始末のために、故郷が奪われたヒトがいる国なんて、ホント残念でならないですよ。

原発って、そんな状況だったんですよね。
いままでのことをまとめて言うと、なんの安全対策も事故後対策も、いや対策なんて言葉すらなかったということなんですよ。

これは、政府だけの責任ではなく、我々がキチンと声を上げなかったことにも責任はあります。

「ホントに大丈夫なのか?」、「何がどう安全なのか?」。
疑問に思うことは、ネットを使ってもいいですし、デモに参加するでもいい、とにかく声を上げていく必要があります。


もちろん今後も原子力に関する研究は必要不可欠ではありますよ、科学的発展のために。
だけど、やはり原発に手を出すのはまだ早い。
いや、今後も手を出さない方がいいと思いますね。

結局、安全な放射性物質なんていまのところ存在しないワケですから。



松下誠「First Light」


旅路 良




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