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Interview : October 5, 2022 @ 19:30

“なかの綾”と呑もう!というか、”なかの綾”の「いま」を訊く



“なかの綾とブレーメン”なるユニット名では初となるアルバム『いちまいめ』のリリースしたシンガーの”なかの綾”。

今作では、いままでの「昭和歌謡の”なかの綾”」というイメージをすこし変えるような音づくりで展開している。
本アルバムのこまかい感想は、レビューを読んでいただくとしよう。

さらに、彼女はこのコロナ期間を機に、個人としての活動を決意し独立。

結婚、出産、独立、リリース、歌手活動、、、デビューから12年。

さまざまな経験を積み、いろいろと変化を経た”なかの綾”の「いま」について、今日はシブヤで5時ならぬ、シブヤで6時に待ち合わせて、ユル〜くお酒を呑みながら、ぼんやりおハナシを聞いてみた。





──まずは”なかの綾とブレーメン”の初となるアルバム『いちまいめ』のリリース、おめでとうございます!


ありがとうございます!


──現在、ツアーなどもはじまっている様ですが、まずはどんなアルバムなのでしょうか?


いままでで一番力を抜いて作ったアルバムです。仕事、、、もちろん全部仕事なんですけれど、その中でもちょっと趣味的要素の強い、別チャンネルみたいな感じで、数年前からやっていたプロジェクトのひとつなんですね。だから、このプロジェクトが本流になって、まさか音源にまでなるとはおもってもいなくて、「いいのかな?」という感じで、まだドキドキしながらみなさんの反応を待っている状態です。


──音的にもいつもの”なかの綾”とはちょっと違うというか。。。


かなりキャラ変がありました!


──”なかの綾とブレーメン”でライブをやっているとき、自分的にはどんな感触なのでしょう?


正直、いままでは自分が楽しむものではなく、「エンターテインメントとは?」みたいな部分の方が強い。だから、自分が面白くなかろうが、お客さんを楽しませるために自分が「犠牲にならないと!」みたいな考え方でやってきたんです。でも、セントラルと一緒にやりはじめた時期くらいから「ステージってこんなに楽しくていいんだ」みたいな考え方が芽生えて、「提供しなきゃ!」みたいな部分に対して、自分の楽しさの方が勝った感じになった。
ブレーメンはその延長で、メンバーのみんなで音遊びしている感覚なんです。


──音遊びしていたものが作品化できたという点は、すごくいいコトだとおもいますよ。


本当にありがたいです!だから、不思議な感覚というか、「コレでいいんだ!?」っておもっていますよね。


──レギュラーメンバーは”西岡ヒデロー”さんと”伊原“anikki”広志”さんのおふたりですが、どんなやりとりをされた?


彼らは何をやっても格好よく仕上げてくれるんですよ。だから、私が「ライブでやろう!」と決めた曲だったり、アルバムの制作現場でも「いいじゃん!格好いい!」しか言ってない気がします(笑)。例えば、彼らから「この曲カヴァーしよう」と言われても私が知らない曲が多くて、でも、「こんなアレンジはどう?」「格好いいよね!」という具合にモノゴトが進んでいく。たまに「なにか意見をを出してよ」とも言われるけれど、本当に何をやっても格好良く仕上げてくれるから「特に、、、」みたいな感じでしか返せないんですよね。



1軒目はシブヤの最重要ポイント「森本」へ


──「君に胸キュン」のアレンジは、個人的には「こうきたか!」という感じで面白かったですね。


じつは私は原曲を知らないんです。


──そうなんですか?


自分が生まれるちょっと前の曲というのもあるし、いわゆるテクノというカルチャー自体を私は通って来なかったこともあって聞いたことがなかったし、知らなかったんです。ただ、ヒデローさんとanikkiは同世代というコトもあって、そういう私が出会ってこなかったような曲だったり、私の親も聞いてないような曲を持ってきてくれるんですね。
この「君に胸キュン」に関しては、ヒデローさんが「anikkiも歌っちゃえよ!」みたいな感じで、それでanikkiが持ってきた曲だったんです。ヒデローさんって、ヒトをヤル気にさせるのがとても上手なヒトで、私にも「サックス吹いたら?」って言われてサックスを吹いているんですけれどね。そんな感じで大笑いしながらやった曲でした。


──”なかの綾”のアルバムで”なかの綾”以外のヒトが歌うってのは、いままで無かったことだったからすごく斬新でした。最初に聞いた時に「あれ?だいぶ声が変わった!?」みたいな(笑)。


「あれ!?誰のアルバムだ??」みたいな(笑)。


──ちなみに、この曲、実はリリース前にDJで使わせていただいていたのですが、誰もなかの綾のアルバムからだって気づかなかったです。


それがいいんですよ!


──ヴォーカルというか、ほぼほぼコーラスに近い感じというか。。。


バービーボーイズみたいな感じ(笑)。


──「ドッチがメインボーカルなの?」みたいな(笑)。


ひたすら明後日の方向を見て歌ってるみたいな(笑)。


──アルバムの中で苦労した曲は?


「寝コロコロカーノ」ですね。コレはヒデローさん作曲の曲ですが、冒頭部分が歌詞ではなくてリズムとスキャットだけでしょ。ヒデローさんってパーカッショニストでトランペッターだから、メロディーとリズムにはすごくこだわりがあって、ご自身のなかで「ココ!」という正解があるから、合格点をいただくまでは苦労しました。


──ヒデローさんには曲の完成形が見えていて、的確な指示があったというコトですね。


ソレがあったから、ちょっとした落差は許されなかったし、特にラテンの曲は緻密にリズムが作ってあるから、ちょっとでも外すと「ダサい!」ってなっちゃう。いまだにライブでもまだ慣れていないかな。


──逆にすんなり出来た曲は?


「ラストダンスは私に」はおそらくダレもが想像ついたというか、「こうなるだろう!」と想像どおりの感じになったアレンジだとおもうんです。私自身も、「デビュー前からおもった!」みたいな部分もあるし(笑)。そういった意味では面白みがないカヴァーだったかもしれないですよね。
あと、”吉田日出子”さんの「レイジーボーンズ」のカヴァーは、たぶん年齢ともに歌い方も変わってくる曲だと思うから、「これから育てたい!」という、そんな漬物みたいな感じかな。


──「レイジーボーンズ」の選曲はシブいなと思いました。ドナタの案?


それは私です!もともと好きな曲だったし、ずっと聞いていた曲なんです。アルバム『へたなうそ』のときにも候補に出した曲で、どうせ昭和をやるなら「この辺の昭和がいい!」っておもっていたんですけれど、キネマとか、ちょっと洋楽の煽りを受けているような、私の世代がオシャレと感じる昭和の歌ですよね。その時は却下されちゃいましたけどね。


──アルバム自体は、どのくらいの期間で形になったんですか?


今年(2022年)のお正月に話がではじめて、動き始めると早いですよね。普段ライブでやっているカヴァー曲も入れることになって。あとはオリジナル曲も「オレつくる!」って、ポンって集まって、、、たぶん私の歌詞がもっとサクサク書けていたら3ヶ月くらいで出来ていたんじゃないかな。蕎麦屋の出前みたいに「いや!まだちょっと浮かばなくって(汗)!」みたいな感じの話をして、かなりネバったから(笑)。


──やはり歌詞は大変?


言いたいコトって、、、そんなにナイじゃないですか。切り立ってそんなカッコ良い日常を送っているワケでもないですし、世界にも、民衆にもそんなに訴えかけて「何かを陽動したい!」とかもないですから(笑)。


──平和活動的なフォークソングでもないしね(笑)。


でも、本を読んだり、文章を書くのは好きなんですけれど、書くとすごくクドく長くなっちゃう。それを短くするのが大変なんですよ。1曲書くのに短編小説くらいの感じで作り込んで、そこから言葉を抜き取っていく作業になる。そもそもその短編小説が出来上がるまでも大変で、さらにそれが膨らみすぎても困るし、膨らんだはいいけれど、結局、歌って発音した時に気持ちいい言葉、、、例えば、伸びの言葉の母音はアーがいいとか。そういう言葉の選択も入ってくるから、結局はパズルみたいな感じになっちゃう。


──たしかにパズルを解くのは大変ですよね。


なかでも厄介なのが、「このメロディは『だけど』という言葉をつかいたい!」っておもうと、『だけど』をつかうコトから頭のなかが抜けなくなる(笑)。


──曲が先?歌詞が先?


私は曲が先ですね。先に詞をやってみたい思いはあるけれど、無から何かをつくるよりは、何かあるものをこねくり回す方が好きなんです。だから、お題が先にあった方がいいかな。


──作曲の方は?


作曲もこれからトライしたいとおもってます。でも、作曲されているみなさんって、鼻歌をiPhoneで録ってみたいな感じじゃないですか。私も酔ったときとか、気分よく家に帰ってきたときとかに、曲が浮かぶ日もあるんですよ、「コレ絶対売れるわ!」みたいな曲が(笑)。それを鼻歌で録るでしょ。それで次の日に聞いてみると、、、、本当にヒドいんですよね。だから、もうボイスメモの新規録音みたいなヤツは聞かないことにしています。


──でも、もしかしたら今後は作曲もやりはじめるかもしれない?


いまのブレーメンの感じだったら、「いいじゃん!やってみなよ!!」って言ってくれるだろうし、出来たものを格好良く料理してくれそうだから。いまがチャンスなのかもしれないですよね。


──”なかの綾”としての動きの幅がすごく広まった感じがする?


そうですね。


──ちなみに、いままで「作曲したい!」とおもったことは?


ドチラかといえば、「自分がつくったダサい曲より、プロが作った素晴らしい曲で歌いたい」という気持ちの方が強かったですね。だって、演劇の世界だと、監督がいて、脚本家がいて、演出家がいて、役者がいる。だから、「なんで歌だけ全部自分でやらないといけないの?」って。作曲家がいて、作詞家がいて、歌唱のディレクションする人がいて、歌う人がいる。「それの何がダメなのかな?」とおもってました。
ただし、歌だけやるなら、どんな歌でも、どんな役にでも憑依する女優さんじゃないけれど、そういう人にならないといけないし、どんなキャラも乗りこなせないといけないとは思う。だから、「こういう歌を歌え!」みたいな無理難題を言われる修行みたいなコトはやってみたい。
とはいえ、私はもう”松田聖子”さんみたいにはなれなくて、ある程度の方向が固まってしまっているんですよね。それは2016年にリリースしたサードアルバムの『エメラルド・イン・パラダイス』のとき、じつはもっと昭和歌謡的な部分から「抜け出したい!」とおもってつくったんですけれど、結局、めちゃくちゃ昭和な仕上がりになったんです。デビューから6年経って、「こういうことか!」って腑に落ちたというのはありますよね。


──自分に合っている、もちろん声質みたいなものもあるだろうし、リズムの取り方とかもあるだろうし。出したばかりですが、『いちまいめ』というアルバム名だけに『にまいめ』がある?


もちろんです!




2軒目はシブヤのホットスポット「MeWe」。店主の”伊達啓一郎”と音楽バナシで盛り上がる。



──そういえば、7インチをリリースしますね。


“高宮永徹”さんのレーベル「Flower Records」傘下の「BLOOM MUSIC」から、はじめて12月3日の『レコードの日』にリリースします。「異邦人」と「待ち合わせ」のカップリングですが、「異邦人」はミックスしなおしたんですよね。
本当にありがたいですよ!アルバムをリリースして、「できればアナログも出したい!」とおもっていたところにお声掛けていただいて。でも、普段オシャレな音源を出されているところなので、「出していいのかしら?」って(笑)。


──『にまいめ』の方は、いつぐらいのリリースを目指しているんですか?


来年の春までには出せたらうれしいかな〜(笑)。


──『いちまいめ』のジャケットは着物でしたが、アレはドチラで撮られたモノですか?


アレは、5月に屋形船でライブをやった時の写真なんです。屋根の上でもくつろげる屋形船で、私たちが浅草で乗って、そのあとに品川でお客さんを乗せるみたいなルートだったのですが、お客さんが乗船するまで2時間くらい暇だったから。撮れた写真が面白かったから「これをジャケットにしよう!」って。それで「世界地図みたいなのと合わせたいよね」って。


──なんとなくドラクエ感がありますよね。


そうそう!ドラクエ文字にしたのは、ブレーメン探しダンジョンみたいな感じにしたかったというのと、私たち世代にはキュンとくるから。セントラルと一緒にやったときに、グッズでつくったタオルがドラクエ文字だったんですけれど、その続きみたいな感じでタオルもあわせて売りたいなって(笑)。


──今年ののこりはずっとツアーですか?


そうでもないんです。子供もいますから、月のうち2、3日ずつですね。


──子どもが生まれて、いろいろ変わったと思うけれど、一番ナニが変わりました?


嫌いなヒトがいなくなった(笑)。ヒトを許せるようになったかな。ひとりの人間が丸裸で出てきて、息の仕方も最初はあやしくて、そこからひとりでトイレにいってお尻が拭けるようになるまで3年くらいかかるんですよ。しかも、全部教えないとダメ。
そうおもうと、だいたいのヒトは自分でお尻は拭けるし、眠くなったら自分で布団に入って寝てくれる。許せるよね(笑)。赤ちゃんって理不尽だから。


──個人になって、状況的にも環境的にも変化はあったとおもいますけれど、今後の野望はありますか?


いま考えているのは、人生設計としてふたりめは考えているんです。それでいくと、また一旦活動が動きづらくなる時期が出てくるとおもうから、コロナのときに乗り遅れていた配信系を強化して、お家から何かができるというのをやりたいかな。
あとは、やっぱり私、二十歳のころからブレていない想いがあって、それは海外でのライブ。いままでの音源って、日本でしか流通していないんですけれど、「香港のDJに聞いてここに買いに来ました!」とか、アメリカから「アナログを買いたい!」というメッセージが来たりとか、ちょこちょこあるんですよ。そこの部分をこれから広げていきたいかな。だから、今回、海外への販路もお持ちの「BLOOM MUSIC」からのリリースのお話は願ったり叶ったりで、本当にありがたかったんですよ!
そういう感じで、海外でのライブも視野に入れた活動をしていきたいです。


──ありがとうございました!






□プロフィール





・なかの綾(中央)

1985年5月7日生まれ。京都府出身。
2010年デビュー・アルバム『ずるいひと』をリリース。限定リリースした7インチ・シングルは各レコード・ショップのチャート1位を独占し、クラブシーンから絶大なる人気を得る。2013年6月「NHK歌謡コンサート」に出演。同年7月、ユニバーサル・シグマよりミニ・アルバム『へたなうそ』でメジャー・デビュー。2014年2ndアルバム『わるいくせ』をリリース。ジャケットは”大友克洋”氏が手掛ける。2016年3rdアルバム『エメラルド・イン・パラダイス』をリリース。最近ではプロデューサーに”コモエスタ八重樫”、”武藤昭平(勝手にしやがれ)”、”SWING-O”を迎えシングルをリリースする。2018年6月には企画・監修に”渡辺祐”を迎え2年ぶりのアルバム『Double Game』をリリース。同年9月から自身初の全国バンドツアーをおこない、キネマ倶楽部でおこなったツアーファイナルはSold Outするなど好評を得る。
2019年4月に自身初のDVDを発売する。同年7月にはラテン・バンド”CENTRAL”とタッグを組んだアルバム『リバース』を発売。
同アルバムはミュージックマガジン「ベスト・アルバム2019」Jポップ/歌謡曲 部門で1位に選出された。
2021年1月にリリースされた、”なかの綾とCENTRAL”としての2枚目のアルバム『La Vida』は世界でも好評を得ている。
2022年8月24日には”なかの綾とブレーメン”名義でアルバム『いちまいめ』をリリースし、全国ツアーを企画している。
現在、FM ヨコハマにて毎週水曜日24:00からレギュラー番組「今夜もおきばりさん!」のメイン・パーソナリティーをつとめる。

“なかの綾”オフィシャルサイト:https://www.nakanoaya.com/




□リリース情報

・なかの綾とブレーメン
『いちまいめ』





レーベル:Music O.A.K.
価格:3,300円(税込)


□トラックリスト
01. ラストダンスは私に
02. 寝コロコロカーノ
03. ブレーメンはゆく
04. 待ち合わせ
05. 君に胸キュン
06. 君は天然色
07. レイジー・ボーンズ
08. 異邦人
09. 扉

>>>レビューはコチラ



・AKAKAGE×CALMERA
「女になって出直せよ FEAT. なかの綾/ムーンライト FEAT. ロボ宙」





レーベル:UNCHANTABLE(UCT045)
価格:1,980円(税込)
発売日:2022年11月09日

>>>詳細はコチラ



・なかの綾とブレーメン
「異邦人/待ち合わせ」





レーベル:BLOOM MUSIC(BLMS-002)
価格:1,700円(税抜)
発売日:2022年12月3日

>>>詳細はコチラ
https://store.shibuya-ball.com/collections/bloom-music/products/ihoujin-nakanoaya-bremen



□今回の居酒屋
・「森本」:https://www.shibuyadogenzaka.com/morimoto/main.html

・「MeWe」:https://www.instagram.com/mewe.shibuya/?hl=ja


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