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Interview : March 4, 2011 @ 14:46

サイモン・テイラー インタビュー(前編)──『Low-Pro』とは



“アンダーワールド”や、テレビ朝日などのヴィジュアルロゴをを手掛けるなど、さまざまなクリエイティブ ワークスで世界を納得させる英国のクリエイティブ・カンパニー”TOMATO”。

その創設メンバーでもあるクリエイティブ・ディレクタ—のサイモン・テイラーが、あらたに”メイド ・イン・ジャパン”をコンセプトにしたプロジェクト『Low-Pro(ロウ・プロ)』を立ち上げた。

その第一弾のプロダクトとして、日本が世界に誇る自転車メーカー『FUJI』とのコラボレーションバイクを発表。
今後、”インテリジェントこそクールで危険なもの”という考えのもと、プロダクトのほかにもさまざまなプロジェクトを展開していく予定だとか。

いったい『Low-Pro』とは、いったいどんなプロダクションなのか。。。


主宰のサイモン・テイラー氏に、『Low-Pro』のコンセプトやクリエイティブ、方向性についてお話を伺ってみた。






コラボレーションの大切さ──




─現在までに数々のプロジェクトに携わってきたワケですが、なぜいま日本発信のモノをつくることにしたのでしょうか?



最初に日本を訪れたのは83年くらいなんだけれど、そのときは、とてもミステリアスに思えたし、すごくエキゾチックに感じたよね。
僕にとって日本の最初のイメージは、日本食とか文化よりも、車だったり、電化製品だったり、、、そういうプロダクト的な”モノ”のイメージが強かったんだ。それがいちばん最初に日本に対して興味を持ったコト。
それがあって、日本の生産技術がすごく良いということは分かっていたし、日本の生産者自体が持っている”本物に対する意識”に共感を覚えたしね。だから、そういう本物と一緒に個人的な”モノ”を作りたかった、それがこのプロジェクトのキッカケだよ。


─第一弾のプロダクト、自転車メーカー『FUJI』とのコラボレーションバイクに関して、企画自体をどのように進めていかれたのでしょうか?


基本的に自転車が好きだったから、まずは『FUJI』と”何か”をしたかったんだよね。
単純にいえば、ボクが描いたものを彼らに形にしてもらうという感じなんだけれど、もちろん売れるものを作らないといけないから、どういうモノが売れやすいとか、パーツとかも、お互いにいろいろと考えて、話し合いながらやってきたよ。
そのプロセスを経てコレが出来たんだ。






─特徴を教えてください。


このアイディアは、80年代のトライアルレース用のモデルから来ているんだ。そのモデルはスピードのタメだけにいろんなことが考えられていて、そこを追求した結果としてできたものはとてもエレガントで、かつ攻撃的だとも思えたよ。
まあ、コレはレースのための自転車としてデザインされているワケではないけれど、そういう雰囲気というか、センスは持っていると思うね。


─フレームなどのデザインが、予想していたものよりシンプルなモノでしたね。今回は、どういったインスピレーションで、デザインされたのでしょうか?


これは”ジオメトリー(geometry/根本的な位置関係のこと)”がすごくいいと思うんだ。
例えば、ハンドルの支点と、サドルの高さのバランス。その”ジオメトリー”を生かすために、必要のないものは取っ払ってしまおうというデザインコンセプト。他に目を奪うものをつけたくなかったのさ。
いま自分で乗っているのもカスタムバイクなんだけれど、ボクの建築家の友人がボクのバイクを見て、「自転車じゃなくて、絵みたいだ」と言ったんだ。そのアイディアからきているんだよね。
コレ自体がグラフィックなんだ。


─”TOMATO”のイメージだと、とてもテクニカルなデザインのイメージが強くて、フレームのペイントもかなり凝ったモノが出来るのかと思いました。


色目的に派手ではないけれど、フレームの表面の処理とか、リアタイヤの位置とフレームの色の境(黒と水色)が、タイヤの輪郭に合うようにしているとか、じつはそういう部分にすごく時間をかけているんだ。
今回は、ジオメトリーが大事だと考えていて、普段グラフィックに注いでいる情熱をジオメトリー自体に注いだんだよ。


─細かいパーツの選び方は、どのように進めたのでしょうか?


とりあえず、すべてのパーツをそろえて、たくさんリサーチはしたよ。ただ、売らないといけないのと、値段の問題もあるから、その辺は『FUJI』の人と綿密に相談しながら、自分がいちばん欲しいモノ──カタチに近づたつもりさ。
自分はエンジニアではないけれど、彼らにはエンジニアリングの技術や知識がある。お互いそういう部分をうまく利用しながらできたと思うね。
コラボレーションというのはすごく大事なことなんだよ。彼らが持っていて、自分が持っていないこと、そういうものをお互い利用して、よりいいものができるからね。


─ちなみに、このプロジェクト名『Low-Pro』という名前はどこから来たんですか?


最初は、この自転車のニックネームとして『Low Pro』というコトバがあったんだよ。それが、だんだん組織化して、”何か”をしようと思ったときに、その組織名がいいんじゃないかとおもってね。
『Low-Pro』は、『low profile(低姿勢)』からきていて、「エラそうにしない!」ということからその名前を取ったのさ(笑)



(後編へつづく)






サイモン・テイラー(Simon Taylor)プロフィール

イギリス出身。
バース芸術大学、ロンドンカレッジ・オブ・プリンティングBA グラフィックアート科卒業。
創立メンバーとして所属するTOMATOは、グラフィックデザインや映像もとより、ファッション・建築界隈に与えた影響力は計り知れず、いまや世界屈指のクリエイティブ集団として知られている。

TOMATO
http://www.tomato.co.uk/



□Low-Pro
http://www.urban-research.com/special/lowpro/



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