Editor's Eye : May 10, 2024 @ 18:06
ザ・ボツ原稿!ー『シティポップのゆくえ』
ボツ!ボツ!!ボツ!!!没、、、ボツと聞いて思い浮かべるのは、故 “鳥山明”先生による『Dr.スランプ アラレちゃん』。
ガスマスク姿の鳥山先生が”Dr.マシリト”にめちゃんこ「ボツ!」を出されたというエピソードです。
本来は没書と言うのですが、略してボツ。
実際の世界でも、じつはボツなんてのは結構あったりするんですよ。
そんなワケで今回は、
某誌に納品しながらも「客観的事実の確認が取れない」という理由で、
残念ながらボツとなってしまった「2023年のシティポップについて」の原稿を、
せっかくなのでもったいないからココで大公開(笑)!
あくまでも肌感、
いわゆるひとつの独断と偏見で書いていますので、
「そんな事実はない!」なんていうクレームは受けつけませんから、
あしからず。
『シティポップのゆくえ』
2023年は、日本のシティポップカルチャーがさらなる大躍進を見せた、まさにシティポップ元年になったと言っても過言ではないだろう。
もちろん、それまでにも日本のシティポップサウンドは、世界的に注目されたカルチャーとなっていた。だが、一部の音楽マニアのみでの話題でしかなく、ブームであって、シーンにまではなれていなかったように思える。そして、その後のコロナ禍の影響もあり、なんとなくそのブームも一旦沈静化するかように見えた2023年初頭。しかし、新型コロナウイルスの終息もあり、海外からの旅行者を受け入れはじめたことで、日本のシティポップシーンに新たなる風が吹きはじめたのだ。都内各所の中古レコード店では、70年代から80年代にかけての日本のシティポップサウンドのアナログレコードを爆買いする外国人観光客の姿が見られるようになった。それに伴うように、クラブやDJバーなどで開催されるシティポップ系イベントにも多くの観光客が訪れるようになったと感じている。
この2023年に、急速的にリバイバルを果たした楽曲は、亜蘭知子の1983年の作品「Midnight Pretenders」だろう。同曲は、R&B界のスーパースター、The Weeknd(ザ・ウィークエンド)が、2022年1月にリリースした「Out of Time」でサンプリングし、再注目されたことは記憶に新しい。しかし、当初は海外のコアな音楽ファンの評価の方が高く、日本国内では、音楽的、ファッション的にトガったコミュニティのみによる評価だったと認識している。だが、それが2023年のいまになって、さらなる注目を集め、ブームからシーンとして定着しはじめたと感じる機会が多々あった。現在、YOU TUBEでの「Midnight Pretenders」の再生回数は、1000万回以上をマークするほどのモンスターヒットとなっているほどだ。恐らく、海外での再評価が、逆輸入的にゆっくりと日本国内へと浸透し、2023年のいまになってメジャーな音楽シーンでの再評価へと繫がったのではないかと考える。
海外アーティストによる、日本のシティポップサウンドのリバイバルは2000年代に入ってから急進した。例えば、山下達郎の楽曲が海外のヒップホップアーティストにサンプリングされたことで、国内においても山下達郎サウンドが再評価され、それにつづくように吉田美奈子の「town」や「ミッドナイトドライバー」、「恋は流星」、そして竹内まりやの「プラスチック・ラブ」などが海外アーティストたちの耳に留まり、アメリカやヨーロッパ、アジアの音楽シーンで話題を呼んだ。2017年には、とあるTV番組で外国人旅行者が、大貫妙子の1977年にリリースしたアルバム『SUNSHOWER』のLPを探しに来日した放送の影響もあり、彼女の再評価へと繫がったのは周知のことだろう。国内の音楽シーンにおいては、いわゆる逆輸入的にシティポップサウンドがフォーカスされたのだ。
その後、日本のシティポップサウンドにおいて世界的なヒット曲が誕生する。1979年にリリースされた松原みきのデビュー曲「真夜中のドア~stay with me」が、突如2020年になってSpotifyのグローバルチャートで1位を記録したのだ。その要因のひとつには、2020年に配信リリースされた、韓国のDJ・プロデューサーのNight Tempo(ナイト・テンポ)による公式リエディットの影響は外せないだろう。また、インドネシアのシンガーでインフルエンサーのRainych(レイニッチ)のYOU TUBEでのカヴァー動画の影響により、TikTok動画内で楽曲が頻繁に使用され、若い世代に拡散したという背景もある。ちなみに、彼女のカヴァー動画の再生回数は900万回に達する勢いだ。しかも、2020年には、再発されたシングル7インチのアナログレコードは即完売。だが、当時の日本国内における評価は、やはり一部の音楽マニアが中心で、メジャーシーンではそれほどでもなかったと記憶している。
しかし、再び3年後の2023年になって、今度は国内外のさまざまな世代と層から「真夜中のドア~stay with me」の話題を聞く機会が急増。メジャーシーンにおいて、さらなる盛り上がりを見せはじめたと感じている。その理由のひとつには、そこからもつづいたブームの流れにあるだろう。2022年には国内の老若男女さまざまなアーティストが同曲のカヴァーを続々とリリース、2023年に入ってからも日本のインフルエンサーアーティストがYOU TUBEでカヴァー動画を配信している。また、発売元のポニーキャニオンからは、音楽ライターの金澤寿和氏が選曲監修する「Light Mellow 和モノ」で松原みきをフィーチャーしたコンピレーションアルバムのリリース、アルバム「POCKET PARK 2023 mix」の配信リリース、さらにリリック付きカラオケMVをYOU TUBEで配信リリースする。また、人気ゲーム「太鼓の達人」内でも同曲が使用され、楽曲も配信。そういった形で、同時多発的にリリースがつづき、さまざまな層に向けた多角的なフックが重なり合って、この度のメジャーシーンでの再フォーカスへと繫がったと考える。現在もYOU TUBE上では、国内海外問わず、メジャーマイナー問わず、さまざまなアーティストたちによる同曲のカヴァー動画の配信は増加中で、止まるところを知らない。「真夜中のドア~stay with me」は、もはやシティポップサウンドのスタンダードナンバーとしての地位を築いた、と言っても過言ではないだろう。
メジャーシーンにおけるシティポップサウンドのリバイバルの波が、怒涛のように押し寄せた2023年。
2024年は、国産音楽におけるブーム加速とさらなる広がりを期待したい。
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