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Interview : August 17, 2010 @ 15:01

“DUB AINU BAND” OKI インタビュー 『SAKHALIN ROCK』中編

 




4年ぶりとなるフルアルバム『SAKHALIN ROCK(サハリン ロック)』をリリースした、 トンコリ奏者のOKI。


今作は、”サハリン(樺太)”への旅や、マルコス・スザーノとのブラジル録音のほか、いままであらゆる土地で行ったライブや旅など、OKIが想う”いま”の終着点を表している。


ひきつづき、トンコリの故郷である”サハリン”についてやブラジルでのスザーノとの録音、滞在のお話などをお訊きした。





─サハリンの地におもむいて何を感じたのでしょうか?


オレが思ったのは、マイナス20度とか、北海道より自然が厳しくて、夏もかなり寒いしさ。そういう中で耐えられる音というのは、繊細なものじゃダメで。。。
となると、ガッツのある演奏、バリバリ弾くような力強さがないと伝わらないということを、スゴく感じたね。

─たしかに、あの厳しい自然の中で弾く楽器にしては音量はないですもんね。

そういう強さを感じてスタジオに帰ってきて、まず「サハリンロック」を録ったんだよね。
元は、曲名も分からない、誰が演奏しているかも分からない、古い演奏なんです。それを紐解きつつ、フレーズを──、アレはループじゃなくて最後まで弾ききっているんだけどね。
もう、その時点でロックな感じ。

─サハリンで、スゴいインスピレーションを感じられたんですね。

ジャケットをみてもお分かりなように、そういうトコロなんですよ、サハリンは。難破船みたいなのがゴロゴロあるし、日本時代の鳥居とか工場も廃墟のままあるしさ。さらに、ソ連時代の1941年の、世界大戦前年のモニュメントも平気で建っているんですよ。サハリンの歴史がすぐ分かる。

─そのまま残っているのは、スゴいですね。

ビジュアル的に歴史を眺めることができる。ある意味歴史の島だよ。
この150年くらいでアイヌから、日本になったり、ソ連になったり、ロシアになったり、そういうめまぐるしい変化があった島なんだよね。
そこには、キレイごとではいかないロックがあったんだよ。
だから、いちばんロック的な島ですよね。

─しかし、ジャケット、スゴいですね。サハリンというよりは、ニューヨークの冬に撮った、ロックミュージシャンのジャケットみたいです。

そう(笑)?
アートワークも全部自分でやっているんだよね。

─写真はどなたかが撮られたのですか?

写真は伊藤健次くんというカメラマンが撮ったんです。
(ジャケ中の)この写真は、オノワンクが浜に出て、松浦武四郎の前でトンコリを弾いたという、トンコリ発祥の地というか、ゆかりの地。こういうところなんですよ。

─スゴいトコロですね。人の足が完全に踏み入れられていない土地というか。そういえば、フィールドレコーディングもされたとのことですが、どんなところでやられたのですか?

聴いた?

─もちろんですよ!

こういうところで録ったんだけれど、すげー寒くてさ、フィールドレコーディングにならないわけよ、風も強くて(笑)。10秒くらいしたら、指が痛くなるんだよ。もう耐えられなくて。
晴れた日とかに録った、キレイに録れているのもあったんですけれども、あえていちばんバッドテイクを入れちゃいました。

─それを選んだ理由というのは?

悪い音の方がリアルだなと思って。
まあ、そういう状況だったことを伝えるにはいいかなと思ってね。

─たしかにそうですね。
話は変わりますが、今回はマルコス・スザーノさんとブラジル録音もやられたとのことですが、それはどんな感じでおこなれたんですか?

スザーノのスタジオで、2時間ぐらいで5曲くらい録ったんだけれど、そのうちのひとつ。

─ブラジルでは、どんなインスピレーションを受けました?

ブラジルは、その時のライブの対バンがアイアート・モレイラとか、フローラ・プリムとやらさせていただいて、面白かったっすよ。やっぱり音楽のレベルが高いからさ。
だって、サルバドールでメシを食っていたら、そこの上でさ、サンバの練習をしているから、ずっと音がなっているのよ。ほとんど、カラテ道場みたいな感じで、サンバ道場みたいなのがあるんだよね。

─サンバ道場って、、、スゴい表現ですけれど、なんとなく分かりやすいですね(笑)!

サンバ道場ですよ、あれは(笑)。
日本だったら苦情じゃん?で、警察が出てくるでしょ?
でも、お盆の前にさ、お囃子隊が練習してても、誰も苦情を言わないと思うんだ。いや、いまどきはわかんねーな。そんな感じ。
文化として騒音じゃないからね。そういうのがよかったよね、やっぱり。

─音に対して、いい意味で敏感なんでしょう。

いろんな人種が混ざっているからね。
アメリカの場合だと、コミュニティが完全に白人地区と、黒人地区、アジア地区、インド地区って別れていて混ざらないんだよ。ここ1~2年でちょっと変わってきたけど。
だけど、ブラジルは音楽においては垣根がないんですよね。
やっぱり面白い音楽をいっぱいつくっているし。

─究極のミックスカルチャーですよね。

だね。
楽器的な部分で言うと、スザーノのパンデイロは、タンバリンみたいな感じの楽器なんだけれど、じっさいに聞くと音がしょぼいんですよ。トンコリもそんなデカイ音じゃないし、ゴージャスじゃない。お互いそんなゴージャスじゃないんだよ。それが相性がいいんですよね。
やはり、トンコリが土着的じゃないですか?
全員ブラジルのミュージシャンでいちまい録りたいくらい。

─独特のリズム感があるんですかね。

リズム感というよりは音楽に対する捉え方だよね、音楽の産み方があきらかにちがうよね。サッカーだってさ、ああいう音楽を聞いて、カポエラやって、サッカーやったら、そりゃうまくなるよ!広場という広場では、必ず誰かがボールを蹴っていたから。中国の太極拳みたいな感じ(笑)。

─そこら中で太極拳やってますもんね(笑)。

サッカーも観に行ったけれど、面白かったなー。
意外にね、ファミリームードなのよ。
もっとおっかねーのかなーと思ってて、、、サポーターとかキレててヤバいのかなとかね。
でも、サポーターは2階席に固まっていて、外から見ると荒海の中の海藻みたいな感じで、ゆれちゃっていて、スゴいんだ。ゴールを入れたら、花火だもん。競技場の中で、花火やっていいのかなって(笑)、、、スゴかったよ。
席も意外とゆとりがあったし、ほんと好きなところで見られるし。
面白かったなー。

─ブラジルはサッカーなんですね、やっぱり。
リオにいらっしゃった間は、他にはどんなことをされていたんですか?

“ムタンチス”のリミーニャのスタジオとかで、ジャムセッションとかしてたよ。それは今回のアルバムには入らなかったけれど。
あとは泳いでいたかな。

─海で?

そう。
あと、あの有名なキリストの像のところに行ったよ。
すごくキレイなジャングルで、緑が深くて、、、いいところですよ、リオは。
だけど、ファベーラといって、お金のない人が住む山の斜面ね。行かなかったけれど、日本じゃ考えられないほどの貧富の差ですよ。そこは厳しいよね。
でも、サッカー選手はそういうところの出身なんだけれどね。

─そうなんですよね。




(“DUB AINU BAND” OKI インタビュー 『SAKHALIN ROCK』 後編へつづく)





OKI DUB AINU BAND
『SAKHALIN ROCK』




レーベル:CHIKAR STUDIO(CKR-0116)
価格:¥2,940(税込)
発売中!

>>>レビューはコチラ

 

OKI DUB AINU BAND
“SAKHALIN ROCK TOUR 2010″

2010/9/3(金)渋谷 クラブクアトロ
2010/9/9(木)函館 Blue Point
2010/9/10(金)札幌 ジャスマックプラザザナドゥ
2010/9/11(土)阿寒湖 オンネチセ
2010/9/12(日)知床 CAFE PATH(OKI special solo live)
2010/9/17(金)京都 MUSE
2010/9/18(土)岡山 城下公会堂(OKI special solo live)
2010/9/21(火)山形 SANDINISTA
2010/9/25(土)大阪 Zettai-Mu the 15th Anniversary 2010



OKI



アサンカラ(旭川)アイヌの血を引く、カラフト・アイヌの伝統弦楽器「トンコリ」の奏者。
自らの製作するトンコリに改良を重ね、その後エレキ化に も成功し、そのトンコリを武器として世界を舞台に知られざるアイヌ音楽の魅力を知らしめてきたミュージシャン/プロデューサー。ソロ活動に加え、自身が率 いるDUB AINU BANDでは世界最大規模のワールドミュージック・フェスとして知られるWOMADへの参戦や、日本国内でも数多くのフェスに出演(FUJI ROCK、朝霧JAM、RISING SUN ROCK FES、渚音楽祭、SUNSET等)。
2010年7月には4年ぶりの待望のニューアルバム『サハリン・ロック』をリリース。

http://www.tonkori.com/

photo by Ishida Masataka


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