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Interview : April 25, 2017 @ 01:44

本当の”J.T.リロイ”とはいったい。。。──”ローラ・アルバート”インタビュー(後)



世界をおどろかせたナゾの天才美少年作家”J.T.リロイ(JT Leroy)”をつくりあげた作家”J.T.リロイ”こと”ローラ・アルバート(Laura Albert)”が、映画『作家、本当の J.T.リロイ』の公開にあわせて緊急来日。


本作では、ローラの生い立ちからはじまり、”J.T.リロイ”の生まれた理由と崩壊、そして現在のローラまでを描いている。


さまざまな反響を生みだし、ある種の社会現象にまでなった”J.T.リロイ”の真実とは。。。


ひきつづき”ローラ・アルバート”に”J.T.リロイ”、そして”いま”の彼女のコトについてうかがったインタビューの後編。







─アナタにとってアバターは、ある意味、症状緩和の意味を持つものだったのでしょうか?


ローラ・アルバート(以下、ローラ):
いいえ。
わたしにとってはアバターがというよりも書くコトが癒しにつながっていました。
書く前までは、さまざまなホットラインに電話していましたが、
それはヒーリングではなく、ただ痛みを麻痺させるだけだったんです。
だから、わたしにとっては書くコト自体が、
折れた骨がすこしずつ治っていくような、
癒し、治すというコトの助けになったとかんがえます。

そして、ソコから”J.T. リロイ”という存在が出てきました。
わたしには男の子っぽい体つきのオンナのヒトがすごくうらやましかったのですが、
でも、実際の体はそうではなかった。
だからカレが私から出てきたんです。
そして、カレはカラダを欲しがったけれど、
わたしはカレにあげられませんでした。

これは映画でも言っていますが、
当時は、流動的な性、、、
“ジェンダーフルイドリティ(ジェンダー流動性)”というコトバがなく、
わたしはトランスジェンダーではなかったけれど、
非常に流動的だったとおもいます。

息子が生まれてからは、
カレを守らなければというのがいちばんでした。
もちろん”J.T.”もですが。
そこで出てきたのが、”スピーディ”や”エミリー”というアバターです。
まわりのヒトがふたりに怒ったとしても、わたしは気になりませんでした。
守るべき大事なものは別にあったからです。
そういう意味では、母はわたしを愛してはくれたけれど、
守ってはくれなかった。
彼女自身もある種の虐待を受けていましたが、
助けが得られなかった。
だから、そのスキルがなかったんだとおもいます。

いまは、いろいろなコトすべてが私を治癒させてくれる助けになっています。
今回の来日でのこの取材もふくめて。
つねにオープンでいて、
そして自分の行動の理由を理解するコトが大事だとかんがえます。
だから、ソレが倫理やモラル上での良し悪しだけで片づけられてしまうのはちがうんですよ。
とくにアメリカ人は、そのあたりですぐに決着をつけたがる。
でも、日本人にはアイデンティティにしても、アートにしても、
グレーのエリアを理解できるヒトたちがおおいと感じています。



─当時、”J. T. リロイ”におおくのアメリカ人が熱狂していたのは、みんながそういう存在を求めていたからでしょうか?
たとえば、その当時のアメリカ人と、いまのアメリカ人とでは違いを感じますか?


ローラ:
最初にヒトビトが反応したのは作品でした。
でも、『ニューヨーク・タイムス』の一件から、
メディアの人たちは本ともどもわたしを葬り去ろうとしましたが、
本は殺せなかった。
いろいろなヒトたちがいろいろなコトを言っていたけれど、
もしかしたら、成功に対する”やきもち”だったかもしれないし、
“出るクイは打たれる”?みたいな部分だったのかもしれない。
でも、あの本に助けられたと言ってくれるヒトがいるんです。
だから、アートは葬り去ることができないとおもう。

自身の虐待とか、トラウマについて話すのはとてもつらいコトで、
むしろそういう部分は隠したいハズなんです。
トラウマを受けたコトがないヒトにはわからない。
依存症患者へむけた”ジョー・マキュー”の12ステッププログラムのひとつで、
アル中において”一杯でも十分すぎるし、百万杯でも足りない”というコトバがあるのですが、
つまり、”自分のなかの空虚さはナニものでも埋めることはできない”という意味。
わたしの場合は書くコトで、作品によってしかソコを埋められないから、
だから作品を書きつづけるコトが大切だとおもっているのです。
そして、いい本を書くのはとても大変なコト。
大切なのは、自分が自分自身を感動させてくれるアーティストであるとおもえるコトなんです。
ただし、もちろん全員を喜ばせることはできない。

いまのアメリカは、
そういうヒトのココロの奥深い部分が分からない、
愚かなヒトがおおいとおもっています。
だから、トランプみたいなヒトが大統領に選ばれてしまうワケですよね。





─すべてはコンプレックスからはじまったと言っても過言ではないアナタの人生ですが、現在はそこまでコンプレックスの部分を感じません。
コンプレックスとの対峙の方法と言うか、秘訣を教えていただけますか?


ローラ:
わたしたちの文化は、
もっと繊細さをもってそういう、
依存症のヒトたちを見つめていく必要があるとおもいます。
依存や中毒といった行動に出るのは、
痛みがあってその痛みを麻痺させるため。
そして、子どもはドラッグやお酒が近くにないので、食べものをつかうんです。
カレらは痛みを癒すために、麻痺させるために食べ物をつかっているのに、
それによって肥満体になってイジメられる。
すると逃げ場がなくなるので、
それを暴力に訴えるヒトもいるかもだし、
アメリカの場合だと、それが銃をつかったりとかになるワケです。
オンナのヒトの場合は、それを内面化させる場合もあるので、
自分を責めるというコトになりがちなんです。

いちばんキケンなのは、自分が孤独だとおもうコト。
だから、自分はひとりじゃないと思えることなんです。
つまりは、
「アナタが抱えているヒミツの量だけ、アナタは病んでいる」というコト。
ヒミツをシェアできるヒトだったり、
グループを見つけるコトがとても重要だとかんがえます。

“オスカー・ワイルド”は、
「人殺しも聞く耳をもつヒトがそばにいたら、
“オレはヒトを殺した”というだろう」と言ったのですが、
自分の言いたいコトに対して耳を傾けてくれるヒトはかならずいるし、
聞いてもらえる方法もかならずあるとおもいます。

そして、ヒトビトのなかには、
よく「有名になれば、うつくしくなれば問題は解決される」と思うヒトもおおい。
だけど、”マイケル・ジャクソン”は、白くなっても、整形しても、
残念なコトにその狂気は治らなかったし、
わたしも、いまこれほど痩せてもまだ問題がある。
ソコは問題解決にはならないんです。

結局のところ、自身の内面的な部分と対峙すベキ。
だから、セラピストやグループだったり、
もしくはスピリチュアルなコネクトをもてるヒトと出会ったり、探すコトが大事。

そのなかではアートはヒミツを持たない”場”として大切な手段だとかんがえます。
フェイクなアートなんてないんですよ。
なぜなら、アート自体がフェイクそのものなんですから。
フェイクニュースとは、まったくちがうモノなんです。



─回想録を製作中とのコトですが、どのあたりまで完成しているのでしょうか?


ローラ:
時計の針でいうと、現在午前11時くらいな感じ。
とても大変でまだ”J.T.”のところにすら行きついていないのです。
回想録とか、自伝とかってよく読むんですが、
ダラダラした部分がおおいですよね。
わたしのは練り上げられたストーリーにしたいとかんがえているんです。
だから、とても時間がかかっているんです。

わたしは、”J.T. リロイ”を通じて小説を書きましたが、
いま、自分自身の自伝を書くコトで、
じつは小説には真実が書かれていたんだと痛感しました。
フィクションとは、ある種夢の状態みたいなモノで、
たとえば、怪物”ゴジラ”が出てきて闘うような夢をみたりするのは、
起きている時間に自分の上司と問題があったとか、、、
現実世界とのナンらかのつながりがあるのだとかんがえます。






─なるほど。
まずは完成をたのしみにしています!


ローラ:
わたしもです(笑)。
今回のようなインタビューによって、
また作品に生きてもらいたいですよね。

今回、自分として日本に来れたのは、ホントに特別なコト。
前回、来たときは、マネージャーの役で来ていましたから(笑)。
でも、そういう役をするというコトは、
木製のコンドームをつかってセックスをするような感じなんです。
つまり、リアル感がない。
サバンナは、質問するヒトの反映しかできない。
でも、わたしは、インタビューでもテニスのように会話をしたいんです。

わたしが書いた作品は、バンパイヤの話や、ロマンスではなく、
みんなが注意をはらうベキ問題について書いたとおもっています。
いわば、生か死かみたいなコト。
いまのアメリカはいろいろな症状のある子どもや、
声無き声を切り捨てていくようなヒトが大統領になってしまった。
そういう時代だからこそ、
“言うベキことはキチンと声を上げて言わないといけない”のです。

たとえば、シリアで何万人も死んでいるというニュースではココロを動かせないかもですが、
小説という形になるコトで、
アタマのなかで、脳にナニかしらの変化がおこってちがうリアクションがおこればいいのかなと。
だから、こういう本を読んだあとに、
太った子どもがよちよち歩いているのを見たら、
苦しんでいるのかな?とか、もうちょっと気に掛けてあげようとか、
そうおもえるようになるかもしれないですよね。

そして、もしかしたら、その子が将来アーティストになって、
世の中を救うかもしれないのですから。


─ありがとうございました!


ローラ:
ありがとう!



(おわり)






2017年4月8日より新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開!

『作家、本当の J.T.リロイ』



© 2016 A&E Television Networks and RatPac Documentary Films, LLC. All Rights Reserved.


監督:ジェフ・フォイヤージーク

出演:ローラ・アルバート/ブルース・ベンダーソン/デニス・クーパー/ウィノナ・ライダー/アイラ・シルバーバーグ/ほか


配給・宣伝:アップリンク

オフィシャルサイト:http://www.uplink.co.jp/jtleroy/


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※写真はすべて © Koji Aramaki


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