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Interview : August 27, 2010 @ 16:29

熊谷和徳 × 中川賢一 × 中島ノブユキ 『革命』的鼎談(後編)



TAP界の異端児 熊谷和徳、クラシック界の異端児 中川賢一、そして音楽界の異端児 中島ノブユキ。


この3人の異端児たちが、オーケストラとタップダンスとのコラボレーションという、まさに『革命』を起こす初のステージ「Revolucion(革命)」を開催する。


”タップダンス”と”クラシック音楽”、まったく異なる素材をどのように料理するのか。


ひきつづきこの「革命 (Revolucion)」的なステージの創造に挑む3人に、3人の出会いのキッカケや、意気込みなどについて、いろいろと伺ってみた。





─今回の公演は、伝統と革新というか、音どうしのせめぎ合いじゃないですけれど、ギリギリのところで成り立つ芸術ですよね。


中川:全体的にどういう音になるのか、興味はありますね。ベートベンの「運命」にセットドラムを持ってくるような、そんな感じですよ。
いわゆる4ツ打ちに「運命」とかクラシックをのせてやったモノもあるのですが、今回はそういうことではなく、クラシカルなアプローチでやるワケです。

熊谷:それは、やりたくなかったんですよ。

中島:そういう感じではないね。

熊谷:そこは伝統的な部分をリスペクトしつつも切り込んでいくというスタンスが、もともとのコンセプトですから。聞きやすくするとか、踊りやすくするとか、そういうアプローチはしていないです。

中川:ショスタコーヴィチの「革命」は、”土っぽい”部分もあるので、それがどういう風にタップとシンクロするのかが楽しみですよ。アフリカの大地を踏みしめる──タップがそこから来たとすると、意外とそこは似ているのかな。
すべての世界の根源は土からきている、そういう部分がうまく絡むとカッコイイかもね。

─ちなみに、今回のこのメンバーはどういった感じであつまったのでしょうか?

熊谷:今回は、ボクが。。。

中川:一本釣り(笑)?

─カツオですか(笑)!?

中川:カツオ1号(中島)と2号(中川)ね(笑)。

熊谷:まず、中川さんは去年(2009年)の9月くらいに、福島県のいわき市で行われた子ども向けのワークショップでご一緒して。そのときの打ち上げが、スゴくヒドかったので(笑)。。。

一同:ははは(笑)。

中川:最悪でしたね(笑)。

熊谷:ホントにヒドかったんですよ(笑)。そのインパクトがスゴ過ぎて。。。
そのときは、初めてタップと音楽と美術をやる子どもたちに教えるというコンセプトで、一緒に舞台をつくったんです、それもすごく大変な作業で。それがなんか気が合ったというか、、、つくり方がいいなという感じがしたんです。
アヴァンギャルドなことをやりつつ、クラシカルな分野にいらっしゃるし、しかも今回ははじめてのことなので、やはり知っている人で、しっかりとコンセンサスがとれる人がいいと思って、中川さんに指揮者としてお願いしたんです。
中島さんは、今回の出だしがスゴく大変で、どういうところから手をつけていけばいいのか、まるで決められなくて。。。
近くのパン屋でお茶をしていたときに店内でとある曲が流れていて、「この曲をオーケストラでやりたい!」と思ったんです。それが「アフリカン フラワー」という中島さんの作品だったんですよ。知り合いが中島さんとつながっていたので、紹介してもらって、連絡したんです。で、お会いしたときに、お話をしたら、じつは20年くらい前までつながっていたんですよね。
で、中川さんと中島さんもお知り合いだったんです。

─え!そうなんですか!?

中島:もう何年も前でしょうかという感じなんですけれどね。
アレはジョン・ケージの「プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード」を、中川さんが弾く演奏会があって、その中でボクが作曲したフーガを中川さんが演奏する機会でもあってって、、、もう忘れてしまったんですけれど。。。

中川:あれはスーパーデラックスだったよね?

中島:そうです。

熊谷:不思議な縁です。
中川さんもボクも仙台出身ですし。
で、中島さんは、20年くらい前に仙台のウチの実家の喫茶店で演奏したことがあるんです。

─え!?

中島:そう!二十歳くらいのころ、縁があって仙台の知り合いの家を訪ねたんですよ。その方はピアニストの方で、「これから演奏があるから来ない?」って言われて。。。
それでピアノの演奏会だっていうのに、その人は音楽として椅子を”ギィー”とか引きずったりとかやって、ぜんぜんピアノを弾かないピアノの演奏で、かなり衝撃を受けたんですけれど(笑)。そのお店が熊谷さんのご実家で、カフェ『プロコプ』という、素敵なお店だったんですよ。
熊谷さんに初めてお会いしたときに、そんな話しが出たものだから本当にビックリしました。

─つながっているもんですね。

熊谷:そういうのってスゴく大事だと思うんです。一緒にやるひとの”縁”というか。
それが決まった時点で何かが見えた感じがしました。

─現在、大詰めの段階だとは思うのですが、この公演のどんな部分をお客さんには感じてほしいですかね。

熊谷:お客さんのことをまだ考えられていないです、自分のことがね(笑)。。。

中川:考える前に必死だよね(笑)。
必死にやったものが100%出しているワケだし。
それがよくとらえてくれたら、それでうれしいけど。

熊谷:もちろん選曲する段階の”流れ”という意味ではお客さんのことを考えているんですけれど。

中川&中島:そうだね。

熊谷:そこから先は、自分の問題になってくるから。

中川:本番はひたすら必死だよね。

熊谷:それを傍観してもらうというか、チャレンジを観てもらうことに意味があるのかもしれない。
エンターテインメントというよりは、そこにいて、目撃してもらうということですかね。

中川:まさに「革命」的な瞬間に居合わせていただくというかね(笑)。

中島:その目撃者になる!みたいな(笑)。

中川:目撃者になってもらうしかないですよ。
今回はクラシック専用のホールで、音がポワ〜ンという感じの広がりなんです。タップってしっかりとした細かいビートなんですけれど、それがどう響くかも分からない。オーケストラの巨大な音に、タップの音をピックアップで録るにしても、どんなバランスになるのかも分からない。
その日にリハーサルは一回やるけれど、本番のテンションとはちがうから、だから本番になってみないと分からないな。
でも、まあいんじゃないですか(笑)。

熊谷:ははは(笑)。

中川:だって、やる人がいないとコレは観れないから、それはパイオニアとしてね。
少なくても日本では革命的なことだから。

熊谷:マイナス的なことじゃなくて、失敗も別にありだなと思っています。
人生、そんなにキレイなことばかりじゃないし、すべてがうまくいくワケじゃない。じつはそういった”混沌”を表現した選曲でもあるんです。
コルトレーンも彼の内面は整理されていなかったと思うし、人の内面ってそれほど整理されているものじゃないですよね。それに、クラシックのイメージって、例えばホテルのロビーのイメージとか、かなり整理され過ぎている気がするんですよ。
でも、柳田さんの本を読んで、音楽って本当はすごく混沌としたものなんだと思いました。
ちなみに、今回選んだ曲は自分の内面に響く曲で、すこしダークな曲が多いんです。だから、”混沌とした部分”もうまく観せられたらいいかなと思っています。

中川:音楽って、歌詞があるものはちがうけれど、確定はあまりないんですよね。
だって、その音に対して、それを悲しいととらえるか、怒りととらえるかはその人の自由で、それを悲しいととらえた人に「間違っています」とはいえない、そんなもんなんです。
中島さんが”悲しい”と思って書いた曲を、ボクは”怒り”と思って、楽員に伝えちゃうかもしれないし。。。そういうことってあり得りますよね。

中島:“怒り”はやめてください(笑)!

中川:“発狂”とか、”激怒”とかね(笑)。
だから、まあ”混沌”でしょうね。

熊谷:あと、2年くらい前にアフリカに行ったのですが、そのときにスゴい人数で演奏している場面があって、それがオーケストラみたいな感じだったんですよ。でも、それに対してはダレもお金を払わない。ニューヨークでベルリンフィルハーモニーを聞いたときのとおなじ感動があったんです。
それがイコールであるべきだとは思うけど、アフリカのそういう音楽はなかなかお金を払って観るという感じではないんですよね。そこの違いってあると思うんです。
タップはどちらかというとアフリカ側の文化で、バレエとかと違って、文化的な背景としては低く見られがちなんですよ。ヨーロピアンな方が文化的で、アフリカ的なものは文化的にレベルが低い、その価値観ってダレが決めたんだろうなって。
ひとつの音楽として、自分が「良い!」と思うものをやりたいから、そこは何かひとつ壊したいんです。
リスペクトする部分と、その考えを破壊したい部分。
それらがココロの中で同居しているんですよね。

─今回は、その辺に注目しながら観るということでしょうかね?

熊谷:今回、オーケストラとやるということで「オーケストラとやるのスゴいね!」という、ジャズのビックバンドとやるのとは違う意味での注目度というか、価値観がすごくあるんです。でも、その部分は分かった上で、新しくトライしたいことがいっぱいある。だから、今回はそれをたくさんの人に見てもらうチャンスじゃないかなと思っています。

─なるほど。
“革命の日”が楽しみですね。
ありがとうございました!



<熊谷和徳 × 中川賢一 × 中島ノブユキ『革命』的鼎談 おわり>




2010年8月31日(火)

PARCO presents
熊谷和徳 × 東京フィルハーモニー交響楽団
KAZ meets Tokyo Philharmonic Orchestra
~REVOLUCIÓN~





>>>公演の詳細はコチラ



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