Interview : June 19, 2014 @ 15:37
『ホドロフスキーのDUNE』── “フランク・パヴィッチ”監督インタビュー(後)
“フランク・パヴィッチ”監督によるドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』。
“アレハンドロ・ホドロフスキー”監督が1974年に企画し、つくらずに頓挫した、まさに”いわくつき”、まさにマボロシのSF映画『DUNE』。
その裏事情を、おそらくはじめてオフィシャルにあらわに描いたドキュメンタリーが『ホドロフスキーのDUNE』だ。
ひきつづき”フランク・パヴィッチ”監督に、ホドロフスキー監督、そして”魂の戦士”たちによる秘話などを中心に、いろいろとインタビューした、後編。
─”(H・R・)ギーガー”や”クリス・フォス”にインタビューをするコトは、
企画の最初から構想にあったのでしょうか?
2010年から動きはじめたというコトでしたので、
おそらく、その途中で”ダン・オバノン”や”メビウス”、”デビッド・キャラダイン”という、
主要なメンバーの方々が亡くなっていったという事情もありますよね。
企画立てはしたものの、そういう残念だった出来事はありますか?
監督:
まずは、ふたつ目の質問から。
“ダン(・オバノン)”が亡くなったのは、動きはじめる前だったんです。
その後、デビッドも亡くなって。。。
それで僕たちのオシリに火がついたというか。
亡くなっていくメンバーの情報を見て、「時間がない!」と思って、
ホドロフスキー監督にコンタクトをしたのです。
彼もそのときすでに81歳。
“メビウス”は存命ではいたのですが、ガンでかなり体が弱っていたので、
カメラの前に立つ元気はなかったんです。
そして、ひとつ目の質問に関しては、
もちろんホドロフスキー監督にもお話を聞きたかったのですが、
ほかの”魂の戦士たち”──ギーガーとかクリスとか、
みなさんすばらしいものをつくられていますよね。
それから、プロデューサーの”ミシェル・セドゥー”。
彼のまわりのヒトたちの話も聞きたいと、最初からプランに入っていました。
─みなさんは、快く取材に応じてくれたのでしょうか?
また、メビウスにもコンタクトを取られたというコトでしょうか?
監督:
みなさん、とてもよろこんで応えてくれましたよ。
とくに、「アレハンドロに会って、彼もインタビューさせてくれた」ということを伝えると、
彼らはみんなよろこんでました。
それほど、みんなまだ、ホドロフスキー監督のことが大好きだし、
ホドロフスキー監督との経験がおおきかったんだと思います。
そして、「自分の話も聞いてほしい!」と思ったんだと思いますね。
『DUNE』の頓挫に関しては有名な話なので、
いろいろなヒトがいろいろなコトを言っているのですが、
ココでオフィシャルに話ができたということだと思います。
メビウスには、もちろんコンタクトを取りました。
ホドロフスキー監督に連絡したあと、すぐにです。
じつは、長い間、彼のインタビューが取れなかったことが、
とても大きな欠陥というか、足りない要素になるのではと思っていたんです。
だからといって、 病気のヒトを無理矢理出すワケにもいかず。。。
でも、ある日、
「彼のインタビューがなくても、 彼自身はフィルム中にいるじゃないか!」と気づいたんです。
メビウスは、そこにいるんだと。
─監督が最初に観たホドロフスキー監督の映画は何歳のときですか?
どのくらい影響を受けたのでしょうか?
そして、制作していく上で、彼とはどのように関係を築いていったのでしょうか?
監督:
彼の作品を観たのは、20歳くらいのときでした。
そのころのアメリカでは、 公式には観られなかったんです。
それは、プロデューサー兼配給をしていた”アラン・クライン”と、
アレハンドロが何十年も大げんかをしていたので、
アランが市場から彼の映画を引き上げてしまったんです。
だから、ワレワレが観たのは、VHSの何世代にも渡ったコピーのコピーのコピー。
もう絵がシミのようになっていて、 なんだかよく分からない状態で、
字幕もあるのか、ないのかわからないようなものしか観られませんでした。
ラッキーだったのは、日本版『エル・トポ』のレーザーディスクを手に入れられたコト。
映像的にはいい映像を観られるんです。
ただ、もとの言語がスペイン語で、字幕が日本語なので、
結局ナニを話しているのかワカラナイ(笑)。
そういうカタチでも観たのですが、
とりあえず、 イメージはすばらしいと思いましたし、
それから好きになりましたね。
もちろん大きな影響を受けました。
影響を受けたからこそ、何年も掛かるようなプロジェクトのテーマに彼をえらんだワケです。
友人という風におもえるようになったのは、最近のコトですね。
インタビューをしていた時期は、 やはり恐れ多いという思いがありました。
ホドロフスキー監督が、カンヌではじめて僕の映画を観て、
その数週間後にスペインの映画祭で彼と僕の作品を観たのですが、
たぶん、そのときあたりから、
僕のことを見直してくれたのではないでしょうか。
彼にとって人生の大切な部分を、僕が映画に撮って、
その作品を「パーフェクトだ!」と言ってくれたんです。
そこからですね、一緒にランチとかディナーをしたり、
お互いの家族も交えたり、
そういうお付き合いができるようになったコトは、とてもよろこばしいですよ。
以前、タロットカードをやってくれると彼が言ったのですが、
僕は悪いコトが出たらイヤだったので、 断っていましたしね(笑)。
まさか、そんな関係ができると思っていなかったので、
この映画をつくった上で、僕にとっては予想外のボーナスをもらった感じです。
─映画の最後の方で、
ホドロフスキー監督が「『DUNE』はダレがつくってもいい!」と 言われてましたが、
カメラがオフのときに、監督はダレか名指しで指名などされていたりしたのでしょうか?
監督:
「ダレでもできるよ!」という感じですね。
「僕が死んだ後にでも、 『DUNE』の映画がつくられればいい。アニメでもいいし」と。
たぶん、彼にとってはある種のチャレンジなんですよ。
餌付けというか、そういう状況をバラまいたワケです。
実際、ミュンヘンの映画祭では、
とあるフランスの監督が彼に「アニメ版をつくってみたい!」と、
アプローチしてましたしね。
そういったカタチで僕の映画でインスパイアされて、
『DUNE』のアニメや本を出版したり、
そうなったらオモシロいなと 思います。
僕は当事者ではないのですが、一部に関わった人間として、
これからナニが起こるのか、たのしみですよ。
─ホドロフスキー監督は、23年ぶりの新作『リアリティのダンス』を発表しましたが、
あなた(フランク監督)がその火付け役になったのでは?
監督:
いま、彼はそう言っているようなんですよね。
以前は、毎週水曜日に自宅近くのカフェに出かけて、
タロットカードをしていたのですが、それをやめてしまったんです。
僕が「なぜやめたんですか?」と聞くと、彼は 「僕はフィルムメーカーだから」と。
いちばん大きな変化でした。
彼は、アーティストとしてモガ いている段階ではなく、
本も書いているし、マンガも描いているし、絵も描く。
アーティストとして成功している ワケですが、
残念ながら映画はお金がかかるんですよ。
何回も撮ろうとトライしていたようなのですが、
資金繰りがうまくいかず、映画をつくっていなかった。
だから、この映画のお陰で作品をつくったのだと考えています。
来年、またあたらしい映画をつくりたいらしく、
フィルムメーカーとして、再浮上してきましたね。
─『リアリティのダンス』のあとに、
またあたらしい企画があるというコトですか??
監督:
そのあとに、ナニかをつくりたいらしいです。
彼が言うには、いまはデジタルですべて撮れるので、映画づくりしやすいとのコトでした。
─例の『DUNE』の映画用に制作された分厚いブックは、商品化しないのでしょうか?
監督:
アレは、みんなが欲しがっていますよね。
だけど、法律的にそれが可能かはわからないです。
僕が勝手に考えたのは、たとえば1000部限定で10万円(1000ドル)くらいとか(笑)。
─先日、ホドロフスキー監督は全裸でYOU TUBEでメッセージを出していましたね。
アナタは、ソレをどのように思いましたか?
監督:
じつは、彼からスペインの映画祭のときに、その話を聞いていたんです。
「モントリオールの映画祭に招かれたけれど、 行けないので、
ハダカになってメッセージを送ろうと思っている」と。
それを言われたときに、あまり信じなかった。
「ああ、ハダカかー」と思っていたのですが、本当にあそこまでやるとは(笑)。
でも、あの『リアリティのダンス』という映画は、
精神的な意味で、監督は真っ裸になったというか。。。
いちばん深い所を露出した作品ですので、
それを伝えるために体を露出したというコトでいえば、
おなじだと思いますね。
彼は、すべてを露出したんです。
肉体であれ、精神であれ、アートのためにハダカになった。
ある種の因由になっているのでは。
でも、スゴいですよね。
やるとなったら、絶対に中途ハンパにはしない(笑)。
─アレは、ホドロフスキー監督による「YOU TUBEへのテロだった!」と言われているのですが(笑)。
監督:
YOU TUBEからは消されてましたね(笑)。
ちなみに、『DUNE』ブックの話でひとつヒミツを明かすと、
あの映像で彼が座っている後ろにある黒いキャビネット。
僕の映画でもアパートの中を写して、カメラがパンしていくのですが、
黄色い本がみえて、 それが黒くなっていくんですけれど
その黒いのがキャビネットなのですが、
そこに『DUNE』のあの ブックが入っているんですよ(笑)。
一同:おお(笑)!
監督:
ははは(笑)。
ありがとうございました!
(おわり)
□プロフィール
フランク・パヴィッチ
ニューヨーク生まれのクロアチア系アメリカ人。
現在はスイス・ジュネーブ在住。
1995年、22歳の時に、ニューヨーク・ハードコアシーンを追ったドキュメンタリー『N.Y.H.C.』を監督した。
その後、『ダイ・マミー・ダイ』(2003)(2003年サンダンス映画祭審査員特別賞 受賞)に共同プロデューサーとして参加。そして、映画やテレビのプロジェクトに携わってきた。
『ホドロフスキーのDUNE』は彼の初の劇場上映作品であり、2013年カンヌ国際映画祭、監督週間でプレミア上映され、その後も多くの映画賞を受賞している。
□映画紹介
2014年6月14日より、新宿シネマカリテ、渋谷アップリンクほか全国順次ロードショー!
『ホドロフスキーのDUNE』
監督:フランク・パヴィッチ
出演:アレハンドロ・ホドロフスキー/ミシェル・セイドゥ/H.R.ギーガー/クリス・フォス/ニコラス・ウィンディング・レフン
配給:アップリンク/パルコ
オフィシャルサイト:http://www.uplink.co.jp/dune/
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