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Interview : May 1, 2014 @ 18:10

まさかの来日!──”アレハンドロ・ホドロフスキー”の記者会見(ソノ1)



伝説のカルト映画『エル・トポ』や『ホーリー・マウンテン』などの作品をこの世に生みだした奇才、”アレハンドロ・ホドロフスキー”監督が、新作『リアリティのダンス』を引っさげ、25年ぶりに来日した。


2014年4月24日には、都内某所にて、23年ぶりとなる新作『リアリティのダンス』の試写会とともに、プレス向けの記者会見が開催。

会場には、監督を一目みようと、おおくの報道陣がつめかけた。


今回は、ホドロフスキー監督が語った、思わずクスッと笑ってしまう約1時間にもおよぶ記者会見の内容を、惜しげもなく、2回にわたってご紹介することにしよう。






アレハンドロ・ホドロフスキー(以下、ホドロフスキー):
みなさん、こんにちは。
ワタシは、50年前にフランスのパントマイム アーティストの”マルセロ・マルソー”と一緒に、
はじめて日本に来ました。
その時の来日は、私にとてもたくさんの影響をあたえてくれたのです。
そして、次の来日は、25年前。
映画『サンタ・サングレ』のプロモーションで来たのですが、
そのときもまた、日本の文化的価値を吸収したのでした。

きっとこの映画『Dance of Reality(リアリティのダンス)』の中に、
ワタシが受けた日本文化の影響を見ることができると思っています。
ですから、日本人であるみなさんと、
この場でお話できることをとてもたのしみにしていました。





─まずは、23年ぶりの新作ですが、本作に込めた”思い”をお聞かせください。


ホドロフスキー:
ええと、、、”思いを込める”というのはどういう意味でしょうか?


─23年ぶりの新作ということで、気持ち的な部分といいますか(汗)。。。


ホドロフスキー:ああ、わかりました(笑)!
ワタシは、自分にこういう人間だというスタンプを押したくないのです。
つまり、”そのヒトはそのヒト”と決めつけたくない。
なぜなら、人間はひとつのモノ/ゴトで成り立ってはいないからです。
例えば、以前は電話は電話でした。
しかし、いまは四角い物体になって、その四角が電話でもあり、音楽を聴く道具であり、
地図まで見れちゃいます。
そして、そこに”出会い”もある。
その上、バイブレーション機能でブルブルと震え、それでマッサージも(笑)。
たくさんのコトができるワケです。
だから、ワタシもたくさんのコトをしてもいいのでは。
音楽や詩、絵画、演劇、小説、サイコマジックの発明/研究、
「メタ・バロンの一族」や「アンカル」などのマンガもそう、、、
それらは日本でも出版されましたけれどね。
そんなワケで、この23年間、ワタシは行動していなかったワケではありません。
時間は過ぎてはいないのです。





それに、ワタシは”マクドナルド”のように映画をつくりらないのでね(笑)。
ビッグマック、ビッグマック、ビッグマック、、、、
そんな風に、毎年、おなじビッグマックをつくっているワケではないのです。
私が映画をつくるのは、”ナニかを言うべきとき”なのです。
だから、一本の映画をつくり終わったときには、自分の人生のひとつも終わりになる。
言うべきコトすべてをそこに込めるから。
いつも映画的に”言うべきコト”が来るのを待っているのです。

そして、ワタシの映画は、商業映画に対抗するものでもあります。
ワタシは、スーパーヒーローではありませんし、
『アイアンマン』も『スーパーマン』も、『スパイダーマン』も好きではありません。
3D映画も好きではありません。
なぜなら、私に襲いかかってくるからです(笑)。
ダレからも暴行は受けたくありませんし、ワタシはダレにも暴行したくありません。
だから、アメリカの映画には反対なんです(笑)。
それは純粋に商業的なモノだから。

ワタシは、お金を儲けるために映画を撮っているワケではありません。
もちろん、お金をくれるのであれば、とてもうれしいですけれどね(笑)。
ワタシにとって映画はアートなんです。
分かっていただけますか?
だから、23年が経ちましたが、映画で”言うべきコト”がなかったからつくらなかった、
それだけです。
今回は突然、思いうかびました。

これまでのワタシの映画は、自分のコトではなく、物語を語ってきました。
でも、人生以上に語るモノがあるのか?
そういう思いからワタシは、人生を語るコトにしました。
もし、ワタシの人生がホンモノなら、
すべてのヒトがホンモノの人生を送れると考えたのです。
みなさん、それぞれに、子ども時代の”喜び”や”痛み”はあるハズです。
今回は、自分のその部分を語ろうと思い、映画をつくりました。
長い答えで、すみません(笑)。


─今回の映画とは関係ないのですが、”フェルナンド・アラバール”の映画を昨年から日本でDVDをリリースしています。
彼と”リアリティに踊った”エピソード(笑)?など、ありましたら教えてください。


ホドロフスキー:アラバールのことより、自分の映画について話したいのですが(笑)。





ワタシは、50年代にチリからパリに移住しました。
当時、”アンドレ・ブルトン”がシュルレアリズム運動をしていたコトもあり、
ワタシは、ブルトンの電話番号をポケットに、
チリからパリに午前3時に到着したのですが、そのままカフェから彼に電話をしました。
彼は、シュルレアリズムの創設者です。

彼が電話をとったので、
ワタシは「シュルレアリズムを救うためにやってきた、いまから会えないか?」と言ったのですが、
彼は「今日は遅いので、明日にしてくれ」と応えたのです。
それで、ワタシは「アナタは、もうシュルレアリストではないから会わない!」と言って、
電話を切りました。
彼は、あのときに私を受け入れておくべきだった(笑)。
そうしていれば、シュルレアリズムは救われていたとおもいますね。
ワタシの映画がシュルレアリズム、そのものですから。

その後、何年か経ったあとに、シュルレアリズム運動の会合に招待されました。
そのときにアラバールは、『ファンド・アンド・リス』という演劇をつくったので、
ワタシを誘ってくれたのです。
そして、彼は(ローラン・)トポルを紹介してくれました。

ワタシは彼ら2人とはちがっていましたよ。
ワタシは背が高く、彼らは背が低かった(笑)。
写真は、彼らを両側にして、バランスをとって撮ってましたしね。





その後、ワタシは縦に成長しましたが、彼らは横に成長していきました。





その会合で話し合われたコトは、
そのときにはシュルレアリズムがすでに古くなっていると感じました。
たとえば、抽象画を受け入れないとか、警察小説はダメだとか、SFもダメ、
ロックもダメ、ポルノもダメ。
では、彼らは一体ナニを信じていたのか、、、それは政治でした。
(トロツキズムを信じている)トロツキストがいたからです。

だから、ワタシは自分でムーブメントをつくろうと考え、
シュルレアリズムが排除したモノもふくめて、それらを信じようと。
そこにはセオリーはナニもなく、作品があっただけです。
その時につくった作品すべてを「パニック」と呼んでいて、
その活動をしている人をパニックアーティストとしていました。
詩人も、映画人も、すべて交えてパニックアーティスト。

大きくて文化的なムーブメントでしたが、
しかし、それらは現実ではなく”虚構”だったのです。
なぜなら、我々は人間であって、ムーブメントではないから。

そして、いまになってアナタが「パニック」のコトについて質問している。
でも、それは存在しなかった(笑)。
それが、パニックムーブメントなのです。
とてもすばらしいモノでしたが、存在はしません。

そして、アルバールとトポルのふたりも、背は伸びませんでした(笑)。





会場:(笑)



─サイエンス・フィクション(SF)の持つ力について教えてください。

ホドロフスキー:私は、SFがとても好きです。
「DUNE」も好きです、、、つくりませんでしたが(笑)。
でも、それはコミックで実現しましたけれどね。
「メタ・バロンの一族」もですが、それらはコミックで実現しました。

私がSFが好きなのは、その世界のイメージが自分たちの世界にはないモノだからです。
それは、まるで、、、パラレルな宇宙という感じではないでしょうか。
そして、アートなのです。
なぜなら、階級から、社会形態から、科学から、宗教から、
SFの中ではすべてをゼロからつくっていかないといけないから。





でも、たとえば、すべてファンタスティックなものをつくると、
何年か経って、それらが現実になることもあります。
だから、ヒトが想像しうるすべてのモノは、ある日、現実になる。
私がSFが重要なモノであると考えるのは、
我々に未来への道を開いてくれるからです。


─”フランク・ハーバート”の「DUNE」の原作を、最初に読んだときの感想を教えてください。


ホドロフスキー:
「DUNE」は、、、読んだことがありません(笑)。
とても分厚かったし、すぐに映画をつくりたかったので、その時は流し読みはしました。





たしか20年くらい経ってから、ゆっくり読みましたが、アレは天才的な作品です。
でも、読んだときに、自分が想像したモノすべてがその中にありました。
制作しようとした当時は読まずに想像したのですが、とても似ていましたよ(笑)。


会場:(笑)


─『リアリティのダンス』の劇中に「梅好」と「MUSASHI」というお店の看板が出てきます。
そういった日本的な要素を取り入れたコトに関して教えてください。


ホドロフスキー:
舞台となっている”トコピジャ”は、チリの北部のとても小さな村で、
チュキカマタ銅山のとなりにあります。
銅山は、ダイナマイトを使って採掘をしていて、
その影響もあって銅山に生えてあった高山植物が”トコピジャ”にも原生していました。

毎日、(銅を運ぶ)船が40隻も着いて、
それがアメリカのカルフォルニアに向かったりしていました。
“トコピジャ”はそれで成り立っていた村なのです。
そして、娼婦の街でもありました。
鉱山で稼いだお金で、みんな娼館に行く。
ですから、豊かでしたね。
それに、たくさんの国籍の人が来ました。
ドイツ人やユーゴスラビア人、アメリカ人、イギリス人、中国人、
そして、その中に日本人もいたのです。





映画の中でも語られていますが、
ワタシの母は、自分の父(祖父)が金髪の長髪で、
そして焼死したと思い込んでいました。
ですから、金髪で生まれたワタシを、
彼女は祖父の生まれ変わりだと思っていたワケです。

そして父は、とてもオトコっぽいヒトでした。
だから、長髪だったワタシを「オンナみたいだ」と言って、
髪を切りに連れて行ったのです。
それが日本人の経営している床屋でした(笑)。

そこで私はかなり短髪にされたのですが、
母が私の姿を見たときに、心臓発作をおこしそうになるくらいショックを受けていました。
それは、まるで自分の父が殺されたかのように思えたからです。
彼女はすぐにその床屋へ、切った髪の毛を拾おうと向かったのですが、
残念ながらすべて捨ててしまった後でした。
だから、母はその床屋の日本人をとても憎んでいました。
ワタシも彼を憎んでいました。
そのコトは、ワタシの根底では、非常におおきな”恨み”だったと思います。

そして、それから80年後。
ふたたび”トコピジャ”の街に着くと、当時のあったモノがすべてそのままでした。
もちろん、日本人の床屋もあって、しかもおなじような日本人がいたのです(笑)。
ワタシはおもわず「どうして!?」と、彼に聞くと、彼は「私は息子です」と。
80歳でした。

その日本人の床屋は、私の人生に非常に大きな影響を与えています。
そこで母を失ったので、、、問題は父がつくったのですが(笑)。
ちなみに、その日本人は弓の使い手でもありました。
だから、子どものころは、父と彼らと一緒に弓に行ったりもしています。
ワタシの日本文化への興味は、彼らのお陰なのです。
あの街に日本人の床屋がなければ、いまはどうなっていたかわかりません(笑)。
だから、そこに日本語があったのは、ごく普通のことだったのです。





その後、日本に来日したときになって、日本の床屋のことがすべて理解できましたね。
話し方や行動、そして、なぜ床屋に短いカーテンが貼ってあったのかなど。
知らず知らずのうちに、その床屋を通じて、日本の文化に触れていたワケです。
いまは彼らにとても感謝していますよ。
私の家には、床屋の日本人のフィギアが飾ってありますし(笑)。

『ホーリー・マウンテン』の幕開けに儀式をしているシーンがありますが、
アレはじつは日本の茶道からインスピレーションを得ています。
『サンタ・サングレ』も、ストリップしている女性は日本のポルノ雑誌から。
とてもエロチックでした。
それについては、ココにいるみなさんもナニも言えないとはおもいますけど(笑)。
そういった意味で、日本文化は、ワタシにおおきな刻印を残しているのです。
コレは映画を売ろうとおもって、言っているワケではありませんよ(笑)。





ワタシは、アメリカの文化に影響をうけて『エル・トポ』をつくりました。
カウボーイとか、ウェスタンに近いものですが、
でも、じっさいはイースタンだったのです。
カウボーイにマスター(師)がいたり、
東洋の文化を取り入れたカウボーイの物語をつくったのです。

(奥さんの方を向いて呼ぶ)
彼女はワタシの妻です。
彼女を見れば、
ワタシがどれだけ東洋好きかがおわかりになるかとおもいます(笑)。






(”アレハンドロ・ホドロフスキー”監督 記者会見 ソノ2へつづく)






□”アレハンドロ・ホドロフスキー”監督関連の映画情報

・『ホドロフスキーのDUNE』
スター・ウォーズ、エイリアン、マトリックス、プロメテウス…あらゆる名作の元ネタ!?映画史上最も有名な”実現しなかった映画”『DUNE』にま­つわるドキュメンタリー。

2014年6月14日より新宿シネマカリテ、渋谷アップリンクほか全国順次公開!
オフィシャルサイト:http://www.uplink.co.jp/dune/



・『リアリティのダンス』
アレハンドロ・ホドロフスキー監督(84歳)23年ぶりの最新作!

2014年7月12日より新宿シネマカリテ、渋谷アップリンクほか全国順次公開!
オフィシャルサイト:http://www.uplink.co.jp/dance/


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