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Interview : January 31, 2014 @ 17:15

“空気公団”と”倉本美津留”で”くうきにみつる”──”倉本美津留”インタビュー



バンド”空気公団”と、放送作家でミュージシャンの”倉本美津留”がタッグを組んだユニット”くうきにみつる”が、2013年11月にアルバム『はにほへといろは』をリリース。


“空気公団”のユルいサウンドと、”倉本美津留”のセカイ感がミゴトに融合した、ゆったり、ふんわりとたのしめるアルバムとなっている。

2014年2月11日にはライブも予定されているとのコト。


今回は、この不思議な組み合わせのユニット”くうきにみつる”はどのように生まれたのか、そしてどんなライブを展開するのか。


メンバーの”倉本美津留”さんに、いろいろとお話をうかがってみた。






カネコヒデシ(以下、カネコ):
今回は、”くうきにみつる”というユニット名でリリースしましたが、
もともと”空気公団”とは交流はあったのですか?


倉本美津留(以下、倉本):
6年くらい前に、彼らが『空気公団作品集』というアルバムをリリースしたときに、
コメントを依頼されたのがきっかけでした。
じつはその時までは、彼らの音源をきちんと聴いたコトがなかったんです。
だけど、とどいた音楽を聴いて、「いいな」と思って、
ボクの音楽も聴いてもらいたいなとおもって自分のCDをおくりました。
そこからの交流ですね。


カネコ:音楽性的に、自分の方向性と近かったというコトですか?


倉本:
そのアルバムの中に、ボクと近い発想のアプローチをしている曲があって、
「ん!」とおもったんです。
不思議な感じでした。


カネコ:“くうきにみつる”というユニット名は、どのように決まったのですか?


倉本:
これまでも、いろいろなアーティストと組むという試みを何度かしてきたんです。
タレントの”YOU”さんと組んだ”YOUに美津留”では、
NHK『みんなのうた』に「月」を発表したし、
銀杏BOYZの”峯田和伸”くんとは、”峯田に美津留”でCDをリリースしたり、
漫画家の”浦沢直樹”さんとは”浦沢に美津留”でWEBドラマの主題歌をつくりましたしね。
だれかとコラボレートするときには、”〇〇〇と美津留”じゃなくて、
“〇〇〇に美津留”と「に」という接続詞をつかうことで寄りそっている感じにしてたんです。


カネコ:それで”くうきにみつる”になったということですね。


倉本:そうです。
これまでは”美津留”は漢字だったんですけど。


カネコ:それが今回は”ひらがな”にしたワケですけれど。。。


倉本:
“空気にみちていく”という感じもよかったし、
自然になった感じです。


カネコ:アルバム名を『はにほへといろは』とした理由はなんでしょうか?


倉本:
“ドレミファソラシド”は、日本語でいうと”はにほへといろは”。
ハ長調ですね。
今回、”空気公団”とコラボレートするにあたって、
“音楽”ということをズバリ前面に打ち出したかったので、
ダイレクトなタイトルになりました。


カネコ:なるほど。


倉本:
ボクらは日本語が大好きで、日本語を大事にしたい気持ちがベースにあるんです。
“坂本 九”さんの「上を向いて歩こう」が世界でナンバーワンになったみたいに、
日本語のまま世界に出ていけるようなコトをやりたいんです。
でも、アレ以来だれも世界でトップになってないんですよね。


カネコ:いないですねー。
やはり、コトバの壁がなかなかむずかしい時代なんでしょうかね。
今回は、作詞と作曲を”山崎ゆかり”さんと半々でやられていましたが、
その兼ね合いはどのように決められたのですか?


倉本:もう最初から「完全に半々にしよう!」って決めてたんです。


カネコ:そうなんですね。


倉本:
はい。ルールを決めた方がおもしろいよねって。
役割は半分ということだけきっちり決めて、混ざり方は自由にしました。
じつは、ミニアルバム作成が決まる前のエピソードゼロがあるんですよ。


カネコ:そうなんですか!?


倉本:
最初は、なんとなく、いっしょにやったらおもしろい音楽ができそうだねって、
なんとなく、ボクの曲を聞いてもらって、
“空気”的なアレンジをほどこしてくれへんかなという、、、
なんとなくなんとなくではじまったんですよ。
それでできた最初の曲が「いっぱい」なんです。
時間をかけて、じわじわと出来上がったものなので、
完成したときには、大事なものってこうやって生まれていくねんなって思いました。
ボクひとりだと、ものすごくスピーディーに進めてしまうのが常なので、すごく新鮮でしたね。


カネコ:それがすべてのはじまりなんですね。


倉本:
そうです。
それで、ミニアルバムにして出したいね、ってなったんです。
「いっぱい」が完成するまでにも時間をかけたし、
出来上がってから、「コレをどうやって展開する?」っていうのもじっくり考えたし。
それはすごく勉強になったんですよ。
時間をゆっくりかけるというコトの大切さが。


カネコ:
今回、いろいろなゲストミュージシャンが参加されてますが、
そのゲストの選出に関してはどのように話されたのですか?


倉本:
基本的に空気公団サイドにまかせっきりでした。
彼らの感性はすばらしいので、100%信頼してましたから。


カネコ:ゲストの方は会ったことがある方だったんですか?


倉本:いえ、みなさんはじめての方ばかりで、
スタジオに入ってから「よろしくお願いします!」みたいな感じでした(笑)。
でも、まとまった演奏を聞いてみると、「なるほど、えーやん!」って。


カネコ:
先日亡くなられてしまった、”やなせたかし”さんの詞をつかわれていますよね。


倉本:そうなんですよ。
この歌詞がたくさんのヒトにとどいたらいいなとおもいますよ。
やなせさんが、ボクたち下の世代、そしてコドモたちにむけて、
大事なことをつたえようとした、純度100%のコトバだとおもうんです。


カネコ:たしかに。
このこけしドアップのアートワークなんですけれど。。。


倉本:
この辺も、今回は空気公団におまかせしました。


カネコ:
そうだったんですね。


倉本:
デザイナーさんに「こけしが見えた」って、言われたらしいんですよ。
「ドアップとかがいい」って。。。


カネコ:そしたら、ホントにドアップのジャケットが来たんですね(笑)。


倉本:そうです(笑)。
時間が経てば経つほどにジワジワしっくりきてます。
違和感からスタートして、どんどんよくなっていくっていう。。。


カネコ:ジワジワ来る感じのアレですね。


倉本:そうです。
“答え”だったんじゃないかな、やっぱり。


カネコ:
ソレ、分かります!
こういうものの”答え”って、数学的な感じですぐには出ないですよね。


倉本:
“お題”を出すのが得意というか、ボクはそれを仕事にしてきたワケで、
コレは”はにほへといろは”というお題なんですよね。
そういう自分の仕事のつかえる部分はつかったという感じなんですよね。


カネコ:お仕事と、このアルバム制作とがリンクしたというコトですね。


倉本:自然にリンクしたのでよかったです。
もともとは、戸川(由幸)くんが、ボクが作ってきた番組を好きでいてくれていて、
それでアルバムのコメントを頼まれたみたいなんですけれど、
彼は、ボクの音楽を聴いたことはなかったようなんです。
その後、彼らが音源を聴いてくれて、
「おもっていたのと全然ちがいました!」って言ってくれて。


カネコ:やはり、作家の方の作品のイメージがつよいのかもですよね。


倉本:
でも、山崎さんなんかは、ボクが作家をやっているコトはどうでもよくて、
ボクのつくる曲に興味をもってくれて、、、それはすごくうれしかったですね。


カネコ:なるほど。


倉本:
“空気公団”が、「一緒に何かつくりましょう!」って言ってくれたのは、
スゴくうれしかったし、自分の自信につながりました。


カネコ:倉本さんが、影響をうけた音楽はどんな音楽なんですか?


倉本:ボクは、”ビートルズ”にやられてスタートしているんです。
もともと小さいときに、”ビートルズ”というバンドの存在を知らないときから音楽は大好きで、
当時ヒットしていた「上を向いて歩こう」を歌う子どもというコトで、
近所の有名人だったんですよ(笑)。


カネコ:ほほー(笑)。


倉本:
オトナたちの集まりに呼ばれては、ミカン箱の上で歌ってた、みたいな。
母はボクに音楽の才能があるかもしれんとおもって、オルガン教室に入れてくれました。
そのころからヒトから教わるのがすごく苦手だったんです。
一生懸命練習したり、訓練したりっていうのがホントにできないんですよ。
だから、オルガン教室でも勝手に歌をつくってました(笑)。


カネコ:いまとほとんど変わらない感じですよね(笑)。


倉本:(笑)。
自分ではじめて作詞作曲したのが小学校1年生のときです。
自分の歌をうたいながら登下校していた、そんなコドモだったんです。
だから、音楽は自分の中では最初から、無意識に宿っていたんだとおもいますね。
だけど、小学校5年生くらいに
「オレ、ホンマに自分がやりたいことしかやらへんような子で大丈夫なのかな?」
って急に不安になったことがあるんですよ。
そんなときに、「それで大丈夫なんや!」って肩をたたいてくれたのが”ビートルズ”の存在だったんです


カネコ:どういう理由からなんですか?


倉本:
兄が借りてきたレコードを聴いたときびっくりしたんです。
それまで街中なんかでふと流れてきて「このメロディ好きやな」とおもっていた曲が、
ほとんどビートルズの曲だったということが判明したんです。
いろいろ調べてみると、彼らはそれまでの音楽の常識をこわして、
自分たちが信念をもって”世の中の違和感を王道に変えていった”というコトを知ったんです。
そのときに、「ああ、オレにもできんねや!」とおもって、、、そう思わせてくれたんですよね。


カネコ:その後は、音楽はどのようにつづけたんですか?


倉本:それからギターを弾こうと思ってですね、
これまた兄が誰かから借りてきたギターを、隠れてコソコソ触っていたんです。


カネコ:”ビートルズ”のカヴァーをされていたんですか?


倉本:
それはしなかったんですよね。
技術を極めることよりも自分の曲をつくることにしか興味がなくて、
とりあえず、曲を生むんだとおもってました。
だから、最初からオリジナルソングしかつくっていないんですよ。


カネコ:オリジナリティをつくるのは、そのときからなんですね。


倉本:
だれも見ていない世界を、「こんなオモロいもんあるで!」って見せたいんです。
“ビートルズ”はそうやってきたワケですから。
ボクも番組をつくるとき、アイデアが必要なときは、
誰よりもおかしな発想を出して、説得して、カタチにする
そういうことをやってきました。


カネコ:
今回のアルバムの中で、印象にのこっている曲はありますか?


倉本:
今回は、7曲にして7色になったらいいなと。
世界感はキープしているけれど、全曲ベクトルがちがいます。
しいてあげるならこのアルバム制作をスタートさせて、
すぐにできた曲が印象的だったかな。
「6」という曲です。


カネコ:なるほど。


倉本:
全体のテーマにもなっているので1曲目にしたんですよ。


カネコ:2014年2月11日にライブを予定していますがどんな感じで考えていますか?


倉本:
何もないですまだ(笑)。
「アルバムとはちがうことをやりたいね!」ってなっているところが、
オモシロいですけどね。
つくったアルバムの再現を目指すのではなく。
だから、ライブに来たヒトは、それはそれとしておもしろいとおもいますよ。


カネコ:オモシロそうですねー。


倉本:
あとは、ボクもいままではたいていギター一本で、ひとりでライブをやっていたんですね。
ホントにナニも決めず、お客さんの顔をみて、思いうかんだ曲を歌うとか、
ひとりだったら曲目とはちがうことが勝手に出来るじゃないですか。
でも、今回はみんなにあわせないとあかんから、どうなるのかなって(笑)。
不安もあるけれど、その不安をおもしろさにつなげたいとはおもってます。
あとは、、、彼らによると、ボクのギターはおもしろいらしいですよ(笑)。


カネコ:
そうなんですか?


倉本:
自己流で、好き勝手にやってきただけだから、
それが新鮮に映ったみたいなんですけど。
「あんな弾き方、ダレもしませんよ!」って(笑)。


カネコ:では、今回のライブはオレのギターを聴きにきてください!みたいな感じですかね。


倉本:そうですね(笑)!
今回は、うたわずにプレーヤーに徹する時間もあるから、新鮮な気持ちです。
コーラスだけにまわるとか、そんなコトしたことがないので。
あたらしい段階にはいるんだなと。
勉強勉強で、たのしいです!


カネコ:なるほど。
では、ライブを楽しみにしてます!ってコトで。


倉本:期待を裏切らないライブにします!


カネコ:おねがいします(笑)!
ありがとうございました。


倉本:どうもありがとうございました!


(おわり)







□アルバム情報

くうきにみつる(倉本美津留×空気公団)
『はにほへといろは』





価格:¥2,363(税込)
レーベル:Fuwari Studio(DDCZ-1909)

発売中!


□トラックリスト
01. 6(作詞・作曲 倉本美津留)
02. いっぱい(作詞・作曲 倉本美津留)
03. ニジゴシ(作詞 倉本美津留/作曲 山崎ゆかり)
04. ほんとうの街につもる(作詞・作曲 山崎ゆかり)
05. はんぷく(作詞 山崎ゆかり/作曲 倉本美津留)
06. とても不思議なおじいさん(作詞・作曲 山崎ゆかり)
07. 返事(作詞 やなせたかし/作曲 倉本美津留)

“空気公団”オフィシャルサイト:http://www.kukikodan.com/



□ライブ情報

2014年2月11日
LIVE “くうきにみつる”





出演:
空気公団
くうきにみつる(空気公団×倉本美津留)+辻村豪文(キセル/Guitar)+白根賢一(GREAT3/Drums)



時間:
・昼の部(開場/開演):12:00/13:00
・夜の部(開場/開演):16:30/17:30
※完全入れ替え制 / 全席自由 

チケット料金(前売/当日):4,500円/5,000円


会場:
すみだトリフォニーホール 小ホール
東京都墨田区錦糸1-2-3
TEL. 03-5608-5400(代)
http://www.triphony.com/index.php

インフォメーション:
“空気公団”オフィシャルサイト
http://www.kukikodan.com/
http://office-fuwari.jp/live/



□プロフィール

・倉本美津留





ミュージシャン、放送作家。
2008年、アルバム『躾』をビクターエンタテインメントよりリリース。
「YOUに美津留」のユニットで『月』をNHKみんなのうたに発表。
2013年11月20日には空気公団とのユニット”くうきにみつる”のアルバム『はにほへといろは』をリリース。
放送作家として、現在『ダウンタウンDX』Eテレのこども番組『シャキーン!』などを手がける。
これまでの仕事に『ダウンタウンのごっつええ感じ』『M-1グランプリ』『伊東家の食卓』他。
『一人ごっつ』では大仏として声の出演も。近著にことば絵本『明日のカルタ』(日本図書センター)。
http://www.ninpop.com/


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