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Interview : August 31, 2011 @ 03:35

世界レべルのインプロビゼーションジャズ──”RF”インタビュー(前編)



Farah(Pro/Arr)、成川正憲(Gt)、板谷直樹(B)、そして鈴木 郁(Dr)の4人からなる、インプロビゼーションジャズバンド”RF”。

2010年8月にリリースした1stアルバム『RF』は、その完成度の高さから国内外で大きく話題となり、2ndアルバム『Relation』では、”ブッダブランド”の名作「人間発電所」のネタ、”キング・ジェームス・ヴァージョン”の大名曲「I’ll still love you」をカヴァーするなど、選曲にセンスを感じたいちまいだ。

そんな彼らが、2011年9月14日に”夏”をテーマにしたアルバム『Feel』をリリース。

今作では、初のボーカリストをフィーチャーし、”Kool & The Gang”のサマー・アンセム「Summer madness」や、”Baden Powell”の傑作「Deixa」をカヴァーするなど、さらにすばらしい作品となっている。


今回は、”RF”のメンバーに、最新アルバム『Feel』の話を中心に、バンドの成り立ちなどについて、いろいろとお話を訊いてみた。






☆:”RF”のなりたちについて教えてください。


Farah:
もともとはボクが成川さんとお会いしたときに、「海外で音楽で勝負するにはインストですよね」という話題で意気投合して、成川さんのバンド”Rokugen Club”といっしょにやることになったんですよ。
素材をヒップホップネタにしたのは、ヒップホップってキューバに行ってもJ Dillaの曲がかかっていたりするし、いまや世界の共通言語ですよね。
元々生演奏にこだわりがあったので、ヒップホップをバンドスタイルでやろうということになったんです。バンド名は、”Rokugen Club”の”R”と、ボクの”Farah”というDJ名の頭文字”F”をとって”RF”としました。

成川:Farahから生の音でサンプリングするアイディアに意気投合したんですけれど、そこで出てきたのが『人間力』。人の力でどこまで現代の音楽を面白くできるかというところなんですけれどね。
いまでこそゲストも入れていますけれど、基本は3人。機械を多用しないで、できるだけ人のチカラでやる世界を追求したい。
だから、レコーディングも”パンチイン”なしの一発録り。ライブですよ。


☆:なるほど。


Farah:
パートごとにレコーディングして、あとでミックスする方法もありますけれどね。結局、それも3人が一緒じゃないから、”グルーヴ”がまったくの別物なんですよ。編集もしないし、3人で同時に録る。

成川:どれだけ不便にやって楽しむか、そこがいま世の中的にもテーマなんじゃないですかね。なんでも便利にしちゃうから、『人間力』がどんどん落ちている。”RF”は、どれだけ人間力でやれるかを大事にしています。

Farah:ヒップホップとかテクノとか、、、時代の進歩によって生まれた音楽をふまえて、原点に帰る。そんな感じですね。とはいえ、70年代や80年代の音楽をそのままマネするのではなく、現代の音を『人間力』で表現できたら面白いのかなって、、、それがコンセプトです。


☆:結成自体は、2009年なんですね。



Farah:
最初のレコーディングが始まったのが2009年。
その時に録った「Runnin’」と「Love theme from Spartacus」をカップリングで7インチを出して、それが国内外で話題になったんです。その後、アルバムを出すためにいろいろと準備をして、2010年8月18日にファーストアルバムを出しました。


☆:現メンバーのつながりは?



板谷:
成川さんとはバンド”Rokugen Club”の同じメンバーで、その流れでボクはFarahと知り合ったという感じですね。
で、ボクと郁くんは、、、

郁:幼なじみです!


☆:そうなんですか!?


板谷:
いえ、違います(笑)。
15年来の知り合いですね。

郁:同じバークリー音楽学院だったんですよ。

成川:ヒトのつながりって面白いですよね。

郁:ホントですよ。
直樹さんとは、当時は全然一緒にやっていなかったんです。
だけど、「ドラムやってみない?」って電話があって、、、それで「好きにやらせてくれるならいいよ!」って(笑)。

成川:最初、板さんから「スゴくいいドラムがいるんですけど。。。」って、語尾が”けど”で止まるんですよ。「何が問題なの?」って聞くと、「性格がちょっと」って(笑)。
どんなヤツが来るのかと思っていたんですけれど、会って、ドラムをやってもらったらホントによかったんです。
それでピンと来ましたね、「彼だ!」って。

郁:ボクも入っていたバンドを辞めたりとかいろいろあって。。。
それに、自分の考え方を変えようとしていた時期で、たとえば、バスドラの踏み方ひとつだったり、すべてにおいて一からやり直そうと思っていた時だったんですよ。
それにこのバンドはレコーディングが多くて、自分の音を確認できるいいチャンスでした。
いろいろとタイミングが良かったんですよ。

成川:ボクもずっと音楽の仕事をしてきて、そこにあきらめなり、挫折なりを感じていて。。。
でも、中学のときにFMラジオからが流れてきた、ジョージ・ベンソンのインストの曲がビルボードに入っていて、「インストなら世界に行ける!」って思ってたことを思い出したんです。
それで、もう一回、初心に戻って始めようと決心して、板さんを誘いました。
ちなみに、このバンドは誰かのアイディアで「こうやろう!」というのはなくて、それぞれが絡みあって何が出てくるか分からないんです。だから魅力があるし、楽しめる。


☆:それって、ジャムですよね!


成川:
最初に、Farahがテーマを出すんですけれど、そこからあとはジャムです。


☆:カヴァー曲の選曲は、どういう感じで行うんですか?


Farah:
ボクが「これをやりたいんですよね」という感じで。。。


☆:ぼんやりしたモノを、とりあえず投げる感じ?


Farah:
いえ、アレンジまで含めての具体的なビジョンが明確にあって、それを現場でみんなの意見を聞いて、調整していく感じですね。
だから、最初のイメージと違ってもカッコよくなれば、OK。


☆:Farahが大きな道をつくって、そこからメンバーで細かく作り込んでいくという感じなんですね。


郁:
FarahはDJという立場で、、、ミュージシャンとは違う角度の意見なので、ミュージシャン側からするとアレンジの方法も「ちょっと難しいなー」ということを簡単に言うんですよ。でも、そこがボクたちにとってはすごくチャレンジにはなる。さらにそこからバンド側で話し合って決めていくんです。
ボクがこのバンドでいちばん好きなところは、全員で意見をキチンと言い合えるところ。自分の思ったことを正直に言えるんです。普通はそうじゃないといけないと思っているんですけれどね。特に日本のバンドでは難しい。
でも、”RF”はそれがまったくないんです。

成川:血液型が全員違うんですよ。
そこがポイントです(笑)。


☆:全員性格がまったく違うんですね(笑)。


成川:
みんながみんな、大事にしている点だったり、言っている角度が違う。
それが面白いんですよ。でも、最終的には「ああ、分かる!」ってなる。

郁:バランスがとれているんです。

成川:集大成的なモノが生まれて、結果として音的にも面白くなっているんじゃないかな。

郁:あとは、我々の年齢が若くない点も強みだと思います。
いろいろ分かっている上での意見交換なのでね。

Farah:メンバーの経験値があっての音なんですよ。

成川:でも、最初にFarahがアイディアを出したときは、思考が一回停止します(笑)。

Farah:1枚目をつくるときは大変でしたねー。
ボクの考えが、ミュージシャンの考え方とは違うんですよ。

板谷:ラップの曲って、メロディーがないんですよ。

成川:ミュージシャンサイドから言うと同じ音がただループしているだけ。

板谷:それを3人でやってくれって言われても、、、曲にならない。

Farah:最初は「コレ、何か意味あるの!?」って(笑)。

成川:そこはDJの感覚と、ミュージシャンとの感覚が、まったく相容れなかった部分ですね。
でも、話し合っていくうちに、その溝がだんだん埋まって、最終的にはその面白さが分かりましたよ。

Farah:いまの若い子は、ループのこの部分を聴いていて、「ソコを楽しんでいるんです」というフィーリングを伝えて、「なるほど!」みたいな。あとは、逆にミュージシャン側からのアレンジの提案もあったり。
お互いで理解し合って、曲が出来上がっていくんです。

成川:いままでの自分の感覚とは、まったく違うツールができたというか。逆に、他の仲間と演奏したときにこの考えを話すと分かってもらえない。
音をくり返すことが面白いということが、なかなかミュージシャン側には伝わらないんですよね。


☆:演奏の仕方もぜんぜん違いますもんね。


成川:
ミュージシャンは、いつも「何かやらないと!」という脅迫観念があるんです(笑)。でも、聞いている側が気持ちいい部分を繰り返しやってもいいワケで、そこの面白さを教わりましたね。



(中編につづく)





RF
『Feel』



レーベル:Timeless(TML-3)
価格:¥2,000(税込)

発売日:2011年9月14日

>>>レビューはコチラ


“RF”




数多くのアーティストのライヴ・サポート&レコーディングで活躍してきたギタリスト成川正憲率いるRokugen Club (六弦倶楽部)と、元レコード・ショップのバイヤーでJazzanovaやThe Five Corners Quintet等国内外のDJ / Bandとの共演経験を持つDJ/コンポーザーFarahのユニット”RF”。
ミュージシャン、DJ として長年現場でキャリアを積んできた彼等の経験と感性がこれまでにない新たなサウンドを創出して話題となっている。
http://www.timelesssss.com/


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