Interview : May 9, 2011 @ 19:38
『ONE GRAVITY』デザイナー”猪股裕樹”と語る(後編)
“ブレない”服づくりで、ファンから絶大な支持を受けるファッションブランド『ONE GRAVITY』。
カジュアル、フォーマル、いつでも、どんなときでも着られるという、オールマイティな立場を保っている。
デザイナーの”猪股裕樹”は、この時代に何を考え、どう動いていくのだろうか。
ひきつづき猪股さんに、自身のブランドのお話を中心に、これからの日本のファッション業界についてなど、いろいろと語っていただいたインタビューの後編。
─いまはどんなジャンルもネガティブな感じですけれど、いまのファッション業界をどんな風に見ていますか?
過渡期ですかね。
─いわゆるアイディアとか、素材感とか、デザインとかが出尽くしたという感じですか?
そういうワケではなく、売る側にしても、メーカー側にしても、スタンスはあまり変わっていないと思うんです。
広告の出し方が紙媒体だったものが、そうではなくなったとかは別として、売る側はいまは基本的には実店舗とバーチャルショップと併用しているワケでなんですが、実質的に売り上げが大きいのは、まだ実店舗の方だとは思うんですよ。ですが、相当数のセレクトショップさんがバーチャルな店舗にチカラを入れている。
コトバとしてはおそらく”併用”ということなんでしょうけれど、でも、そこから先がどっちに行きたいのか、いまのところいまいちよく見えないんですよ。
実店舗の売り上げは悪くなっていきている、バーチャルの方も大きいワケではないけれど、チカラを入れざるを得ない。それでバーチャルショップの広がりとして、セレクトショップさんのオリジナルと呼ばれる商品を主力にしているワケです。
もちろん、それで売り上げが伸びれば、数字としては大きくなるのですが、それイコール”お店の魅力”とは意味がまったく違うと思うんですよね。
─いまからほんの5〜6年前は、セレクトショップさんはそれぞれ住み分けをしていたんですよね。しかし、最近は人気のある商品を入れるためにどうしても商品がカブってしまう。並列化してしまって、「それぞれの個性はどこにいったの?」という状態。そうなると、「それだったら、伊勢丹新宿のメンズ館の2階でいいや」とかって、なってしまうと思うんです。
それはすごく分かりやすい例ですね。
─なんだか買い物にワクワク感がなくなってしまったというか。。。
むかしは今週は何が入っているんだろうとか、毎週それぞれのお店を回ってみたいなことをしていたんですけれど、最近はあまり行かなくなってしまいましたね。
そうなんだよなー。
─何が悪いというワケではないんですけれど、なんか寂しい感じがするんですよね。
たしかに、寂しいですよね。
─こういった状況で、いまの若い子はどういう服の選び方というか、お店の選び方をしているのかなって気になります。
どうなんですかね。バーチャルなショップで、しかも各セレクトショップが出店する総合的なサイトとなれば、やはり個性はなくなりますよね。どこの商品を扱うという要素がやはり大きいのかな。
最近は、何かを”感じる”というコトが薄れてきているような気がします。逆を言えば、感じなくともお金にはなるという、あたらしい商業形態なんですけれどね。
でも、ボクらからしてみたら「それで良いワケないよな」って、すごく強く感じるところなんです。
─いまの小学生とか中学生は、パソコン文化の教育なワケですけれど、もちろんそれがビジネスとしてパソコンが使われるから、そういう教育になっている。彼らが20歳とか30代になったときの世の中が気になりますよね。
おおいに気になります。
─いまはスマートフォンとか、出版社だと電子書籍にチカラをいれていますけれどね、個人的にはあまりピンと来ないんです、、、自分でやっていながら”なん”ですけれど(笑)。
ただ、いまの小学生や中学生にとっては、それを読むという行為になる感覚を持っているのかもしれないですよね。
子どもたちにとっては、活字離れだったのが、そういうカタチで逆に活字戻りというキッカケになるかもしれないですよ。でも、ウチらの世代からいうと、慣れ親しんだというところで、やはり紙の匂いがしないしね(笑)。。。
─リアル感がリアルになれば、いちばんいいんでしょうけれどね。
たしかに目先で考えると本が売れない、で、タブレットが出てきて、いまのところ需要があるから、みんな電子書籍に参入してくるのは当然なんですけれど。
─まあ、そこら辺のインターネットの普及がいまの状況につながっているのは、間違いないワケですけれど。。。
こと洋服に関して言えば、刺激してくれるものが、店頭に少なくなり過ぎなのかな。「何だコレ!?」みたいなモノって減ってしまったのかもしれないですね。そういうモノが面白いと思えるヒトって、たぶん、というか絶対いるハズ。
「なんじゃこりゃ?」がインポートなら、もちろん値段もとてつもないものであるんでしょうけれど、でも、手に届く範囲のものとして、そういうものは減ったんだろうなって思います。
良くも悪くも世の中そんな感じですよ。
─海外のブランドだと、まだそういう「何だこりゃ?」というものはありますよ。
日本のブランドだと展示会とかコレクションでは見ますが、商品としては少ないですねー。
やはり作り手側としては、最初からそういうモノを作ろうとしていないワケではなく、それなりに思うところがあって、そういうのを作っているんでしょうけれど、店頭では見ないですからね。
でも、上手に「なんじゃこりゃー!?」って言うものをつくっているのに、それに触手を伸ばしてくれないのも確かです。
─消費者的にも切羽つまっている状況ではあるんでしょうね。
でも、これだけ服がいっぱいあるのに、そういうモノを外して、売れそうなものばかり集めたら、同じようなカタチの商品にしかならないですよね、どう考えても。
─バイヤーさんが責任を負えないという状況もあるんでしょうけれど、意外と「消費者もそういうのを求めているヒトもいるんだぞ!」っというのはあるんですけれどね。
バーチャルな世界の購買動機はよく分からないんですけれど、実店舗で考えると、横並びに商品があるよりも、でこぼことがある方が、お客さんって購買意欲がやっぱりそそられるのかなと思います。結果的には、「なんじゃこりゃ!」には手を出さないのかもしれないですけれどね。
でも、それを見て、笑って、「これはないよね。じゃあコッチ!」みたいな、そういうのがヒトの購買パターンなんかじゃないのかな。
インポートとドメスティックが並んでいて、インポートの商品をいいと思っても、「自分の財布じゃ、このお金は払えない!」となったとき、イイと思っていながらも、その横にある商品に手をノバすというパターンがあるじゃないですか?だけど、どこの店に行っても同じような商品が並べられていたら、購買動機は生まれないんじゃないかな。たくさん売れるのは普通の服に決まっているんですけれど、挑戦はしてほしいですよね。
─おおいにそう思います!
2011年の春夏は、どんなことを考えているのでしょうか?
あらかたのフレームは考えてあって、あとは擦り合わせなんですけれどね。秋冬に比べると春夏って素材感が軽くなる。あたりまえのことですけれど。物質的な素材感の軽さではなく、質量の軽さを表現できないかなと思っていまして。。。
ただ男のヒトの服なので、ただ生地を軽くすると、当たり前なんですけれど薄くなって頼りない。男のヒトって、物性的に強度が弱いと、それに対して抵抗があるんですよ。その部分って、作り手としてはある種”ジレンマ”を感じるときもありますけど。だから今回は、軽さを違う方法で表現できないのかなと。
特別違ったカタチを毎シーズン作ろうとしているワケではないので、同じようなカタチで、生地が変わりました、色が変わりました、縫製仕様が変わりましたでは、作っている方が、出来上がる前から飽きてしまう。
だから、違うアプローチから入れば結果的に同じものになったとしても、まったく別のものを接するような組み立て方ができて来るんです。
まあ、というようなことをコツコツとカタチにしましたね。
─なるほど。
それは面白そうですね。
でも、うちは小さいから、やれることに慢心していかないと、小ささの意味がなくなるんです。小さいからトライができるってあるじゃないですか?大きくなると、たぶん守らなきゃいけなくなるし。身の丈に合わない大きさになると、どこに行きたいのか分からなくなりますよ。
やはり、それぞれのスケールに合わせたビジョンがないとダメだと思うんです。
─それがいまの状況に合っているんでしょうね。
実験的というか、ラボみたいなカタチですよ。
─会社が大きかったら、面白いだけではダメなんでしょうけれどね。
もちろん、そういうジャッチは会社として必要なんですが、そのくらいの余力はあった方がいいと思いますね。
─現状は、迷走するファッション業界ですけれどね。
迷走しているのはファッション業界だけではないですよね。
それは、金子さんから聞くお話はたくさんありますけれど(笑)。
─政治は迷走しまくりですけれどね(笑)。
もうどうにもならないでしょ(笑)。
─まあ、こんな世の中ですけれど、楽しく生きていかないとなと強く思いますよ。
そリャそうですね(笑)!
─そう思うと、猪股さんの服は楽しいと思っています。
ありがとうございます!
─こちらこそ楽しさをありがとうございます!って感じです。
そうやっておっしゃってくださる方がひとにぎりでもいいからいてくれる限りは、やはりモノは作りつづけていきたいとは思いますね。
「もう、いらねーや!」とか「もっと売れるヤツ」って言われたらどうしよう(笑)。
─難しいところですよね。
でも、ガンバって、ブレないまま、やりつづけていただきたいです!
はーい、がんばりまーす(笑)。
─ありがとうございました。
コチラこそ、ありがとうございました!
(おわり)
This entry was posted on Monday, May 9th, 2011 at 19:38 and is filed under Interview. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. Responses are currently closed, but you can trackback from your own site.












