Interview : May 26, 2010 @ 18:03
西原健一郎、PISMOと語る__その2
先日リリースしたアルバム『LIFE』も好調の音楽家”西原健一郎”と、彼のアルバムにも参加したトラックメイカー/ラッパーの”PISMO”。
世界が注目するトラックメイカーのふたり。
じつはこのふたり、共演したにもかかわらず今回が初の対面という。
音楽に限らず、いまやインターネットの出現により、実際に会わずして世界中のアーティストとコラボレーションができてしまうという世の中なのだ。
ふたりは、自身のアルバムをつくるほかに、CM音楽などもつくっているという共通点があり、この対談では、ひきつづきプロのミュージシャンとして生きつづけるお互いの”術”について、熱く語ることとなった。
写真=西原和恵
構成・文=カネコヒデシ
PISMO:健一郎は、演奏するのが好きなの?
西原:そうです。
PISMO:それはいいよね。
ボクは昔ピアノを弾いていたけれど、あまり上達しなかった(笑)。
西原:いまはコンピューターがあるか ら、ピアノが弾けなくてもいろいろと音楽ができるんですよ。
PISMO:でも、演奏できることはすばらしいよ。
健一郎の曲は、実際の音をサンプリング しているかのように聞こえるよね。
西原:それは、わざとそういう風に聞こえるようにしているんです。
PISMO:そうだったんだ。
音楽は、ボクの人生そのものだね。カルフォルニアから、CMの音楽の仕事のためにニューヨークに移り住んだんだけ ど、健一郎は東京で育ったの?
西原:そうですよ。
PISMO:都会人なんだね。
東京のドコ?
西原:千駄木という下町です。
PISMO:千駄木?
西原:上野は知っている?
PISMO:知っ てる。
西原:そのちかくですよ。
PISMO:東京のリアルな街のトコロだね!
ボクは都会人じゃない。カルフォルニアのスタクトンという街で育ったんだ。
サンフランシスコから1時間くらいの場所なんだけれど、東京でいうと町田かな。
西原:町田(笑)!?
なんで町田を知っているの?
PISMO:ラッパーの”Q-ILL”が、町田なんだよね。
西原:“Q-ILL”を知っているんですね。
PISMO:前に”Q-iLL”が横浜に招待してくれて、彼と”cro-magnon”のドラムの大竹(重寿)とも軽くジャムをしたんだよ。
西原:“cro-magnon”も町田ですからね。
先日、彼らは”ロイ・エアーズ”と一緒にやってましたよ。
PISMO:そうなんだ。”ロイ・エアーズ”も好きだよ。
健一郎は、DJもやるよね。どれくらいやっているの?
西原:高校のときからだから、15年くらいかな。
PISMO:15年!?それは長いね!
西原:最近は、日本でもCDとかレコードが大分無くなってきていて、ボクはずっとアルバムを聴いて育ってきたワケですよ。
ちなみに、いまの世の中の流れ──いわゆる1曲ごとにダウンロードするという流れに関しては、どう感じていますか?
PISMO:ボクもアルバム単位で聴いていた世代だからね。
ふたりの世代にとって、いまはふつうじゃないのかもしれない。
でも、新しい世代にとっては、もうそれがふつうなんだ。
だから、それを変えようとする動きよりも、そ れを理解する方がいいと思うよ。
西原:なるほど、そうなのかもしれないですね。
「Consider My Love」や「Now I Know」とかのPISMOに やってもらった曲は、それ単体だけでもスゴくすばらしい曲だから、アルバムで聴かせるというよりも”一曲で聴かせる”と いう感覚をすごく感じてはいるんだけど、なんとなく気になっていて。。。でも、それが新しいのかも。
今回もそういう、いい曲をつくりたいですね。
PISMO:そうだね。
音楽は新しいカタチの時代に来ていて、昔からのやり方を維持したいヒトと、そうじゃないまったく新しい世代がいて、両方が混在しているよね。
西原:PISMOは どっちなの?
PISMO:ボクが敬意を払う音楽家は、どんどん変わっていったヒトたち。
“マイルス・デイビス”もそうだしね。だから、、、新しい世代の方かな。
西原:“マイルス・デイビス”が好きなの!?
ボクがいま着ているこのTシャツのテキスト「Do not fear mistakes. There are none.」は、マイルスのコトバなんです。
PISMO:マイルスは、もっとも尊敬する人さ。なぜなら、彼は絶対にあきらめなかったから。
彼の成功の秘訣は、どんどん変わっていったことだよ。
古いジャズのひとたちは、彼の進化するジャズをすごく嫌ったけれどね。彼らはそれをジャズだと思っていなかったから。
西原:彼の自伝は読んだ?
PISMO:もちろん読んだよ!いい本だったよ。
著者のクインシー・トループって知ってる?
いろんなマイルスの自叙伝が出ているけれど、ほとんどの自叙伝はボクは納得できなかったんだよね。
でも、クインシーの本だけは納得できたんだ。
西原:いま、ヒップホップとかハウス、ドラムンベースとか、すごくたくさん音楽があるけれど、もう出そろっている感じがするよね。だから、新しい音楽が出にくいと思うんだけれど、その辺りはどう考えていますか?
PISMO:ボクらは、その状態を”オーバー・サーチレイデット”(検索終了)って呼んでいるけれどね。
ボクが初めてラップをやったときは、ラッパーも世の中にそれほどいなくて、もっとラッパーに対して驚きがあったけれど、いまはみんながラッパーで、みんながプロデュー サーの時代になった。もうそれだけじゃリスペクトされなくなったから、どんどん自分のハードルを上げていかないとなんだよね。
(その3へつづく)
PISMO(ピズモ)
http://www.myspace.com/pismo
http://www.shourecords.com/
ちなみに、今回PISMOが着ているTシャツは、Camilla d’Erricoという女性アーティストのもの。今後、彼女とPISMOでコラボレーションモデルもつくられる予定だそうだ。
Camilla d’Errico
http://www.camilladerrico.com
□ 西原健一郎 × 有働幸司(FACTOTUM) 対談
(前編)http://tyo-m.jp/archives/372
(後編)http://tyo-m.jp/archives/576
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