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Interview : May 26, 2016 @ 17:49

紐トーク Vol.05──田中知之(FPM)×斎藤 悟 新パーティ『HSA』をヒモ解く(後)



DJ/音楽プロデューサーの”FPM”こと”田中知之”と、セレクトショップ「URBAN RESEARCH」の販売促進部マネージャー”斎藤 悟”氏が提案する、神出鬼没のパーティ『HYPER SOCIETY ARCHIVES』がスタートした。


完全招待制という、かなりクローズドでいて、しかも、ドコでどんなカタチで開催されるかも未定という神出鬼没なパーティ、『HYPER SOCIETY ARCHIVES』。


ひきつづき、首謀者の”田中知之(FPM)”さん、そして”斎藤 悟”さんのおふたりに、このようなパーティを開催するコトになった経緯と、”田中知之(FPM)”さんのデビュー20周年のお話しについてうかがってみた、インタビューの後編。






─ということは、やはり20周年という節目といいますか、、、
そういう感じでこういうパーティがはじまったというのはありますかね?


田中知之(以下、FPM):
もしかしたら、そうかもしれない。
だからといって、昨日今日はじめてできるパーティでもないワケで、
やはり、「URBAN RESEARCH」と10年ちかくの関係性があって、
斎藤くんともお互いDJをずっとやってきてという、
いろいろな経験値があってのコトだとおもいます。

そして、僕らには当然「DJをキチンと聞いてほしい!」という想いがあって、
それが時と場合によっては、
挑まなくていいお客さんに対しても挑まないといけないストレスがある。
それはいたし方がないコトなんですけど、

だったら、もっと自分らが届けたい人にダイレクトに発信して、
自分らの音楽を聞いてたのしんでもらおうよ!という感じなんです。
だから、このパーティは僕ら的には、
ガチのDJパーティとおもっているんだよね(笑)。


斎藤 悟(以下、斎藤):ははは(笑)。


FPM:あとは、パーティの性質ですよ(笑)。


斎藤:それ(性質)=クラブという選択肢でなくともいい!というところです。


FPM:そうですよね。


─ちがう意味の、いわゆる”倶楽部”というコトですよね(笑)?


FPM:そうです。いわゆる社交界なんです。
だから、『HYPER SOCIETY(ハイパーソサエティ)』と言うタイトルで、
まさに「URBAN RESEARCH」で『HYPER SOCIETY』なんですよ。





斎藤くんとパーティをはじめたときに、
このタイトルをつけたのは、
そういう現場を目指してのコトですし。

みんなのなかにこのパーティの記憶がのこって、
それが歴史となっていくようなという意味で
斎藤くんがタイトルに「ARCHIVES(アーカイヴス)」をつけてくれたけれど、
まさにソレですよ。

いま、みんなが何に興味があるか?というと、
エクスペリエンス(経験)なんですよ。
ソコに行ったかどうかっていう、
そういう経験値にこだわるとおもうんですよ、今後も。
だから、そういう経験を僕らで提供できたらなと、おもうワケです。


─デビュー20周年の話にもどりますが、
次の5年後、10年後に向かっての目標みたいなものはありますか?


FPM:
目標もナニもないね(笑)。
ただ、こういう時代なので、
DJという行為に対するモチベーションが下がったりとか、
フレッシュな部分が感じられなくなったりすると、
簡単に終わるとおもうんですよ。

10年前、一緒にDJをやっていた人たちが、
いま自分の横にどれだけいるか?って、
正直そんなにいないですよ。
だから、自分で「どんだけDJ好きやねん!」っておもいます(笑)。


─ははは(笑)。


FPM:
本当に音楽が好きとか、DJが好きな人しかのこっていないですよ。

いまって、なんとなく「DJ、たのしいな!」とか、
「DJ、かっこいい!」というだけであたらしい人がたくさん参入しているけれど、
大多数は生きのこれないとおもう。
だって、DJって、たのしい分、ツラいもん。

最近は、機械がある程度やってくれますから、
適当なプレイはできますよ。
でも、DJをやっていると分かるとおもうけれど、
“北島康介”くんとかアスリートといっしょで、
毎回、記録を更新していかないと、
モチベーションがなくなりますよ。
記録を更新できなくなったときが、引退するとき。

だから、昨日より今日の方がいいプレイをできなかったら、
辞めなきゃいけないとおもっていますし、
そのためには、もちろん努力はします。

あたらしい切り口とか、やり方をみつけたら、精進してどんどんやる。
DJって、チャラい感じの見られ方をしてしまうけれど、
みんな精進しているんだよね。

そういえば先日、アナログしばりのDJイベントに参加させてもらって。。。


─”須永辰緒”さんのイベントですよね?


FPM:そうそう!

それこそ、むかしはアナログでDJをするのはあたり前だったけれど、
最近は、データ中心でDJをやっていたので、
自分のスタジオで10時間くらい、
練習じゃないけれど、シミュレーションみたいなコトをやりましたよ。

そうしたら、ずっと自分が持っていたレコードなのに、
あたらしい発見がいくらでもあって、おもしろいなって。
失敗して「あちゃ!」というコトもあるんだけれど。
こういうコトをおもしろいと感じなくなったら、
アウトなんだろうなとおもいますね。

だから、5年後、10年後、このモチベーションを保つコトが、
いちばん重要なんだろうなとおもう。
そうじゃないとやめちゃうかな。

ただ、幸いにして、いまはやらないといけないことが山もりであって、
課題もいっぱいある。
DJに関しては、こんな時代だからこそ、
頭ひとつふたつ抜けるコトがすごく大切かなと。

ある程度のレベルまでは簡単にできるようになりますから。
BPMとかすべて数値で出ちゃうし、
曲と曲とのテンポを自動で合わせてくれる。

DJのマネゴトはダレにでもできる、
じゃあ、どこで差をつけるか。
世の中の状況として、プロだと聞いてわかる部分が、
すごく曖昧になっているのもいなめない。
そんななかで腐らずに、
自分のモチベーションをキープしつづけるのも至難のワザだとおもいます。


斎藤:
田中さんって、機材のポテンシャルにないコトをやるんですよ。
それをDJをやっている後ろで見ているコトがおおいんですけど、
とにかく緊張感がスゴい!





FPM:斎藤くんに見てもらうためにやっていると言っていいかも(笑)!


─ははは(笑)。


FPM:いや、でも、そういうのってすごく重要だとおもうんですよ。
身近なDJに見てもらうって。

おおきなマスをとらえようとすると、
そのすべての人に自分の意図がつたわるか?というのは、
もはや期待できない。

もちろん、分かってくれる人もいるのですが、
100%つたわるか?100人全員につたわるか?といったらわからない。
そんななかで、しっかりと見てくれる存在というのは、
スゴくありがたいです。


─それ、わかります!


FPM:
機材にBPMが数字で出るのであれば、うまく繋げられて当たり前。
だったら、10分あったら20曲をミックスするとか、
BPMが一定ではない曲をちゃんとミックスするとか、
そういうスゴくテクニカルなコトをやる。

スクラッチのDJが、一生懸命コスりの練習をするのと同様に、
ミックスの鍛錬をしていく。
そして、奇跡みたいなミックスの瞬間をわすれないようにアーカイヴしていくと、
自分のDJセットが芳醇になっていくとおもいます。

でも、どうしても予定調和になりがちなので、
手グセでできる最高のアーカイヴみたいなものはのこしつつ、
あたらしいことへのチャレンジはする。
ダメだったら反省するっていうね。

プロって、そういうチャレンジをつづけていけるかだとおもいますよ。


斎藤:
田中さんは、そのスタンスがスゴいとおもってます。
ボクの記憶に焼きついているのは、
大阪のクラブでピークタイムのときに、
田中さんがメガミックスをしはじめたのですが、
いちばんココ!というときに”山下達郎”の、、、
“山下達郎”が好きな人じゃないとわからないような曲をドカン!と入れるワケですよ。
それがスゴい。

横で見ていて、それを入れてくる雰囲気が、
その緊張感みたいなものを感じるんです。

そのときは、普段はDJ中でも乾杯みたいな感じで来るような田中さんの知り合いも、
来づらい雰囲気がもわっと出ているんですよね。

ソレって、ボクがむかしに見た、いわゆるDJの姿なんですよ。


FPM:
いろいろな人がDJブースまで来てくれていたんだけれど、
僕も必至でミックスをしてて、
火事場みたいな感じになってるから、
誰も声をかけられない状況になっちゃったんです。

でも、コスリのDJとかはまさにそんな感じゃない?
そのくらい必死でやってたから、
DJをやっている人だったらあの状況はわかってくれるとおもう。


斎藤:
曲の入れドコロも完璧なんですよ。
田中さんでもメチャクチャ練習してるんだ!というコトがわかる。
ボクにとってはうれしいなとおもうんです。
この人のDJは信用できるなと。
横で見ていてアガってましたもん。
「ドコまでいくんやろ!!」って(笑)。


FPM:ミックスは、自分の勘と経験値しかないですからね。
とにかく、このパーティは、
それを「ふたりでやろうぜ!」という話なんですよ(笑)。


─なるほど。


FPM:小規模でも演出もちゃんとやろうと。





─次回以降のお話とか、今後どうする?などのお話は、
すでにおふたりで話されているのですか?


FPM:もちろん考えています。
船の上とか、ビルの上とか、いろいろな候補は出ています。

大阪での開催プランは、知り合いにリサーチをお願いしています。
本来のクラブ以外の場所でやるというコトは、
トンチをきかせたいろいろな場所でできますし。
まさに社名の”アーバンリサーチ”しているって感じですよ(笑)。


斎藤:ハハハ(笑)。


─CMでは「リサーチ会社じゃありません!」って言っているのに(笑)。


FPM:たとえば、京都だったらお寺でやるとか、
いろいろなことを考えられるじゃないですか。
関西、関東に限らず、「URBAN RESEARCH」があるエリアだったら、
そういうオモシロいパーティができる。
それが話題になっていったらいいなとかんがえてます。


─わかりました。
ありがとうございました!


FPM:ありがとうございました!


斎藤:ありがとうございました!






(おわり)






2016年4月9日
『HYPER SOCIETY ARCHIVES』
-SAKURA CHILL EDITION-





Resident DJ:
Tomoyuki Tanaka(FPM)
SATORU SAITOH(URBAN RESEARCH)


SPECIAL WISKEY BY
R9


「URBAN RESEARCH」オフィシャルサイト:http://www.urban-research.com/


□プロフィール

・田中知之(FPM)





DJ/プロデューサー。
8 枚のオリジナルアルバムのリリースの他、多数のアーティストのプロデュースも手掛け、リミキサーとしても、布袋寅泰、くるり、UNICORN、サカナク ション、FATBOY SLIM、Howie B、など100曲以上のリミックスを担当する一方で、UNIQLO、資生堂など、どこかで絶対に耳にしているCM音楽も数多く手掛けている。
DJとしては、国内は全都道府県制覇、海外でも約50都市でプレイし、国内外のハイブランドのパーティーDJとしても活躍。
また、『オースティン・パワーズ:デラックス』『SEX AND THE CITY』への楽曲提供の他、村上隆がルイ・ヴィトンの為に手掛けた短編アニメーションの楽曲制作など活躍の場は多岐に渡る。
昨年9月30日にFPM活動20周年に突入し、これを記念した様々な企画、名付けて「FesPM」も始動。第一弾として初のオフィシャルYouTubeチャンネル「FPM20th」を開設し、アーカイブ全曲試聴や、全PVの公開もスタートさせている。
20周年を記念した3枚組ベストアルバム『Moments』がavexより好評発売中。2016年3月16日にはリミックス・プロデュース曲、そして未発表のレア曲などを含む、3枚組ベストアルバム『Motions』が発売。
オフィシャルサイト:http://www.fpmnet.com/



・SATORU SAITOH(URBAN RESEARCH)





1976年横浜市生まれ
セレクトショップ・アーバンリサーチのPR マネージャーとして地域活性事業から、IoTイノベーションまで幅広い守備範囲で活動。
2014-2015年の2年間、集英社「メンズノンノ」にて、モデル・俳優の坂口健太郎氏とともに「坂口&サイトウのごはんラボ!」コーナーを連載。
趣味は、料理と怪奇スポット探索。
ヒップホップをベースに歌謡曲からアーバンな音楽、ハードロックまでとにかくなんでも掛けちゃう派。


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