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Interview : December 13, 2013 @ 13:25

“伊藤ゴロー”的「後奏曲」(後編)



音楽家の”伊藤ゴロー”が、アルバム『POSTLUDIUM』をリリースした。


曲を聴くだけでさまざまな風景が目に浮かぶ、、、まるで一本の映画を観ているような、そんなアルバムとなっている。


ひきつづき”ゴロー”さんに、アルバムのコンセプトや制作方法、ジャケットのアートワークなど、いろいろとうかがってみたインタビューの後編。





カネコヒデシ(以下、カ):アルバムの曲順は、どのように決められたのですか?

伊藤ゴロー(以下、ゴ):それは、すべて録り終えてから。。。

カ:聴いてみて、この流れかなと?

ゴ:うん。
一曲目の「Opuscule」という曲は、番号が1、3、5、7とあるんですけれど、
それはギターと、ピアノ、チェロと、バスクラリネットの4人で演奏した、
まったくのインプロヴィゼーションなんです。
30分間録りっぱなしにしたものを、分割して、番号をつけて、
アルバムに合うものを選んだんですよ。
全体が”馴染むように”というか、、、”いちまいで1曲”にしたかったので、
インタール—ド的なあつかいですけれど、
それがこのアルバムの”色”になっているかな。

カ:6曲目が「Postludium」となっていて、この曲をいわゆるタイトル曲にした理由は?

ゴ:もともとのモチーフはむかしからあって、いつかカタチにしたいとおもっていたんです。
メロディでもなく、コード進行でもなく、ちょっとしたフレーズのくりかえし。
自分の考える「ポストリューディウム─後奏曲」のイメージに、この曲はピッタリかなと。
そのモチーフが、この先ちがう曲に生まれ変わる可能性もあるかもですけれど、
いまの自分の「ポストリューディウム」のイメージはこれなんです。

カ:なるほど。
「Luminescence--Dedicated to H.H.」は、このアルバムの中では分厚い感じで、
ほかの楽曲よりもかなり異色に感じました。
たぶん、この曲が映画でいうとタイトルテーマ曲なのかなと。
たとえば、”市川崑”監督の金田一耕助シリーズだったら、
事件があって、急にタイトルが出て、テーマ曲が流れる、、、
ボクの中では、このアルバムにその雰囲気を感じたんですよ。

ゴ:すばらしいですね(笑)。
たしかに感情的な曲だし、いちばん主人公の気持ちがでている曲かもしれないです。

カ:11曲目でエンドロールみたいな。

ゴ:するどいね!(笑)

カ:映画音楽だなーと。

ゴ:うん、そうかもしれません!
そうだったのかもしれません!
言われて、気がついた(笑)。
でも、そうやって聴いてもらえるとおもしろいですよね。

カ:「いちまい聴いて1曲になるように」とおっしゃってましたけれど、
「いちまい聴いて一本の映画だ」と、、、そんな感じでした。
ちなみに、ジャケットのデザインは、どのようにすすめられたのですか?

ゴ:ジャケットは、前作とおなじく詩人の”平出隆”さんにお願いしました。
何度か打ち合わせをしたのですが、
そのときにはほぼ「ポストリューディウム」というコトバは出来ていて、
具体的な”ナニか”がない、もっとニュートラルな意味合いにしたいと。
だから、ジャケットも”ナニか”をイメージするような、
強くつたえるものにはしない方向でお願いしたい、
そのイメージを平出さんにおつたえしました。

カ:なるほど。

ゴ:アルバムのライナーノーツ(EP盤ではジャケット)に海と陸の写真があって、
これは平出さんが撮られた写真で、太陽が海に反射してしている写真なんですけれど、
これは中に使いたいという話をして、つかわせていただきました。
太陽が海に反射してしている写真なんですけれど、
コレは「Luminescence」という曲のタイトルに発光という意味があって、
そこから”schein=仮象”というテーマで選んでいます。
平出さんにもこの”schein=照り返しの光”をテーマにアートワークをしていただいていて、
ジャケットの表面もキラキラして、光らせて、”schein=照り返しの光”を表現したんですよ。

カ:やっぱり「Luminescence」は、映画でいうテーマ曲なんですね(笑)。

ゴ:そうなんですよ(笑)!
裏テーマじゃないですけれど、大きな軸になったのは、シャインとか光。
そういう意味をひも解くのも、ひとつの楽しみ方としてとらえてほしいですよね。
平出さんとのお仕事はそういう面白さがあって、
自分のアイディアを膨らませてくれるんです。
今回も良いモノができたという実感がありますね。

カ:毎回、ジャケットはこだわっていますよね?

ゴ:いまは配信もあるし、音楽を聴くいろいろな手段がありますけれど、
CDを買ってもらいたいし、盤を買ってほしいんですよね。
それにはアートワークがとても重要だと思っています。
ボクは、アートワークでレコードとかCDとかを買った世代ですから。

カ:ジャケ買い世代ですね。

ゴ:そこも音楽の魅力のひとつでもあるし、
「SPIRAL RECORDS」と一緒にやっていく大きなテーマでもあって、
力を抜きたくないんです。

カ:そういえば、10年くらいむかしって、
レコード屋さんってあまり試聴させてくれなかったですよね。

ゴ:いま思うと不思議だよね。

カ:店員と仲良くないと試聴させてくれなくって、
それで、ジャケ買いして、あとで聴いて失敗するみたいな(笑)。

ゴ:聴けないから、「このレコードはどんな音楽なんだろう?」ってスゴく想像して、
迷って。。。

カ:そのレコードの前を行ったり来たり(笑)。

ゴ:ね!何度も取ってみてたよね、盤。
アレ、たのしかったよね!

カ:試聴できると、気にいったものだけを買えるので、
お金をつかうという意味の効率的にはいいかもですけれど、
想像力が膨らまないですよね。
アレも音楽のたのしみのひとつでしたから。

ゴ:ワクワク期待して、家にもって帰って聴いたときの喜びをね。
アレは失いたくないよね。
今回は、試聴をやめようかな(笑)。
ちょっとだけ聴かせるとか。

カ:では、「今回は、聴かせないよ!」っていうのが、キーワードということで(笑)。
次のプロジェクトは、すでに考えていたりしますか?

ゴ:まだまだ自分のちがう色の曲を、作品をつくりたいなというのはありますね。
具体的な編成とかはないですけれど、、、映画音楽かな(笑)?

カ:映像と音楽両方ですね
ゴローさんならやれそうな気がします(笑)。

ゴ:そんなコトないでしょ(笑)!
でも、今作はアートワークと一緒に、たのしんで聴いてもらえるといいかな。
伝えたそうで、伝えたくないという、微妙なところを伝えていきたいです。

カ:とにかく、「今回のは、聴かせないよ!」ってコトですね(笑)。

ゴ:そういうコトで(笑)。



(おわり)


>>>“伊藤ゴロー”的「後奏曲」(前編)はコチラ





□CD情報

『POSTLUDIUM』





価格:¥3,000(税込)
レーベル:SPIRAL RECORDS(XQAW-1105)

>>>レビューはコチラ



『POSTLUDIUM EP』





価格:¥1,050(税込)
レーベル:SPIRAL RECORDS(XQAW-1104)

>>>レビューはコチラ


『POSTLUDIUM』スペシャルサイト:http://goroito-postludium.com/




□プロフィール

伊藤ゴロー
GORO ITO





作曲家、ボサノヴァ・ギタリスト、プロデューサー。
布 施尚美とのボサノヴァ・デュオ naomi & goro、ソロ・プロジェクト MOOSE HILL(ムース・ヒル) として活動する傍ら、映画やドラマ、CM音楽も手がけ、国内外でアルバムリリース、ライブを行う。Penguin Cafe Orchestra 『tribute』『best』、原田知世『music & me』『eyja』、ボサノヴァの名盤『GETZ/GILBERTO』誕生から50年を記念したトリビュート盤『ゲッツ/ジルベルト + 50』他、多数のアルバムプロデュースも行なう。
2013年11月シングル『POSTLUDIUM EP』、12月アルバム『POSTLUDIUM』をリリース。

オフィシャルサイト:http://itogoro.jp/


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