Interview : March 1, 2017 @ 17:21
オモシロさを探る!──『Capitol Hill by Tei Johjima』”城島 禎”のホンネ(前編)
97年から約10年にわたって活動していたブランド『Capitol Hill PRODUCT』のデザイナー”城島 禎”が、10年の時を経て、自身のブランド『Capitol Hill by Tei Johjima』として復活させた。
『Capitol Hill by Tei Johjima』では、『架空のデジタルクリエーターの作業着』がテーマであった『Capitol Hill PRODUCT』を、2017年の視点から再構築。
ほかにはない”あたらしいたのしさのある服”でありながら、デザインの奇抜さだけではない”完成されたもの”を目指しているという。
たしかに、2017年秋冬コレクションでは、カタチやシルエット、素材づかいなど、その細部にわたって、ほかのブランドではまったく見られないような、ブランドコンセプトどおり、”あたらしくてたのしさのある服”を展開。
とにかく見ても、さわってもオモシロいモノばかり。
いったいそのオモシロさのインスピレーションは、ドコからきているのか?
今回は、デザイナーの”城島 禎”氏に、あたらしいブランド『Capitol Hill by Tei Johjima』についてのお話しを中心に、カレが歩んできた道のりから、そのオモシロさのヒミツをさぐってみた。
─今回、ご自身のデザインにおけるブランドを復活させたワケですが、
まずは『Capitol Hill by Tei Johjima』というブランド名の由来をおしえてください。
もともとは、1997年に『Capitol Hill PRODUCT』というブランドをやっていて、
その現在版というコトでこのブランド名にしました。
“Capitol Hill(キャピトル・ヒル)”というのは、
ボクが95年に住んでいたシアトルの街の名前です。
─そうだったんですね。
そこに住んでいるヒトたちの生活をヒントに、ブランドをつくったんです。
─今回の『Capitol Hill by Tei Johjima』では生地にこだわられたとか。
そのようなコンセプトにしたキッカケは何だったのでしょう?
ブランクをおいて洋服をつくったこともあり、
それまでやっていたようなモノ にくわえ、
カタチだったり、シルエットがオモシロいなとおもえるものをつくりたいなと。
いままでであればワークウェアにあるような、
慣れ親しんだ素材をそのデザインにのせていったのですが、
今回は、触ったことがないものに注目して、
触ると驚くような素材を使用してみました。
─シャツの素材も、じつはナイロンなんですよね?
そうなんです。
素材は、今回のためにつくった素材ものもあるし、
探したものもあります。
─今回のひらめきはドコからインスパイアされたのでしょう?
いままでは、ワークウェアを基本にしつつ、ソコに意外なバランスを持ちこんで、
意外なものだけれど、見慣れたような要素のものをつくってきたんです。
でも、今回は見慣れた要素をのこさず、前からずっとあったような雰囲気を出しました。
その方がオモシロいかなと。
─なるほど。
生地までつくりたくなったというのが、インスパイアのひとつですね。
合繊などもつかいながら、そこに面白みを出して驚かせたいというか。
それまでは”合繊”という響き自体がキライだったのですが、
でも、べつの企業の仕事でいろいろなものに触る機会があって、
その中でオモシロさを発見したというか。
だから、いろいろな企業の仕事をした経験が、
知らず知らずの間に自分の中のヒントになっていたというコトなんです。
─今作のなかでおススメの作品はありますか?
ふたつあります。
ひとつは、コート。
生地からつくったのですが、合繊と合繊をラミネートした三層タイプで、
風も雨も通さない。一度、生地を洗濯機で洗ってみたのですが、
ゴムの板のようにそのままなんですよ。そんな素材ってなかなかつかわないですし、
独特なカタチが出ていてオモシロいですよね。
─もうひとつは?
ニットです。
あえてポリエステルをつかって、いろいろ試行錯誤して、こんなコトになりました。
なかなかオモシロいタッチに出来上がったとおもいます。
─ドチラもまさに触って驚く素材、、ですよね?
驚きました?
─はい。
とにかく触るまでは化繊だとはおもわなかったです。
よかった(笑)。
─それに他のブランドさんでは見ないカタチですよね。
いまは意外と似たようなカタチがおおいですし、
生地もいわゆる「機能素材」がおおいですから。
ウチはぜんぜん機能よりオモシロみ重視ですからね。
わざわざ重いとか(笑)。
─そこからみたら、まったくちがう個性があるのでいいとおもいます。
ボクっぽくないコトをやっても勝ち目はないとおもってますからね。
つねに重要視しているのが、パッと見て、カッコイイとおもわせないというコト。
ダサカワの元祖ですから。
着たら可愛くて、他にないカタチなので、気に入ってくれる人はおおいとおもうんです。
言ってみれば、レコードのB面の2曲目なんですよね。
最初はぜんぜんなんだけれど、あとからジワーっとくる感じです(笑)。
─それわかります(笑)!
素材の触り心地の不思議さもいいですよね。
「ポリエステルで、ここまでやってみたらどうなるかな?」とおもってやってみました。
このふたつが今作のおススメです。
もちろん、全体的にオモシロいものができたとおもいます。
─たしかにオモシロいです!
以前から言われていたのですが、「洋服の人じゃないでしょ?」って。
たぶん、自分のなかの工業的な部分があるのかもしれませんが、
もともとは靴のデザインでしたのでね。
─そうなんですよね。
だから、切ったり、裂いたり、ねじったり。
そういう作業にはほとんど興味がなく、
むしろ設計図的にかんがえているんですよ。
─大学では工業デザインをやられていたとのコトですが、
そこからナゼ靴のデザインの方にすすまれたのでしょう。
最初は、家具のデザインをやろうとおもって大学に行ったのですが、
履修届けを出す前日に、やっぱり工業にしようと(笑)。
工業の方がいろいろと幅がひろいかなとおもったんですよね。
でも、家具に行ったとしても、結局、靴に行っているとおもいます。
─そうなんですか?
1980年代の中頃で、当時、靴のデザイナーなんて、
日本人ではあまりいなかったですし、、、”熊谷登喜夫”さんくらい?
だから、オモシロいだろうとおもって行ってみたのですが、、、
コレがオモシロくなかったんですけどね(笑)。
─ちなみに、最初は靴メーカーにデザイナーとして就職されたのですか?
そうです。普通に就職活動して、その企業に入って、初日はネクタイを閉めてって(笑)。
─大学4年間の中で、”靴”という感覚は芽生えていたのですか?
芽生えていましたね。
工業デザインって、車業界とか、オーディオ業界とか、、、
そういうオトコ臭い世界なんですよ。
ボクは、つなぎを着てオイルにまみれて──、という人ではなかったのでね。
むしろアルバイトをしては、洋服にお金をつぎ込んで、、という学生生活でしたよ。
─もともと服が好きだったんですね。
好きでしたね。
だからといって、”アパレルにすすんで服をつくる”というのはちがうかなーと。
服はつくりたかったけど、ヒトとはちがうアプローチでやりたかったんです。
ヒトとちがうコトをしたかったんですよね。
まあ、10代後半から20代は、さまよいつづけていたんですよ。
だから、靴の方に。
でも、行ったらやっぱりオモシロくなかった(笑)。
─その会社には何年くらいいらっしゃったのですか?
4〜5年かな。
靴に携わったのは、88年から96〜7年までくらい。
後半は、イタリアのブランドとの合弁会社にいたので、
日本とイタリアを行き来してました。
でも、年齢のわりに海外のいろいろないいモノが見られたので、
恵まれてたとおもいますね。
─ご自身では靴のブランドはやられなかったのですか?
97年に自分のブランドを出したのですが、その時からいきなり洋服でした。
じつは会社にいたときから、洋服のデザインを描いてから靴を描くという、
変なコトをやっていたんですね。
洋服を3枚描いたら、靴を1枚とか。
もちろん基本は靴なので、洋服の絵はつかわない。
そういう風にデザインをしていたので、
他のデザイナーの方とは少し変わっていたとおもいます(笑)。
─たしかに他のファッション系のデザイナーで、
そういうデザインのやり方をされているヒトはあまり聞かないですね(笑)。
そういうワケで、洋服のデザイン画がかなりたまっていたんですよね。
─しかし、なぜ洋服のデザインをやろうとおもったのでしょうか?
学生のころから、「どうしてこのバランスの服がないのか?」というおもいがあったんですよ。
自分がカッコイイとおもえるものと、
世の中がおもうカッコイイとにすごくズレがあるんですよね。
─なるほど。
(後編へつづく)
『Capitol Hill by Tei Johjima』
デザイナー”城島 禎”により1997年の秋に『架空のデジタルクリエーターの作業着』をテーマにスタートした『Capitol Hill PRODUCT』を現在の視点から再構築した『Capitol Hill by Tei Johjima』。東京を代表するブランドを手掛けたデザイナーの考える現代のワードローブ。
ブランドの目指すところはスタート当初より、新しい楽しさのある服であると同時に奇抜さだけが目に入ってくることのない完成された物である。『楽しい意味のある完成された佇まいの服』を理想としながら20年を経て、より自由な発想で取り組むメンズウェア。
2017年秋冬コレクションのアイテムはどれも一見、既視感のあるアイテム。しかし、それぞれのアイテムにはあらゆる視点での実験的要素が詰まっている。素材、アイテム、シルエットに対する先入観を取り払うことで本来あるべき姿とはどこか違うアイテムへの昇華したコレクションは、未来の洋服のあるべき姿を示しているのかもしれない。
お問い合わせ:
スタイル
TEL. 03-6416-9061
http://dupestyle.com/
□プロフィール
・城島 禎(ジョウジマ テイ)
1965年生まれ。
1988年から1995年まで靴のデザインを経験し、1997年ウェアで自身のブランドを発表。
2000年春夏より2006年秋冬まで東京コレクション参加。
2008年でメンズ・レディース共に販売は休止している。
This entry was posted on Wednesday, March 1st, 2017 at 17:21 and is filed under Interview. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. Responses are currently closed, but you can trackback from your own site.