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Interview : December 25, 2013 @ 15:46

『キューティー&ボクサー』 を知る──「キューティとボクサー、そして監督と」(後)



現代アーティスト”篠原有司男(a.k.a ギュウチャン)”と、ペインターアーティストでその妻、篠原乃り子。


ニューヨークを拠点に、40年以上にわたって、活動してきたふたりを描いたドキュメント『キューティー&ボクサー』は、スーパーがつくほどリアルな彼らの生活を、おしみなく披露している。


ニューヨークでアーティスト活動をつづけるというのは、いったいどういうことなのか?

また、40年もの夫婦生活をつづける秘訣とは??


ひきつづき、”ギュウチャン”と”乃り子”さん、そして監督の”ザッカリー・ハインザーリング”氏に、お話をうかがった、フカボリインタビューの後編。





カネコヒデシ(以下、カネコ):ザッカリー監督は、この作品に対してどのように考えていますか?

ザッカリー監督(以下、ザック):ボクは、この見方でしかつくれないワケで、
そういった意味ではつくりたかった映画をつくれたとおもっています。
おふたりのパーソナルな関係だったり、
いわゆる、アートの世界のエリーティズムみたいなものを避けながら、
普通のやり方とはちがうやり方で、
自分がココロから愛するアートをただつくりつづけるという、
クリエイティヴなコトに対して情熱を持っているヒトだったらダレもが共感できる、
そういう「生き様」みたいなものをしっかりとらえることができたとおもってますしね。
それに観客の反応にもとても満足してます。
おおくの方がふたりの物語を自分たちに反映して、観てくださっている。
映画作家としては、それ以上のコトは望めないですからね。

カネコ:なるほど。
では、おふたりにお聞きしますが、
夫婦をつづける秘訣を教えてください。

篠原乃り子(以下、乃り子):なるべく距離をおくこと(笑)。
あのね、フランス人作家の(シドニー=ガブリエル・)コレットが、
愛を保つには、なるべく離れることがいちばんいい方法だって、
言っているんですよ。
私もそうおもうんです。
ピッタリくっついていたら、、、そんなものさ、
それでいいのは最初の新婚のときだけよ(笑)。
気持ちを維持したかったらなるべく離れる。
一年に一回くらい会うようなおり姫とひこ星、アレがいちばんロマンチックじゃない。
それで本当のラブストーリは、トラブルじゃなきゃいけないの。
ハッピーエンドってのは、ぜったいラブにならない。

カネコ:なるほど。





乃り子:この作品が、ラブストーリーの映画なんて言われたのは、
あまりに問題がおおいからなの。
だって、ダレもヒトの幸せそうな映画なんて観たくないのよ(笑)。
でもね、とにかく夫婦生活を保ちたかったら、なるべく距離をおくのよ。

カネコ:有司男さん的には(笑)?

篠原有司男(以下、ギュウチャン):ニューヨークはボクにとっては文化移民だから。。。
親もいない、子もいない、友達もいない。
ナンにもないところのゼロからスタートしているから、二人三脚。
夫婦喧嘩なんてしている暇がないよね。

乃り子:わたし、二脚ぐらいだったじゃん(笑)。

ギュウチャン:うん。
おおきな目的と、おおきなトラブルが、休みなくどんどん来るからね。
それを乗り越えていかないとならないから。
それで、振り返ってみて、ザックのフィルムがそれを示してくれたけれど、
ボクたちは愛し合っていたんだなって、あとで気がつくわけよ。

乃り子:もうおそかったってことよね(笑)。

カネコ:はははは(笑)。

ザック:おそかったというのは?

乃り子:気づくのがってことよ。

ザック:そんなに不幸じゃないんじゃない?

乃り子:それはわたしの演技でもあるワケよ。
幸福なフリ。





カネコ:でも、おふたりみたいになれたらいいなとは、おもいましたよ。

乃り子:それは、いつ幸福になるか、わからない状態を保つわけよ(笑)。

カネコ:夢があるようであるようで、ないですね(笑)。

乃り子:いや、夢があるじゃない!
こういうふうになりたいって(笑)。

カネコ:ははは(笑)。
監督は5年間、おふたりと一緒にいられて、夫婦愛もそうですけれど、
彼らから学んだことはありますか?

ザック:おふたりの関係の本質にあるモノが複雑すぎて、
簡単に説明はできないですね。
でも、そういった説明できないものを知ろうとする作業はたのしかったです。
ただ彼らの関係は、お互いに頼って、依存しているところにあるのかなとおもいました。
それは、おふたりそれぞれの理由があって、ふたりで選んだライフスタイルだし、
生きていくためには、ふたり一緒の方がいいというのがあるのかもしれない。
そういうのってありますよね。

カネコ:なるほど。たしかにありますね。

ザック:おふたりが住んでいるニューヨークのエリアは、
いまとても地価が高騰していて、生活は大変なハズなんだけれど、
一緒にいてもどこか楽観的なムードなんです。
それは、いままでそういう生き方をしてこられて、
これからもそうやって生きていくという、
そういう思いからくるのかなと。
現在のアート界で、
現代美術のアーティストのような生き方をしているヒトはなかなかいないとおもいますしね。
ボクはまだ若いし、40年以上結婚生活をつづけているおふたりのような、
“喜び”とか”苦しみ”とかは、まだ理解できないです。
でも、彼らの関係には基礎があって、
その基盤の上にいろんなモノが時間をかけて関係が築かれているので、
理解しようとしても、なかなか理解することはむずかしい。





カネコ:アメリカ人的な夫婦関係とおふたりとではちがいはあるのでしょうか?

ザック:おふたりの関係は、アメリカの夫婦関係からすると、
「そんなに喧嘩がおおくて大変なら、乃り子さん離婚しちゃえばいいのに!」
という考えの方がおおいんです。
でも、日本のヒトは、夫婦の間にいろいろ問題があったとしても、
結婚した相手、あるいはパートナーとそのままつづけていくというヒトがおおい。
そういう文化的な差も、とても興味深いですよね。
おふたりの関係は、長い結婚生活をされている方であれば、
ダレでもわかる”部分”があるのでは。
愛情はおとぎ話のように永遠につづくものではなく、
だんだんと固くなっていくとおもうんですよ。
「化石化」するというか、、、もちろんいい意味でね。

カネコ:最後に、篠原さんおふたりにとってニューヨークという街は、ナンなんでしょうか?

乃り子:ヒトをひきつけるナンらかのマジックがある街かな。

ギュウチャン:アフガン戦よ、ボクにとっちゃ。
バトルフィールドね。
(銃を撃つふりをしながら)ババッババってね。

乃り子:(ギュウチャンのはなしをほぼほぼ無視しながら)
ふつふつしたエネルギーがソコにね、あるんだとおもう。

カネコ:ありがとうございました。




(おわり)







シネマライズほか全国ロードショー中!

『キューティー&ボクサー』





監督:ザッカリー・ハインザーリング

出演:篠原有司男/篠原乃り子


配給:ザジフィルムズ、パルコ
提供:キングレコード、パルコ


オフィシャルサイト:http://www.cutieandboxer.com/

>>>レビューはコチラ


>>>「キューティとボクサー、そして監督と」(前編)はコチラ


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