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Interview : May 2, 2011 @ 17:01

『ONE GRAVITY』デザイナー”猪股裕樹”と語る(前編)



毎回”ブレない”服づくりで、ファンから絶大な支持を受けるファッションブランド『ONE GRAVITY』。

カジュアル、フォーマル、いつでも、どんなときでも着られるという、オールマイティな立場を保っている。



現在、想像以上に低迷するニッポン経済。
IT業界をはじめさまざまな業界に大打撃をあたえている。
ファッション業界もしかり。


そんな中、『ONE GRAVITY』デザイナーの”猪股裕樹”は、何を考え、どう動いてゆくのか。


猪股さんに、ブランドに関してや、これからの日本のファッション業界についてなど、いろいろと語っていただいた。






─2010年AWはどんなコンセプトで展開したのですか?


例によって、シーズンによってテーマとかコンセプトみたいなものは、特別設けていません。
だけど、ココ3シーズンくらいは、あらためてブランドコンセプトの掘り下げに注力しています。


─なるほど。
以前のインタビューの際は、『制服』というキーワードが出てきましたが、今シーズンはその制服感がさらに強い作品に感じました。


そうですね。
無駄な部分は削いでいき、主張したい部分をよりよく見えるように作っていかないとヒトには伝わらないのかな、という思いが強くありました。
今シーズンに限らずですが、何シーズンか前くらいからトーキョーのメンズにおけるブームみたいなモノが、
一回”天は打った”のかなみたいなイメージがあって。。。それまでは、いろいろなモノが出て来て拡散して、一段落以降はしぼむパターンが多かったと思うんです。
『ONE GRAVITY』に関しては、別にその中にいたとは思わないし、いたいとも思わないんですけれど、、、ただ自分たちのスタンスとして、マーケットの中のいちブランドとして捉えて考えれば、やはりそういう空気みたいなものは加味せざるを得ない。
そうしたときに、あらためてモノのチカラといいますか、、、ベーシックなんだけれど、チカラを持たせるために『制服』をモチーフにしているんですよ。
その中から無駄を削ぎ落として、プラス別の意味での”匂いづけ”しているものが『ONE GRAVITY』なんです。


─09年のシーズンくらいまでは、すこし派手というか、、、色的にそんなイメージがあったのですが、今回に関しては、すごくシックで、ベーシックというか、、、そういう部分を打ち出したのかなと感じました。


秋冬に関しては、素材感のバリエーションをつけやすく、反対に春夏はどうしてもつけづらいシーズンですよね。それは避けられない。
09年の春夏のときは、どうしたらテキスタイルとは別にキャッチーな顔をつくれるのかという部分、ベーシックな中でのキャッチーな顔というものを考えていたので、そういう意味では派手に映ったのかもしれないです。


─なるほど。
たとえば、色落ちさせたジーンズに白のペンキのような素材を塗っていたりとか。。。
しかも、それが普通に着ていてもおかしくない。それがスゴいなと思いましたね。でも、そう思っていたら、今回はシックというか、よりベーシックな感じでしたので、猪股さんの中で「今回はコレでいく!」みたいな、精神的な部分での”何か”があったのかなと思ったのですが、いかがでしょう。


そうですねー、、、「このシーズンだからこう」というよりも、秋冬と春夏で考えたときの差なんです。秋冬の方が素材に頼れる要素が大きい、且つメリハリを付けられるという部分。
春夏だと素材感だけのメリハリは、どうしてもつけづらいんですよ。


─春夏でいうと、たとえばTシャツ。
素材がスゴく薄いんですけど、その薄さを感じない素材選びというか、、、そこがすばらしいですよ。


Tシャツに関していえば、”ユルさ”を表現できたらいいなと思ってつくりました。


─以前のインタビューの中で”いつでも着られるモノ”というお話がでましたが、それを突き通していて、毎シーズンともに芯がブレないのはスゴいですよね。シーズンごとに、まったく違うものを打ち出してくる人もいますから、、、それもスゴいですけれど(笑)。
猪股さんの場合は絶対に揺るがない”芯”があって、その上に”のりしろ”の輪があって、その部分が広いんでしょうね。


軸を動かさずに、触れ幅を大きくとれたらとれた分だけステキだなと、僕も思っています。


─それはステキですよ!
現在、日本の経済状況的には不景気と言われてまして、ファッションの状況だとブランドを辞められた方もいます。そういう中で猪股さんは第一線でやられているワケですが、そこに居続けられる”秘訣”はなんでしょう?


いやー、秘訣も何もないです(笑)。
ウチは、景気がいいときでも大きくは伸びないんですよ。
だけど、その反面別にいまみたいな時期でも大きくは沈まない。。。ただそれだけの気がします。
広告を出しているワケでも、ましてこんな時代にホームページすら持っていない(笑)。そういう意味で、知っているヒトは、ほんのひとにぎりなのかもしれない。
でも、口コミというワケではないですけど、それを媒介してくれているのは取り扱っていただいている各お店さんなんですよ。
大多数のヒトは基本的には知らないから、お店さんも”売る”のに苦労があると思うんですけれどね。それこそ、メディアにジャンジャン載って、お客さんが名指しで「どこぞの何がほしい!」って言ってくるほど、楽な商売はないと思いますけど。
そういう部分から言うと、すごく相反したことしかしていないです。


─個人的に知り合いのお店からは、いい評判をお聞きしますよ。
やはり何かあるんでしょうね、”輝くもの”というか。


店頭でお客さんが購入してくれるかどうかは、バイヤーさんの目利きしかなくて、それに対して自分たちに出来ることは、買ってくれるお客さんの琴線に引っかるような部分にエネルギーを注ぐことなんです。
だから、そのお客さんにとって、値札の値段よりも”価値がある”と感じてくれればいいんですけれどね。


─お店によっては在庫が少ないところも多いようです。
お店側もなかなかチャレンジができないということなんでしょうね。


その部分だけは”景気”というのがすごく影響している気がします。
でも、すべてのお店さんが、右から左にお客さんが名指しで指名してくるような商品を扱いたいところばかりではないと思うんですよね。ですが、そこに”ゆとり”がないとどうしても売れるものだけにしか手をのばせない。
それはすごく感じます。


─個人的に「欲しい!」と思えるモノが少なくなってきているというか、、、残念ながら、どうしてもみんな同じ格好になってしまっている。もちろん突飛な格好しているヒトもいるんですけれど、むかしほど突飛な感覚というか、そういうものが薄れてきているのでしょうかね。
だからこそ、お店さんは、そういう商品は扱えないでしょうけれどね(笑)。


たしかに。
お店の方からすると、メーカーを育てられなくなりましたよね。


─もちろん、10年後には状況は変わっているのかもしれないですけれど。でも、いまはすべてにおいてそうういう感じですよ、音楽もそうだし。たとえば、テレビ番組だと「このヒトが売れているから、この人を出す!」みたいな。


ほんとに売れているヒトの使い回しで。。。それがジャンルを問わず、”ゆとり”の無さなんでしょうね。でも、それが洋服でいえば消費者の方に見透かされている部分が強くなってきている気がします。それに、流通の形態がお店だけではなくってきている要素も強いですよね。


─インターネットショップとか、そういうバーチャルなお店が増えてきているのは確かです。


実店舗とバーチャル店舗、、、その購入動機って、まったく違うと思うんです。実店舗だと、商品と自分の思い描くところのキャッチボールみたいなものだと思うんですよ。


─たしかに!


でも、バーチャルの世界ってそうではなくて。。。
たとえば、サイト内のおなじカテゴリーの中でどれが一番安くてどれが一番高いか、そういう差なんだろうなと。そのなかで一番安いモノを見つけて、買い物かごに入れるという行為が、、、楽しいのかな。そういう差のような気がするんですよ。
だから、その中には値段以上のものは介在しないワケで、作り手の”思い”とか、”素材感”とか、”質感”とか、”作り”みたいな部分は──もちろん掲載しているお店さんもいますけれど、そういう部分って実際に触ってみないと分からないですよね、悲しいけれど。
ハイファッションと呼ばれるブランドだけを扱っているようなサイトも存在するから、そこはまた意味が違ってくるんでしょうけれどね。


─インターネットって、消費者的には”知らないと買わない”と思うんですよね。


とくに大手さんはバーチャルなショップと、
アウトレットが主力になってきているというようなお話はよく聞きます。



(後編につづく)




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