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Interview : April 19, 2011 @ 16:43

“Agoria”インタビュー──恍惚の”諸行無常”サウンド(後編)



アルバム『インパーマネンス』をリリースしたDJ/音楽プロデューサーの”Agoria”。


”諸行無常”がコンセプトという、なんとも日本的な感覚の持ち主だ。


ひきつづき、アルバム『インパーマネンス』、そして音楽業界の現状についてなど、いろいろとお話を伺ったインタビューの後編。






─今作において、ナチュラルにヴォーカリストを選んだとのことですが、今回は日本ではブレイクをしているボーカロイドをフィーチャーしましたね。どういう意図があったんですか?


もしキミに手伝ってもらえるならば、”初音ミク”の電話番号を探してほしいよ(笑)。
ミクに「ありがとう!」って言いたいね。2010年7月くらいに来日したときに、”UMAA”の事務所でボーカロイドのプロジェクトを聞いたんだけど、その時に興味を持ったんだよ。エレクトリックミュージシャンとして、ツールとして、何か可能性があるのではないかなと。
なので、今回は実験的に使ってみたんだけれどね。それに”初音ミク”というキャラクターが映像でコンサートをやって、お客さんが盛り上がっているという状況を見て、いろいろな可能性が見えたんだ。
たとえば、DJの音とホログラムの3D映像をミックスさせるとかさ。いまは、そのホログラムの映像に興味があるんだよ。
でも、だからといって”初音ミク”と一緒にやったことが、カールや他のボーカリストと自然に一緒にやったということとは違うんだけれどね。


─ちなみに、日本のそういうカルチャーを観てどう感じましたか?


いちばん最初に思ったことは、、、クレイジーだと思ったよ(笑)。
でも、これは世代の違いの話しで、、、テクノミュージックが出てきたときも、「悪魔の音楽だ!」とか、「ドラックをやっているひとが聴く音楽だ!」とか、上の世代のヒトに言われていたしね。
新しいテクノロジー、、、たとえばヴァイナルからCDに切り替わったときも「ダメだ」とか言うヒトもいるけど、それは間違いで、そこから”何か”を学ばないといけないんだ。
それが好きか嫌いかは別として、テクノロジーとして良いか悪いかの判断はしないとだめだと思う。


─なるほど。
DJのツールに関してもテクノロジーが進化しています。
ちなみに”DOMMUNE”でのプレイではCDを使っていたようですが、PCなどのデジタルDJ機材は使用しないのですか?


それはとても大きな問題だよ。
答えは、、、分からない。
もちろんヴァイナルはいまでも買っていて、逆にデジタライズしてCDにして使っているけれどね。
いまのところ音的にはCDの方がクラブに合ったチューニングしているんじゃないかと思う。それにDJをしていて、いちばんヴァイナルに感覚が近いのがCDだね。曲を選ぶプロセスとか、アクションとか。「次に何をかけよう」とか、「こんな曲もあった!」というサプライズがあったり、そういうアクションが楽しいよね。リスト化されたものを読むとなると、それは無理だと思う。もちろん、いずれはコンピュータに移行すると思うけどさ。
最近、DJソフトの『TRAKTOR』は、同時に4曲とかかけられて、しかもその4つをジョインしてひとつのトラックに入れてさらに別の曲をかけるとか、そういう使い方もできるので、ライブをするときにはとても便利だと思う。
でもね、DJのときはサプライズというか、選ぶ作業というか。。。それも含めてDJのたのしさのひとつなので、それを無くしてしまうのはちょっと惜しいよね。
あとは、コンピューターを使用すると簡単になりすぎる。
選ぶのも先に順番を決めておくとか、そういう感じになるし、チャレンジでは無くなってしまうよね。簡単すぎると、逆に自由さもなくなるんだよ。決まったパターンになってしまう。
それにPCのDJセットだと、いろいろなツールがあまりにもあって、できちゃうから、逆にクリエイティブじゃなくなっちゃうと思うよ。
壁がないとやってみるという気にならないよね。


─最近のDJだとPCとかテノリオンとかを使っていて、DJの”意味”が変わってきているのかなと思います。
そういったいまのシーンを、どう見られていますか。


本質的にDJというものは、あまり変わっていないと思う。
いろいろなツールは出てきて、機材とかテクノロジーは変わってきてはいるけれどね。



─どんな音楽に影響を受けてきたのですか?

12歳のときにはじめて買った音楽が”Inner City”。子どものころは、デトロイトミュージック。それはボクの先の見える才能で見つけてきたのではなくて(笑)、フランスで普通にラジオでかかっていた曲なんだ。それに、そのときはデトロイトとかは知らなくて、ただ好きで買ったという感じ。でも、それ以来デトロイトミュージックにハマったんだ。
あとは、ボクの母がオペラ歌手で、母の友人が集まってみんなでオペラを歌ったりしててね。むかしはそれが嫌いだったけれど、いま聴いたらもうちょっと違う感じで捉えているかも。
父は古い音楽のコレクターで、コンテポラリーミュージックだったり、アフリカだったり。。。トーキングヘッズとかのメインストリームからワールドとかも好きだったよ。だから、ボクの家では、いつでも音楽がかかっていたんだ。そのふたつがボクの大きな影響かな。
ボクのレーベル”アンフィ二”はクラシックからアフリカンまで、ジャンルの幅が広いんだけど、その理由も自分の家族とデトロイトミュージックの影響だよね。


─フランチェスコ・トリスターノ・シュリメもジャンルが分からないアーティストですよね。
フランチェスコはどうやって知り合ったんですか?


“アンフィ二”は、アレクサンドラとヤニック、そしてボクの3人で始めたんだけれど、じつは元々フランチェスコのためにレーベルをはじめたくらいなんだ。
最初はアレクサンドラ、、、アレックの奥さんで”バネッサ・バニャ”──彼女はメジャーなピアニストで、ピアノ界のジェフ・ミルズなんだけれど、彼女がアレックをフランチェスコのコンサートに連れて行って、それをみたアレックが何かやりたいと思って、バルセロナまで行って、、、フランチェスコの音源を出すためにレーベルを始めることになったんだよ。
それが『Not for Piano』だったんだ。


─そうだったんですね。
“DOMMUNE”では、田中フミヤさんに影響をすごく受けたと話されていましたけれど。


そう。子どものころからフミヤさんのリリースは毎月チェックしていたよ。彼のレーベル”とれま”のものは必ず買っていたね。
デトロイトと、日本のケン・イシイ、そして田中フミヤ。その3ポイントが自分のテクノへの”ラブ”を作ったくらい。
フランチェスコのリミックスをやってもらったんだけれど、彼そのものという感じだし、彼の音源を自分のレーベルから出せることはとても光栄だよ。


─今後はどんな動きを考えていますか?


ゴールドレコードを目指すよ!
まあ、それは冗談だけれど(笑)。
とりあえず、いろいろなアーティストを出していく予定。
フランチェスコもそうだし、Clara Motoはアルバム2枚め。
フラメンコギターのギャスパー・グロスとか、たくさんだよ。


Agoria feat. Carl Craig & La Scalars – Speechless 投稿者 mistervideosoft13

─あなたにとってトーキョーとはどんな街なんでしょうか?


ひとことで言うと、、、「SHIT!」だね(笑)。
海外のアーティストとか、友達は「日本はいい!」と言うんだけれど、まったくそのとおり。それ以外は言えないな。
日本人は日中は意外と行儀がよくて、夜になるとクラブではじけたり。。。それもすごくステキだよね。
あとは、日本はまだ完全に”ウェスタナイズ”されていない。意外とそういう国って少ないんだ。
日本は独特の文化、やり方、人と人の付き合い方があって、それを経験しにくることは、ボクにとっても楽しいことだよ。


─ありがとうございました。


こちらこそありがとう!




(おわり)






Agoria
『Impermanence』





レーベル: U/M/A/A /(XECD-1130)
価格:¥2,200

トラックリスト
01. Kiss My Soul
02. Souless Dreamer
03. Panta Rei
04. Simon
05. Speechless
06. Grande Torino
07. Heart Beating
08. Little Shaman
09. Under the River
10. Libellules
11. Speechless (Whisper Dub) (日本盤ボーナス・トラック)
12. Heart Beating (sasakure.UK“Vocaloid”Mix feat.Miku Hatsune)(日本盤ボーナス・トラック)



□Agoria プロフィール



フランスはリヨン出身のDJ&プロデューサー、アゴリアはフランス国内では既にロラン・ガルニエと並ぶ程の人気を誇るビッグネームだ。
1997年に自身の作品を制作するようになった彼は、2000年にはDJとして初めてフランスの新たな芸術家を育成する為の基金、FAIRの助成対象者に選出された。
2005 年の『Cute & Cult』、2007年の『At The Controls』、2010年の『Balance 016』、そして2011年には『Fabriclive』もリリース予定と、DJとしての人気は世界的に高く、日本でもWOMBやageHaといったクラ ブでのプレイで大成功をおさめている。
2003年のデビュー作『Blossom』、そして2006年のセカンドアルバム『The Green Armchair』ではゲストにトリッキー、ネネ・チェリー、バウハウスのピーター・マフィー、プリンセス・スーパースターなど錚々たるスター達が迎えられた。
2008年にはリュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープの制作による衝撃作『ゴー・ファースト 潜入捜査官』の音楽を担当し、同名のアルバムを発表して日本でも人気を博した。
2011年の『インパーマネンス』は自身のレーベル、アンフィニから初のリリースとなった。

・オフィシャルサイト
http://www.umaa.net/artist/agoria/
http://www.myspace.com/agoriagoria
http://www.infine-music.com/



衣装協力:
アニエスベー

協力:
PUBLIC HOUSE


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