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Interview : August 10, 2011 @ 18:08

『しぶや 花魁』1周年記念──ヴィーナス・カワムラユキ インタビュー(後編)



渋谷は道玄坂の”ホッと”スポット『しぶや 花魁』が、2011年6月で開店1周年をむかえた。


見た目は、1階は立ち飲みスペース、2階はテーブル席で、お酒や料理、おつまみにこだわりがあるという、ごく普通の居酒屋。

しかし、ドアを開けてみるとそこでは、DJやライブ、さらにはトークショウなど、さまざまなカルチャーイベントを開催しているなど、カルチャーの発信基地なのだ。


そんな『しぶや 花魁』のプロデューサーをつとめる、作詞家で作家、そしてDJとしてもお馴染みの”ヴィーナス・カワムラユキ”さんに、いろいろとお話を訊いたインタビューの最終回。





☆:これまでのお話を聞いていると、サロンのような、コミュニケーションの場を作りたかったんですね。


そうです。
自分がいい音楽があって、食べて、コミュニケーションをすることが好きだったから、いい音で音楽がかかる場所がひとつ増えてほしいという気持ちで作ったのもありますね。
なので、サウンドシステムは、いつもメンテナンスして気を使っていますよ。


☆:音がすごく悪いところもありますからね。


音が悪いところで呑んでいると、気持ちが悪くなるんですよ。
だからといって、高いスピーカーを使っていればいいというものでもないです。


☆:バランスですよね。


そうです。
けっこうAMラジオっぽい音も好きで、、、自分の家のバスルームに小さいラジオを置いているんですけれど、「コレだ!」みたいな(笑)。


☆:ははは(笑)。


音のシステムは、阿尾(茂毅)さんにやっていただいているんですけれど、彼は河瀨直美監督の『殯の森』という映画の音響をやられている方なんです。
一緒にバンドをやったりしていて、、、まあプログレなんですけれどね(笑)。


☆:プッ、プログレ(笑)!?


そう!プログレ(笑)。
DJをする仲間や友達もいっぱいいるし、スペースデザイナーもビジネスパートナーだし、店長も和太鼓を叩いているからリズム感があると思うし。
だから、始まってからもいろいろと話が早かったんです。


☆:お店自体の話が固まっていったのが早かったということ?


そうです。
そこからスタッフのみんなが仲良くなっていくというか、楽しくなっていくさまを見ているのが、楽しかったですよね。家出娘が帰る家ができた、そういう感覚です(笑)。


☆:家なんですね、ココは。


家の一部です。
レコーディング現場や、DJから帰ってくると、ホッとしますもん。
逆に行く前に寄ると行きたくない病が起こります(笑)。


☆:それ分かります(笑)。
ボクもココに来ると次に行きたくなくなっちゃいますもん。


“ザ・接客”みたいなことも、だんだん意識しないようになっていって、いまではタモリさんみたいなスタンスになってます(笑)。
でもいいんですって、その方が。毎日のことですからね。
機嫌がいい時はいいとき、疲れているときは疲れている。顔に出たっていいというスタンスで行こうと思ってますよ。少なくとも私は、、、スタッフはちゃんとしていますけれど(笑)。


☆:やりたいようにやる!っていうの一番ですよね。


そうそう!
じつは私、すごく強烈な人見知りでして、、、そのリハビリでもあるんですよ。
なので、「頑張ってしゃべろうキャンペーン」中なんですよ。


☆:ええー!!そうなんですか(笑)!?


そうなんですよ。
まあ、ここは会ったこともない、見たこともないような方に会えたりもするし、新しい出会い──二十歳とかその辺りの子と話すことはすごく刺激になりますからね。彼らが何を考えているのかを知ることって、詞のネタにもなりますし。
20代前半の女の子が何人かでワーって呑んで帰ったり、そういうのが微笑ましいし、エネルギーをもらいますね。彼女たちの見ている視点って、とっても刺激的ですよ。
彼らの持つエネルギーを感じて、自分の一部にするっていうのも大事かなって。


☆:それは大事です。


『しぶや 花魁』には30代も40代も50代も来ますけれど、さまざまな世代のスタンスが垣根を越えて、これもやっぱり化学反応というか、、、ジェネレーションギャップを楽しむのも面白いです。


☆:まさに世代の”るつぼ”的な感じですね(笑)。


私、「『しぶや 花魁』に来てね!」ではなく、「花魁ちゃんをカワイがってね!」って言うんですよ。
お店も生き物だから、来てねというよりはかわいがってほしい。


☆:なるほど、よく分かります。


これまでの時代は、お金をたくさん使うことがよろこばれていた時代だったと思うんです。
だから、最低限コレくらい稼いでという目標で、縛られていた時代だったし、そこを目標とすることに意義を見出していた時代だったんですけれど、いまはお金はプライドと意志を持って使う時代になったというか。。。
例えば何か物を買うというのは、そのものの意志に賛同しているってことなんですよね。それが大事になって来た時代だと思うんです。
私、洋服は出来るかぎり友達のところで買うんですけれど、その友達が好きで、やっていることも好きだから。もちろん、100%の話ではないですけれども。それってお店もそうだと思うんです。だから自然な行為ですよね。それに友達のところで、お金を使うことは楽しいし、その友達を応援するということにもつながる、、、言わずして言うってことだと思うんですよね。それがカッコイイと思うし、それがマナーだと思う。
これからは、よりそういうことが強く必要になってくる時代なのかな。





☆:コミュニティとか、コミューンみたいな感じですね。


でも、ヒトと話すのって本より面白いですよね。
前に北海道に行ったときに、じゃがいも農家の3代目の話とか、ホント面白かったんですよ。


☆:自分のまったく知らない分野の話しになりますからね。


だから、『花魁』は複製がきかないというのは、そういうことだと思うんですよ。
ウチは王様のブランチの対局にあって、「いま流行りの!」とか言われても、流行りとかじゃないし、逆に流行られたら逆に困るんですよねー(笑)。
いま思うと目標ってソレだったのかもしれないです。


☆:と、いうと?


独自のお客様スジと、お店が運営できるだけの売り上げを確保できるだけのポジションを確立すること。
このお店のデザインしてくれたビジネスパートナーが、最初はいろいろな人に「エッジだねー」って言われたらしいんです。それって、いわゆる(呆れられた)ということだと思うんですけれどね。。。その話を聞いた時に、「このヒトに負けを認めさせることはできない」って思ったんですよ。とにかく、後悔させたくないって。。。みんなを誘っちゃったから、負けたことになってほしくなかったのよ。
いまのところ商業的には運営できるだけの売り上げができているから、とりあえずは成功であって失敗ではないという事だと思います。だから、いまは彼、「カッコイイことやっていますよね!」って言われはじめているらしいから、よかったです。論より結果なのよね。
これが失敗例だったりしたら、カッコイイこと言えないし、絶対そうはしたくなかった。いい日も悪い日もあるけれど、毎日があるから、今日ダメでも明日頑張ろうって。その余裕をつづけられるようにしたかったというのが、まずは第一目標かな。
それに、自分の友達とか、仕事仲間とかがキチンとつながってきているし。18歳で家出したときから、仕事をくれた人に不義理は出来る限りなかったつもりでいるから、その気持ちは通じていると思うんですよね。だから、お客さんとして来てくれる仲間もいっぱいいて、そこから広がってって、、、ホント感謝です。
自分がただ遊んできただけではなく、積み重なってきたものが、ココに、この家に集結してきたという感じですよね。あとは2年、3年と、長く、重みのあるものにして行きたい。
でも、よくばらないことですね。


☆:それは人間的に必要だと思いますよ。


よく「商売人じゃないね!」って言われるんですけれど、商人じゃないかも(笑)。
どちらかというと”思い出”を作りたいんですよ。お客さんにはいい”思い出”で帰ってもらいたいから。なので、歴史という太さは重要なんですよ。
それに良いモノをつくるためには、やはり努力しないとね。
まずはそれを貫きましょう!って感じです。


☆:なるほど。
今回は、ありがとうございました。


ありがとうございました。
これからも『花魁』ちゃんをカワイがってくださいね!





(おわり)






『しぶや 花魁』
オフィシャルHP:http://oiran.asia/

1周年企画イベントなどの詳細はコチラ
http://oiran.asia/cluboiran/

『しぶや 花魁』twitter
http://twitter.com/oiran_shibuya/




ヴィーナス・カワムラユキ



DJ&プロデューサー、Sony Music Publishingの専属契約作詞家。
2001年「灼熱」でCDデビュー後、バレアリック・スタイルのDJとして世界各国でプレイ。ドレス・キャンプ、ルイ・ヴィトン、マドンナ+スティーヴン・クライン、ヴィダル・サスーンなどのショー音楽演出やパーティにて活躍。
2007年「アスファルトの帰り道」(ソニー・マガジンズ)の発売を機に、作家活動を本格的にスタート。
J-POPに限らず韓流から華流アーティストの日本語詞、アーティストの感性を引きだし共に詞を制作するリリック・ディレクターとして多くの作品に関わっている。
現在、近代日本的飲食音空館「しぶや花魁」を運営中。

公式サイト:http://vky.jp/
twitter:http://twitter.com/venuskawamura/


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