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Tokyo News : August 5, 2010 @ 13:00

『記憶』展──ディジュリドゥ奏者”GOMA”による初の絵画展


世界最古の木管楽器ディジュリドゥ奏者として活躍しているGOMAによる初の絵画展、『記憶』が開催する。


ご存知の方もいるとは思うが、”GOMA”は2009年11月に交通事故に遭い、脳に強度の衝撃を受けたことで「高次脳機能障害」と診断。


その出来事は彼からこれまでの記憶を部分的にうばい、自分が何者なのかもわからなくなるという症状までもが襲った。


不安な毎日がつづくある日、彼は一本の筆を手に事故後深い眠りから覚める時に頭に浮かんだという光の「絵」を描きはじめ、この行動がキッカケとなり、まるで日々を記録するように絵を描きつづけている。


この『記憶』展では、GOMAがこの半年間描きつづけている絵画の中から数十点を展示。





また、廃校になった体育館の資材などをリデザインしているデザインユニット”CONNECT”のフレームワークがGOMAの絵をバックアップ。


会期中には、彼のこれまでの活動をまとめたDVDの上映とアコースティックライブを開催、また展覧会を記念し今秋発売予定のセレクトアルバム『You are Beautiful』の先行販売も予定している。


この夏、ぜひ彼の”記憶”を共有してほしい。

 

 




GOMAからメッセージ



応援してくれているファンの皆様、お世話になっている関係者の皆様へ

2009年11月26日の夕方。首都高速で追突事故に遭った。渋滞でブレーキを踏んで車を止めた。事故の記憶は、そこで止まっている。

搬送先の病院では画像上特に問題がないとの医師の判断で、入院することなく家に戻った。家に戻ってみると、テレビやコンピュータの画面がものすごく眩しく感じられ、光が全部ピカピカに見える。記憶のなかにあるものとは違う世界に来ているようだった。

家族と話していても、何かが噛み合わない。時間が経過しても、会話は噛み合わないまま。何で噛み合わないのか、自分ではわからない。記憶が飛んでしまっているんじゃないかとの疑念が家族のなかに生まれ、時間が経過していくうちに、わからないものが自分の周りにはいっぱいあることに気付いていった。自分の脳に残っている記憶が自分にとってのすべての記憶だから、何がわからないのかがわからない。その後の検査により、11月の事故によって軽度外傷性脳損傷になり、高次脳機能障害という障害を持ってしまうことになった。

事故からしばらく経って、急に娘の絵の具と筆で絵を描きはじめた。「俺は絵を描くことが仕事なんだ」と思って筆を手にした。心に隙があると恐怖心が襲ってくるのでその恐怖心と不安を乗り越えるために、絵に向かう。何を描くかではなくて、ふっと浮かんだものを描くだけ。なぜほとんど描いたことがなかった絵だったのか、それは今でもわからない。ただ夢中になれるものが欲しかったのかもしれない。絵を描くことによって、すごく救われた自分がいる。
ディジュリドゥも、最初はこれが楽器はもちろんのこと、何なのかさえわからなかった。自分の演奏する映像を見て、何も考えないで口を付けたら音が出た。吹くことができた。ディジュリドゥを吹くことを身体が覚えていた。

今は毎日のように絵を描いている。無心のうちに形として残った絵たち。その絵の展覧会を8月に開催します。絵、ディジュリドゥ、そして家族や仲間たち。一線を越えさせないで、それらを俺に神様が残してくれた。自分を支えてくれる大切なものを残してくれた。「GOMA、お前はまだやり残したものがあるやろ」って、神様が言ってくれているように感じている。

事故に遭う前は、「自由が欲しい」ってずっと思っていた。でも今は、前の自分は「自由だったんだ」と心の底から思う。事故後、周りの人が自由に見えて羨ましかった。けれど病院へ行くと、強度の障害を抱えつつもポジティブに生きている方たちにお会いする。まだ自分は自由に動けている。普通に歩けて、言葉も喋れて、ご飯も食べられて、絵も描けて、デイジュリドゥも吹ける。こんな幸せなことはない。

少し前までは、不安と恐怖しかなかった。けれど最近は「今」を楽しもうという気持ちが出てきている。フレッシュな気持ちで何事にも挑戦していく。挑戦していく過程で、ものすごく落ち込むこともあるかもしれない。それも自分に課されたことだと考え受け入れていく。過去を追いかけるのではなく未来を築いていく覚悟。

過去に囚われるのではなく、今日を精一杯生きていく。事故直後は、事故に対する恨みが強かった。けれど恨みからは何も生まれない。今は、家族をはじめ、みんなに支えられているということをすごく感じていて、恨みや怒りのパワーよりも愛のパワーのほうが確実に強い。

今は険しい山に登っているような感覚。けれど登り続けていけばいつか山頂に到達する。そして山を乗り越えることができる。

必ず復活するので、みんな、楽しみに待っていてください。
そのときは、応援をよろしくお願いします。

過去にお会いしたことがある方へ。
今は記憶が繋がりにくく、こちらから挨拶ができないかもしれません。お会いした際(再会した際)には、気軽に思い出話を聞かせてください。


2010.06.23 Goma

 


 

『記憶』展
ー世界最古の木管楽器奏者 GOMAが描く絵画の世界ー






会期:2010年8月24日-2010年8月29日

時間:13:00-21:00
(8月27日と28日はイベントのため17:00にて終了)

場所:PLSMIS
東京都港区南青山4-7-14-1F
http://www.plsmis.com

主催:Jungle Music
協力:connect、LJ、CAFE8、Wonderground Music、Diony

GOMAオフィシャルサイト:http://gomaweb.net/


○追記!(2010年8月5日)
イベント2days ¥3,000- DVD上映 と GOMA Acoustic Live
2010.08.27(Fri)、2010.08 28(Sat) 各日50名限定
チケットは既に売り切れています。当日券もございません。




2009年11月に遭った追突事故によって、その後の活動を自粛していたGOMA。突然の事故によって脳に強度の衝撃を受け、GOMAは高次脳機能障害を抱えることになってしまった。

記 憶は生きていくことによって蓄積される。けれどGOMAは事故をきかっけに、蓄積されてきた多くの記憶を一瞬のうちに失ってしまう。記憶は点としてポツポ ツと残っているだけ。自分が何ものなのかもわからなくなっていた時期もあった。過去を振り返ることができない。そんな状況下で、手にしたのはディジュリ ドゥではなく筆だった。頭に浮かんだ光を、絵に変えていった。事故の日まで、ほとんど絵を描いたことがなかったというのに、絵を描くことに没頭していっ た。GOMAは無意識のうちに絵を描くことによって新しい自分を見つけようとしていたのかもしれない。未来の自分を絵によって探していたのかもしれない。

脳 を覚醒させることがサイケデリックだとすれば、GOMAの絵は間違いなくサイケデリック・アートだ。そして自分の過去の体験が光となって現れていることを 追いかけているのなら、GOMAの絵は間違いなくプリミティブ・アートでもある。「何を描くか」ではなく、自然体のままに無心で「絵に向かう」。見て記憶 してきた風景ではなく、頭のなかの光を具現化する。GOMAの絵は、だからこそピュアで、生きるためのエナジーに満ちている。

かつて GOMAはオーストラリアに渡り、地球最古の木管楽器ディジュリドゥを自分のものにした。ディジュリドゥによって、GOMAという唯一無二の個性を開拓し ていった。そして今、光の絵によって、自分を再生させている。神がいるとしたら、神はGOMAに「絵」という宝物を与えてくれた。

菊地 崇



GOMA



1973年1月21日生まれ。大阪府出身。

世界最古の木管楽器ディジュリドゥの可能性を斬新な切り口で追い求める音楽家であり情熱家である。

単身で渡豪した、オーストラリアで数々のコンペティションに参加し入賞。
なかでも98年にアボリジニーの聖地アーネムランドにて開催された「バルンガディジュリドゥコンペティション」では準優勝し、ノンアボリジニープレイヤーとしての初受賞という快挙を果たした。帰国後も勢いは止まらず現在までにアルバム7枚シングル1枚をリリース。またバンド名義NIGHT JUNGLEにてアルバム1枚、Goma&The Jungle Rhythm Sectionにてアルバム2枚をリリースした。
数々の大型フェスにも参加し、自身の10周年の活動をまとめた映像作品を制作していた09年交通事故に遭い「高次脳機能障害」と診断を受け活動を休止。現在もリハビリをしている。


©GOMA
PHOTO:Souichiro Fukuda

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