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Interview : September 15, 2010 @ 23:20

井上 薫 インタビュー__『ハレの日』(中編)



約5年ぶりにニューアルバム『-SACRED DAYS(セイクリッド デイズ)-』をリリースした、井上 薫。


5年という月日の中で、彼は何を思い、何を考え、そして何を感じてきたのか。。。


井上 薫の”いま”に迫ったインタビューの中編。





─世の中的には、音楽はダウンロードの時代ですが、いまの状況をどのように見ていらっしゃるんですか?


それに対しては、ぜんぜんフラット。音楽をやっているヒトたちとは話題にはなっているけれど、もう必然だよね。
結局、批判的に見ると○ップルはすごいな、と。俯瞰して見ると、ビジネスの帝国主義的な理論というか、構造というか、コンテンツと呼ばれるものすべて、いわゆるソフトをみごとに手中に納めたよね。


─ビジネス戦略はスゴいと思います。


日本国内で配信だと携帯ダウンロードが主流みたいなんだけれど、世界的に見るとやはり”iTunes”だもんね。でも、その”流れ”になって悲しかったのが、いままで働けていた人が働けなくなったこと。
ここ2〜3年でそういう場面をすごく見てきたからね、これはえらいことだなと。もちろんパッケージメディアは、なくなりはしないんだろうけれど。でも、、、制作者としてはどんなカタチであれ、”モノ”として残したいよ。
まあ、今作も同発で、iTuneを中心とした配信はやるけれどね。


─同発なんですか?


ちょっと前だとCDを出して、1ヶ月後とかに配信を始めていたんだけど、いまはあまり関係なくて、CDを買う人は買うし、配信の人は配信で買う。そういう住み分けが出来ているみたい。


─住み分けが出来ちゃっているんですね。
個人的には、配信で買ったことがなくて、、、自分のなかで納得がいっていないというか。ソレをやったら「音楽への価値観が変わってしまうんじゃないか?」とか、そいうことまで考えちゃうんですよ。


価値観、たしかに!そういう話になってくるよね。
CDやアナログは、モノとしても有限だから、そこに価値が生まれるからさ。


─アナログやCDをレコード屋で”掘る”という行為は、目的のものが見つかったときの快感がハンパないですよね。


最低限、そこで体が動いているしね。
足をつかって、そこに行って、というその間のストーリーも楽しいし。。。なによりも、その方が動物的(笑)。


─アマゾンでは、買いますけれどね。


オレもアマゾンでは、CDをけっこう買っているかな。現場に行っても、モノが売っているお店がないからね。


─たしかに!
いまはそうですよね。


ほんとないんだよ。
まあ、足を使って探した方が楽しいけれどね。
でも、希少性というか、ココに行かないと手に入らない的なものは、いまはほぼないよ。すぐアクセスできて、すぐ聞けるし、すぐ買える。


─最悪でも、YOU TUBEでも聞けますからね。


そういうのが、人間の活動、、、おそらく思考にも影響を及ぼしているよね。だから、いいことではないのかななんて。。。


─だいたいのことは、インターネットで済んでしまうし、体も頭も使わなくなってきていますよね。人間、楽な方に行ってしまうのは仕方がないですけれど。


いまは、無駄なくらい利便性を追求されているけど、そろそろダレかが問いたださないといけないと思うよ。利便性の追求で、危機管理能力もなくなってしまうし。
例えば、抗菌すぎて、有害な菌に耐性がないとか。もちろん、その”流れ”はまた変わっていくとは思うんだけれど。でも、慣れてしまうと、なかなか戻しにくいよね。


─タバコのパッケージの肺ガンの警告じゃないですけれど、音楽をDLするときに「あなたの脳が衰えますけど、大丈夫ですか?」とか、そんな注意が出たら面白いですよね。かなり語弊がありますけれど(笑)。


電磁波の数値でだされたり、細胞の一部が死にますよ、とか(笑)。


─そういうのがあったら、ちょっとは危機感を持ちますよね。


まあ、作る側としてはね、どんなカタチであれ楽しんでくれればいいワケですよ、まず。
メディアアートとして、ジャケットひとつに関しても、デザイナーとの結晶だし、そこにかけたエネルギーも大きいから。願いとしては、どんな人にもできあがったものを見てほしいし、手に取ってほしいですよ。


─それはもちろんですよ!


でも、ビジネスモデルとして、そういうデジタルな方向へ移行しているので、それはもう仕方がないのかな。
以前は、アナログレコードでDJをやっていたワケだけど、それが一時期、モノが増えていくことがすごく嫌になって買えなくなったんだよ。
データだと、その辺りは単純に整理されていくよね。


─ボクもたくさんレコードがありますけれど、スペースはとるし、、、たしかに大変です。


まあ、好きで持っているモノだからね。昔は、そのアナログの音を、みんなで集まって聞いたりとかしていたわけだし。そういう共有できる仲間って、すごく大事だよね。


─最近までは、クラブがそういう共有空間でしたよね。


もちろん、いまもその思いでやっているけれどね。


─最近は、ちょっと違う感じになって来ているような気がするんですけれど、どうですか?


情報過多というか、、、情報の荒波で選択肢がいっぱいあり過ぎたり、情報力だけで理解してしまうとか、、、そういう動きになりがちなんだと思う。オレがめざしているのは、音楽だけではない共有空間で、音楽を中心としてそこにいる人たちとどれだけ共有できたか?という”想い”ね。
いまのヒトたちは、モノがあらかじめあるので、情報力だけで分かる感覚なのかも。情報量が多すぎて、逆に虚無的になってしまっているんじゃないかな。もちろん、いろいろと試しているヒトもいて、音楽が好きな子もいるけれど、それに熱中できないというか、させないくらいの選択肢がいっぱいあるよね。


─そういえば、、、、むかしは”熱血”ってコトバがありましたけど、いまはあまり使われないですよね(笑)。


たしかに!”熱血”ってないかも(笑)。


─”熱血”とか”根性”とか、『巨人の星』じゃないですけれど、マンガもアニメも、ドラマもそういう汗臭い感じのものがたくさんありましたよね。


世の中のムードとして、推奨されていないんじゃないかな。
「歯を食いしばれ!」とか、「なにやってんだ!」とか言ってさ、ケツバットとかやられたり(笑)。。。でも、それはいまはやっちゃいけないことになっているよね。
試合に負けただけで殴られるとか、理不尽っちゃ、理不尽だったよ(笑)。


─そういうことがあって、社会性を学んでいったんですけれど、最近はないんじゃないかな、なんて。


それだと、、、ストレスに弱くなるよね。
それがDLだけでやっていると、何かが衰えますよみたいな話につながるけれど(笑)。


─すべてがそこにつながっていると思いますね。


ストレスに弱いとか、エネルギーが弱いとか、そういう風になりがちだから、見直されると思うけれどね。体罰とか家庭の関係だとか、悪い部分だけ見てさ。でも、その中にも必要な部分ってあるじゃない?
過保護なことが、逆にストレス耐性のない人間に育てあげてしまうとか。小さい単位じゃなくて、もうちょっと全体として考えないといけないよね。


─そう思います。ちなみに薫さんはどんな少年時代を過ごしていたのですか?


オヤジがサラリーマンで、高度経済期は「オレたちが支えている!」みたいな自尊心をもって、あまり家族をかえりみずじゃないけれど(笑)、そういう時代感だったよね。
だから、体罰とかさ、、、それが普通の時代。でも、その反動でオレ自身は自分の子どもにユルくなったりするのかも。


─たしかにその傾向はありますよね。
多すぎる情報量の中で、ある程度強制的に選択肢にフィルターをかけるのも親の役目なのかもしれないですよね。それが厳しさにつながっていたのかななんて。。。


娯楽はいっぱいあったからね。その中から探して、”結晶”を見つけました!みたいなことってなかなかない。


─ヒトって選択肢がありすぎると、選ばなくなっちゃうんですよね。


そう!すごく受動的になるんだよね。


─その選択肢を狭める役目が、編集者だったと思うんですけれど、いまってそのシステムはほとんどないですよね。


ないと思う。
レコード屋もそう!いっぱいあるものを編集して提示する。。。たしかにないかも。


─どの雑誌にも一緒の商品が載っている場合がありますよね。以前はそれぞれ雑誌のカラーがあったんですけれど。


うん。すべてが均一になりかねないよね。それも問い直しの時期がきているのかな。
何かしらの特殊性というか、専門性というか、希少性というか、、、そういったものに特化する、そういうことを考えていかないとね。
ダンスミュージックはすごく消費のサイクルが早いんだけれど、ベースは似ていて、大枠でみるとすごく均一に見えてしまう音楽なんだよ。だから、普通の人に聞かせたら、すべておなじ曲に聴こえてしまうかもしれない。そのなかでの特殊性の出し方は、すごく考えさせられるよ。
例えば、今回は民族音楽的なエッセンスが入っているけど、そこに特化してみる、とかさ。そういう感じで挑戦はしつづけているよ。
でも、じつはある程度の評価は、分かっちゃうんだよね。


─例がいっぱいありますからね。


そう!あらゆることが出つくしているのかなとか、変に虚無的になるよ。いかに特殊性を出すか。
だから、カネコくんみたいに”和モノ”を掘っていくのはありかもね(笑)。そのエネルギーってスゴく大事だと思うよ。




井上 薫 インタビュー__『ハレの日』(後編)へつづく
撮影協力:hanabi(中目黒)






Kaoru Inoue
『SACRED DAYS』





レーベル:Seeds and Ground(SAGCD020)
価格:¥2,625(税込)

>>>レビューはコチラ



井上 薫(Kaoru Inoue)



DJ/ プロデューサー。
神 奈川県出身。高校時代より20 代前半までパンク~ロック・バンドでのギタリスト経験を経て、Acid Jazz の洗礼からDJ カルチャーに没入する。同時期に民族音楽探究に目覚め、バリ島やジャワ島へ頻繁に旅立つ。都内の小箱クラブの平日レギュラーを務めながら、94 年より”chari chari” 名義で音楽制作をスタート、UK の”PUSSYFOOT” からリリースを重ねる。
“真空管”、”MIX”、”BLUE”、”WEB” などの都内クラブで活動を続け、ハウス・ミュージックに傾倒していく中、”chari chari” としてリリースした2 枚のアルバム『spring to summer』(‘99/File)、『in time』(‘02/Toy’s Factory) は日本のみならず世界でも高い評価を得た。『in time』からカットされた「Aurora」は世界中の様々なミックスCD やコンピレーションに収録され、もはやクラシックスに。以降、リリース作品、リミックス制作は多岐に渡る。
‘03 年、日本が誇るインディペンデント・レーベル”CRUE-L” 内に、自身のレーベル”SEEDS AND GROUND” を立ち上げ、「Aurora」制作時のパートナーであるDSK こと小島大介と共に、ギター・インスト・ユニット”Aurora” を結成、’04 年秋デビュー・アルバム『FLARE』(SAGCD005)、’06 年『Fjord』(SAGCD010) をリリース。本名”Kaoru Inoue” としては初となるダンス・オリエンテッドなアルバム『The Dancer』(SAGCD007)を’05年夏にリリースした。
現在、独特のスタンスと審美眼から紡がれるDJ スタイルが好評のレギュラーパーティ”groundrhythm”@ AIR、岩城健太郎との共催”FLOATRIBE”@ UNIT を拠点に活躍中。また小島大介との”Aurora” は”Aurora Acoustics” と改名、ミニマルなギター・デュオ・スタイルが好評を博し、様々な空間でのライブ活動を展開している。



□Kaoru Inoue DJ tour schedule 2010

2010/9/11 (sat) @ 浜松野外イベント
2010/9/18 (sat) @ kieth flack
2010/9/24 (fri) @ Air
2010/9/26 (sun) BLAFMA presents 『ShinKooeN fes 10′』@ 茅ヶ崎
2010/10/2 (sat) groundrhythm @ Air


more info
http://www.seedsandground.com/


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