Interview : October 25, 2018 @ 17:26
その男、カルチャーにつき(その2)──アップリンク代表 “浅井 隆”インタビュー
2018年12月に「アップリンク吉祥寺」をオープンさせる、「アップリンク」代表の“浅井 隆”氏。
渋谷のカルチャー発信基地的映画館「アップリンク渋谷」をはじめ、デジタルカルチャーマガジン『webDICE』や動画配信サービスの『アップリンク・クラウド』、さらにセレクト型クラウドファンディングサイト『PLAN GO』をスタートさせるなど、さまざまな”メディア”をつくってきた。
会社を設立して31年目経ついまもなお、さまざまなあたらしいモノゴトへ挑戦しつづけている。
そんなカレの底しれぬパワーは、いったいドコから生まれているのだろうか?
ひきつづき、”浅井 隆”氏という人間に迫ったインタビューの第2弾!
─さて、浅井さんといえば、
なんとなく社会派なイメージがワタクシのなかにはあるんですけれど、、、
その辺はどのように考えていらっしゃいますか?
例えば、映画はエンタメだけの映画ではなく、
英語で”アートハウス”という言葉があって、
いわゆるアート系、芸術系の映画だよね。
そのなかでも個人的に興味があるのは芸術を極めるだけじゃなく、
社会性を帯びているもの。
もっと言えば、作品にはかならず社会性は帯びてくるものだと考えているし、
それを排除して芸術だけの作品ってないとおもう。
『オーシャンズ8』だってフェミニズムのあり方とか、
世の中の流れで女性だけの泥棒チームにしたワケじゃない?
『オーシャンズ11』から『オーシャンズ13』までずっと男でやってきて、
やっと女ばかりの泥棒チームがつくられた。
それもやっぱり社会性があるからだとおもう、、、
”時代の流れ”としてのね。
それに、ハリウッドのスターだって
”トランプ(大統領)”に反対する意見を言っているので社会性はあるよね?
─あります!
もちろんわかった上で言うんだけど、
「社会的な発言が多いですよね?」と言われても、
「いやいや!社会的な発言をしないでナニを発言するの??」としかおもわない。
─なるほど。
例えば、現状の世の中、
とくに日本だと、発言しないヒトの方がおおい時代というか、、、
そんな感じがしていますが、いかがでしょうか?
今日、ちょうどふさわしいTシャツを着ていて(笑)。
“SILENCE GIVES CONSENT”、
「沈黙は承認することだ」という意味で、
”プラトン”が言ったらしけれどね。
ナニも言わないと、
いまの状況を承認しているっていうスタンスとしてとらわれるので、
”承認はしていないことに関してはモノを言う”というスタンスかな。
─わかります!
さて、いままで渋谷にも「アップリンク渋谷」というスペースを生んだり、
『webDICE』のようなWEBメディアもそうですし。。。
“場”というか”メディア”をつくられて来られましたが、
今回の”メディア”に吉祥寺という街を選んだ理由を教えてください。
ちなみに、パルコさんからまずお話が来たのでしょうか?
今回は100%「アップリンク」側の企画。
「アップリンク渋谷」をつくったときから、
小さい映画館をもっとつくりたいとおもっていたんだよね。
もちろん、商売で映画という風に考えると、
新宿、それから有楽町につくりたい!
だけど、さすがにアップリンクの力で新宿と有楽町に物件を借りたり、
映画館をつくる資金はなかった。
─いろいろ大変ですよね。
次に探したのが、
人口が増えているという意味で横浜。
物件を探していて、
「横浜につくるぞ!」という気持ちはあったから、
渋谷から都立大に引っ越したんだよ。
都立大だと東横線だから、
横浜に映画館をつくっても渋谷と横浜を往復できるなと。
でも結局、横浜の企画はなくなっちゃったので、
都立大に住んだまま(笑)。
─えー(笑)!
でも、じつは横浜と平行して吉祥寺は候補としてあって、
物件も探していたんだよ。2つ3つ候補まで絞りこんで、
家賃とか、スペースとか、シミュレーションまでしたけれど、
ちょっとむずかしいなと。
ただその間、パルコさんともずっと話をしていて、
それも4年目になるんだよ。
─4年も!?長いですね〜!
長いんだよ(笑)!
ポンっと去年、企画ができたとかじゃなくて、
4年間ずっと。
最初は、吉祥寺の別な場所につくる予定だったけど、
パルコ側から「どうせ映画館をつくるなら、
”館(やかた ファッションビルの建物)”のなかにつくったらどうか?」
と軌道修正されたんだよね。
もちろん、彼らとしては「アップリンク」以外にも候補があっただろうし、
でも、なかなか着地するまでにも時間がかかったよ。
それから、パルコのスタッフを説得していきつつ、
渋谷での実績があったので、
吉祥寺の人口とか集客を考えて試算表、計画表を出して、
最終的には「イケル!」という算段はあったよね。
─それはどのような根拠があったのでしょう?
「バウスシアター」があったときの売り上げを、
配給会社として知っていたから。
例えば、渋谷と新宿、吉祥寺の3ヶ所で上映して、
新宿と渋谷と変わらない数字を上げていたのね。
だから、アップリンクの配給作品が、
中央線沿線のヒトとは親和性があった。
吉祥寺のヒトにあるってことかもしれないけれど。
それで、新宿と匹敵するくらいの売り上げを想定できると、
パルコにプレゼンして、
最終的にパルコの経営会議で通ったというコト。
─ちなみに、荻窪とか高円寺という候補はなかったのでしょうか?
荻窪と吉祥寺を比べたら、
吉祥寺は中央線と井の頭線のクロスする場所だから、
ビジネスを考えたら勝算は圧倒的に吉祥寺でしょう?
─なるほど。
以前、とあるメディアのインタビューで
「結局、多様性を追求するって、サイズを小さくするしかない」
とおっしゃっていましたが、
いまもその考えは変わっていないのでしょうか?
そうだね!そう思うよ。
最小の多様性の単位って個人。
だから、70億の地球で、1億数千万の人口がいる日本。
その多様性って、1億2〜3千万分の1にわけられていくのね。
でも、さすがにカラオケボックスみたいな映画館をつくっても、
2人シートの映画館でも、仕方がない(笑)。
映画館って、自宅とのちがいは社会のなかに存在しているという点なんだよ!
”マイケル・ジャクソン”みたいに、
自宅にアップリンクの映画館くらいのスクリーンがあって、
自分とチンパンジーで観ても、
なんか孤独だなとおもうし(笑)。
─”バブルス”くんとですね(笑)。
でも、社会にあるということは、
まったく見ず知らずの他人と観るってコトで、
社会のシステムのなかにあって、そこにはある種の緊張感がある。
あるいは、自分の感覚が社会とのズレている具合がわかるとおもうのね。
そういう”場”でもあるワケだよ。
─なるほど。
だから、多様性を追求すると小さいコトがいいとおもう。
でも、小さすぎても仕方がない。
ビジネスとして成立させるもの、
では、ボクらが配給する、あるいは上映する作品だったり、
あるいは二番館、ロードショーが終わった後に上映するタイミングだとしたら、
100席ではちょっと大きい。
いま渋谷の40席とか58席は、
週末とか水曜日には満席になる場合もあって、
それだとちょっと小さい。
そこで、吉祥寺はいちばん大きくて98席、いちばん小さくて29席。
間に50と60くらいのが3スクリーンあって、あわせて5スクリーン。
つまり、面積的には、3スクリーン合計300席という映画館はできたけど、
あえてさらに小さく区切ったんです。
─それは、この発言を実現させるため、というコトでしょうか?
多様性を担保するには小さくないと。
29席だったら20人入っていれば、まだ上映はつづけられる。
ところが、100席のところで20人だったら経営的にキビしい。
だから、支持層は少数かもしれないけれど、
観に来てくれる映画を上映しつづけるために、
キャパを小さくしないとダメ。
それは道理だとおもう。
─まさに、それが実現した場所ということですね。
そうですね。
─現状、例えば、本屋がなくなったり、映画館、CDショップなど、
フィジカルなモノゴトを体感できる”場”がすくなくなりつつある、、、
そういう流れになってきていると個人的に思えますが、
浅井さん的にはそういった現状をどのように考えていらっしゃいますか?
いま言った言葉を正確に分析すると、
本屋とCDショップはフィジカルな体験というか、
フィジカルに売っている本やCDを選ぶ場所でしょ?
ところが、映画館って体験する場所なんだよ!
─たしかに。
インド映画の『バーフバリ』は絶叫上映とか、
応援上映とか、イベント化しているし。
ちなみに、最近の傾向で若いヒトにおおいけれど、
一本の映画をリピートして映画館に観にくる、3〜4回。
ファンのヒトは10回以上観に行ったりするんだよね。
─そんな感じなんですか?
それは、僕の世代にはないコトだったよね。
たぶん、そのヒトのなかで映画を見るという体験が
ある種イベント化しているのかなと。
─なるほど!
家でDVD、あるいはレンタルで、ネットで、PCで何度か観るというのではなく、
”映画館にいく!”、“社会のなかに帰属している映画館で映画を観る!”というコトが、
ライフスタイルのなかでイベント化している。
だから、書店とCDショップがなくなるのとちがって、
映画館は体験する場所なのでなくならない。
要するに、「Amazon」にとって変われない。
「アマゾンプライム」は映画観放題だよ。
でも、「アマゾンプライム」で映画を観る体験と、
映画館に行っている体験はちがう!
─どういうコトでしょうか?
結局、VRとか3Dとかテクノロジーが発達しても、
2Dの映画館で観る映画以上の五感を刺激することはないんだよね。
3Dで観ても、メガネ掛けて暗いし、違和感がある。
だったら、メガネ無しで2Dで充分!
VRもゴーグルをつけて画質が悪い。
だったらメガネをとって2Dで充分なんだよ!
映画以上のバーチャルで感情をゆさぶる体験って、
テクノロジーとしてはまだない。
将来もないかといったら、それはわからないけど。
でも、まだないことはたしか。
だから、ヒトはまだ映画館に観にいく。
映画の物語でのヒトの感情の複雑さとか、
ストーリーの展開とか、映像がバンバン飛んでいくような表現は、
「Netflix」とか、自宅で50インチのモニターで観たとしても、
映画館で観る環境には負ける。
テクノロジー的にヒトを映像の世界に没入させるプラットフォームは、
映画館での映画がいちばんだとおもうよ。
─なるほど。
VRはさ、女の子の裸をつかったりしてエロを喚起できるけれど、
感情を刺激する、「エモい気持ちを抱かせるか?」といったら、
”エロはできてもエモはできない!”っていうのが、
最近VRでおもったコトなんだけれど(笑)。
─おお(笑)!”エロはできてもエモはできない!”、、、ソレわかります!!
でも、「映画はエロもエモもできる」んだよ(笑)。
だから、メディアとしてはテクノロジーが進歩しているけど、
2Dの映画に勝るものが”バーチャルな体験”という意味ではない。
VRとか「Netflix」は、情報として、ストーリーとしてはわかるよ。
新幹線のなかでスマホで観ても、それはそれでOKだし、
ある程度感動もするけれども、
没入感、バーチャルな映像体験は、普通の映画館で観るのがいちばんだと、
いまの時点ではまだおもうよね。
□クラウドファンディングプロジェクト情報!
あと6日!!!!!!
2018年9月5日-2018年10月31日
映画館「アップリンク吉祥寺」オープン記念
クラウドファンディングプロジェクト
>>>コチラをチェック!!!
・プラットフォーム:クラウドファンディングサービス「PLAN GO」
http://plango.uplink.co.jp/project/s/project_id/74
□プロフィール
・浅井 隆(あさい・たかし)
アップリンク代表/未来の映画館プロデューサー。
1987年、有限会社アップリンクを設立。
デレク・ジャーマン監督作品をはじめ、国内外の多様な価値観を持った映画を多数配給。
2006年には渋谷区宇田川町に映画館、ギャラリー、カフェレストランを一か所にあつめた総合施設「アップリンク渋谷」をオープン。2011年にデジタルカル チャーマガジン『webDICE』、2016年には動画配信サービス『アップリンク・クラウド』をスタートし、映画を中心としたさまざまなインディペンデ ント・カ ルチャーを発信しつづけている。
「アップリンク」オフィシャルサイト:http://www.uplink.co.jp/
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