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Interview : June 12, 2014 @ 12:21

『ホドロフスキーのDUNE』── “フランク・パヴィッチ”監督インタビュー(前)



“アレハンドロ・ホドロフスキー”監督が、1974年に企画したマボロシのSF映画『DUNE』をテーマに、その顛末を描いたドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』。


『エル・トポ』や『ホーリー・マウンテン』などでカルト的な人気をほこる”アレハンドロ・ホドロフスキー”監督。

85歳にして、23年ぶりの新作映画『リアリティのダンス』も発表し、フィルムメーカーとして、さらなる輝きを見せて(魅せて?)いる。



今回は、ドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』の”フランク・パヴィッチ”監督に、本作の企画のお話を中心に、ホドロフスキー監督との秘話などについてインタビューしてみた。





─まずは、企画のお話から。
今回の企画は、
そもそも”アレハンドロ・ホドロフスキー”監督が撮ろうとしていた映画『DUNE』と、
セットで企画していたモノなのでしょうか?


“フランク・パヴィッチ”監督(以下、監督):
もともとホドロフスキー監督のコトは知っていて、
『DUNE』という小説は、その後知ったんです。
なので、まずは”ホドロフスキー”監督に興味がありました。
『エル・トポ』、『ホーリー・マウンテン』、、、彼の作品が好きでした。

そして、『DUNE』という映画を、本当は彼がやるはずだったという事実を知って、
“デヴィッド・リンチ”版の『DUNE』を観ていたワタシは「ええ!そうだったんだ!!」と。
いろいろ調べはじめると、”オーソン・ウェルズ”とか、”(サルバドール・)ダリ”とか、
ピンクフロイドが音楽をやったりとか、
とにかくこれはすごいキャストだというコトがわかったんです。

さらに、すべてが紙の上では完了していたというコト。
だから、「コレはドキュメンタリーをつくらなければ!」と思ったんです。


─つまり、”ホドロフスキー”監督自身のドキュメンタリーというワケではなく、
映画の『DUNE』ありきで企画をすすめていったというコトですか?


監督:
そうです。
ドキュメンタリーというのは、対象が小さければより掘り下げられるので、
よりいいモノになると思ってます。

ホドロフスキー監督についてやったとしたら、
『DUNE』じゃないですけれど、
12時間くらいの映画になってしまいますよ(笑)。

だから、『ホドロフスキーのDUNE』としてテーマを狭くすることで、
より深く追求できたのだと思っています。


─作品をつくる上で、どのようにすすめたのでしょうか。
過程をおしえてください。


監督:
ホドロフスキー監督は、映画の中で”メビウス”を探したときの苦労話をしていますが、
その時代とはちがって、いまの私たちにはインターネットがあります。
だから、いろいろな人へのコンタクトは、インターネットの力をつかいました。
それで、2010年の前半に、彼のエージェントがスペインにいると分かったので、
まずそこにメールをしました。
「『DUNE』についてのドキュメンタリをつくりたい」と。

数週間後、なんと、ホドロフスキー監督から直接返事が来たんです。
朝起きて、メールの受信を見ると彼の名前があって。。。

最初は、コワかったので、1週間くらいメールを開かなかったんです(笑)。
「ノー!」って言われたら、せっかく思い描いていた夢が打ち砕かれてしまうから。
でも、一週間経って、勇気を振りしぼってメールを読みました。

すると、「『DUNE』の話を聞きたいのなら、
いまパリに住んでいるから、パリに来なさい」と。
すぐに、パリに行きました。

最初のミーティングは10分とか、20分とか、、、短いものでしたが、
彼に情熱をもって話をしました。

いままでにも一度も彼に聞かれたコトがないのですが、
そのときに、僕がいままでにどんな作品をつくってきたのか?とか、
どんなコトをやっていたのか?、ということを全然聞かれないんですよ。

でも、すぐに信用してくれて「イエス」と言ってくれたんです。

たぶん、彼はヒトを見る目があって、
僕がすごく熱心に思っているとか、
敬意を持って彼の人生の一部を描くであろうということを感じてくれたのだと。

だから、「イエス」と言ってくれたんだと思います。


─今作で、フランク監督自身は自分なりの『DUNE』を撮ったと話されていましたが、
この作品を通して見えた次なるビジョンだったり、
次の作品の予定がありましたら教えてもらえますか?


監督:
とにかく、とても長い間、このプロジェクトに関わっているんです。
2010年に最初にホドロフスキー監督にコンタクトをして、
2011年のはじめに撮影をはじめて、
2012年からは2013年まで撮影して、編集。

プレミア上映がカンヌ映画祭でやって、
そのあといろいろな国をまわって、やっと日本に来たところなんです。
だから、まだ次のことを考えられない状態ですよ。

それに、DVD用にボーナスカットをつくるとか、
『DUNE』についてまだまだやらないといけないコトがあって、
なかなか次のコトを考えられないです。

そして、次につくるものが、
コレ以上の作品ができるのかという疑問もあります。
次にナニをやるか、まだわからないのですが、
それは自分にとってのチャレンジなんだと思いますね。





─映画の冒頭に「世界を照らすには、己の身を焼かねばならない」という、
「夜の霧」の作者”ヴィクトール・E・フランクル”の言葉を引用されていましたが、
それはナゼですか?


監督:
とてもイイ言葉で、この作品にピッタリだなと。

“光を出す”というコトは、相手に影響をあたえるとか、
インスパイヤーさせるという意味も入っているんです。

マッチが火を燃やすために自分が焼かれないといけないとか、
灯りを提供するロウソクは自分が溶けないといけないとか、
まわりに影響をあたえるコトは、自分を壊さないといけない。
まさに『ホロドフスキーのDUNE』です。

長年、準備をしたのに完成せず、
でも、結局はたくさんのヒトにインスピレーションをあたえ、
ある意味、世界を変えた。

もしかしたら、映画として完成するというカタチをとらないコトが必要だったのかも。
完成しないことによって、
いろいろなヒトが、いろいろなカタチでそのアイデアをつかって、
本にしたり、映画にしたりしているんです。


─今作はコンパクトに90分にまとまっていますが、
実際はどのくらいのテープを回していたのでしょうか?


監督:
デジタルなのでわからないんです。
むかしだったら、フィルムの1ロールが9分とか10分とか、8ミリなら3分とか、
ビデオだったら一本30分とか、60分とか、90分とか。。。
それを足せば分かるのですが、いまはデジタルなので、
ハードディスクに落として、テラバイツ、ギガバイツと。
たくさんあるのは分かるのですが、それが何分なのかはわかりません。


─パッケージ化されるときに、ディレクターズカット版が入るのでしょうか?


監督:
コレがディレクターズカット版なんです。
お客さんには、「短いから、もうちょっと観たい!」と思ってもらえる方がいいですよね。
逆に100分の映画をつくって「長すぎ!」とか、
「90分にすればよかったのに」と思われるのはよくないと思うんです。
なので、映画としてはこれでおわり。

ですが、DVDのすばらしいところは、特典ボーナスをいれられるコト。
なので、入りきらなかったインタビューとか、
アートワークとかをそこに入れられたらと考えています。


─演出については、ホドロフスキー監督と話しながらつくっていかれたのでしょうか?


監督:
彼のオモシロいところは、自身の映画を撮っているときは、
これは自分のビジョンだからといって他のヒトには何も言わせないんです。

だから、僕は心配でした。
僕の映画ではありますが、彼の人生の話なのでね。

しかも、彼の人生にとってとても大事な部分の話なので、
彼がドコまで関わるのか、
いちいちチェックするのか、わからず心配でしたが、
彼はまったくナニも言いませんでした。
彼は僕にインタビューされるだけ。

それに、カンヌ映画祭のプレミア上映まで、彼はまったく観ていないんですよ。
だから、”ダン(・オバノン)”の肉声のインタビューがあるのも知らなかったし、
ダンが当時どんな気持ちでいたのかというのも知らなかった。
アニメーションで、いろいろつくったコトも知らなかったと思うので、
そこら辺はかなりショックを受けたと思います。

ドキュメンタリーの対象が、コチラのすべてを信頼してくれて、
任せてくれたというのは、とてもラッキーでしたね。


─彼は、関わったヒトのインタビューも一切知らず、
ダンが自分のことをどう思っていたのかを、カンヌではじめて知ったというコト?


監督:
「コレから”(H・R・)ギーガー”にあうんですよ!」とか、
「”クリス・フォス”に会うんです!」とか、
そういう話はしたので、
インタビューを取ったヒトたちの名前はだいたい分かっていたと思います。
だけど、彼はそれまで全然観ていないんですよ。

30年以上も会っていなかった人たちとフィルムの中で再会し、
当時、若くて髪の毛も黒かった人たちが自分のように白髪になり、
しかも、当時どのように思っていたのか、というのをはじめて僕の映画で知ったワケです。
だから、非常にショックを受けたと思いますね。

そして、自分が思い描いていた『DUNE』のビジョン──ブックの中では絵コンテで表されていたのですが、
そいういう自分のアタマの中だけにしかなかったものが、
目の前でアニメーションとして動いている。
非常にショックを受けたと思いますよ。



(後編へつづく)







□プロフィール

フランク・パヴィッチ





ニューヨーク生まれのクロアチア系アメリカ人。
現在はスイス・ジュネーブ在住。
1995年、22歳の時に、ニューヨーク・ハードコアシーンを追ったドキュメンタリー『N.Y.H.C.』を監督した。
その後、『ダイ・マミー・ダイ』(2003)(2003年サンダンス映画祭審査員特別賞 受賞)に共同プロデューサーとして参加。そして、映画やテレビのプロジェクトに携わってきた。
『ホドロフスキーのDUNE』は彼の初の劇場上映作品であり、2013年カンヌ国際映画祭、監督週間でプレミア上映され、その後も多くの映画賞を受賞している。




□映画紹介

2014年6月14日より、新宿シネマカリテ、渋谷アップリンクほか全国順次ロードショー!

『ホドロフスキーのDUNE』





監督:フランク・パヴィッチ

出演:アレハンドロ・ホドロフスキー/ミシェル・セイドゥ/H.R.ギーガー/クリス・フォス/ニコラス・ウィンディング・レフン

配給:アップリンク/パルコ

オフィシャルサイト:http://www.uplink.co.jp/dune/

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