Tokyo News : October 8, 2013 @ 16:14
町で生きる、町を問う──町の鼓動を感じる芸術祭『小名浜本町通り芸術祭 2013』
福島県いわき市の小名浜本町通りを舞台にしたアートフェスティバル『小名浜本町通り芸術祭』が、2013年10月13日と14日の2日間わたって開催される。
『小名浜本町通芸術祭』は、地元小名浜にあるオルタナティブスペース『UDOK.』のメンバーが中心となって企画。
会場となる、福島県いわき市小名浜の本町通りでは、シャッター街となってしまったエリアや、震災による建物の解体で空き地になってしまった場所、店舗などにさまざまな作品を展示。
多発的ワークショップなども開催され、町中をアート作品でうめつくそうというものだ。
ちなみに、福島県いわき市小名浜は、かつて磐城市とよばれ、港町、工業の町としてさかえ、戦後の高度経済成長、混迷時代を生き抜いてきたという場所。
働き盛りの男性諸君には、東北最大の風俗街としてもおなじみの土地だ。
しかし、時代の荒波にもまれ、ドコの田舎町にもあるような若年層の町ばなれからはじまる人口減少、過疎化同様、小名浜の町もいつしかシャッター街に。
そして、追い打ちをかけるような3.11の大震災と福島第一原発の事故。
町はさらにすたれ、復興の兆しもなかなかみえていない。
そんな町をつかって、町のあらたな可能性を見いだそうと、地元のクリエイティビィティなヒトビトが立ち上がって、はじまったのがこのプロジェクトなのだ。
小名浜本町通りをさまざまなカタチでつかい、芸術を通して町と向きあい、これからの町の姿をさぐる。
それがこの『小名浜本町通り芸術祭』の目的。
まさに”町で生き、町を問う”。
試行錯誤のアートフェスティバル。
ぜひ、この機会に福島県いわき市小名浜へ足をはこび、町の鼓動を聞いてほしい。
2013年10月13日-2013年10月14日
『小名浜本町通芸術祭』
会場:
いわき市小名浜本町通り各所
□大森克己写真展「すべては初めて起こる」
会場:タウンモールリスポ1F センタ—コート
日本を代表する写真家、大森克己の作品がタウンモールリスポに
写真家・大森克己が2011年の春に桜に導かれて東京から福島へ旅をして撮影された作品「すべては初めて起こる」。東京をはじめ、郡山や会津若松など県内各地でも写真展が開催されてきたが、『小名浜本町通り芸術祭』の特別展として、小名浜でも開催される。
桜は、2000年頃から大森が撮り続けていた重要なモチーフのひとつであり、今回展示される作品は震災直後の4月、東京、浦安、いわき市、福島市、南相馬市、飯舘村の各地の桜の樹の前で撮影されたもの。
写真は小名浜のシンボル、タウンモールリスポのセンターコートに展示される。どこにでもあるような地方の商業施設で、大森の写真がどのような化学反応を起こすのか。通常のギャラリーではないだけに、場所性が写真に与える影響なども鑑賞のポイントなりそうだ。
□白井亮×MUSUBU写真展「桜の森 夜の森」
会場:カフェ プチプランス
小名浜出身の写真家・白井が撮る、夜の森の桜
「桜の森 夜の森」は、小名浜出身の写真家・白井亮が、同じく小名浜出身の末永早夏、宮本英実の2人による団体「MUSUBU」と共同で行ったプロジェクト。震災後の桜の名所、富岡町夜ノ森を撮影した美しい写真が、人の営みの尊さや自然の偉大さを訴えかける。
プロジェクトでは、県内外各地で「移動写真展」として巡回してきた。県内の仮設住宅でも展示され、さまざまな人たちのコミュニケーションを生んできた。もの言わぬ桜だからこそ、見た人たちの内面にさまざまな想いを去来させるのだろう。
会場は、本町通りから少しだけ奥に入ったカフェ「プチプランス」。市民の憩いの場となっているカフェだ。ゆったりとコーヒーでも飲みながら、美しい桜の写真をご覧頂き、そこで感じたことや思ったことを、お互いに話してみてはいかがだろうか。
□丹英直写真展
会場:タウンモールリスポ1F 高木屋簡易カフェブース
小名浜が生んだ巨匠・丹英直の作品を目の前で
雑誌『BRUTUS』や『number』など、日本のクリエイティブ最前線を走るメディアにも写真を送り出し、数々のアーティストや文化人、アスリートたちを撮影している小名浜出身の写真家、丹英直。今回は、新たに額装された2枚の写真を、チーズドックでお馴染み高木屋のカフェスペースに展示する。
震災後より、地元の小名浜を第二の制作拠点と位置づけ、東京と小名浜を往復しながら、精力的に活動を続けている丹。2011年秋には、平のギャラリーで凱旋の個展「NEW YORK STATE OF MIND」を開き、高い評価を受けた。ドキュメントタッチでその人らしさを静かに切り取る手法は、有名人であっても、市井の人たちでも変わらない。小名浜出身の“巨匠”の作品を間近で見られるまたとないチャンスだ。
□あめのいち イラスト作品展
会場:タウンモールリスポ1F イワキ写真館
小名浜出身の新鋭あめのいち初お目見え
今年いわき総合高校を卒業し、現在は大学で美術を学ぶイラストレーターあめのいちの作品展。アニメのような動的な質感がありながら、、絵画のような繊細で柔らかなタッチで描かれる。高校時代からその才能を発揮し、将来を期待される小名浜出身の若手作家の1人。
ゲームのキャラクターのイラストなどを得意とするが、創作は意外にもシリアスさや繊細さを垣間見せ、発展途上にある自我の揺らぎ、そして表現に対する貪欲なエネルギーが作品にも滲み出る。展示会場は、タウンモールリスポのイワキ写真館。大きくはない店舗だが、リスポらしさが色濃い空間だけに、あめのいちの作品とどのような化学反応を起こすか、ぜひご覧頂きたい。
□比佐健太郎 イラスト作品展
会場:タウンモールリスポ2F STEP-1丸正
女性画でお馴染み 比佐健太郎の女性画を中心とした世界
小名浜出身のイラストレーター比佐健太郎。いわき市内を中心に活動し、女性や動物、かわいらしい子どものイラストなど、さまざまな作品を世に送り出している。1度はそのイラストを目にしたことがある人もいることだろう。プロとして、いわきの第一線で活躍を続ける作家だ。
今回は、その女性画を中心に、リスポのアパレルショップ「STEP-1丸正」に展示する。ハイファッションのアイテムも数多くあるお店だけに、比佐の作品は会場にもマッチすることだろう。アートギャラリーなどに展示するのとはまた少し違う雰囲気を楽しんでみては?
□茉莉枝 イラスト作品展
会場:タウンモールリスポ1F キンダーボックス
国内外で活躍する、女性イラストレーターが里帰り
東京、海外を拠点に活動中のイラストレーター茉莉枝。小名浜一中、磐城第一高校を経て上京。長くイラストの世界で活躍を続けてきた。アナスイ・KatieなどのブランドではTシャツデザインのほか、CDジャケット、宣伝フライヤー、ポストカードなどの作品も多い。
かわいいだけではなく、どこか毒気のある女の子や動物などをメインのモチーフとする。展示会場は老舗玩具店の「キンダーボックス」に決まった。おもちゃでいっぱいの空間に、雰囲気ぴったりの茉莉枝のイラスト。特別なアート空間になることだろう。
□川西遼平&悠太 作品展
会場:UDOK.
鳥取県の奇才、小名浜に再び現る
鳥取県出身のファッションデザイナー川西遼平、弟で写真家の川西悠太による作品展。川西兄弟は、2012年にいわき市で「London-Fukushima Project」というアートプロジェクトを開催し、1ヶ月半に渡り、本町通りのUDOK.に寄宿しながら作品の制作を行った。
兄・遼平は、ロンドン芸術大学セントラル・セントマーチンズ・カレッジ オブ アート アンド デザインを卒業した気鋭のデザイナー。現在は弟の悠太とともにニューヨークを拠点を移し、意欲的に作品を残している。
今回は、London-Fukushima Projectでいわきの子どもたちと制作した作品の他、兄弟の合作なども展示されることになっている。小名浜を旅立った彼らが今何を見つめているのか。作品を通して、小名浜と世界が地続きになる。
□高木市之助 デザインワーク展
会場:甘太郎
小名浜が誇るデザイナーのおしごと、一挙公開
かまぼこ工房「貴千」に勤めながら、デザイナーとして数々の仕事を残している高木市之助のオシゴトを再確認できるデザインワーク展。大判焼き店「甘太郎」で開催。貴千のかまぼこパッケージを中心に、高木の生み出したデザインの歴史を1から紐解く。
高木の、スタイリッシュながらどこかかわいらしいデザインによって生み出された商品の数々。人の心を和ませる高木スタイルは、どのように生まれたのか。彼のデザインのツボを知れる、興味深い展示になりそうだ。ぜひ、会場「甘太郎」の大判焼きをほおばりながら、高木ワールドを楽しんで欲しい。
□untagle. 作品展「DURING DRAWING」
会場:タウンモールリスポ1F 高木屋カフェスペース
どこまで引けるか 線の表現の奥深さを知る
線によって表現する小名浜在住のドローイング作家untangle.。
「DURING DRAWING」では、タウンモールリスポのカフェ「高木屋」に彼の線画を展示する。いずれも独自の造形論「からみほぐし」に従って引かれた線には、命が吹き込まれたような動的な存在感がある。
untangle.は、自らの線のルーツについて「小名浜の海」だと語る。多くの命を育む母なる海。そのゆらぎが線となって私たちの目の前に立ち現れる。「線」によっていかなる表現が可能なのか。untangle.の引く縦横無尽の線の力を感じてみてはいかがだろうか。
□WS市民作品展1「あさんぷぉ」
会場:本町通り沿いシャッター
小名浜の早朝おさんぽフォトセッション「あさんぷぉ」作品展
今年4月から開催されてきたワークショップで制作された市民の作品展。ここでは、小名浜の早朝の海を歩いて散歩しながら、風景を写真に収めようという「あさんぷぉ」に参加した市民の作品が展示される。
朝の光をいっぱいに浴びて、光り輝く小名浜の朝の風景。いつもなら通勤で見過ごしていた景色は、参加者にどのようにうつったのか。日常の風景のなかに、非日常の美しさを探すワークショップで参加者が切り取った風景をじっくりとご覧頂きたい。
作品は、小名浜本町通り沿いにあるシャッターに展示される予定だ。今は使う人もなくシャッターが閉められたままの店舗に、賑やかな朝の散歩の風景は、どのような変化を与えるのだろうか。
□WS市民作品展2「小名浜スケッチ」
会場:小名浜まちづくりステーション
「小名浜の景観をスケッチしにでかけよう写生会」作品展
こちらも、今年4月から開催されてきたワークショップで制作された市民の作品展だ。解体によって日々変わりゆく小名浜の風景を残そうと企画された「小名浜の景観をスケッチしにでかけよう写生会」の作品が展示される。
写真を撮るのと違い、スケッチを描くには比較的長時間その場所と向き合う。そこで流れてきた歴史や思い出にまで思いを馳せながら、その風景をスケッチに残していく。それは、単に作品として制作するだけではなく、町の歴史をアーカイブし後世に伝えるという意義がある。
うまい下手ではない。描き手がどのようにその風景と向き合ってきたのかが、スケッチには保存される。私たちの見慣れた小名浜の風景は、スケッチの中ではどのような表情を見せるのだろうか。
□WS市民作品展3「SNOOF」
会場:タウンモールリスポ中2F 旧ギターショップ跡地
「小名浜工場夜景撮影バスツアーSNOOF」作品展
今年3度にわたって公式ワークショップとして開催された「小名浜工場夜景撮影バスツアーSNOOF」に参加した市民の写真作品を展示する。小名浜の隠れた観光名所「小名浜臨海工業地帯」の写真が中心となる。
小名浜工場夜景撮影バスツアーは、いわき市の隠れた観光資源を掘り起こそうと始められた撮影イベント。宇宙基地のような圧倒的なスケール感、そしてぼんやりと浮かぶ工場の灯りの怪しい美しさ。今まで誰も知らなかった小名浜の一面が垣間見える展示になるだろう。
普段は「危険だから」と人の寄り付かない工場地帯だが、そこで、私たちの快適や便利が紛れもなく生み出されている。非日常の風景の中で、私たちの日常が作られる。日常と非日常の交差する工場地帯。その怪しく美しい表情をご覧頂きたい。
『小名浜本町通り芸術祭 2013』オフィシャルサイト:http://www.strikingly.com/ohsaf
※『小名浜本町通り芸術祭』からお知らせ
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小名浜本町通り芸術祭実行委員会(担当:小松理虔)
TEL. 090-4887-1119
udokonahama@gmail.com
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