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Interview : March 31, 2010 @ 12:52

Japanese Soul!!インタビュー “在日ファンク 浜野謙太”(後編)




Japanese Soul!!インタビュー
浜野謙太(在日ファンク/サケロック)× Japanese Soul!! Crew 対談(後編)


インストバンド”SAKEROCK(サケロック)”のトロンボーン、そしてセックスシンボルとしてもお馴染みのハマケンこと浜野謙太が、自身のバンド”在日ファンク”の1stアルバム『在日ファンク』を引っさげ、ラジオ番『Japanese Soul!!(ニッポンの魂)』に登場した。

ファンクだったのか、ファンクじゃなかったのか、いやファンクじゃないのかもしれないと思いながらも、まるで幻覚でもみせられたかのように否応無くハマケンのファンクさを感じさせられた前編。

ひきつづき、後編もタップリと浜野謙太の”ファンク”について、熱く語っていただいた。


文・構成・写真:カネコヒデシ






在日ファンクができるまで


カネコ:いやー、しかしファンクですね。

ハマケン:
ファンクなんですか!?
まだ、このオモシロふくみのある雰囲気に慣れないんですけれど(笑)。

DAISK8:ボクの息子がNHKの『ニャンちゅうワールド放送局』という番組の「メガネのうた」が大好きなんですけれど、そこでトロンボーンを吹かれているのが浜野さんなんですよね。

ハマケン:
そうなんです。いまスゴく子供たちに大人気なんですよ。でも、いちばん人気のあるのが、やっぱりギターを弾いているリーダーですよね。。。

カネコ:
まあ、しかたがないですよね(苦笑)。

ハマケン:
トロンボーンのお兄ちゃんには別に会いたくないですよね(笑)。

カネコ:
そういえば、ライブで飛びましたよね、トロンボーンのヒト(笑)。

ハマケン:
そうですね、ちょっと飛ばせていただきました(苦笑)。

カネコ:
生で見ましたよ!飛びながらトロンボーンを吹くっていう偉業を。

ハマケン:
最近出たDVDの「偶然の記録」を参照していただければと思いますけれど。

カネコ:
スゴかったですね!感動しました。

ハマケン:
ホントですか!もう二度とやりません(笑)。



─「段ボール肉まん」


カネコ:
では、”在日ファンク”のアルバム『在日ファンク』からの一曲です。「段ボール肉まん」という曲ですけれど、この曲はすばらしいですね!
“在日ファンク”自体はどういう意図で始められたのですか?

ハマケン:高校を卒業してから、ベースの村上啓太と一緒にずっとやっているバンドなんです。
最初は「東京コミックボーイ」みたいなフザけた名前をつけていて(笑)、中央線界隈のライブハウスを中心に活動していたんですよ。そのときに対バンのオジさんバンドがスライ(& ザ・ファミリストーン)の曲とかをカバーしていて──、それこそ日本語でやっているワケですよ。でも、ソコとは一線を画したいという気持ちがありつつ、幸せになりたいとも思いつつ(笑)、ずっとやっていたバンドなんです。
一応、最初からファンクをやっていたつもりなのですが、あるときジェームス・ブラウン(以下J.B)をキチンと聴く機会があって、「こんなアヴァンギャルドなヒトはいないぞ!」と思ったんですよね。

カネコ:
え!それまでは聴いたことがかったんですか?

ハマケン:
いえ。聴いてはいたのですが、キチンとは聴いたことがなかったんです。
イベントで誰かがDJでかけていて、それがJ.Bのライブ盤でした。それまではベストで「ナイトトレイン」とか、そういうソウルな感じのものしか知らなかったので、そのライブ盤がめちゃくちゃアヴァンギャルドでスゴく感動したんですよ。

ラテン・ラス・カズ:
もともとJ.Bを聴いていて、音楽を始めたワケではなかったのですか?

ハマケン:
最初は──、高校のときはスカコアでしたね。

ラテン・ラス・カズ:
いまの音の感じだと、はじめから「J.Bが大好きです!」という感じでやっている印象がありますよ。

ハマケン:
そうではないんですよね。高校を出て、スカコアをやりつづけていたら、中央線界隈のライブハウスで──。

ラテン・ラス・カズ:
そんなに多いんですか(笑)?中央線沿いが。

ハマケン:
というか、言いたくなっちゃうんですよね、「中央線のオジさんでしょ!」みたいな(笑)。阿佐ヶ谷アピカというライブハウスがあって、そこに出演したときに一緒だったのが、”東京ホームランセンター”という、歴史があるけどそれほど知られていないおじさんバンドで、いまも活動しているとは思うんですけれどね。スゴくカッコイイ ジジイたちだったんです。で、どうやら彼らの親分はJ.Bらしいというのを聞いて──。

DAISK8:
“直結”なんですね(笑)。

ハマケン:
ボクはいちばんが好きだったので、そうしたら「やはりJ.Bだろ!」ということになって、そのスタイルに近づけたんです。

カネコ:
この曲を初めて聴いたときに、かるくJ.Bを越えているなって、ホントに思いましたよ。2010年のJ.Bは浜野謙太だなって。

ハマケン:
マジッすか!どんなところがそんな──ドコっすか(笑)!?

カネコ:
無駄なシャウトとかね(笑)。

ハマケン:
ハハハ(笑)。
ボクは、”オーサカ=モノレール”の洗礼も受けているんです。でも、在日ファンクは自分でやっていながら、どうしてもファンクに聞こえないんですよね。だから、そう言ってもらえるとうれしいです。

カネコ:
でも、”オーサカ=モノレール”ともちょっと違いますよね。どちらかというと”在日ファンク”の方がJ.Bに近い感じがします。

ハマケン:
ホントですか?

DAISK8:
オーサカ=モノレールだとソウルフルな感じのイメージが強いですよね。

カネコ:
いい意味で洗練されているのが”オーサカ=モノレール”で、”在日ファンク”はかなり粗削りだけど、なんだか分からないけれどシッカリまとまっているんですよ(笑)。

ハマケン:
そういうところを楽しんでもらえるもんなんですね、ヒトって(笑)。

カネコ:
あとは、歌詞です。

DAISK8:
コトバのチョイスはありますよね。

カネコ:
時事ネタ的なところもありますよね、「段ボール肉まん」って。

DAISK8:
でも、けっこう前の話しですからね、そんなことあったなって(笑)。

カネコ:
これはサケロックのときに”押し語り”でやったりしていましたよね。

ハマケン:
“サケロック”と”在日ファンク”で、制作がドッチかが先だったりするんですよ。「段ボール肉まん」は、最初に”在日ファンク”でつくった曲です。でも、なんで「段ボール肉まん」とか言い出しちゃったんですかね(笑)。

カネコ:
時代性だったんでしょうね(笑)。

ハマケン:
でも、最近だったら「毒入り餃子だろ!」と言われたのですが、そこはボクは譲りたくなかったんですよね。

DAISK8:
“段ボール”というコトバも”肉まん”というコトバも、”ドク入り餃子”よりはファンクな感じがしますよね。

ハマケン:
“段ボール”って、すごくいいひびきだなって(笑)。




─ハマケンが影響を受けたニッポンの曲



カネコ:では、つぎは浜野くんが影響を受けたという日本の曲の紹介ですが。。。

ハマケン:
そうですね、このアルバムをつくるにあたって影響を受けた曲ですかね、今回は。

カネコ:
その音楽はどなたの曲でしょうか?

ハマケン:
“ZAZEN BOYS”の「Honnoji」という曲です。





カネコ:
曲がかかった瞬間にみんなで「あー」って言っていましたよね(笑)。

ハマケン:
ボク、全然”ナンバーガール”とか聞いたことがなかったんです。本当に失礼ながら最近知りまして──、ホントにスゴいなと。
“在日ファンク”の歌詞で、悩んでいた時期があったんです。メンバーのひとりに「ハッキリ言って、在日ファンクの歌詞はまったく理解できない」とカミングアウトされて。。。その時は、すごく深刻な会議になりました(笑)。

カネコ:
歌詞は、いつもどうやって考えるんですか?

ハマケン:
ボクも、みんな「どうやっているのかな?」って。
スチャダラのボーズさんに聞いたりしたんですけれどね。
感動したのは、向井さんの曲はこんなにシリアスな曲なのに、タイトルが「本能寺」ですよね。意味はあると思うんですけれど、ボクには限りなく意味不明なコトバに聞こえるワケでして、でも、それがバシっと説得力があるように聞こえるんですよ。それに向井さんが椎名林檎さんと一緒にやった曲があるんですけれど、ラブソングなのに「犬畜生みたいになりたいのだ」という歌詞があったりして、さすがにこのヒトはスゴいと思いましたね。だから、歌詞って、ホントになんでもありなんだと思いました。

カネコ:
いわゆるコトバ遊びなんでしょうね。
細野晴臣さんの歌詞なんかは、完全にコトバ遊びですよ。以前、(高橋)幸宏さんにインタビューしたときに、
細野さんは、学生のときからノートにビッシリと、思い付いたコトバを書きつめていたらしいんです。だからコトバの宝庫なんですよね。

ハマケン:
でも、シリアスに聞こえないコトバ遊びって、あまり好きになれないんです。そういうヒトっていっぱいいるじゃないですか?ファンクとかだと特に。
やはり、向井さんとか細野さんもそうですけれど、何か思想がなんかあるんだろうなと思います。どういう思想か、深くまでは分からないですけれどね。それがすごくカッコイイと思います。
その話しを経て、こんな曲でいいんだという曲ができちゃったワケなんですけれど(笑)。

カネコ:
「最北端」ですね(笑)。



─「最北端」


ハマケン:
そうなんですよ。
完全に私情なんですけれど、コレは旅行をしたときの歌詞で、能登半島の最北端の話しなんです(笑)。

カネコ:
なるほど。

ハマケン:
ソコは、ホントに何も無くて。でも、この方向の何百キロ先が平壌とか、何百キロでウランバートルとかって、海に向かって矢印の標識があるんです。それがホント北なんだなって。
“北”というコトバは、イメージ的にあまりよくないんですよね。だから、その標識を見たときにすごく怖くなったんですけれど、こういうのって逆にファンタジーでもあるなとも思ったんですよ。

カネコ:
なるほど、たしかにそうですね。

DAISK8:
“北”って、未知の世界なだけにね。

ハマケン:
あとは、”死”を連想させますよね。演歌とかも、”北”じゃないですか。アレは何でなんだろうって思うんですよね、わざわざ(笑)。

カネコ:
ツラい感じですよね(笑)。

DAISK8:
“北”へいくと、魂がこもる感じはしますよね。逆に”南”へいくとユルくなりますよ。

カネコ:
たぶん、南の演歌がレゲエとか、あの感じのユルいビートに変わるんでしょうね。
リクルマイちゃんにイベントでライブをやってもらったときに、「北酒場」をレゲエでカバーしていたのですが、全然違和感がないんですよ。

ハマケン:
彼女はすごいコブシがきいていますよね。

カネコ:
たぶん、おなじなんじゃないですか? つながっていると思うんですよね、コブシ感というか──。

DAISK8:
たしかにロックステディとかは、演歌みたいな感じですからね。

ハマケン:
だから、やってよかったなって思います(笑)。とにかく、分からない方向にいきたいんですよね。

カネコ:
在日ファンクとしては、今後はどんな感じでやっていくとかあるんですか?

ハマケン:
今後は──、先日のライブで思わずボクが叫んでしまったコトバが、メンバーに意外とウケたんですけれど、それが「新しい演歌をつくろう!」って。

DAISK8:
ソレ、いいですね!

ハマケン:
ライブを観て「こんな音楽を初めて聴いた!」と言ってくれている人もいるので、固まるのだけは嫌だなと思っています。漠然と分からない方向へ行きたいというのが、いまの目標ですね。
あとは、、、客が来て欲しいです(笑)。少し大きいところでやりたいですよ。ファンクとかレゲエとかは、大きいところで、爆音で聴くのが気持ちいいと思うので。そういうところで、ライブをやれるようになりたいですね。

カネコ:
ありがとうございました。


(おわり)











・在日ファンクプロフィール



新しい時代のディープ・ファンク・バンド、在日ファンク。高祖ジェイムズ・ブラウンから流れを汲むファンクを日本に在りながら(在日)再認識しようと、音、思想、外観あらゆる面から試みるその様は目を覆うものがある。しかし、それこそがまさにファンクだということに彼らはまだ気付いていない。
メンバー:浜野謙太(Vo&リーダー)、村上啓太(Ba)、仰木亮彦(Gr)、永田真毅(Ds)、福島”ピート”幹夫(Sax)、久保田森(Tb)、村上基(Tp)
http://www.zainichifunk.com/
http://www.myspace.com/zainichifunk


□アルバム『在日ファンク』



価格:1,980YEN(税込)
レーベル:Pヴァイン・レコード
発売中!

収録曲
1. Intro Funk
2. 最北端
3. きず
4. のこってしまった
5. 神頼みFunk
6. 罪悪感
7. ダンボール肉まん

ボーナストラック
8. 京都(Live Version)
9. 最北端(Live Version)



・Japanese Soul!! Crewとは



日本に存在する多くの名曲をオシャレに、且つアカデミックに紹介するプロジェクト。
メンバーは、プロジェクトによって流動的だが本インタビューでは、カネコヒデシ、LATIN RAS KAZ、DAISK8(SWINGBOYS)、Kaoru(Kaoru with Lovemarmalade)、イクミの5人。


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