Interview : September 8, 2010 @ 21:18
井上 薫 インタビュー__『ハレの日』(前編)
井上 薫が、約5年ぶりにニューアルバム『-SACRED DAYS(セイクリッド デイズ)-』をリリースした。
その内容は、彼が”charichari”という音楽プロジェクトで活動していたときのような、民族的で、オーガニック、まさに原点回帰的なサウンドを展開している。
5年という月日の中で、何を思い、何を考え、そして何を感じてきたのか?
井上 薫の”いま”に迫ってみた。
─今回のアルバム『-SACRED DAYS(セイクリッド デイズ)-』は、日本語の直訳では”神聖な日々”となりますが、どんな意味を持っているのでしょうか?
日本の民俗学でいう”ハレ(晴れ)”と”ケ(褻)”とか、”ケガレ(気枯れ)”という伝統的な世界観、時間の見方があるんだけど、この中の”ハレの日”のことを言い表しているんだよ。
だから、『ハレの日々』というタイトルでもよかったんだけれど、英語に置き換えたら”SACRED DAYS(セイクリッド デイズ)”が一番意味がちかかったから、それをタイトルにつけてみたんだよね。
─音的な部分ですと、前作はディスコな感じでしたが、今回は、いわゆる”charichari”的な民族音楽というか、”原点回帰”の印象を受けましたよ。
それはよく言われる!
─もちろんプラス アルファで新しい部分を持ってきていると思うのですが、”原点回帰”という部分は何かしら意識をしていたのでしょうか?
それは、ちょっと意識していたかも。
─”charichari”も、日本もふくめた民俗音楽的な部分をかなり意識した音楽づくりをされていましたが、それが今回のタイトルにも反映されているという感じですか?
“charichari”のころから、活動をダンスミュージックの世界に没入していて──。テクノやハウス ミュージックの世界ってすごく感覚的なので、あえてそれをコトバで表現をしたら何になるかという部分を、今回は日本の文化的なところとリンクさせてアルバム名を”ハレの日”にしたんだよ。
個人的に趣味で日本の古層文化の文献を読んだり、DJでいろいろな場所に行ったときに、その土地の由緒ある場所を訪ねたり。そんな感じのことはずっとしてきていたんだよね。で、昔からの”祭りごと”を、いまはクラブみたいな空間に置き換えているんじゃないかなとか思ったりもしていて。。。でも、それって人の基本的な”想い”なんだよね。まあ、DJのときに「祭りだ!わっしょい!」みたいな感じになると、ちょっと困るけど(笑)。
都市の遊び場でDJをやっていると、日本の古い文化的なところとはあまりリンクしないし、もちろんそれをDJでは具体的に反映できることでもない。
なので、曲のタイトルや、音にイメージ付けみたいな部分で、このアルバムに投影してみたんだよね。
─環境のことにもいろいろと興味をもたれていますよね。
実際にはひとつだけ、代官山UNITでのイベント「フロートライブ」で、一時期、入場料の一部を”植林”にまわすプロジェクトをやっていたんだけれど、賛否両論的な部分があったんだよね。
世界的にエコロジー的なものって、ビジネスタームで動いているから、もちろん批判もわかる。ただ、行動を伴って関与することで初めて分かる事が当然いろいろとあるわけで、当時イベントに関わってもらっていた活動家と協議を重ねて実際にやってみた。クラブ・イベントで遊ぶことで小さいながらも具体的に植林に繋がり、遊びの部分のエネルギー消費がオフセットされるという考え方は相当実験的だよ。
お陰で考えさせられたこととか、教えてもらったことがいっぱいあって、いろいろと学習できたからよかったと思う。
でも、「持続可能な社会づくり」というキーワードは、これだけエコロジーという言葉が胡散臭さに堕している世の中的にも真実として重要であって、そういう本質的な部分を少しでも投影したいという”想い”でもあったんだけどね。
自分は音楽をやっているから、役割として音楽にそういった部分を投影する。。。
それが今回のタイトルづけの意味性にも繋がって行くんだと思う。
─なるほど。
自然環境系への投影だったり、、、そういう姿勢は薫さんからは昔から感じていました。
昔はなにも考えなかったけれど、意識的に「何かフィードバックできないか」と考えるようになって、それが植林活動とかに繋がったのかな。
こういうこと(DJイベント)をやっていても、何かしら自然的なことにつなげたい、、、そういう実験的な想いだったんだよ。
─そういうことに”気づく”ことがいちばん大事ですからね。
「持続可能な社会づくり」は、いろいろな人が言っているけど、それを本当に実現するには経済発展を止めなければならない部分が出てくる、たとえば産業的な部分とか。
でも、これだけ人間がいて、生きていかないといけないからさ。いまから原始的な暮らしを出来るワケない。。。
じゃあ、何を見つめ直すか、ということが個々人や社会に問われているんだと思う。
─まさにそのとおりですよ。
世界にいろいろな先住民族っているでしょ?
彼らの音楽ももちろんだけれど、そこで語られている「神話」とか「教え」とかに興味をもっていて──、たとえば、アメリカ先住民族は「人間の基本的な社会の形成」に関する知恵に秀でていると思う。連帯意識を強く持つとか、地球と共生するとか、、、それがけっして帝国主義的な方向には行かない。長い年月をかけて培って来た”叡智”を大切にしている。”調和”という概念がしっかりと共有されている感じがするよ。
今回、音においては、自分の中にあるオーガニック性の部分が発揮されたんだと思う。音的には完全にエレクトロニクスなんだけれど、オーガニック性、音楽が示唆する調和というものをそこでどう現出させていくか、その部分がパッと聴いて意識できるような音づくりになっていると思う。それが”原点回帰”的な音につながったのかもね。
─なるほど。
ちなみに今回の音自体はいつぐらいからつくりはじめたものなのでしょうか?
音自体は、じつは去年(2009年)のいまぐらい(8月)には8割くらい終わっていて、、、だから、ちょっと寝かされ過ぎているんだけれどね(笑)。
都市のダンス・ミュージックという意味合いにおいて、”都市性”とか、”ファッション性”とか、”先端性”は意識せざるを得ないんだけれど、妄想的な部分で言うと、いわゆる超自然的──例えばジャケットの絵的な世界を幻視しながら作ってみたよ。
─ちなみに、曲のタイトルというのは、先に曲ありきでつけるのか、タイトルを付けてから自分のイメージを固めて音をつけていくのか、どちらですか?
タイトルは、、、後だね。
つくる人にもよるけれど、コトバとか歌があるとタイトルが先だと思うよ。
オレの場合は、抽象絵画的というか、、、すごく漠然としたビジョンがあって、それに沿って音をつくっていく。で、出来ていったものから、タイトルを付ける。
名前を与えられたら、イメージが与えられるじゃない?
だから次はそのイメージに向かっていって、最終的にアルバムのコンセプトにつながっていくんだよ。
─CDアルバムという単位が崩壊しつつありますが。。。
ダウンロードが中心になってきたご時世でCDアルバムというカタチで出されたことには、やはり何か意味がるのでしょうか?
自分たちはアルバムで育ってきて、CDの74分──、そのなかで描きだされることはいっぱいあるんだよね。今回はそういう”想い”を投影したくて。。。音楽メディアに関しても超変革期なんだよ、いま。
具体的にCDみたいなパッケージメディアを買わない人も多くなってきて、、、現にHMV渋谷がなくなったりとかさ。でも、他に投影できるものって、いっぱいあるんじゃないのかな。ヘタしたらSDカードで、4G分の音を販売するという手もあるよね。
─たしかに。
mp3ディスクにして、曲数を沢山に入れて売ったりもできる。でも、それだと自分にとっては容量が大きすぎるんだよね。だから、CDの区切りの中──74分くらいで生まれるストーリー性がいいんだよ。
それに、、、意図的なのか、偶然的なのか、分からないけれど、何となく74分に帳尻があっていくんだよね。漠然とした思いとか、ビジョンをかかえながらやっていると、結局そこに統合されていくのかな。
すごく不思議だよ(笑)。
井上 薫 インタビュー__『ハレの日』(中編)へつづく
撮影協力:hanabi(中目黒)
撮影協力:hanabi(中目黒)
Kaoru Inoue
『SACRED DAYS』

レーベル:Seeds and Ground(SAGCD020)
価格:¥2,625(税込)
>>>レビューはコチラ
井上 薫(Kaoru Inoue)

DJ/ プロデューサー。
神奈川県出身。高校時代より20 代前半までパンク~ロック・バンドでのギタリスト経験を経て、Acid Jazz の洗礼からDJ カルチャーに没入する。同時期に民族音楽探究に目覚め、バリ島やジャワ島へ頻繁に旅立つ。都内の小箱クラブの平日レギュラーを務めながら、94 年より”chari chari” 名義で音楽制作をスタート、UK の”PUSSYFOOT” からリリースを重ねる。
“真空管”、”MIX”、”BLUE”、”WEB” などの都内クラブで活動を続け、ハウス・ミュージックに傾倒していく中、”chari chari” としてリリースした2 枚のアルバム『spring to summer』(‘99/File)、『in time』(‘02/Toy’s Factory) は日本のみならず世界でも高い評価を得た。『in time』からカットされた「Aurora」は世界中の様々なミックスCD やコンピレーションに収録され、もはやクラシックスに。以降、リリース作品、リミックス制作は多岐に渡る。
‘03 年、日本が誇るインディペンデント・レーベル”CRUE-L” 内に、自身のレーベル”SEEDS AND GROUND” を立ち上げ、「Aurora」制作時のパートナーであるDSK こと小島大介と共に、ギター・インスト・ユニット”Aurora” を結成、’04 年秋デビュー・アルバム『FLARE』(SAGCD005)、’06 年『Fjord』(SAGCD010) をリリース。本名”Kaoru Inoue” としては初となるダンス・オリエンテッドなアルバム『The Dancer』(SAGCD007)を’05年夏にリリースした。
現在、独特のスタンスと審美眼から紡がれるDJ スタイルが好評のレギュラーパーティ”groundrhythm”@ AIR、岩城健太郎との共催”FLOATRIBE”@ UNIT を拠点に活躍中。また小島大介との”Aurora” は”Aurora Acoustics” と改名、ミニマルなギター・デュオ・スタイルが好評を博し、様々な空間でのライブ活動を展開している。
□Kaoru Inoue DJ tour schedule 2010
2010/9/11 (sat) @ 浜松野外イベント
2010/9/18 (sat) @ kieth flack
2010/9/24 (fri) @ Air
2010/9/26 (sun) BLAFMA presents 『ShinKooeN fes 10′』@ 茅ヶ崎
2010/10/2 (sat) groundrhythm @ Air
more info
http://www.seedsandground.com/
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