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Interview : September 21, 2010 @ 21:52

井上 薫 インタビュー__『ハレの日』(後編)




井上 薫が、ニューアルバム『-SACRED DAYS(セイクリッド デイズ)-』を約5年ぶりにリリース。


CDや雑誌などのメディアが売れなくなり、業界が衰退するなど、たった5年で大きく変化した世の中。


この5年という月日のなかで、彼はどのように変化してきたのか。



井上 薫の”いま”に迫ったインタビューの最終回。





─最近の打ち込みはエレクトロが中心で、DJもみんなPCでやってしまっていて、デジタルでカッチリ合わせるから、DJの音としての音楽的につまらなく感じるんですよね。個人的にはちょっとのズレがある方がおもしろいなと。そっちの方が心地よかったりするんですよね。


均一でのっぺりとした音になっちゃうよね。


─あとは、クラブよりバーとかに行った方が、自分的にもいろいろと新しい発見があるんです。90年代とか、2000年代前半の、いろいろな新しい音が出てきてという新鮮さが。。。ちょっと薄れているような気がするんですよね。かといって、新しいアイディアがあるワケではないのですが。。。


それ、スゴく分かる!
自分がDJプレイしている音楽に飽きることはないんだけれどさ、でも、オレ自身もクラブに遊びに行ったりとかは昔ほどないよね、正直。それもおなじような理由で。
でも、それって、やっている側にとっては相当マズい状況だよね。


─たしかに!


クラブって基本的には若い子の文化だよね──、それだけであってほしくないんだけれど。年を取ると、なかなか来なくなってしまうからさ。だから、若い子たちが遊びに来ないと、ビジネスとして成り立たない。
いまは音楽というより、一晩をどう彩っていくか、そこの熱量をどう高めていくか、みたいな部分に視点をシフトしていて、だから、ホントに”祭りの一夜”みたいな感覚で臨んでDJをやっているコトがフロアーに届けばいいなと思ってやっているよ。
ただ、たしかに過去のそういう何か新しいことが生まれているんじゃないのか!?とか、そういうワクワク感は下がっていると思う、正直。


─下がっていますよね。


音楽産業自体も下降ぎみな感じがするよね。簡単に検証すると、2000年くらいのときがピークだったのかな。
いまはさ、遊び場としてその場所をどれだけ魅力的にするか、それに対してどれだけのエネルギーをもって臨むかということにかけているよ。
それに、ダンスミュージック自体はとても必要な音楽だと思うしね。クルマとか、iPodとか、もしくは走るときとか、、、聴く局面はいっぱいあるし、いいエネルギーが与えられたらいいと思う。ダンスミュージックというか4つ打ちの音楽って、生理的にというか、人間の運動とすごく合っているような気がする。
しかも、DJでプレイする人間がいるから成り立つ部分もあるから、なかなか不思議な位置づけだよ。
だけど、自分的には単体でも完結するような音楽をつくりたいと思っているけれどね。


─今作は、一曲一曲が成り立っていますよね。もちろん繋げて使ってもいいと思うし。


4ツ打ちでもいろいろな種類の音楽があるけれど、いまのエレクトロの世界観って、じつはけっこううるさいなーって思っていて(笑)。。。
音楽的に解析しても、瞬発力のみというか、オレ個人は惹かれるところがないよね、べつに批判するわけじゃないけれど。
でも、若い子たちが、とくにファッション的な部分が飛びついていっているよね。
だから、、、何かあるんだよね。初期衝動的な何かというか。。。
まあ、エネルギッシュではあるよね、騒げたりとか。


─いまの人たちは、そういう感じを求めているんでしょうね。


そうね。それで幸福だったり、もしくは破滅的にアガっていくとかだったらいいと思うけれど、音楽的には近づけないかな(笑)。
自分がやっている音楽とおなじテンポで、おなじようにつくられているんだけれど、差はすごい開きがあると思うよ。


─エレクトロの音は、音に包み込まれる感じじゃなくて、押される感じですよね。


その”アンファンテリブル”的な部分に、魅力を感じているのかもね。


─いわゆる”パンク”っぽい感じなんでしょうね。


そういうことだよね。


─お話かわりますが、今作でコ・プロデュースやミックスをやったNAG(ナグ)くんは、個人的にむかしからの知り合いなんです。


えー!!マジで!?
あいつ、意外と知り合い多いんだよね。
NAGはいいよ。
アイツは音楽でやっていきたい!という、けっこうストイックな”想い”があってね。
いろいろと考えて動いているから、すごく信頼できるのよ、性格もいいし。
そんな人ってあまりいなくってね。


─今作は、どんな感じで指示されたんですか?


曲によりけりだけど、ある程度つくったものを渡して、エディットみたいな感じになるかな。NAGのセンスで、変えられるところはアイディアを出してもらったり。最後はミックスを詰めてもらってから一緒に仕上げる、そういうやりとりで出来上がったいちまいなんだよね。
それこそ、こもりがちな仕事だから、身体性が削がれていくので、「運動しないとダメだ!」って、すごく単純なことを言ってさ(笑)。
いま、オレのまわりで自転車が流行っているんだけれど、「自転車最高!」みたいな話しをしていたら、彼も自転車を買って、、、むちゃくちゃハマっていて、起きて、とにかくマックス1日50キロくらい走っているって。


─えー!それはスゴい(笑)!
ボクも文章を書くのに、ずっと書きつづけていると思考能力が低下するんですよね。だから、散歩したりしています。体を動かすのがいいんですよね。


基本だよね。
で、面白かったのが、「眠っていた野性が甦ってきました!」って(笑)。


─バカだなー(笑)。


でも、ずっと家で作業をやっていて、もう消滅しそうだったのが、たったそれだけで甦ることがたくさんあって、思考とか精神にも影響があるし、もちろん音楽にも。
それと、単純に生き生きとしているよw。


─それはよかったです。
さて、薫さん的には、”オーロラアコースティック”とか、ほかのプロジェクトもありますが、そちらの方は今後はどんな感じで進めようとか、予定はあるのですか?


“オーロラアコースティック”はライブはやっていたんだけれど、オレはコレやっていたし、小島(大介)もいろいろと忙しくて、1年くらい活動していなくてさ。でも、今年に入ってから、ライブをちょこちょこやっていますよ。それもレコーディングして、カタチにしたいんだけれど、どういう風にカタチにしたらいいのか分からなくて。。。
気持ち的に、あんまり安易にしたくなくて、届けるべきところに届けたいから、慎重にならざるを得ないよね。まあ、オーロラに関してはけっこう機動力があるからさ。
5月に祖師谷大蔵の”Cafe MURIWUI”でオーロラと小島大介ソロのライブを、投げ銭性でやったんだけれど、人がけっこう来てくれて、おまけに投げ銭をしていただいて、すごい楽しかったね。
最後は、知り合いのミュージシャンとかみんな混ざって、お客さんにも鳴り物をくばって20分くらいセッションやったんだけれど、みんな笑顔だったし、すごく幸福な時間だったよ。


─音楽ってそういうものだと思うんですよね。


そうそう!
その空間内だけだけど、すごく共有できているし、ハーモナイズしているというか、音で調和がとれているみたいな世界。
YOU TUBEにそのライブの模様がアップされているけど、やっぱりその場にいないと分からないよね。
それは、痛感するよ。


─次の動きは、もうはじめているんですか?


いや、これからだね。
このアルバムにも入っている”JEBSKI”というテクノ系のアーティストと、共作をつづけていくとか、あとNAGとも一緒にやるし。。。
とにかく、ガッチリやれる相手とのコラボレートはどんどんやっていきたいね。
ダンスミュージックはサイクルが早いから、スピードは上げたいかな。
それと、自分たちレベルでの話しになってしまうけれど、すこしでも、キチンと残るものをつくりたい。
そう思っていますよ。


─なるほど、了解いたしました。ありがとうございました。


どうも。



井上 薫 インタビュー__『ハレの日』(おわり)
撮影協力:hanabi(中目黒)





Kaoru Inoue
『SACRED DAYS』





レーベル:Seeds and Ground(SAGCD020)
価格:¥2,625(税込)

>>>レビューはコチラ



井上 薫(Kaoru Inoue)



DJ/ プロデューサー。
神 奈川県出身。高校時代より20 代前半までパンク~ロック・バンドでのギタリスト経験を経て、Acid Jazz の洗礼からDJ カルチャーに没入する。同時期に民族音楽探究に目覚め、バリ島やジャワ島へ頻繁に旅立つ。都内の小箱クラブの平日レギュラーを務めながら、94 年より”chari chari” 名義で音楽制作をスタート、UK の”PUSSYFOOT” からリリースを重ねる。
“真空管”、”MIX”、”BLUE”、”WEB” などの都内クラブで活動を続け、ハウス・ミュージックに傾倒していく中、”chari chari” としてリリースした2 枚のアルバム『spring to summer』(‘99/File)、『in time』(‘02/Toy’s Factory) は日本のみならず世界でも高い評価を得た。『in time』からカットされた「Aurora」は世界中の様々なミックスCD やコンピレーションに収録され、もはやクラシックスに。以降、リリース作品、リミックス制作は多岐に渡る。
‘03 年、日本が誇るインディペンデント・レーベル”CRUE-L” 内に、自身のレーベル”SEEDS AND GROUND” を立ち上げ、「Aurora」制作時のパートナーであるDSK こと小島大介と共に、ギター・インスト・ユニット”Aurora” を結成、’04 年秋デビュー・アルバム『FLARE』(SAGCD005)、’06 年『Fjord』(SAGCD010) をリリース。本名”Kaoru Inoue” としては初となるダンス・オリエンテッドなアルバム『The Dancer』(SAGCD007)を’05年夏にリリースした。
現在、独特のスタンスと審美眼から紡がれるDJ スタイルが好評のレギュラーパーティ”groundrhythm”@ AIR、岩城健太郎との共催”FLOATRIBE”@ UNIT を拠点に活躍中。また小島大介との”Aurora” は”Aurora Acoustics” と改名、ミニマルなギター・デュオ・スタイルが好評を博し、様々な空間でのライブ活動を展開している。



□Kaoru Inoue DJ tour schedule 2010

2010/9/24 (fri) @ Air
2010/9/26 (sun) BLAFMA presents 『ShinKooeN fes 10′』@ 茅ヶ崎
2010/10/2 (sat) groundrhythm @ Air


more info
http://www.seedsandground.com/






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